十五章「土の使者」
石と石とが擦れる音が部屋に響き棺の中身が露になっていく。
翠「な、なんですかこれは!?」
棺の蓋が音をたて地面に当たる。それと同時に翠星石は叫び声ともつかない声をあげる。
べ「人だな。ミイラじゃなかったがな。」
棺の中には一人の男が眠っていた。金髪の髪、筋肉質な体、いかにも強そうな男。部屋のさびれなど関係ないように棺の中は美しくコーティングされていた。
翠「誰なんですか?こいつは?」
蒼「プレイヤー…じゃないよね。」
その時棺の中の男の目が突然開き起き上がる。
?「んっ?なんだ?あ~封印解けたんだ。起きるのは結構久しぶりだな~。」
起きた男に翠星石はびっくりして蒼星石の後ろに隠れる。
べ「誰だお前?封印ってなんだよ?」
ク「あ~?しらねぇできたのか?まあいいや俺はクレイだ。あんたらメダルが取りたいんだろ?」
男は頭を掻きながらクレイと名乗る。
笹「その通りだけどなんか知ってるの?」
ク「おいおいマジで知らねぇのかよ。俺はこれでも土の化身だぜ?」
クレイは棺から出ながら自分のことを説明する。
蒼「化身?なんのこと?」
ク「そっからなのかよ。九つ属性、その一つ一つに俺みたいなのがいるわけよ。」
クレイはストレッチをしながら説明する。
翠「そういえば真紅がヌイとか言うやつとあったとかいっていたですね。」
ク「あいつとか!?そりゃあ災難だったな。あいつは俺も大嫌いだ。」
あくまで軽いノリのクレイに蒼星石は真剣な顔で近寄る。
蒼「…今の話を聞けば君は敵ということだよね?」
ク「まあそうだな。でもいきなり武器を向けるな。説明くらい聞いてくれよ。」
蒼星石はいつの間にか出していた鋏をおろしクレイの話を聞く。
ク「俺のここでの役目はメダルの保護ととりに来た人間を試すことだ。それでだがな…」
ストレッチを終えたクレイは翠星石に手のひらを向ける。
翠星石は驚き少し後ろに下がる。がクレイの手から砂の固まりが勢い良く飛び翠星石に直撃する。
ク「帰ってくれないか?俺めんどくさいの嫌いなんだよね。」
攻撃が直撃して通路に飛び出す翠星石を見ながらクレイはごく自然にそういう。
蒼「翠星石になんてことを…。死にたいのかい?」
それを見た蒼星石は怒りを露にする。鋏を素早く振り下ろしクレイに斬り掛かる。
並みの者ならその剣速で簡単に真っ二つにされるだろう。しかしクレイはその腕で難なく受けとめる。
ク「速いねぇ。でも俺は土だぜ?そんなんじゃ斬れないさ。」
蒼「だまれ。」
蒼星石は鋏を持つ手をさらに強く握る。
しかしクレイにより鋏は弾かれ止む終えず後ろに引く。
ク「そう熱くなるなよ。帰ってくれればもう何もしないって…」
蒼星石が後ろに飛んだ瞬間ベジータのハンマーがクレイをとらえる。
ハンマーの衝撃によりクレイは吹き飛び壁に激突する。
べ「蒼星石たしかに怒る理由もわかるぜ。だが今は攻撃するより翠星石を助けにいかないといけないだろ?」
蒼「…ベジータ君?」
蒼星石はベジータの言葉に正気に戻る。
ク「いってぇな。いきなりそれはないだろ?」
べ「ちっ。てんで堪えちゃいねぇな。」
崩れた壁から傷一つないクレイがでてくる。
べ「ここは俺に任せて蒼星石は翠星石のところへいきな。」
蒼「…わかった。ありがとうベジータ君」
蒼星石はすぐに出口へと向かう。
ク「どうしてもやるのか?」
べ「先に仕掛けたのはお前だろ?」
ベジータは蒼星石を見送りハンマーを構える。
