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「ビッグバァァァァァァンアタァァァァック!!!!!!!」


完全に緊張を解いていた二人に苛烈な一撃が襲い掛かる。
「きゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!」
「ぴや~~~~~~~~!!!!!!」
大爆発、完全に防御を解いていたベリーベルの巨体に超高熱のビームが直撃、
外部装甲は融解し破壊される。
機体の各部分が爆発を起こし紫電がありとあらゆる箇所で立ち昇る。
レッドアラート、コクピット内のモニタの全てが真っ赤に点滅する。
レッドアラート、エラーの羅列がモニタを埋め尽くし、機体ステータスを
示すモニタに映る損害は実に90%にのぼっていた。
機能停止寸前、罅割れ、融解した装甲から水銀(アゾート)の血が
動力機関の脈動に合わせて流れ出していく。
「ぐっ……うぅ……」
紫電が跳ね回る球形コクピット、巴の意識は破壊の衝撃と紫電に焼かれた激痛
で闇へと落ちる一歩手前まで追いやられていた。
座席らしきものはないその空間、地面に突っ伏していたその身を
どうにか起き上がらせて壁面に身体を預ける。
額が切れたのか目の前が真っ赤だ。雛苺は?思い、全身を苛む激痛に耐え
下部コクピットを見やる巴。
気絶している、座席に身を横たえてはいるが、幸いな事に雛苺には
傷らしきものは見当たらない。
だが、それでもこの状況は危機的だ。


「ふんっ!か、かなぁ~~~~~りやばかったぞローゼンメイデンとその契約者!
 あのレーザーみたいなのを喰らう前にカイオウケン6倍を発動してなかったら
 俺とサイヤロボはマジで木っ端でグッモーニンヘヴン、ようこそパラダイスへ
 ネロも真っ青パトラ~~~ッシュだったぜ!」
かろうじて起動しているメインモニタに映るサイヤロボ、あの忌々しい
キチ○イの声と共に現われたそれは、表面装甲は全て剥がれ落ち骨組みと
内部構造が露出してはいたが、十分にその機能を発揮できる状態にあった。
どうすればいい?完全に手詰まりだ。
巴の脳内はパニックに陥っていた、突然の攻撃は精神を大きくゆるがせる。
魂を燃やし冷たいまでにそれを澄み渡らせてみる、魔術師としての思考とやらを
総動員して手段を講じてみる、が、現状況を切り抜ける手段が思いつかない。
何も感じない、先程の行程をなぞってみるがまったく何もできない。
今の彼女は魔術師ですらない。
雛苺という魔術を行使するための魔導書的存在の力が断たれた今、
巴はまさしく無力で矮小なたった一人の人間でしかなかった。
悔しさに唇を強く噛み締める。口内に広がる鉄の味。
「こんな……こんなことで………!」
激痛を遙かに凌駕する後悔と屈辱。
怒りにも近いそれは絶望とも呼べるかもしれない。
「HAHAHAHA~~~~!!!とてつもなく大ピンチだったが、主人公は
 いつでも逆境を越えて勝利する。つまり、それが今の俺。お前という
 逆境を越えて更に俺は強くなるぜ!!」
剥き身のサイヤロボのモーターがフル回転し始める。
カイオウケン6倍によって帯びた紫色のエネルギーの幕が全身を更に
色濃く覆い、不気味に揺らめく。
サイヤロボは構えをとりベリーベルに向かって相対する。
「喰らえいビッグバンアタック!思い切り派手に吹っ飛べ、夏の終わり恋する
 二人が眺める打ち上げ花火みたく!上から見るか下から見るかぁ!
 あ、もちろんローゼンメイデン回収も忘れずに―――ファイア!」
発生するエネルギーの塊、それがいよいよ切迫したカタチで
ベリーベルに照準を合わせられる。


―――誰か、助けて


無様だ、無様すぎる。強くあるべき己が他者の助けを求めている。
巴の顔に浮かぶ屈辱の色が更に色濃くなる。
目の前の絶望を前にして、逃れられないという現実に遭遇して。
背負うべきものを守れない不甲斐なさにまみえて。

だが、それでも
それでも自分は求めてしまっている
助けを
かつて見ていた祖父の背中を
強く優しく
虐げられる者達を守る刃を手に執るその痩躯を
痛みに耐え忍ぶ壮絶な笑顔を秘める姿を
弱い自分を守ってくれた人を
求めた

