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『T18k - 第四章』
観覧車を降りてしばらく、二人の沈黙は続いた。
薔「・・・・・そろそろ帰ろうか?」
その発言で二人は家路に就き、今水銀燈の家の前に居る。
銀「じゃあ・・・今鍵開けるわ」
薔「・・・うん」
ここまで二人は、必要最低限のこと以外喋らずにきた。
二人とも観覧車での雰囲気からか、話しづらかった。
ガチャッ
銀「ただいま」
薔「お邪魔します」
薔薇水晶は部屋の隅に荷物を置いて伸びをし、言った。
薔「んーっ・・・・水銀燈、ご両親は・・・・居るの?」
銀「あ・・・今日は居ないわ。二人とも共働きで、たまに何日か出張することもあるのよぉ。
  それで、今日は二人とも帰ってこないのよ」
薔「ふぅん・・・・お夕飯はどうするの?」
銀「出前でも頼もうかと思ってるんだけどぉ」
薔「それじゃ・・・・私が作ってもいい?」


そんなこんなで、薔薇水晶が青いエプロンを着けて料理をしている。
薔「お塩どこかなー?」
キッチンから薔薇水晶の声が聞こえる。
銀「お塩は・・・・一番右の引き出しに入ってるわよぉ。
  ・・・・・本当に私は手伝わなくていいの?」
こたつに入りながら水銀燈が言った。
薔「うん。水銀燈はそこでテレビでも見て楽しみにしててね」
銀「・・・・・前みたいに辛いのはやぁよ」
さすが3LDK!キッチンとリビングの会話もラクラクだぜ!
銀「(匂いはおいしそうだわぁ・・・・・これは期待できるかもねぇ)」
水銀燈の家には炒める音とテレビの音だけが流れた。


薔「おまちどおさまー」
薔薇水晶がエプロン姿で、両手に皿を持ってこたつにやってきた。
コト、コト、と皿が置かれた。
銀「ん・・・?これは・・・・オム・・・・レツ・・・・・・?」
薔「うん。・・・・・好きじゃなかった?」
皿には鮮やかな黄色のオムレツが乗っていた。何もおかしなところはない。
水銀燈が驚いたのは、ケチャップで書かれていた文字だった。
水銀燈のオムレツには『ぎ(はぁと)ん』、薔薇水晶のオムレツには『ばらし-』と書かれていた。
銀「いや・・・好きだけど・・・この文字が気になって」
薔「うふふ・・・・・・」
そう言いながら、薔薇水晶は向かいのこたつに座り、肘を立てて手を組み、その上に顎を乗せて
水銀燈を見つめる。
銀「な・・なぁに・・・・??」
薔「ふふ・・・・・何でもないよ。召し上がれ♪」
銀「えっとぉ・・・じゃあいただきます」
スプーンを手に持ち、オムレツを文字を崩さないように一口サイズに切ってから口に運ぶ。
銀「ん・・・おいしい。甘さも丁度良いし・・・半熟でとろとろ・・・薔薇水晶って料理上手だわぁ」
薔「ホント?よかった・・・・」
薔薇水晶は大袈裟に胸をなで下ろす動作をして安心してみせる。
それを見て微笑む水銀燈。
いただきます、と言って薔薇水晶もオムレツを食べ始めた。


二人はオムレツを残さず食べ終わった。
薔薇水晶が洗い物を始めようとしたので、水銀燈が申し出て二人でカチャカチャと洗い物をしている。
銀「(それにしても・・・・・・)」
エプロンを着けた水銀燈は考え事をしていた。
薔「・・?どうしたの?」
それに気づいた薔薇水晶が声をかけた。
銀「あ、えっとぉ・・・薔薇水晶って料理がすごい上手だなって思って・・・・」
薔「水銀燈、さっきからそればっかり言ってるよ・・・・」
銀「だって、レストランで出てきそうなオムレツだったし」
薔「ふふ・・・・ありがと。また今度作ってあげるよ」
銀「うん。・・・・・・と、ところで・・・・・誰から教わったの?」
水銀燈は既にオムレツの虜になっていた・・・・。
薔「え?お母さんが教えてくれたんだよ。・・・・そうだ、今度水銀燈にも教えてあげる」
そんな水銀燈の心情を察して、フォローしてくれた薔薇水晶に
銀「ふふっ・・・・ありがと」
と、いろんな意味を込めてお礼を言った。


