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「一つ屋根の下 第百三話 JUMと目付き」



「ごめんねぇ、JUM君。荷物持ち手伝って貰っちゃって。」
「ううん、気にしないでいいよ。いつも御飯作ってもらってるんだから、これくらい当然だよ。」
まだまだ肌寒い冬の日、僕は蒼姉ちゃんと買い物に出ていた。僕が持っているのは御飯の材料。
両手で持ってもまだ少し重いくらいの量だ。まぁ、何せ我が家は人数が多い&超大飯喰らいがいるからね。
「ただいま~って……誰か来てるのかな?」
玄関で靴を脱いでいると、見慣れないブーツが置いてあった。とりあえず台所に荷物を置いてリビングへ
向かう。すると、そこにはアルバムを広げている銀姉ちゃん達。そしてめぐ先輩がいた。
「お帰り、そしてお邪魔してますJUM君。」
「こんにちは、めぐ先輩。また随分懐かしいもの見てるんですね。」
とりあえず僕はコタツに潜り込む。うん、外は寒かったから程好く温くていい。
「うん、私の家でアルバム見てたら気になったことがあってさ。」
めぐ先輩がペラペラとアルバムを捲っていく。何だろう、気になることって。
「へぇ、何が気になってるんですか?」
僕は蜜柑を手にとって皮を剥く。剥き終わるとそのまま口に放り込んだ。
「うん。実はさ。水銀燈って今でこそ性格歪んでそうな目付きだけどさ。私が水銀燈に会った時って清純な
タレ目だった気がしたんだよね。それでね、家にあった写真見たら一枚だけタレ目な写真があってさぁ。」
「五月蝿いわねぇ、別に性格なんて歪んでないわよぉ。」
銀姉ちゃんの目付きねぇ。僕が養子に来たときはすでに今の目付きだった気がする。確かに、歪んでるとは
言わないけど、少しキツメのキレ目と言うか釣り目と言うか。銀姉ちゃんの目はそんな感じだ。
「あら、水銀燈は昔からこんな目付きでしょ?貴女の性格が滲み出ているわ。」
真紅姉ちゃんが紅茶をすする。すると、銀姉ちゃんは溜息をついて言った。
「はぁ……真紅貴女ねぇ。私の目付きが変わったって言うならぁ、貴女のせいよぉ?」
「な、何を言っているの?私には今の目付きの記憶しかないわ。」
僕にだって今の目付きしか覚えてない。ふとゲームをしている薔薇姉ちゃんと目が合うが、目で「私も」と
言っている感じだ。銀姉ちゃんは再び溜息。そして、ある昔話。僕と薔薇姉ちゃんが養子に来る前の話しを
し始めた。それは、銀姉ちゃんとめぐ先輩の出会いの話でもあるのだった。
「それは私が小学校に入学する前の6歳だった頃かしらねぇ。」



「いつか死んだら背中に綺麗な羽が生えて飛んでいく事が出来るかしら。」
病院の一室で小学校入学を前にして末期的中二病の様な事を口走っているのは当時6歳の柿崎めぐ。
現在こそ無駄に元気な彼女ではあるが、この時は病弱でよく入院を繰り返していたらしい。そんな彼女には
友達と呼べる子は余り居らず、毎日病室で電波な事を言っては暇を潰していた。
「はぁ、毎日毎日ゲロみたいな御飯だし、不細工な看護婦さんの似顔絵書くのも飽きちゃったなぁ。」
めぐはそう言うと、ベッドから降りて部屋を出た。何か面白い遊びでも見つけよう。そんな魂胆からだ。
「この前までやってた看護婦さんの机漁るのも飽きちゃったしなぁ~。院長先生の秘密を暴くのも面白いかも!」
しばらく病院内をフラフラと歩いていると、自分と同じくらいの年の子だろうか。見た事のない少女がキョロキョロ
と辺りを見回していた。その少女の持つ自分とは明らかに違う白銀の髪。その余りの美しさに好奇心だけは
人三倍のめぐが惹かれないわけがなかった。
「ねぇ、貴女何をしているの?」
めぐが少女に話しかけると、その白銀の髪の少女は少しビクッとしながらめぐを見た。めぐは再び驚く。目が赤い。
外人かな?日本語分かったのかな?でも、何だか優しそうな子。タレ目だし。それがめぐの思考だった。
「えっと……おトイレ探してるの……私、昨日病院に来たばかりだから……」
その少女は小さい声でそう言った。めぐはふぅんと相槌を打つとその少女の手を握る。少女は少し驚いている。
「じゃあ、私が案内してあげるよ。一緒に行こう?」
少なからずめぐはその少女に興味を持ったのだろうか。少女も少し迷った素振りは見せたが、結局めぐの手に
引かれるままに歩き出した。
「あ、そうだ。私柿崎めぐって言うの。春から一応小学一年生になるんだよ。貴女は?」
「あ、本当?私もね、春から小学生になるの。同じ歳だね……あ、名前は……水銀燈…」
言うまでもなかったと思うが、このどこか弱弱しい少女こそローゼン家の長女。水銀燈の幼き日の姿だった。



