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「ジュン。お前、いつまであのお客様の専属やるの?」
笹塚に問われる。
お前には関係ないだろと思いながら僕は答えた。
「帰国まで。だから・・・あと一週間は特殊業務だな。」
「モテる男は忙しいねぇw」
「何だよ。代わらねーからなw」
「はいはいごちそうさま。」
「・・・ったく。」

午前11時。
ホテルのラウンジ。
「ジューン。こっちこっち♪」
「悪いね、待たせて。」
「全然構わないよw」
「いやいや、こっちのミスだから。御詫びにお飲み物でも如何でしょう?」
「じゃ、お言葉に甘えて♪」

「…ねぇ、ちょっといい?」
「ん?何?」
「トロピカルドリンクの…その…グラスがおっきくて…ストローが…その…ぐるぐるしてて…口が二つあるやつ…」

それってまさか・・・

「あの…日本で言うバカップルジュースですか?」

彼女がコクリと頷く。
いや反則だよ。
麦わら帽子に紫のキャミソールに七分・・・
オマケに軽く上目遣い。


‐‐ダメ…ですか?

まただ。
何だか一つ一つの些細な出来事がデジャブのようで。
本当に、彼女には申し訳ない気持ちで一杯だった。

「…ダメ?」
「かしこまりました。」

罪滅ぼしと言うには余りに小さ過ぎる。
それでも自分の気が済まない。
だから、今。
目の前にいる彼女の為に‐無論ガイドとしての役目だが‐バカップルジュース成るものを注文する。
英語で言うにはかなり恥ずかしいがそれ以上に、笹塚にだけは見られたくなかった。
後でネタにされるのだけはゴメンだから。

注文して、待つこと数分。
「うわぁ♪」
彼女が目を輝かせ、喜んでいる。
無理もない。
絵に描いたようなバカップルジュースが目の前に現れたのだから。
正直、引いた。
周りの好奇の視線もさることながら、自分の中での葛藤もあった。
恥ずかしい。
この一言に尽きる。


だが、僕の目の前にいる人はそんなことお構い無しに、
「飲もっか♪♪」
もうお手上げだ。

僕も覚悟を決めてジュースを飲む。
美味い。美味いよ。美味いんだけども…。

「・・・何か、恋人みたいだね。」
「へ?」
「え?いや…何でもない////」

「あ、今日はどうする?」
「ん~、とりあえずお買い物したいなぁ。」
「お土産とか?」
「うん。それもある。」
「行きたいとことかは?」
「パイナップル園あるでしょ?」
「ドールのね。そこがいいの?」
「うん。行きたい♪」

「じゃあ大体流れは決まりかな?」
「うん。ありがとう♪」
「構わないよ。」
「じゃなくて…その…ジュース…。」
「お客様のご希望ですからw」
「あははw」
それからワイキキの方のショッピング街に行き、彼女のお買い物やウインドウショッピングに付き合った。
彼女のお気に入りは何故かABCマート。


ホテルの前にもあるのだがそれは言わない約束。

「そう言えば今日鞄おっきいけど、どうしたんだい?」
「あ、コレ?水着入ってるんだ♪」
と言うことは、
「泳ぐの?」
「うん♪」

こっちに来て5年になるが何故か今年は一度も海に入っていないし、泳ぎはそんなに得意じゃない。
それでも、【仕事】は【仕事】。
一応クルマのトランクには水着を入れてある。
「水着ある?」
「大丈夫。クルマの中だから。」
「ごめんね、急に。」
「謝らなくていいよ。僕がもてなさないといけないんだし。」
「じゃあ、行こ?」
「その前にクルマに戻るけど、いい?」
「うん。私も荷物入れなきゃ。」
クルマに戻り、荷物やなんやらを積み込む。まぁそんなに量があったわけじゃないが。