ク「そうかよ。まあやるってんならしかたない…よな!!」
ハンマーを構えたベジータにクレイは生身で突進していく。
そのころ出口では翠星石が地団駄を踏みながら怒っていた。
翠「あの金髪いきなりなんてことするですかぁ~。」
ジ「……いやそれはこっちが言いたいんだが…」
ジュンは飛んできた翠星石に思いっきり当たった挙げ句、砂を被って、翠星石の下敷きになった。
真「どうしたの?翠星石いきなり飛んできたりして…」
翠「どうしたもこうしたもないですぅ。いきなり攻撃されたのですよ。」
翠星石達はジュンを完全に無視して話をはじめる。
ジ「って無視かよ…。あっ蒼星石」
通路から蒼星石が走ってこちらに向かってくる。
蒼「翠星石無事かい?」
蒼星石は翠星石を見て真っ先に怪我がないか調べる。
金「そういえばあれだけ勢い良く飛んだわりには怪我一つないかしら。」
翠「…そういえばそうですぅ。攻撃をあてられた瞬間もそんなに痛くなかったのですぅ。」
翠星石達は首を傾げながら考えだす。
水「どうでもいいけどぉまずは状況を説明してくれなぁい?」
水銀燈の言葉に翠星石達は思い出したように状況を説明しだす。
翠星石達は中で起きたことを素早く説明する。
水「あの女を知ってるやつがいたのね。半殺しにしてでも聞きだしてやるわ!!」
水銀燈は話を聞くとすぐに部屋へと向かっていく。
真「水銀燈…まったく熱くなるとすぐ…」
ジ「まあベジータ達もいるから大丈夫だろ。それより砂に当たって飛んできたのになんで砂が翠星石の後ろにあったんだ?」
砂を払いながらジュンは立ち上がる。
金「そういえばそうかしら。もしかして…」
翠「もしかして…なんですか?金糸雀」
金糸雀は真剣な顔で深くうなずき翠星石の方を見る。
金「その人が翠星石を傷つける気が無かったっと言うことじゃないかしら?」
金糸雀の予想外の言葉にジュン以外は驚く。
ジ「僕もそう思うな。翠星石は僕に当たったからわからないかもしれないけど、当たった瞬間砂がクッションになったんだ。」
真「入ればわかるわよ。正直入りたくないけど今はしかたないわ。」
真紅の意見にジュンと金糸雀は頷く。
蒼「待ってよ真紅。中はこの人数が入るにはかなり狭いよ?今はいったらかえって邪魔になっちゃうよ。」
しかし蒼星石が大事なことを思い出させる。真紅達は仕方ないのでその場で待機する。
その頃ベジータ達は
べ「ちっ。やるじゃねぇか。」
ク「そっちこそなかなかやるね。」
ベジータ達の戦闘によって部屋の壁は所々崩れホコリが宙に舞い上がっていた。
べ「しかし固いな。笹塚あいつの弱点あるか?」
笹「今分析中だ。もう少し頑張ってくれ。」
笹塚はこんなに近くにいるのに望遠鏡で二人を見ていた。
ク「弱点?面倒なやつがいるな。お前から倒しとくかな。」
そう言いながらクレイは手のひらを笹塚に向ける。
そして翠星石の時と同じく砂の固まりを笹塚に飛ばす。
ク「止めないのか?」
べ「止める必要が無いからな。」
ベジータは攻撃した瞬間のクレイを狙ってハンマーを振り下ろす。
クレイはそれを避けきれずに地面に叩きつけられる。
笹「まあそういうことだよ。」
砂の固まりは笹塚の体を透き通るように通過する。そして壁に当たりバラバラになる。
ク「たしかにめんどくさい能力のようだな。」
あまりダメージが無いようにクレイは砂を払いながらベジータの方を見る。
べ「やはりダメージは無しか。笹塚あれを使ってもいいか?」
