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side:MERCURY
暗い部屋でテレビだけが光を放っている。

『え~、今回イギリス、ルーブル美術館から海を越え運びこまれた美術品の数々。
そのなかでも、今回のために特別に貸し出された一品。
御覧ください!これがかの有名なローゼン氏が作られたと言われている、乙女の涙です…………桃種美術館では~~~~』


少女が一人、ソファーに座りながらテレビを見ていた。

「ローゼン……乙女の涙ねぇ。見に行きましょうか? ねぇ、メイメイ」 

「う~、暑いわぁ」

さんさんと日が照りつける中、真っ黒な服を着た少女は愚痴をこぼしていた。
今日は八月上旬の陽気になるようなことを言っていた。

「だいたいなんなのよっ! この行列はぁ。
普段は美術品になんか興味無いくせに、珍しいものが来たからって…まったく日本人は困るわぁ」

少女は今、乙女の涙が展示されている桃種美術館前の行列の中にいた。

「平日なのに暇人たちねぇ」

グダグタと文句を言い続け、一時間半ほどたった頃だった

「やっと私の番よぉ。ヤクルト切れちゃったじゃなぁい」

中に入ると、ひんやりとした空気と薄暗い照明…少女にとって居心地の良い空間が広がっていた。

「よぉし、じゃぁ、あっちからみてまわるわよぉ」

少女がそう言うと、メイメイは点滅した

「なによぉ? 『乙女の涙を見に来たんだろ?』って言いたいわけぇ?
メイメイ、貴女ぁ美術品への礼儀ってものがないのかしら?」

メイメイをピシャッと言いくるめると、少女は一つ一つ丁寧にみて回った。 

素人なら二十分。興味のある人でも四十分。
そんな道のりを一時間半かけてまわり、ようやく『乙女の涙』の前にきた

「ふぅん。これがねぇ… メイメイどう思う?」

メイメイは展示ケースのまわりをくるくると飛んでいる

「……そう。本物なのね」

少女は乙女の涙を真剣な目で見つめていた。
しばらくすると

「行きましょう。ね?メイメイ」

美術品への礼儀がどうとか言っていたわりには、乙女の涙以降に展示されていた作品へは目もくれずに美術館の外に出ていった。

「さて、建物の外も把握しとかなきゃねぇ」


「見て!メイメイ、こんなとこに配電盤が付いてるわぁ」

「あそこ隠れられそうよ」

「ほら、メイメイ見てぇ」

建物の外周を一回りすると

「だいたい完璧ねぇ、頭に入ったわ」

少女は頭を指差しながら、メイメイに向かって笑ってみせた 

「さて、今度こそ帰りましょうか………! っと、その前に」

少女は一枚の紙をとりだし、サラサラと文字を書いていく。

「ん~…こんな感じかしら?」

そこには、
『六月一日零時に乙女の涙をいただきにあがります MERCURY』
――そうかかれていた

「これよろしくね、メイメイ。私は先に帰ってるわぁ」

そう言うと先程の紙――予告状――をメイメイにつきだした。
メイメイは不満そうにしていたが、キッと一睨みされ渋々と飛んでいった。
少女は楽しそうに

「館長のとこによろしくねぇ」

と、手をふっていた――

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