「たす………けて」

発射される超高熱のビーム、破壊が眼前にコンマの単位で迫ってくる。
死の瞬間が訪れようとしている。
世界が緩慢になる。
終わり、終わりだ。守れずに終わる。
悔しい。
瞼を閉じる。
終わる。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

咆哮、ウォークライ。正しき怒りを秘めた、力ある者の雄叫び。
絶望を切り裂く鋼の刃。
夜空に金色の鬣が翻り、暴力的エネルギーは絹布の如きそのしなやかな
流れに逸らされ宇宙へと方向を変え、大爆発。
闇に落ちそうになった巴の耳に確かに届くその雄々しき雄たけび。
ゆっくりと開かれる彼女の視界に一体の機神が聳え立つ。
夜明けの暁を髣髴とさせる紅鋼、二対の黄金の鬣。
力強く存在感を放つ重厚な体躯。
「お……お爺様……?」
コクピットにいるであろう術者の姿は見えないのに何故だろう。
巴には、その彼の姿が祖父と重なって見えたように感じられた。
彼女が愛してやまず、信仰した祖父の姿が。
そして、世界が、暗転する。


「さぁてと。ようやっと復活100%だ。気合入れていくぞ真紅!」
「やい、貴様ら!お前ら昨日の――」
「さっきまで首をブラブラさせて呻いてた人間の言うことではないわね」
「ふっ。そうか、仲間をたすけに――」
「それとこれは別だ」
「俺という高等生物と対峙してびび――」
「そうかしらね、怪しいものだわ」
「真紅、お前は今どっちの味方なんだ?思い切り胸が締め付けられて
 心なしか傷付いてる気がするんだけど」
「真実の味方」
「即答かよ」
「き、貴様らっ!!お、俺を無視するのか!?無視しちゃうのか!?敵だぞ!?
 ものっすごく敵だぞ!?それでも無視するのか!?」
「「うるさい、キ○○イ!」」
「くっ………ブレッキンハァァァァァァト!!!」
寂しさとそこはかとない哀しさを伴った叫びを引き連れて、ポンコツロボが
ものすごい勢いで僕と真紅に向かって突っ込んでくる。
「ちっ……来るぞ真紅!」
「分かってるのだわ」
同時、脳内を疾走る術式が僕の身体を動かす。半身をとり敵の突進を
前に出した左足を中心に回転して避ける。そしてその回転の勢いを
生かしたまま攻撃へ移行。


「喰らいやがれっ!!」
衰える事のない回転の勢いが繰り出した刃の破壊力、2体がすれ違うと同時、
ホーリエの手刀がロボの頭を斬り落とす。
「眼が、眼がぁぁぁ~~~!!サイヤロボの眼がぁぁ~~~~!!」
頭のあった部分をわたわたと探る敵ロボ。
シュールなんだか鬼気迫ってるんだか良く分からん光景だ。
しかし、そう思いながらもホーリエは確実にロボに一撃を打ち込んでいく。
右拳、左拳、蹴り、肘、掌底。
一発一発が強烈な破壊力を持つ。
見る見るうちにはがれ、ひしゃげ、穿たれていくロボの姿。
「せいやぁっ!」
そして回転蹴り、ベッコリとへこんだ骨だけロボットが宙を舞って落ちる。
「よし、やったか?」
「みたいだけど……あら、意外としぶといわね」
モニタにはまだ立ち上がってくるロボの姿が。
「へっ……や、やるじゃねえか。良いぜ、こっちも瀬戸際だ!俺こそが
 宇宙一!世界一!!史上最強!くらえぃ、ギャリック砲!!」
ロボの腹部が大きく開く。そして昔の大砲の筒みたいのが
ニョッキニョッキと何本も出てきて僕らに照準を合わせる。
「お前らなぞこの俺様の前ではミジンコ、い~~やそれ以下だ!!
 カイオウケン6倍全開で先行者、宇宙の果てまでブーーーン!!」
「ジュン、避けなさい!!」
「ああ、分かって――――っっ!?」