「水銀燈、お隣の部屋だったんだね。知らなかったよ。って、昨日からだから当たり前かな。」
「うん、そうだね……ちょっと安心した……お友達が近くに居て。」
トイレを終えた二人は部屋に戻ろうとした。そしてお互い部屋が隣同士という偶然を知るのだった。二人は
同い年という事もあり、急速にその仲を深めていった。水銀燈はめぐにとって、恐らく一番初めの友達と呼べる
存在になった。水銀燈も、めぐが一番の友達と呼べる存在になった。
「ねぇねぇ、水銀燈は何で入院したの?」
「えっとね、私生まれつきお腹が悪いらしいの。それで、小学生になる前に手術するんだって。めぐは?」
「私も同じかな。私体が弱いから、しょっちゅう入院してるの。だから、病院の事なんでも知ってるよ。
あのね、いつも検診に来る佐原さんいるでしょ?あの人はね、先月彼氏に振られたんだよ。」
何とも嫌な子供柿崎めぐ。ある意味一番歪んでるのは彼女なんじゃないかってのは置いておいて。
水銀燈と出会ってからすっかりめぐは大人しくなったと看護婦の中では評判になっていた。毎日毎日時間を
見つけては水銀燈の部屋でお喋り。たまに話し足りない時は、夜に水銀燈の部屋に忍び込んでずっと
同じベッドで話し込んだり。当然それがバレて二人で怒られたり。めぐにとっても、水銀燈にとっても退屈が
基本の入院生活で、日々楽しい時間を過ごしていた。そんなある日、めぐが水銀燈の部屋に居ると
金髪の大人の人と、両目の色が違う少し男の子みたいな子がやって来た。
「やぁ、元気にしてるかい水銀燈。」
「あ……お父様!それに蒼星石も。」
「元気?銀お姉ちゃん。お見舞いに来たよ。」
やって来たのは当時5歳の蒼星石。そして父親であるローゼンだった。
(わ、スゴイ……水銀燈のお父さん外国人なのかな?それにあの子、目の色が違う……きれ~……)
めぐは水銀燈達をぽ~っとした顔で見ていた。すると、ローゼンはめぐの前に立つと優しく微笑んだ。
「君がめぐちゃんかな?いつも水銀燈と仲良くしてくれて有難う。」
ローゼンはそう言うとめぐの頭を優しく撫でる。めぐは思わず顔を赤くした。
「あ、いえ、えっと、私こそ、えっと……お、お友達になってくれて嬉しいと言うか……」
思わずパニックになるめぐ。そんなめぐを見て微笑むローゼン。彼は今何を思っているんだろうか。
「あのね、銀お姉ちゃん。みんなお姉ちゃんが帰ってくるの待ってるよ。特に真紅なんてね、毎日毎日
お姉ちゃんがいない、お姉ちゃんがいないって泣いてばかりなんだ。」
「ふふっ、真紅は甘えん坊だもんね。」
何気ない家族の会話をする水銀燈を見て、めぐは少しいいなぁなんて思っていた。



