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『T18k - 第三章』
朝。雲一つ無い快晴。
薔「・・・・着いた」
銀「んんーっ」
水銀燈はバスから降りて伸びをした。
薔「ふふ・・早く早く」
薔薇水晶は水銀燈の腕を引っ張って目先にあるものに走る。
銀「ちょっとぉ、そんなに急がなくても逃げないわよ。ふふ・・・・・」
二人の目の前にあるのは、遊園地『22ランド』だった。


朝日が窓から入る、午前9時。
水銀燈は自室で、机に脚を乗っけながらファッション誌を読んでいた。
ピンポーン
そこで、チャイムが鳴った。
銀「(あらぁ?こんな早くから誰かしら・・・)」
ピンポーン
銀「はぁい、今行くわー」
ドタドタと階段を降りていく。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ガチャッ
銀「うるさいわねっ!!・・・・って薔薇水晶?」
水銀燈がドアを開けると薔薇水晶が立っていた。
薔「おはよう」
銀「一杯聞きたい事があるけど・・・取り敢えずその格好は何?」
薔薇水晶は上下黒のウィンドブレーカーに赤のキャップ、大きなリュックサックを背負っておま
けにピッケルまで持っている。
薔「何って・・・お出かけの格好」
銀「それ、どう見ても登山服よねぇ」
薔「えっ?そうなの?」
銀「・・・・・・・・とりあえず上がりなさい」


水銀燈の家のリビング。フローリングの床にカーペットが敷いてあり、その上にこたつが置かれ
ていた。更にその上には定番のみかんが籠に入っている。
銀「はい、どうぞぉ」
水銀燈はお客様用のコップにオレンジジュース(薔薇水晶が飲みたいと言った)を置いた。
薔「ありがとう」
それを受け取ると、ストローでチューチューのみ始める。
既にウィンドブレーカーやらは脱いでジャージ姿だった。
銀「それで・・・・なんでこんな朝早くに?夜に来るつもりじゃなかったのぉ?」
薔「うん、その事なんだけどね」
薔薇水晶は自分のリュックサックをゴソゴソと掻き回し、クリアファイルに挟まれていたそれを
取り出した。
銀「ん?・・・『22ランド』日帰り旅行券・・・・?」
薔「うん・・・・折角休みだし・・一日中遊ぼうと思って」
銀「へぇ・・ここ行ってみたかったのよぉ」
水銀燈は渡されたチケットを見ながら言った。


銀「(行きたかった・・・・・?)」
水銀燈の頭に疑問が過(よ)ぎる。
銀「(誰と・・・?人付き合いが嫌いなのに・・・・・?)」


・・・・・銀・・・・と・・・・
銀「・・・・・・・・・・」
・・水・・・銀・・・・・・・燈・・・・・・
銀「・・・・・・・・・・」
薔「――――水銀燈?どうかしたの?」
気が付くと、水銀燈の目の前に薔薇水晶の顔があった。
銀「(綺麗な顔・・・・・・・・・・・はっ!!!)」
銀「わあああっ!!!」
ゴンッ
銀「いったぁ~・・・・・」
薔「だ、大丈夫?水銀燈?」
水銀燈は飛び退いた拍子に頭を壁にぶつけてしまった。
銀「全然・・・大丈夫よぉ・・・・」
水銀燈は涙目で頭を押さえながら言った。
薔「ふぅん、変な水銀燈・・・・」
薔薇水晶は不思議そうな顔で言うと、再びオレンジジュースを飲み始めた。
銀「・・・・ところで・・・そのチケットのバス、何時?」
薔「え?10時だよ?」
銀「な、な、なっ・・・!」
時計は9時48分を指していた。


銀「(一時はどうなるかと思ったけど・・・・間に合って良かったわぁ)」
二人は入り口ゲートに居た。ネズミの着ぐるみを着た係員がチケットをチェックしている。
係員「チケットを見せてくださいでチュー」
薔「はい・・・」
係「大人二名ですね。ではどうぞ行ってらっしゃいませでチュー」
二人は係員に渡されたブレスレット型のパスポートを腕に巻き、中に入った。
薔「入国ー♪」
薔薇水晶はごきげんの笑顔だ。
銀「それにしても、すごい格好ねぇ」
水銀燈が青いジーンズ、黒に赤色でプリント文字の入ったシャツ、黒いジャケットという服装に
対し、薔薇水晶は薄紫色のフリフリのドレスだった。
家を出る前、流石にジャージは嫌だという水銀燈の意見で着替えたのだ。
薔「ふふ・・・・かわいい?」
そう聞かれた水銀燈はなんだか恥ずかしくなって
銀「さ・・さぁねぇ・・・・・」
と誤魔化した。


薔「じゃあ、次はあれに乗ろう~」
水銀燈の腕をぐいぐい引っ張りながら指さした先にあるのは、フリーフォール。
銀「ちょ、ちょっとぉ、さっきから絶叫マシーンばっかりじゃない・・・・死ぬ・・・・・」
つい先程、バイキングに乗せられた水銀燈はフラフラしている。
薔「じゃあ・・・あれにしよう」
次に薔薇水晶が指さしたのはコーヒーカップ。
銀「(コーヒーカップ?・・・まあフリーフォールよりはマシねぇ)」
そんな水銀燈の考えは甘かった。