回避しなければ、そう思う僕の後ろに映るもう一体の機巧神。
既に退避したと思っていたが、くそっ!
「ジュン!?くっ………防御結界!!」
巨大なレーザービーム、僕達はあの少女達が乗っている機体の前に
立ちはだかりその破壊から彼女達を守る。
ホーリエの防御結界が破壊の光を阻む。閃光が結界とぶつかると同時、
結界のあちこちに雷が発生した。
「―――っ!?負荷が大きすぎるわジュン!!離脱よ、早く避けなさい!」
「できない!!今僕達が避けたら後ろの二人が!!」
「くっ……!」
モニタ越し、後ろで完全に膝をついて動かない機体、彼女達は無事なのか。
「こっちから通信が取れない。確認はできないのだわ」
「くそったれ!」
止む事がない破壊、結界にかかる負荷は予想以上に大きく、ホーリエの
ステータスモニタが赤く点滅し始める。
「はーっははははは!!そーれそれどうした!このままだと吹き飛ぶぞ~?」
アラート、限界を示す表示。
「ジュン、結界は貴方の魔力を動力としているのだわ。まだ魔術師として
 未熟な貴方が行使できる結界の維持時間もそれに比例してる。
 言いたい事は分かるわね?」
解っている、だが、避けるわけにはいかない。

「避けないぞ。このままだ、このままこの攻撃を耐え切る!」
「本気?」
「ああ」
「………」
焦りの混じった溜息をつく真紅。
僕にだってわからない。別に真紅と同じ姉妹がいるからだとか、
真紅と闘ったあの少女が気になるとかじゃない。
ただ、このまま何かを見捨てるのは嫌だ。
後味の悪くなるような行為をするのは絶対嫌だ。
「嫌なんだよ。何かを見捨てておめおめ自分だけ助かるのは嫌なんだ」
「……」
「だから、逃げない」
「はあ……」
あきらめたといった感じの溜息をつく真紅。
「……解ったわ。下僕に付き合うのも主人の務めね、助力するわ」
アラートが鳴り響くコクピット内、結界の限界値が振り切れようとする。
だが、僕と真紅はそれをギリギリのところで耐える。
全神経を結界に注ぎ込む。
世界に意識が拡がっていく、結界と自分が一つになる。
ほつれを無限に近い0.1秒以下の世界で修復、再構築。
それは真紅という魔導書的存在によってサポートされてより強固に。


体中の血管が想像を絶するスピードで脈動する。
耐え切れず何本かが破裂、魔術師の衣が血で黒く濁る。
だが、それに構っている暇はない。
肉体を凌駕した領域で破壊を防ぐ理論を展開し、目下の状況を
乗り切らなければいけない。
拮抗する破壊と防御。危うい釣り合いで水平を保つ天秤は何時
崩れるか解らない。だが、それでも耐え切るだけだ。
「なかなかやるじゃねえか!いいぜ、気に入ったぜ!!……って、あり?」
不適に笑うキチ○イ、その笑いが突然止まる。
そう、天秤が崩れたのだ。
爆発、それがあのロボから上がる。
「おおおおおオーーーバーーーヒーーートォォオ!?」
光が、破壊が、止む。
既に受けていたダメージが余りにも大きかったのだ。爆焔を上げて
大砲が地面に落下して土煙を上げる。
血路が切り開かれた!
「真紅!!」
「ええ、いくわよ!!」
消える防御結界、無傷のホーリエを駆り、僕と真紅は一つの術式を編み上げる。


「一発撃てるか?!」
「ギリギリだけどいけるのだわ!!」
「それで十分!!」
脳内に破滅的情報量が流れ込む。常人でなくともその天文学的情報量は
脳を灼き切るほど。走る激痛、だがそれは一瞬。すぐにその情報は
あるカタチへと変質しそれは脳内に刻まれる。
それは二度目の刻印となる必滅の術式の理論、コクピットの魔術文字が光り輝く。
「な!ままままままままま、まさか!まさかしてしまうのかっ!?」
「そうともご名答だ!」
「いたぶってくれた礼はきっちり百倍返しなのだわ!!」
ホーリエの右手が紅に輝き唸る。
心臓機関である魔術動力炉が高速回転し咆哮を上げる。
「紅き閃光の元、滅壊せよ。汝が全て、今、我、滅さん!!」
爆砕する大気、ホーリエの右腕がサイヤロボを捉える。
「ローズ=テイルッッッ!!!」
貫く装甲、閃紅の光球が超超高度の熱量を持って敵を喰らい尽くす。
「ブルマァァァァァ!!!」
サイヤロボが紅球に呑まれ消える。

完全たる滅壊の術式が夜空を紅に染め上げた。

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