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I need you.

柔らかな日の差す部屋。
温もりと思い出に満ち溢れているこの場所。
かつての夢の残り火がここにいる人を包んでゆく。


LUNA SEA 第七話 「END OF SORROW」


私は、私を呼ぶ声と、そっと頭の上に置かれた手の温かさで目を覚ました。
…いつの間に眠ってしまったんだろう。

「あ、ジュン。おはようです」
少しだけ決まりが悪い。いや、寝顔を見られて恥ずかしいというべきか。
「起きたか、翠星石。…どうして来たんだ?」
ベッドから体を起こした彼が、不機嫌そうに睨みつける。
こんなもので退いたらいけない。私は何のためにここに来た?
それに本当に私にいて欲しくないんだったら、無理矢理叩き起こしてきたに違いない。
「翠星石はジュンと別れるつもりなんてこれっぽっちもありません」
「はぁ!?やめてくれ!迷惑なんだよ!」
「違うです。そんな嘘は翠星石には通じないです。
だって…ジュンは泣いているじゃないですか…!」
つい私はカチンときてしまった。 

「え…?」
彼は驚いて確認する。
それでも私は続けた。
「チビは…一人で生きていけるほど強いんですか!
一人で闘いぬけられるんですか!苦しみを全部背負えるんですか!
それに…それにその苦しみは、チビだけのものじゃないんですよ!
お前が病気になったってことは、翠星石だって、のりだって、それにお前と関わるのある皆が苦しいし、悲しいんです…。
一人でいたほうが誰にも迷惑かけないとでも思ったんですか!
このド馬鹿!ふざけるなです!
甘えてんじゃねぇです!逃げんじゃねぇですよ!
それじゃ…それじゃただの自己満足に、自分に酔ってるだけの子供と同じです!
こういう時ぐらい…せめて皆を頼りやがれです…!」
私は厳しいことを言ってしまった。
彼は静かにうつむいている。
そして、一言
「………ごめんよ」
優しく抱き締める。
「いいですよ。分かってくれただけ、嬉しいですぅ」
そう囁いた。
「ごめん…本当にごめん…。どうかしてた……。
…ごめん。……死にたくない…。………死にたくないよぉ」
堰を切ったように涙が溢れだした。
私の方からは見えないのだが、きっとその方がよいのだろう。

ただ震える体が悲しく、言葉にならない叫びが哀しかった。
私までやはり、泣きそうになってしまう。
さっき泣かないと誓ったばかりのはずなのに…。
泣いちゃ駄目だ。彼に心配をかけさせてしまう。
ただ大切な人を私はさらに強く抱き締めた。

どれほどの時間が経ったのだろうか。
彼の体の震えが止まった。
「…ありがとう、翠星石」
彼が呟く。
「いいんですよ。無理に強がらないでいいですから。
泣きたくなったら、いつでも翠星石に言って下さい。
胸を貸してやるですぅ」
私に出来ることと言えば、ただ側にいてあげること。
「ホントにありがとな。翠星石」
何をもって十分かなんて、分かりっこない。
出来ることをするだけだ。
「いえいえ、構わねぇですよ」
私は悲しみを知り、心からの愛を知る。

それからは言葉が続かなかった。

「ジュンく~ん。翠星石ちゃ~ん。下りてきて~」

下から呼ぶ声が聞こえる。
まったく、部屋にカメラでも仕込んであるんじゃないかと思ってしまうほどタイミングがいい。
お互い見つめ合うことになってしまい、照れくさかったのだ。

「ね、姉ちゃんも呼んでるし、下りようか」
「そ、そうですね」
…本当に空気読みすぎだ。

下に行くとまずのりが一言。
「翠星石ちゃん、お昼は?」

あ、そうだった。勢いだけで来たから何も考えてない。
朝食すら忘れてる。はぁ…。

「いや、まだですよ。完璧に忘れてたです」

…財布も忘れてる。さらに、はぁ…。

「ちょうどよかったわぁ。じゃあ、お昼一緒に食べましょうよぉ。
その方がジュン君も喜ぶだろうし」
「そうだな、翠星石。食べてけって。
どうせお前のことだから、朝食食べ忘れて、財布も持って来るのも忘れたんだろ?」

…げ。完全に読まれてる。

「そ、そんなことあるわけないじゃないですかぁ!」
「ん~?じゃあなんでそんなに焦ってるのかなぁ~?」

…こいつ。さっきまでの態度はどこに行った。

「何でもないです!」
この話は終わり終わりと強い口調で言う。
その時、グゥーという音が…。
なんと間の悪い…。

「はいはい、翠星石ちゃん。じゃあ、一緒に食べましょうよ。」

私はもう赤面して、話すことすらできない。
…ホントに穴があったら入りたい…

食事中、他愛もない話で笑ったりする。
少しだけ昔に戻ったような気がした。

…あぁ、こんなことよくしてたなぁ。

人知れず感傷にひたる。
大切な日々の思い出は何より深く…。
それでも、私達はこれからを生きなくちゃいけない。

「あ、そうです。のり。明日からもやっぱり仕事ですか?」
「そうなのよぅ。本当は休んで、一緒にいたいんだけどねぇ」
やっぱりだ。責任感の強い彼女は、休みをとることなんてできないだろう。

だけど…。そうだ!

「じゃあ、今日から泊まってもいいですかぁ?」

それなら私が彼を看よう。きっと私の職場なら通じるだろう。
そうだ。それが一番なように感じてきた。きっとそれが一番だ。
だけど、返ってきた答えは、

「「はぁ!?」」

いや、そんな驚かなくても…


第七話 「END OF SORROW」 了
 
 

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