ジ「もしもし?ベジータか?」
べ「ん?なんだジュンか。どうした?ついに梅岡を闇討ちにする気になったか?」
ジ「やりたいけどな」
べ「ちがうのか。残念だな。で、何のようだ?」
ジ「実は…」
事情を話した。ベジータに。あいつなら、きっと…。
べ「そうか。それでお前はどうするんだ?」
ジ「どうしようか?」だめだ、何にも思いつかない!
べ「バカヤロウ!そこは迷うべきところじゃない!
大学院のことはあとでじっくり後悔しろ!とにかく追え!住所は分かってるのか?」
ジ「ああ。一応聞いといたんだが何しろ方向音痴なもんで…」
べ「わかった。俺もついていってやる。住所を聞いておいたのは正解だったな。俺は銀ちゃんが地元に戻ったとき、それをしておかなかった。おかげで今は音信不通だ。」
ああ。そういえば。水銀燈は携帯もってなかったんだな。友人も案外少なかったから全部にあたってみても、
まったくわからなかったとか言ってたっけ。
べ「俺は、今あのときに戻れるなら何が何でも水銀燈をひきとめるか、俺もついていくかして絶対に離れなかった…。
何であの時分かれてしまったのか。たった一つ年が違う。それだけで、大学から早くいなくなって、地元の企業に就職しちまう…。やりきれないぜ。俺はあの時水銀燈より学生生活を選んだ。世間から見ればそっちが正しいんだろう。
現に俺もその時はそう思ったしな。だけどな、彼女が消えて、俺の一部も消えてしまったんだよ。
彼女は『俺の魂の一部』なんだよ。
お前にとっての蒼嬢、いや、蒼星石もきっとそうなはずだ!お前は追うんだ!俺と違って、後悔しないためにも!」
ジ「わかった。とにかく、すぐに僕の家まで来てくれ。蒼星石の実家まで行く!お前の言葉で踏ん切りがついた。
ありがとう。」
べ「ふん、友人として当たり前のことをしたまでだ。梅岡をつぶすまえにおまえに自殺でもされたら困るしな。」

べ「よし、ジュン。お前もバイク持ってたよな?」
ジ「ああ。あんまり乗ってないけどな。」
べ「飛ばすぞ。」

飛ばした。本当に。暴走族が絡んできたりしたが、すべてベジータが峠で谷底に叩き落していた。
普段はなんだかんだ言ってても、やっぱりベジータは頼りになる。いい奴だ、本当に。何でもてなかったんだろう?

べ「この家か?」
ジ「そうみたいだな。」
べ「あそこにいるの…蒼星石だろ?」
ジ「……そうみたいだな。」
べ「いってこいよ。」
ジ「…おう。ありがとう、ベジータ。」
べ「気にするな。」
ジ「行ってくる!」ダッ
べ「ちょっとまて。」
ジ「なんだよ?」
べ「俺が水銀燈に渡そうとおもってかったんだが、その時うっかり別のも一組頼んじまったらしくてな…金は後で払ってくれればいい。払わないでいいとかっこよくいいたいんだが、さすがにそれは高すぎるんでな…
俺はもう少しこの公園に居る。がんばれよ。」
ヒュン
ジ「これは…ありがとう!」タッ

べ「本当にがんばれよ…ジュン。さぁ、もう少しこの町を眺めて、ジュン達がどうなるかみてから帰るか…世界よりも速く走れるさ、お前なら、きっと…」

ついに、着いちゃったか。ベジータ君の彼女にもとうとう会わずじまいだったな。
大学も中退ってことになるのかな?卒論を送ったら一応卒業したことになるのかな?
まぁ、そんなことどうでもいいや。ジュン君…ほかのことは諦めがつくけど君のことはなかなか…。
考えていると、懐かしいはずの町の景色は目に映らず、いつのまにか家について、なんだかどうでもよくなって眠ってしまった。
その日の夢は、陽だまりのような懐かしい夢だった。