「水銀燈は妹が居るんだね。」
夜、再び部屋に忍び込んだめぐは水銀燈のベッドで一緒に寝転んでいた。
「うん。私が一番お姉ちゃんなの。それで、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、雛苺、雪華綺晶って6人の
妹がいるんだ。今日来てた子は、四女の蒼星石。」
「そっかぁ。いいなぁ……私一人っ子だから、姉妹とか憧れるなぁ。」
それは一人っ子特有の願望だ。そんなめぐを察してなのか、水銀燈は優しく彼女を抱きしめた。
「じゃあ、姉妹にはなれないけど、私めぐの親友になる!お父様が言ってたわ。親友と呼べる人には滅多に
出会えないって。だから、親友と思える人に出会えたら大切にしなさいって。私が親友じゃ……ダメかな?」
水銀燈の優しい赤い瞳がめぐの瞳を見る。めぐはクスッと笑うと少しだけ水銀燈の唇にキスをする。
「ううん、私も水銀燈の親友になりたいな。だから、ずっとずっと親友でいようね。ずっと……一緒だよ水銀燈。」
「えへへ、めぐにチューされちゃった。うん、ずっと仲良しでいようね、めぐ。」
二人はお互いを抱きしめあうとそのまま眠りについた。
そして、後日水銀燈の手術も終わり退院する日……めぐは水銀燈の病室に居た。
「あ~あ、水銀燈が退院するとまたつまらなくなっちゃうな。」
「ごめんね、めぐ。でもめぐももうすぐ退院するんだよね。そうしたら、小学校でまた会えるね!」
「そっか、同じ小学校だもんね。同じクラスになれたらいいなぁ。」
「きっとなれるよ。だって私とめぐは親友だもん!!」
水銀燈はニッコリ笑う。その笑顔に釣られてめぐもニッコリ笑った。それは、別れなんかじゃない。
二人はまた出会えるから。お互い笑いあうと水銀燈は病室を後にした。めぐも病室へ戻る。早く治そう。
そして、また水銀燈と一緒に遊ぶんだ。彼女は一人そう強く決意するのだった。


そして、めぐも退院し小学校へ行くと待ち望んだ白銀の髪の少女がそこに居た。
「水銀燈!!会いたかった!!」
「めぐ!!私も、会いたかったわよぉ。」
二人は再会を喜んだ。が……どこか水銀燈が変。じっと水銀燈の顔を見る。理由はすぐに分かった。
「ちょ、ちょっと水銀燈!?どうしちゃったのよ、その目!」
そう、あれだけ優しそうなタレ目だった水銀燈。しかし、再会した彼女は少しキツメの釣り目になっていたのだった。



「と、いう事があったのよぉ。」
銀姉ちゃんが語り終える。僕の知らない話ばかりだった。まぁ、当然と言えば当然。何故ならば……
「へぇ。僕と薔薇姉ちゃんが養子になる前にそんな事があったんだぁ。」
とまぁ、僕が居なかったんだから。でも、少しだけ疑問。真紅姉ちゃんは関係なくない?
「ちょっと、今の話のドコに私が関係あるの?」
真紅姉ちゃんが抗議の声をあげる。そりゃそうだ。話の内容からすると真紅姉ちゃんが、銀姉ちゃんにベッタリ
だったのは分かったけど、それが原因なんて到底思えない。が……蒼姉ちゃんが何か思い出すように言った。
「……僕思い出した。確かさ、水銀燈が退院して家に戻った時みんな嬉しそうに迎えたんだよ……真紅以外。
真紅さ、あの時4歳だから小さかったでしょ?だから、大好きだった水銀燈がしばらく居なくなって、死んじゃった
と思い込んでてさ。それで、せっかく帰って来た水銀燈に『違う!貴女は銀姉様じゃないわ!銀姉様は
死んでしまったもの……偽者よ……銀姉様を返して!真紅の銀姉様を返して!!』とか言って……」
「そ。それで、あんだけ可愛がってた真紅がそんな事言うもんだからぁ。ムスッとしてたらこんなになっちゃった訳ぇ。」
んなアホな……と思えなくもないのが怖い。そりゃあ可愛がってた真紅姉ちゃんに、ようやく帰ったら自分は死んだ
だの、偽者だの言われたらムスッとしちゃう気もする。
「お、覚えてないわ……そもそも私が水銀燈にゾッコンだったなんて……」
あまりの衝撃にさっきからカップを持ったまま止まってる真紅姉ちゃん。子供ってのは時に残酷すぎるくらい
残酷なんだなぁと。
「あ~、成る程ね。それであんな短い期間に水銀燈の目付き変わっちゃったんだ。ついでに性格も歪んだんだ。」
めぐ先輩が納得するように言う。まぁ、でも分からなくも無いかな。だからって、真紅姉ちゃんが悪いとは思わない
けどね。それだけ銀姉ちゃんが大好きだったんだろうなぁ。今では想像も出来ないけどね。