笹「それはダメだよベジータ。それにわかったことがある。」
笹塚は望遠鏡を消しクレイの方を向く。
笹「今の攻撃全然本気じゃなかったよね?翠星石の時もそうだった。ベジータと闘ってる時は多少本気のようだけどね。」
笹塚の言葉にクレイは突然笑いだす。
ク「あんたよくわかったね。まあ今のを食らっても吹き飛ばすぐらいでまったくダメージなんか無かったろうね。」
クレイは一通り笑い終えた後、笹塚の方を向き喋りだす。
ク「安易に傷つけても恨まれるだけだからな。俺は自分から傷つけることはないぜ。」
笹「じゃあなんで翠星石に攻撃を…」
その時部屋の中に水銀燈が入ってくる。
水「あんたね。あの女のことを知ってるのは!!教えなさい!!」
ク「おいおい、いきなりなんだよ。あの女…闇か?」
いきなりの参入者に驚きながらも言葉の意味を理解する。
水「…そうよ。知っているなら教えなさい!!痛い目にあいたくなかったらね。」
水銀燈は翼を広げながら脅しを掛ける。
ク「あ~それは面倒だな。あいつはここと同じくどっかの神殿にいるはずだ。まあ場所までは知らないがな。」
水銀燈はそれを聞いて怒りの表情から普通の顔に戻っていく。
ク「さて話を終えたが…やっぱり面倒だな。お前らあのメダル勝手にとっていいぞ。」
あくまで軽いノリでクレイはそういいだす。
べ「それはなぜだ?」
ハンマーを下ろしながらベジータは問い掛ける。
ク「まだ人いるんだろ?全員倒すのも面倒だし。何よりお前まだ隠し玉があるんだろ?」
べ「一応な。」
クレイは壁によりかかりながら話を続ける。
ク「お前倒すのも骨が折れそうだからな。それに俺はお前が気に入った。だから勝手に取りな。」
べ「…じゃあお前はどうする?」
ベジータはそう言いながらクレイに近寄る。
ク「俺は待ってるさ。あそこでな。どっち道そうなるようできてるからな。」
べ「あそこってど…!?」
クレイは壁に入り込みその場からいなくなる。
べ「…あれも能力の一つか?」
笹「そうかもな。まあ目的っぽいことは達したし。いんじゃないか?」
水「そうみたいねぇ。さっさと帰るわよぉ。」
水銀燈は冷静さを取り戻したらしくいつもどおりの口調で部屋を出ていく。
べ「そうだな。さっさと帰るか。」
笹「了解」
ベジータと笹塚も部屋から出る。
舞台裏
ジュン&蒼星石&雪華綺晶
ジ「十五章終了だな。…どうしたんだ蒼星石?」
蒼「あの敵キャラはオリジナル?」
ジ「その通りだ。名前は適当だそうだ。」
蒼「そうなんだ。で次はどうなるのかな?」
ジ「次はなたしか…」
雪「……」
ジ「どうしたんだ?雪華綺晶?(目がとても怖いな。)」
雪「私の出番はいつですか?」
蒼「そういえば舞台裏にすら出てなかったよね。雪華綺晶…」
ジ「さあ~知りませんよ僕は…」
雪「…」
ジ「たぶんその内出るはずだよ。(なんで出ないやつはこんなに怖いんだよ。)」
雪「出てる人にはわかりませんわ。この気持ち…」
ジ「心を読むなよ。まあ頑張れよ。」
蒼「ジュン君その言葉はさらに神経を逆撫でするよ。」
雪「…」
ジ「本当だ。やばいな。(いやいつもはこれでベジータが殺られるはずだ。)」
雪「それではベジータが可哀想ですわ。たまにはジュン様が…」
ジ「えっ!?いやそれはあの…」
蒼「雪華綺晶、ジュン君を脅すのはその辺にしときなよ。」
雪「…わかりましたわ。たしかにジュン様を殺っても意味はないですね。」
ジ「…あの目はマジだった…」