次の日、久しぶりに町を朝から散歩をしていたら声をかけてくる人がいた。誰だろう?
?「あらぁ、蒼星石ぃ?久しぶりねぇ」
蒼「ん?君は…水銀燈!久しぶりだね」
銀「そうねぇ。あなた、画布浮威流土市(えぬのふいるどし)の大学に入ってたんでしょ?実は私もそこにはいってたのよぉ。
こないだ卒業してこっちにもどってきたんだけど。」
彼女は水銀燈。僕の幼馴染。中学校まで一緒だった、とてもいい友人だ。ちなみに年は一つ上。
高校も同じところに入ろうとしたんだけど試験日にインフルエンザにかかって結局別の高校に僕は入っちゃったんだ…。
蒼「え?そうだったの?残念だな、わかってたら会いに行ったのに。」
本当に残念だ。今、水銀燈が一緒だったら相談できるのにと思ったことが何度あったか。
銀「昨日帰ってきたって聞いて会いにきたの。それにしても、浮かない顔してるわねぇ、あなた。
せっかくのかわいい顔がだいなしよぉ。」
そんなにひどい顔してるのかな?かわいい顔って…そんなところも変わらない。
蒼「実は、彼氏とこのことで離れ離れになっちゃって…」

やっぱり、水銀燈に話すと気が楽になる。
でも、僕が話すにつれ、水銀燈の顔が曇っていく。なんでだろう?
銀「そうなのぉ。そういうのに奥手だったあなたがねぇ。…私が卒業と同時にこっちに戻ってきて地元企業に就職したって話はしたわよねぇ?」
蒼「うん。聞いたよ。」
銀「実は私もその時付き合ってた一つ年下の彼氏とバラバラになっちゃってぇ。私も彼も携帯持ってなかったから、音信不通になっちゃったの。今までいろんな男に声をかけられた私だけど、あんなに個性的で面白くって一緒にいて安らいだ気分になる人はいなかったわぁ。頼りがいもあったしねぇ。
もう一度、あの人に会いたい。そう思っても、彼は電話を持ってないから電話もかけられず、会いに行こうと思っても新入社員が休みをそんなに取れるはずもなく、会いにいけないままもう数ヶ月…風の便りで聞いたら別のアパートに引っ越したらしいわぁ。電話持ってないのよぉ。笑っちゃうでしょう?公衆電話がすぐそばにあるからとかいって…」
蒼「そうだったんだ…」
あの水銀燈が…。あれだけ男性に対して厳しかった水銀燈のめがねにかなった日とってどんな人なんだろう…。
銀「だから、あなたも連絡の取れるうちにとっておいたほうがいいわよぉ。私みたいになりたくなかったらねぇ。じゃ、私もういくわぁ」
蒼「ありがとう、水銀燈。」
そうはいっても、何か用のあるときは直接会いに行ってたから電話番号知らないんだった…どうしよう…

家に近づくと、最後に聞いてからそんなにたってないのに、ものすごく懐かしい声が聞こえてきた。


僕は君の家に走っていった。全力で。
ジ「蒼星石!」
元「ん?君は誰じゃ?」
ジ「だれでもいいだろ!」
元「そんな訳にはいかんだろうが。最近は老人目和えの詐欺も多いでの。おぬしは誰じゃ?」
ジ「おじいさん、あなたは世界より速く走れるのか!僕は走ってみせる!世界より疾く!蒼星石は!?」
元「さ、散歩に行ったよ…」
くそっ、行き違いになったのか。速く、君にあいたい。
ジ「ありがとうございました!」ダッ

翠「ふぁぁぁあ…うーん、朝っぱらからやかましいですよ。せーっかく翠星石がとまってやったっていうですのに…」
元「あ、ああすまなかった。来客が来ておってな。」
翠「まぁいいですぅ。誰が来てたんですかぁ?」
元「…さぁ?誰じゃろ?」
翠「何でわかんないんですか!?」
元「世界より速くとか…蒼星石を探しておったな…」
翠(蒼星石!!蒼星石の身に危険が!?双子の姉としてほっておけんですぅ…)
ダッ
元「翠星石?どこ行くんじゃ?」
翠「ちょっとそこまでですぅ!!!」
元「気をつけてなぁ…」