銀「さて・・・・洗い物も終わったしお風呂入っちゃいましょぉ」
水銀燈はエプロンで手を拭きながら言った。
薔「今日は銭湯じゃないの・・・?」
銀「そうよぉ。時間が遅いし、もうあのじじいシャッター閉めてるわ。薔薇水晶、先に入りたい?」
そう問われた薔薇水晶は、水銀燈の腕に抱きついて言った。
薔「・・・・一緒に、入る」


ガチャ、と風呂場のドアが開いた。
銀「うぅん・・・・二人で入るには狭いと思うんだけど・・・・・」
薔「・・・・大丈夫だよ、早く入ろう」
薔薇水晶が水銀燈の背中を押して入ってきた。
二人は髪が長いので、頭の上でまとめている。
銀「じゃあまず体を流すわよぉ」
キュッ(おっと!蛇口をひねったぞ)
シャー(シャワーから水が噴き出すぞ)
薔「ひゃっ!・・・・冷たい」
銀「あははっ、ごめんなさぁい」
薔「うー・・・・おかえし」
ザバーッ(風呂から桶で湯を汲んでぶっかけたぞ)
銀「ちょっとぉ!・・・・髪までびしょ濡れじゃなぁい」
薔「おかえしだよ、おかえし・・・・きゃっ!・・・・シャワーなんてずるい・・・・」
銀「おまけよ、おまけ。ふふふっ」
キュッ(また蛇口をひねったぞ)
銀「さぁて、入りましょ~」
ザプ・・・・(静かに入浴したぞ)
薔「むー・・・・・ていっ」
ザッブ~ン(豪快に飛び込んだぞ)
銀「きゃあっ!・・・・・ちょっとぉ、湯船の底が抜けちゃうわ」
薔「・・・・・・・うふふ」
銀「・・・・・くすくす」
薔「ふふっ・・あははっ」
銀「ふふふ・・・・・あはははっ」
風呂場には二人の笑い声が響いた。


風呂を出た二人は、飲み物を持って水銀燈の自室に居た。
水銀燈の部屋は、フローリングの床に絨毯、ベッド、椅子と机、テレビなどなど、よくある今時
の女子高校生の部屋といった具合だ。
薔「・・・チューッ」
薔薇水晶は椅子に座ってまたオレンジジュースを飲んでいた。
薄紫のパジャマを着ている。
銀「・・・・・・・・・・・・」
ベッドに座っている水銀燈はそれを見つめていた。
こちらは灰色のパジャマだ。
薔「・・・?どうしたの?」
当然、その視線に気づいた薔薇水晶が聞いた。
銀「え・・・・・その・・・お風呂上がりで髪がストレートになってて・・・・
  カワイイわねぇとか思ってて・・・・・・・?」
見つめたまま、無意識に素直な感想を述べた。
銀「(あれ・・・・なんでこんな事言ってるのかしら・・・・・・・)」
薔「え・・・・・あ、ありがとう・・・・・」
薔薇水晶はのぼせたのか、恥ずかしがったのか分からないが、顔を赤くして・・・少し俯きながら言った。
銀「あっ・・・い、いいのよ・・・そんな、え、えーと」
そんな薔薇水晶を見たのと、自分が言った事の意味に気づいたことで顔を真っ赤にして水銀燈は言った。
僅かな沈黙が流れた後・・・・・・
薔「ねえ・・・水銀燈・・・・」
薔薇水晶はジュースを机に置いて、水銀燈の隣りに座った・・・。