「ふぅ・・・」
着替えを済ませ、彼女を待つ。
今日はまた一段と暑い。

「ジューン。」

振り向くと、
そこにはもう一つ太陽が。


重なる影は、頑にその残像を引きずる。
だけど、一つだけ、重ならずにあるものが、あった。

「とっても…似合ってるよ。」
薄紫色のビキニが、とても眩しい。
「にひひ♪ありがと♪」
「いや、本気で似合ってるわ。」
「ありがと♪ねぇ、行こ?」
「うん。」
「あのさ、薔薇水晶はどの季節が一番好き?」
「勿論夏だよ。でないとハワイに何か来ないよ?」
「確かにそうだなw」
「どうして?」
「いや、何と無く。」
不思議そうに僕の顔を見つめる彼女。

そう。
たった一つの相違点に、
僕は多いに助けられることになる。
「人多いね。」
「今日はまだマシな方だと思うよ。」
「そうなの?」
「ワイキキは行かない人?」
「うん。何と無く人多いからって。」
「じゃあ今日は?」
「何と無く。一人だと来づらいしね。」
「そう?」
「そうだよ。」


気付かないまま2日目を向かえたが、彼女の喋り方の変化に今更気付く。
最初に会ったときよりもクリアだった。心境の変化、と言うのだろうか。
いや、そう言うことではないはず。何の根拠もないが。

「きゃっ。冷たい。」
「ほれw(パシャパシャ)」
「もう~止めてよ~」
「あははwごめんごめん。」
「気持ちいいね。」
「そうだね。風もいい感じだし。」
「サーフィンとかするの?」
「一応ね。」
「泳ぐのは?」
「あんまり得意じゃないなw」
「陸サーファー?」
「ちげーよw」
「ここでするの?」
「サーフィンは冬場だよ。ノースショアで。」
「ふーん。」
それから少し水辺で遊び、レンタルしたウォーターサイクルで少し先の沖までこいで遊んだ。

正直、幸せだった。

「そろそろ行く?パイナップル園。」
「うん。行こっか。」


それから、ドールのパイナップル園へと向かう。
パイナップルの畑の土は赤い。
日本でまず見ることはない。

「うわぁ、ホントにパイナップルだらけだねw」
「パイナップルソフトクリームってあるけど、食べる?」
「うん♪食べる。」

ドールパイナップル園名物、パイナップルソフトクリーム。
【観光客向け】と言われるモノだが、僕は好きだ。
と言うか、パイナップルが好きだから。
「ふひひ♪おいしい♪」
「それはよかった。」
「ジュン?」
「ん?」
「あーん」
「へ?」
「いや、あーん。」
「・・・」
「いらないの?」
「流石に…。」
「あーん。」
「…頂きます。」

観念し、彼女がくれたソフトクリームを食べる。


‐‐あーんして下さいませ。
あぁ、そんなこともあったっけ。
あれは…。
そう、冬だったな。

「ジュン?」
「え?いや、ごめん。」
「大丈夫?」
「うん。」
「…そう。ねぇ、話して?」
「何を?」
「…何か、あったんでしょ?」
そんなことを、会って2日目の人に話せるわけがない。
「いや、何でもないんだ。気にしないで。」
「…ごめん。」
「大丈夫。さ、行くよ。」
「え?どこに?」
「秘密の場所。」

‐‐午後5時
クルマを飛ばし、北へ。
ノースショア。
そこにある秘密の場所。
僕がハワイで一番、夕日が綺麗だと思う場所。
「着いたよ。あのテラス。」
「いい場所だね。」
「うん。観光客もあんまり来ないし。」


「教えないの?」
「うん。だから秘密の場所。コーヒー好き?」
「まぁ、好きかな。」
「コナコーヒーは?」
「あ、香りがいいやつ?」
「うん。豆も買えるよ。」
「買って帰ろっ♪」


テラスからは、傾いた太陽。
出されたコーヒーは、香り豊かに深く。

甘い香りは、
その深い味に隠れず。

かと言って、
味にも隠れない。

「あのさ、」

僕は、何故か喋りだしていた。

Phase3-Kona-

Fin

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