くそっくそっくそっ!!どこにいるんだ?早く君にあいたい…
気がつくと、いつの間にか公園に戻ってしまった。
ジ「ちくしょう…。蒼星石…。」
小山のふもとにへたりこんでいると、ベジータの声が聞こえた。ような気がした。たぶん気のせいだろう。
べ〝あそこの木の下を歩いている女性は美人だな。本当に。うらやましいぜ、ジュン〟
思わず顔を上げると、そこには君がいた。間違いなく。懐かしい君が、風にその髪をなびかせながら歩いていた。
『蒼星石』!
そう声をかけると君は振り向いてくれた。走った。世界よりも疾く。それはほんのわずかな時間かもしれない。
けれど、僕は確かに、世界を追い抜けた。
蒼「ジュン君!!」
ジ「蒼星石!」
しっかりと抱きしめる。二度と、二度と離さない。
蒼「もう、来てくれないかと思った…怖かったよぉ…ぐすっ。ふぇぇぇん…」
ジ「泣くなよ。大丈夫。」
そのまま、しばらく立ち尽くしていた。
ジ「蒼星石。大切な話があるんだ。聞いてくれるか?」
蒼「え?何?」
ベジータからもらった、指輪を取り出す。
ジ「僕と、結婚してくれないか。」
蒼「………うん!」
それから、しばらくどうでもいい話をした。いままでのように。
翠「ぜー、ぜー、やぁーっと見つけたですぅ!そこのドチビ!蒼星石から離れやがれですぅ!」
えっ?誰だよ?
ジ「どなたですか?」
翠「蒼星石の双子の姉ですぅ!私の妹には指一本触れさせんですぅ!」
性格はまったく違うな。そんなことを考えていたら。頭に何かがぶつかり。
意識は世界から吹っ飛んでいた。


蒼「ちょっと、翠星石!ハンマーなんか投げてあたったら死んじゃうじゃないか!」
翠「別にかまわないですぅ!蒼星石に手を出そうとするほうが悪いんですぅ。それに、あたったですけど残念ながら死んでないですよ?」
蒼「まったく。ジュン君?大丈夫?」
翠「気を失ってるだけですぅ」
蒼「家まで運ぶから手をかして
翠「しゃーないですね。ところで、このクソメガネは蒼星石のいったい何なんですかぁ?」
蒼「大事な人だよ。とってもね。」
翠「きぃぃぃぃぃぃ!!!相手が悪いですぅ!もっと選べですぅ!」
あーうるさい。早く妹離れしてよ。結婚の話は家についてからのほうがいいな。

ラ「世界より速く…ですか。世界を少し遅くしてみましたがまさか本当に走るとは…。興味深い。身近なところで観察したいですねぇ…」

う、ん?どこだ、ここは?たしか蒼星石にプロポーズしたあとに、翠星石とかいう女性が絡んできて…?
ジ「蒼星石!」
蒼「あ、よかった。目が覚めた?」
ジ「ああ。運んできてくれたの?そういや、僕はどのぐらい気絶してたの?」
蒼「30分ぐらい?」
ジ「ありがとぉおおお?」
なんだ?誰かが猛烈な勢いで揺さぶってくる。
翠「許さんですぅ!認めんですぅ!蒼星石が結婚だなんて…!許さんですぅ!認め(ry」
蒼「やめてよ!翠星石!」
翠「う、うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」ダッ
蒼「ごめんね、ジュン君。結婚の話、翠星石にしたら取り乱しちゃって…」
ジ「ああ、べつにいいよ。それより、お父さんにもきちんと挨拶しとかなきゃ。」
蒼「そのことなんだけど、僕らの両親は小さい頃死んじゃって、おじいさんたちに育てられたんだ。僕はお父さん、お母さんってよんでるけどね。」
ジ「そうなのか…。よし、とにかく挨拶に行こう!」
蒼「もう隣の部屋で準備してるよ」
用意いいな…。
がらっ
ジ「はじめまして。桜田ジュンといいます。いきなりですみませんが、蒼星石と結婚させてください!」
元「おう、誰かと思えばさっきの青年か。世界より速く走れたかの?」ニャニヤ
さっきのジジイか!!
ジ「はい、なんとか…」
蒼「??」
元「よし、気に入った。カズキと名を変えるなら結婚を認めよう!」
は?何言ってんだこのジジイ!?
ま「すみませんねジュン君。あなたはあっちにいってなさい。」
元「う、うむ…」
ま「結婚…ね。あなた、蒼星石は好き?」
ジ「当たり前です。」
当然だ
ま「10年たっても?20年たっても?一世紀たっても、千年たっても?そういえるなら結婚していいわよ。
泣かさないでとは言わない。でも、悲しませたら、その場であなたの首をはねるわ。」
怖い。でも、そんなことは決まってる。
ジ「当然です。僕は、たとえ世界が滅びても蒼星石を愛し続けます。」
蒼「ジュン君…」
ま「そう。それならいいわ。大学は私から話をして卒論だけ送れば卒業できるようにしておきましょう。 それはそうと、あなた仕事は決まってるの?」
ジ「…いいえ」
ここまできて、フリーターやニートに娘はやれませんとかいうのは無しだぞ…
ま「なら、ちょうどいいわ。家の研究所で働きません?助手の白崎というのがあなたのことを話したらえらく気に入りましてね…」
願ったり叶ったりだ。
ジ「本当ですか?」
ま「嘘よ」
ジ「………」
蒼「………」
ま「あらやだ、冗談よ。本当に働いてください。」
ジ「ありがとうございます」
何なんだこの家は。
ま「じゃぁ、今から案内しましょう。」
蒼「僕はここで待ってるね。」


