二十章「観察する者」
真紅達より少し余裕を持って翠星石達は土の街より東にある水の街まで来ていた。
さすがは水の街と言われるだけあり街の中央には噴水、街の周りは壁ではなく湖になっている。
翠「すごいですねぇ。ここなら植物の育ちもいいはずですぅ。」
完全に透き通った水の美しさに翠星石は感心し、目を輝かせる。
それを後ろから見てジュンと蒼星石は顔を合わせながら微笑していた。
蒼「翠星石は植物を育てるのが好きだからね。」
ジ「たしかに綺麗な水だな。でもそろそろ荷物自分で持ってほしいな。」
移動の時ジュンは翠星石の私物すべてを持たされた。
それには剣も含まれており重量はかなりのもの。
翠「なぁにをブツブツ言ってるんですかぁちび人間?しっかり下僕の務めを果たすですぅ。」
ジュンの言葉が聞こえていたのか翠星石が振り返る。
蒼星石も剣くらいは持っておけばいいとジュンに助け船を出した。
しかし翠星石は剣を一番重い荷物としてジュンに持たせ続ける。
翠「さてちび人間…もう一つの仕事である情報収集をさっさとしてくるですぅ。」
ジ「またかよ。ならお前の荷物置いとくからな。」
ジュンは荷物を壁にもたれさせ情報を集めるため翠星石達から離れていく。
翠「あ~もぉ二つのことを同時にできないなんてダメな奴ですぅ。」
蒼「それはちょっと酷だと思うけど…」
もたれさせた荷物を見ながら憤慨する翠星石を横目で見る蒼星石
街の中央の噴水。
透き通っているはずの水に揺らめく一人の少女。
濁っているわけではなくそれでいて誰かが映っているわけでもない。
その少女は右目に薔薇の眼帯
その集眼の視線の先は翠星石達に向けられている。
あらわれたのは一瞬のこと少女は誰にも気付くことなくその姿を消す。
消える直前少女は不適に笑っていた。
見られていたとは露知らず翠星石はジュンが帰ってくるのを足を揺すりながらまっていた。
翠「遅いですぅ遅いですぅ。蒼星石まで情報収集にいって暇で暇でたまらんですぅ。」
ジュンが行ってすぐ蒼星石も情報を集めに行ってしまい、翠星石は一人壁にもたれながら待っていた。
翠「律儀すぎるのも考えものですぅ。我が妹ながら同情するですね。あの性格は…」
それからさらに十五分
イライラのピークに達していた翠星石にさらに癪に触る光景が目に入る。
楽しそうに話ながらこちらに向かってくる蒼星石とジュンの姿だ。
そのイライラの理由。
自分にとって唯一無二の妹が自分以外と楽しそうに話していることか、それとも意識は薄いものの好意のあるジュンが妹であれ他の女性と楽しそうに話していることか。
それは翠星石にもわからない。
しかしとりあえず翠星石はジュンにその拳を振り下ろす。
蒼「また突然どうしたのさ。翠星石…」
半ば姉の行為に呆れ返りながら蒼星石は問い掛ける。
翠「時間に遅れたうえにあんなことしてるからいけないのですぅ。」
蒼「あんなことって?」
問い掛けられて始めて翠星石は自分が余計なことを言ってしまったと顔を赤らめる。
自分でも顔を赤らめている理由がよくわかっていない翠星石を見ながら蒼星石も頭の上に?マークを浮かべる。
ジ「なぁそろそろ僕を起こしてくれてもいいんじゃないかな?」
翠星石に殴られ吹っ飛んでいたジュンが起き上がりながらそう言う。
起き上がりながら起こしてくれなんて矛盾しているなっとジュンは笑いながら思う。
翠「笑う余裕があるなら楽勝じゃないですか。さっさと情報をまとめろですちび人間」
翠星石の言葉ももはや予想済みとばかりにジュンは話しだす。
理解しがたいことへの適応能力があるのはベジータのおかげかなっとジュンは話しながら心の中でまた笑う。
蒼星石とジュンが情報をまとめた結果。
目的地は街の北東の砂漠にあることがわかった。
翠星石は砂漠ということで水を大量に買い込み移動することにする。(持つのは当然のごとくジュンである。)
蒼「水なら僕が出せるからそんなに買わなくても…」
翠「はぐれたりしたら大変ですからね。多少は持っていかないとダメですぅ。」
ジュンに持たせたら意味無いのではっと考えながらもこれ以上言っても聞いてくれそうになさそうなので蒼星石は苦笑しながら黙っておく。
ジ「もういいからさっさといくぞ。重くて長いことは持てないんだからな。」
翠「根性のないネクラちびですね。パソコンばかりいじってるからそうなるのですぅ。」
と翠星石は言ったもののジュンが持っている荷物はかなりの量。
少しの優しさか翠星石は一番重い剣をジュンからとり自分で持っていこうとする。
ジ「持たなくていいのか?一番重いけど…」
翠「ぶ、武器がなければ戦えないから持ってやるだけですぅ。か、勘違いするな。ですよ。」
翠星石は半ば強引にジュンから剣を奪う。
蒼星石は笑いながら翠星石とジュンを交互に見る。
翠星石はあたふたと言い訳を続け、ジュンはそれをよくわからないと言う顔で見ていた。
蒼「それじゃあ行こうよ。」
素直じゃない姉を見ながら蒼星石は早足で街の外へと向かっていく。
置いていかれるわけにはいかないので翠星石も言い訳を止めて蒼星石を追い掛ける。
ジュンはやはりよくわからないという顔をしながら少しは軽くなった荷物を持って二人の後に付いていく。
三人が行った後再び噴水にあの少女が揺らめいていた。
その手には大鎌。
白い服を纏いながらも黒いオーラを醸し出し少女は噴水から空間を移動するように出てくる。
少女は噴水から出ると周りから見える自分の体をブレさせ存在を歪ませる。
居るのか居ないのかわからないほどにその存在を歪ませ、少女は三人の後についていく。
舞台裏
ジュン&金糸雀&真紅
ジ「二十章終わりだ。」
金「最後怖いかしら。なにかしら幽霊かしら。」
真「誰かは簡単にわかるでしょ?それよりジュンはMなの?いくら翠星石の性格を理解しても殴られれば痛いはずよ。それを笑いながら許すなんて…」
ジ「…でもな…いままでのことから翠星石に言い返せば倍ぐらいの勢いで帰ってくるんだぞ。それだけで話し終わっちゃうよ。」
金「それはたしかにそうかしら。まあ理由があれだからいんじゃないかしら?」
ジ「理由ってなに?」
真「どこまで鈍感なのあなたは?一回死んだほうがいんじゃない?」
ジ「なんだその理不尽な死んだほうがいい宣告は…。まあなるようになるかな。」
金「それであれは誰かしら?(これだから翠星石も真紅も苦労するかしら。まあ二人とも完全にアプローチしてないのも重なってるかしら。)」
ジ「まあ次くらい正体明らかになるんじゃないかな?まあ言うまでもないだろうけど…」
真「話をそらさないで頂戴。大体あなたは…」
ジ「なんだとこの…」
金「始まったかしら。長くなりそうだからこれで閉めるかしら。また今度~かしら~」