※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 

「桜田くん。急に立ち止まって・・・どうかしたの?」

「・・・いや、疲れのせいか妙なものが見えるんだ。」         

 

通りすがりの公園。目に飛び込んでくる妙な光景。

 

~重なる想い(Side:桜田ジュン)

 

「妙なって・・・あ。」

 

僕に続いて柏葉も絶句する。そりゃそうだ。今僕らの視線の先には・・・

木にぶら下がる謎の物体がある。なんだろう、あの白い・・・

うわ!動いた!・・・こっち向いた!ひ、人だったのか、っていうかあいつは!

 

「ば、薔薇・・・水晶?」

 

確かに・・・昨日初めて会ったときから、第一印象は“妙な女の子”だったけれど。

高校二年生ともあろう女の子が“木の枝でコウモリをしている”・・・これはどんな状況なんだろうか。

・・・重力を無視して落ちてこないスカートにはツッコまないでおこう。長くなりそうだし。

 

「し、知ってる人?」

「い、いや・・・その・・・」

 

「知ってる」と一言で言うのは簡単だけど、知り合いと見られたくないようないやそれも失礼なような・・・

ともかく僕がとった行動は・・・無回答。絶句である。

・・・沈黙が場を支配する。立ち止まっている僕と柏葉。その視線の先にあるコウモリ薔薇水晶。

 

「あー、もう!わかったよ!」

 

沈黙に負けた。とりあえず、仮にも女の子がこんな体勢でだらんとしているのは色々と危ないし。

僕は薔薇水晶を木から降りさせようと声をかけた。

 

「え、えっと・・・もしもし?」

「・・・・・・」

 

反応ナシ。

 

「そ、そんなところにぶら下がってると危ないぞ?」

「・・・・・・」

 

反応ナシ。何だこのデジャヴは!いつの間にか薔薇水晶は昨日のように僕の目をじっと見つめている。

より一層デジャヴの感覚が高まった僕は、とっとと彼女を地面に降ろそうとその背中に手を当てた・・・そのとき。

 

「きゃあっ!」

「うわぐっ!?」

 

・・・落ちてきた。僕が彼女の下敷きになり昏倒しているのは、華麗な膝蹴りを頭に入れられたためである。

僕を下敷きにしたお陰か特に怪我もしていない様子の彼女は、すぐに身を起こし声を上げた。

 

「と、突然何をなさるんですか!?」

「え、いや降ろそうと思って・・・」

「・・・大体、貴方どちら様ですか?」

「はぁ?」

 

何言ってるんだ。昨日会ったばかりの人の顔なんて僕だって忘れないのに・・・

いや、待て・・・薔薇水晶って敬語で喋る子だったっけ?・・・そういえば眼帯も逆の目につけてたような・・・

コンマ数秒の思考で、僕は一つの恐ろしい結論に辿り着いた。

 

「君、ば、薔薇水晶じゃないのか?」

「え・・・ばらしーちゃんを知ってるんですか?」

 

決定。・・・人違いだ。しかしこの薔薇水晶そっくりの容姿、薔薇水晶を知っているような口ぶり・・・

昨日の真紅の言葉が頭の中にフラッシュバックする。

 

『薔薇水晶には双子の姉が居るのよ。』

 

・・・それしか考えられないな。

僕は確かめの意味を込め、今は立ち上がりスカートをはたいている女の子に問いかける。

 

「・・・もしかして、薔薇水晶のお姉さんの?」

「あら、そんなことまで知ってるんですか。」

 

ちょっと驚いたような声で答えると、彼女は未だ地面に倒れている僕に手を伸ばした。

 

「私の名前は雪華綺晶。貴方の言う通り、薔薇水晶の双子の姉です。」

 

僕は好意に甘えることにして、彼女の手を掴んだ。

 

「どうも。桜田ジュンです。」

「ああ、貴方があの・・・昨日ばらしーちゃんからお話を聞きました。」

「・・・どんな話を?」

「とてもネタのやり甲斐がある人だった、と言っていました。」

 

良かった。ネタだったんだ。あれが素じゃなくて本当に良かった。

 

「私はあれがばらしーちゃんの飾らない姿だと思っておりますが。」

「どうしてお前ら姉妹は人の心が読めるんだよ!」

 

丁寧な言葉遣いに騙されかけたけど、考えてみれば公園の木でコウモリをしてる女の子だ。

・・・この姉の方も大概“普通”とは言い難い性格なんだろうな。

 

「さ、桜田くん・・・この人は?」

 

しまった。柏葉と昼飯食いに行くところだったんだっけ。あんまり時間をかけちゃまずいな。

 

「えっと、この子は僕の知り合いのお姉さんで・・・」

「初めまして、雪華綺晶と申します。」

「あ、初めまして。柏葉巴です。」

「来週からうちの学校に転校してくることになってるんだ。」

「どうぞよろしくお願いします。」

「いえ、こちらこそ。」

 

うん。綺麗に小さくまとまった感じ。あとはさっさとこの場を離れよう。

 

「それじゃ、えーっと・・・」

「雪華綺晶。きらきー、って呼んでくれていいですよ?」

「雪華綺晶。僕らこれから昼ご飯を食べに行くから・・・」

 

・・・さて、僕はここで雪華綺晶と別れ、柏葉・雛苺とともに昼食をとりにいく予定だった。

しかし、現実とはなかなか思った通りに進まないようにできているらしく・・・

 

「二人ともおそいのー!雛、もうおなかぺこぺこなのよ?」

「ゴメンね、雛苺・・・ちょっと色々あって。」

「悪かった。ちゃんと昼代奢るからさ。」

「え?いいのー?わーい!ジュン、優しいのー!」

「わっ!だから急なタックルはやめろ!」

「ふふ、雛苺は相変わらず元気ですね。」

 

何故か雪華綺晶は、雛苺との待ち合わせ場所まで付いてきてしまっていた。

 

「あ、雪華綺晶!ひっさしぶりなのー!」

「え?雛苺も知り合いなの?」

「もちろん!雪華綺晶は、雛の従姉妹さんなのよー。」

「従姉妹さんなんですの。」

 

・・・僕の本年度最初の一週間は、まだ波乱を終えるつもりがないらしい。

|