男子「なあ・・・・」
男「ん?なんだ?」
男「あのピンク色のカップ・・・やたら回ってないか?」
男「な、なんだありゃあ!?」
男「薄紫の服着た子は笑いながら回してるけど・・・黒いジャケット着た姉ちゃんは落ちないよ
  うにするのに必死だな・・・・・・」
男「ああ・・人間の力であそこまで回せるもんなんだな・・・・・・」
放送「ピンク色のカップの方ー、今すぐ速度を落としてくださーい」


時刻は夕方も近くなった頃。二人はハンバーガーなどで簡単な昼食を取った後もなお、
遊具に乗り続けていた。
銀「はあ・・・はあ・・・はあ・・・・・・・」
水銀燈は今にも倒れそうだった。
薔「~♪」
薔薇水晶はとてもごきげんだった。
銀「(あの子・・・・・何でも絶叫マシーンに変えちゃって・・・・これじゃあ身が持たないわぁ)」
水銀燈の言うとおり、先程のコーヒーカップのみならず、アヒルボートをウォータースライダー
に、空中ブランコを戦闘アトラクションに変えてしまった。(毎回水銀燈が怒られた)
薔「じゃ~、次はあれにしようか」
薔薇水晶が指さしたのは大観覧車だった。
銀「い・・いやよっ!あの大観覧車もまったり風景を眺めていい雰囲気になるものから台から台
  に飛び移る空中アクロバティックショー☆命綱は付いてません☆に変える気なんでしょう!!!」
水銀燈は頭を抱えて本気で嫌がった。
薔「そ、そんなことしない・・・・」
銀「イヤーッ!考えただけでもイヤーッ!!」
薔「そんなことしないから・・・・・乗ろう?」
頭を抱えて俯く水銀燈を下から覗き込むように、上目遣いで薔薇水晶が言った。


薔「うわぁー、綺麗ー」
銀「・・・・・・・・・」
結局、二人は観覧車に乗っていた。
薔薇水晶は座部に膝立ちになって外を眺めている。
銀「・・・・・・・・・・」
水銀燈は、そんな薔薇水晶を見つめていた。
銀「(なんか・・・・・ヘンな気持ち・・・・・・・・・)」
薔「あっ・・見て。一番最初に乗ったコースター、あんなに高かったんだね」
銀「(薔薇水晶を見てると・・・なんだかドキドキして・・嬉しくて・・・でも心のどこかが
  痛くて・・・・この気持ちは何なのかしら・・・・)」


薔「―――――水銀燈?」
また、気づかないうちに薔薇水晶が顔を近づけていた。
銀「うわっ!!」
ガンッ
銀「~~~~~~~~~~~っ!!!」
薔「だ、大丈夫?今日はなんだかぼーっとしてることが多いけど・・・・・」
銀「・・・大丈夫・・・・・ちょっと考え事があってねぇ・・・・・・・」
薔「悩み事なら・・・・・聞くよ?」
薔薇水晶が心配そうに言った。
銀「・・・・そんな大した事じゃないから、大丈夫よ」
そういって薔薇水晶の顔を見て、水銀燈は気づいた。
銀「(化粧・・・してる・・・・・?)」
薔薇水晶は、ほんの少しだが化粧をしていた。


銀「(なんで・・・化粧してるのかしら・・・・・・)」
水銀燈は、薔薇水晶のアイシャドーを見つめながら考えた。
薔「・・・・・・・・・・・・・」
銀「・・・・・・・・・・・あっ」
気が付くと、薔薇水晶もこちらを見つめていた。
銀「っ・・・・・・」
目線が合い、なぜか・・・・恥ずかしくなって顔を逸らす。・・・・その瞬間
薔「逸らさないで・・・・」
銀「あっ」
そう言って、薔薇水晶が水銀燈の顔を両手で押さえた。
二人は互いに見つめ合った。


沈黙の中で、二人は見つめ合っていた。
銀「(綺麗な瞳・・・・・・・)」
水銀燈は、上気してとろけた目つきで薔薇水晶を見ていた。
薔「・・・・・・・・・・・・・・・」
薔薇水晶は優しい微笑みを浮かべて、水銀燈を見つめている。
観覧車の中には夕焼けの光が差し込んでいる。
静かに時が流れる。


薔「あのね・・・・・」
銀「・・・・・・・・?」
薔薇水晶が急に真剣な・・・そしてどこか不安そうな表情で言った。
薔「ずっと・・・水銀燈に言いたかったことがあるの」
銀「・・・・・・・・・・・・」


ガチャ


係員「おいすー^^ 終点だお^^」
銀「ぁ・・・・・・・・・」
薔「すみません・・・今降ります・・・・」
薔薇水晶が言いかけたまま、二人は観覧車を降りた。

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