薔「ねえ・・・水銀燈・・・・・」
銀「なぁに?・・・・・・ぁ・・・」
水銀燈は気づいた。
薔薇水晶は、あのとき・・・・観覧車で何かを言いかけたときと同じ、真剣でどこか不安げな
表情をしている。
薔「あのときの・・・・続きなんだけどね・・・・・」
銀「・・・・・・・・・何かしら・・・」
薔「あのね・・・・・」
薔『あのね・・・・・』
あのときの薔薇水晶と、姿が重なる。
薔「ずっと・・・水銀燈に言いたかったことがあるの」
薔『ずっと・・・水銀燈に言いたかったことがあるの』
鼓動が高まるのが・・・水銀燈自身も分かった。
薔「私・・・・・・・」
銀「・・・・・・・・・・」


薔「貴女・・・水銀燈のことが・・・・・好き・・・・」
銀「・・・!!」


銀「(私のことが・・・・好き・・・・・・?)」
薔「あ・・・・ごめんなさい。急にこんなこと言って・・・・・」
水銀燈には、分からなかった。
人付き合いが嫌いだった水銀燈・・・・なるべく人との関わりを持たないようにした水銀燈・・・
彼女には、好きという気持ちがどんなものなのか・・・・・。
本で読んだことはある。でも感じたことはない。
だから、水銀燈には好きというのがどんな感情なのか・・・分からなかった。
そして、その疑問がそのまま口に出た。


銀「好きって・・・・・一体どんな気持ち・・・・・・・?」
薔「えっ・・・・?」
薔薇水晶は間をおいて、話し始めた。
薔「好きっていうのはね・・・・その人を見てると・・・・」
銀「・・・・・・・・・・・」
薔「なんだかドキドキして・・・・」
薔薇水晶を見ているとき
薔「嬉しくて・・・・」
薔薇水晶を見ているとき
薔「でも心のどこかが痛くて・・・・」
薔薇水晶を見ているとき
薔「・・・・絶対に、離れたくないって思う・・・・そんな気持ち」
銀「(・・・・・・?)」
最後のひとつが、まだ分からなかった。


銀「(絶対に、離れたくない・・・・?)」
何もしないでも、ずっと付いてきてくれた薔薇水晶。
薔『水銀燈・・・銭湯ではあまり泳がない方がいい・・・・』
執拗にコミュニケーションを取ってきて
薔『ホントッ!?やった♪』
鬱陶しいと思ったこともあった。
薔『私も、なんだかこっちで食べたくなって』
短い間だけど・・・・ずっと一緒に居たから
薔『何って・・・お出かけの格好』
離れるなんて、考えられなかった。
薔『貴女・・・水銀燈のことが・・・・・好き・・・・』
水銀燈は何も言えなかった。そして・・・薔薇水晶が口を開いた。
薔「私・・・・・本当は今日ここで、お別れのつもりで来たの」


銀「(おわ・・・かれ・・・・?)」
薔「私女なのに・・・女の子が好きなんて・・・・・理解できないよね。気持ち悪いよね・・・・」
銀「(そんなこと・・・・・・ない・・・・・)」
薔「だから・・・・そんな変人に水銀燈を付き合わせるなんて・・・できないから」
銀「(や・・・・・・・・・)」
薔「だから、お別れ」
銀「(い・・・や・・・・・・・・)」
薔「最後に・・・・ごめんね。好きなんて言って。でも・・・この気持ちは抑えられなくて・・・
  ごめんなさい」
銀「(いや・・・・・・・・)」
薔「じゃあ・・・・・私、帰るね・・短かったけど・・・・今まで・・・・・・ありがとう」
薔薇水晶は、ベッドから立ち上がろうとする。
銀「(絶対に、離れたくない・・・!)」
水銀燈は、薔薇水晶を抱き寄せた。