「はぁ~、解決解決。長年の疑問が解消できたよ。でも、今の水銀燈があの時みたいにタレ目だったら
どんな感じかなぁ。今はお姉さん系で人気だけど……タレ目だったらやっぱり癒し系で人気だったかもね。」
今の銀姉ちゃんの目をタレ目に想像してみる。ん~……想像付かない。あ、でも。僕は今でも銀姉ちゃんが
タレ目と言うか、優しい目になるときを知ってる。それは……
「ねぇ、JUM君。JUM君なら水銀燈の目付きが戻る時知ってるんじゃない?ほら、貴女と二人の時は
優しくなれるのよみたいなさ。水銀燈ってツンデレだし。」
「ツンデレ云々は置いといて。知ってますよ、優しい目付きになる時。」
僕がそう言うとめぐ先輩の目がキラキラする。同時に銀姉ちゃんが少し顔を赤くする。
「な、何言ってるのよぉ。そんな時あるわけないでしょぉ?」
「教えて教えてJUM君!私に美しい思い出を再び!!」
少し周りを見れば、他の姉ちゃん達も少なからず興味ありってご様子で。そうなったら言うしかないでしょ?
「ん、あのね。銀姉ちゃんは笑顔の時に眉が下がって優しい顔で笑うんだ。」
僕は言う。すると、みんなの目が銀姉ちゃんの顔を見る。
「な、なによぉ。わ、私がそう言われて笑顔になるなんて思ってるのぉ?」
珍しく銀姉ちゃんが劣勢な気がする。ならば、このチャンスを逃す訳にいかない。
「銀姉ちゃん。僕は何時もの銀姉ちゃんもいいと思うけど、笑顔の銀姉ちゃんって凄く可愛いと思うよ。」
我ながら恥かしい事を言ってみる。すると、銀姉ちゃんの顔はみるみる赤くなり眉も少し下がって……
「あ、有難うJUM……って……そ、そ、そんな手には乗らないわよ、お馬鹿さぁん!!」
バターンとドアを開けて逃げ出した。それでも、僕は。もとい僕等は見た。銀姉ちゃんの目が……
「あぁん、可愛い!!そうよ、あの水銀燈よ。懐かしいなぁ。もちろん、今のあの子も好きだけどね。」
めぐ先輩はご満悦のようだ。僕も柄にもなく、ああ笑顔っていいなぁなんて思ってしまったり。
「ところでJUM。さっきのは水銀燈への口説き文句かしら?」
ふと、真紅姉ちゃんの声がする。振り返ると背景にゴゴゴゴゴゴと書かれてそうな姉ちゃん達。
「え、ちょっとタンマ。今のはその言葉のアヤと言うか、本心と言うか……はっ!?」
「へぇ、本心ですかぁ。これは水銀燈が居なくて好都合です。ちょぉ~っとばかり教育してやるですぅ。」
良い物が見れたせいか口が滑った僕。この後翠姉ちゃんの言う教育を受ける訳だが……まぁ、いいかな。
銀姉ちゃんの笑顔が見れたから。
END

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