ま「こちらが、柴山植物研究所の所長、槐さんです。」
槐「…君が桜田君か。よろしく。」
ジ「こちらこそ、よろしくお願いします。」
槐さんは、植物の遺伝子に関する研究で有名な人で、とてもいいひとだった。なんでも、中学生か高校生の娘が一人居るらしい。
ま「こちらが、あなたをこの研究所に推してくださった白崎さんです。」
白「やぁ、桜田君。きみってかわいいよね。今晩僕の家に来ない?」
ジ「遠慮します。」
梅岡が世界最悪の変態だと思っていたけど、上には上がいるもんだ。
このひと、白衣のしたには紫のブーメランパンツしか着てない…
ま「この人は優秀で、いい人なんですが素行があまりよくないもので出世できないんですよ…」コソッ
ジ「わかります…。」

そのあと、ぼくらは家に戻り、蒼星石の案内でアパートを見に行くことになった。翠星石までついてきたのが残念だけど…。
翠「結婚!?蒼星石には早すぎるですぅ!絶対に私はみとめんですぅ。
しかもよりによってこんなチビ人間だなんて…」
蒼「翠星石!ごめんねジュン君、悪気は無いんだ…」
ジ「ああ、わかってるよ。」
翠「キィーーー!!目の前でいちゃつくなですぅ!」
銀「あらぁ、翠星石、まだ妹離れできてないのぉ?それにしても蒼星石ぃ。よかったじゃなぁい。」
蒼「ありがとう」
ん?この声…
銀「あなたが蒼星石の結婚相手ぇ?あれぇ、あなたどっかで?」
ジ「水銀燈さん…ですよね?」
蒼「あれ、二人とも知り合い?ジュン君、水銀燈は僕の幼馴染なんだよ。意外だな、二人が知り合いだったなんて」
ジ「僕は、ベジータの友人です。前に一度お会いしましたよね…」
銀「ああっ!!ベジータの居場所知ってるのあなた!!??お願いよぉ、おしえてぇ!」
ジ「あいつなら、いまこっちにきていてあっちのでっかい公園に…」
銀「こっちにいるの!?ありがとう!」タタタタ…
蒼「どういう知り合い?ジュン君?」
ジ「ベジータの地元に帰っていったっていう彼女。」
蒼「ええっ?」
翠「なにぃですぅ!あの水銀燈に彼氏ができたですかぁ?」
蒼「うん、かくかくしかじかでね…」
翠「驚きですぅ。はぁ、翠星石もいい人欲しいですぅ…」
蒼「それにしても、ベジータ君の美人の彼女って水銀燈だったのか…」
ジ「世の中って狭いな。」
蒼「ふたりも、うまくいくといいね。」
ジ「うまくいくさ、きっと。」
翠「そうですよ。」
蒼「…そうだね!」

そんなこんなでこの騒動は治まり、僕は柴山造園のそばに家を借りて、暮らすことになった。
もちろん、結婚式が終わったら、蒼星石も一緒に暮らす。
さよならなんかするもんか。死すら二人を分かつことはできないのに。



べ(水銀燈…この景色を君と眺めたかった…あの時、何故俺は追わなかったんだろう…)
銀「ベジータぁ!」
べ(水銀燈!?)ベジータ編に続くかも?

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最終更新:2007年05月21日 19:28