薔「えっ・・・?」
薔薇水晶は驚いた。
銀「いや・・・いやよ・・・・私も・・・薔薇水晶のことが好き」
水銀燈は薔薇水晶を強く抱きしめた。
薔「・・・・・・・・・・・」
銀「好きって気持ちがどんなものなのか・・・・まだ良く分からないけど・・・・・薔薇水晶を
  見てると、ドキドキして・・・嬉しくて・・・でも心のどこかが痛くて・・・・そして、
  絶対に離れたくないって思うわ・・・・・・だからこの気持ちはきっと好きだと思う気持ち」
薔「・・・・・・・ホントに・・・?」
銀「そうよ・・っ・・・ホン・・・・・トに・・・うっ・・・・私は薔薇水晶が・・・・好き」
水銀燈は、泣いていた。
薔「ホントに・・・・本当に・・・・・」
薔薇水晶も、水銀燈の肩で泣いていた。
銀「ホントに・・・ホントだから・・・・っ・・・・だ・・・から・・・どこにも行かないで・・・」
薔「水銀燈・・・・・・・」
薔薇水晶は、水銀燈の肩を掴んで少し間を開けた。そして・・・・
銀「んっ・・・・・」
水銀燈にキスをした。


薔「・・・・・・・これが・・・・」
薔薇水晶は涙を流しながら笑顔で・・・・言った。
薔「どこにも行かない・・・・・・証・・・・・・」
銀「うっ・・・・うっ・・・・・・ぐすっ・・・・・・うわあああああっ」
水銀燈と薔薇水晶は、また抱き合った。




二人はベッドで横になっていた。互いに背を向けて。
銀「・・・・・・・・・・・・・・・」
薔「・・・・・・・・・・・・・・・」
熱が冷めると・・・・・今度はなんだか恥ずかしくなってしまったようだ。
銀「(話しづらいわぁ・・・・・・・・・)」
水銀燈は大泣きしていたので、より一層話しづらかった。
薔「・・・・・・・・・・・・・水銀燈、起きてる?」
沈黙を破ったのはやっぱり薔薇水晶だった。
銀「・・・・・・・・・・・・・・・・・起きてるわ」
サーッ、と布の擦れる音を立てて薔薇水晶が水銀燈の方を向いた。
薔「今だから言うけどね・・・・・・・・」
薔薇水晶はそういって話し始めた。
薔「私・・・・・ホントは入学したときから一目惚れだったんだ・・・。でも私には勇気が無く
  てずっと声をかけれないでいた。自分に自信が無くて・・・・・」
銀「・・・・・・・・・・・・・・・」
薔「みんなね・・・・私がおどおど喋るからあんまり話してくれなかった」
銀「(そう言えば・・・・初めて喋ったときもそうだったわね)」
薔「でも、水銀燈はそんなことなくて・・・・ちゃんと聞いてくれた。だから・・・短い間
  だったけど、自分に自信が持てた」
銀「・・・・・・・・・・・・・・・」
薔「だからね、水銀燈には一杯感謝してるんだよ」


銀「私も・・・・・・・」
薔「・・・・・・・・・・・・・・・」
銀「貴女と出会うまでは人と話すなんてまっぴらごめんだったわ」
そう言うと、くるっと回って薔薇水晶と向き合った。
銀「でも・・・・貴女には不思議な雰囲気があって・・・・・・話していても嫌にならなかった。
  それに・・・・・貴女と話しているうちに他人というものの良さも分かった・・・・・。
  だから、私も貴女に感謝してるわ。・・・・・お互い様ねぇ」
薔「ふふ・・・・お互い様・・・・・・」
銀「そうね・・・お互い様・・・・・・・・・」
そう言って、二人は見つめ合った。


薔「ねぇ・・・・・明日、またマルイに行かない?」
銀「明日・・・?また学校をサボる気なのぉ?」
薔「ふふふっ・・・・二回くらい大丈夫だよ」
銀「ま、いいわぁ。前とは違った楽しみ方ができるかもしれないし」
薔「私、着替えが無いから一回家に戻らなきゃいけない・・・。
  だから午前10時に・・・・マルイ前集合ね。それじゃあおやすみ。すぴー」
銀「あっ!ちょ、ちょっとぉ・・・・。私の意見も聞かないで一人で寝ちゃって・・・・・・。
  しょうがないわぁ・・・・・私も寝ようかしら・・・・・・・」

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