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その日、私の6歳の誕生日に初めて私はその人と出会った。

『親子』

「カナ!」
「あっ!パパ!おかえりなさいかしら!」
「いい子にしてた?」
「カナはいつもいい子かしら!」
「ハハハそうだな。じゃあ帰ろうか」
「うん!」
「そうだ。今日はカナのお誕生日だったね。今日はお外で食べようか」
「わーい!」
「じゃあまずお家に帰って綺麗なお服に着替えてから行こうね」
「はーいかしら!」


…私のママは私を産んですぐに亡くなったらしい。だから私はママのぬくもりを知らない。その顔も写真でしか見たことが無い。
私はパパと二人で暮らしていた。そして、パパはお仕事が忙しかったから私はいつも保育園に預けられてた。

淋しくなかったといえば嘘になる。お友達はみんなママが迎えに来てくれてたのに私には迎えに来てくれるママがいないから。
ママに連れられて帰るお友達を見て、いつも淋しい思いをしていた。何で私にはママがいないんだろうって思っていた。
…でも、淋しいなんて決して言ったことはなかった。だってママがいなくてもパパがその分私を愛してくれたから。
そのパパに淋しいなんて言うことは、きっとパパの愛情を裏切ることなんだと幼いながらに感じてたから。


保育園から帰ってお着替えをして、パパのお車に乗ってレストランに行った。
パパは車の中で私に会わせたい人がいるって言ってた。
でも、私はご飯のこと、そしてお誕生日プレゼントのことで頭がいっぱいで、パパの話なんてほとんど聞いてなかった。

30分くらいでレストランに着いて、パパに手を引かれてお店に入った。
そして案内された席にはその人が座っていた。

「? パパあの人だあれ?」
「カナ、この人がお前の新しいお母さんだよ」
「…え?」
「あなたが金糸雀ちゃん?はじめまして!」
「……あ…」
「おいカナ、ちゃんと挨拶しないか」
「いいんですよ。初めて会うんだし…いきなりお母さんなんて言われて恥ずかしいんでしょう」
「金糸雀ちゃん、私のことお母さんなんて呼ばなくてもいいのよ。そうね…みっちゃんって呼んで。ね?」
「…みっちゃん……?」
「そう。じゃあ金糸雀ちゃんのことはカナって呼んでもいいかな?」
「……うん」
「じゃあ決まりね!今日からよろしくねカナ!」
「…うん」

急に新しいお母さんなんて言われてもわからなかった。
その人は私に優しく話しかけてくれたけど、緊張しててうまく喋れなかった。
大好きなはなまるハンバーグの味もわからなかった。


次の日からその人と一緒に暮らすことになった。そして、保育園にもその人が迎えに来るようになった。
…といっても卒園まで、もう一月も無かったのだけど。

その人はとても優しかった。私のことを本当の娘のようにかわいがってくれた。
はじめは緊張して喋ることもなかった私もその人のことをすぐに好きになった。
きっとパパは私がママがいなくて淋しい思いをしているってことがわかってたんだろう。それで、みっちゃんと再婚しようと思ったんだろう。
私のママになってもらうために。

でも…私はみっちゃんのことをどうしてもママと、お母さんと呼ぶことは出来なかった。
親子だけど親子じゃない。そんな奇妙な関係が続いた。そして、それでいいと思ってた。
みっちゃんのことは大好きだけど、私の本当のお母さんではないんだから…

そして一月後、私は小学校に入学した。
私が入学するとすぐ、パパはお仕事が忙しくなったようで、週に一度くらいしか家には帰らなくなっていた。

保育園のときはお友達がみんな帰った後、一人でパパが来てくれるのを待ってた。
でも、今はお家に帰ったらみっちゃんがいる。
パパとなかなか会えないのは淋しかったけど、みっちゃんがいてくれたから、あの頃より私は淋しくなかった。


……でも、そんな日々は長くは続かなかった。


金「ただいまかしら~♪」
み「おかえり、カナ!どうしたの?今日はご機嫌ね」
金「だってだって!今日は久しぶりにパパが帰ってくるかしら!」
み「そうだったね。今日はご馳走作んなきゃ!」
金「みっちゃんの作るお料理は何だってごちそうかしら!」
み「あらうれしい事言ってくれるじゃない♪」

金「それじゃJUMの家に遊びに行ってきまーす!」
み「ちゃんとご飯までには帰るのよ~!」
金「わかってるかしら~!」
み「いってらっしゃい…ってもう聞こえてないか」

み「さてと、料理の下ごしらえも済んだし、ちょっと休憩して午後のワイドショーでも見ましょうかね」
み「また芸能人の離婚話?まったく飽きもせずよくやるわね」
み「ふーん。電車の脱線事故か。最近多いわねぇ…」
(RRRRRRRRRRRRRR・・・)
み「電話?はーい今出まーす」
(ガチャッ・・・)
み「はいもしもし・・・ええ、そうですけど・・・え!?」


紅「それではおままごとの役を発表するわ。まずJUMがお父さん。私がお母さん。あとは勝手に決めて頂戴」
J 「なんだよそれ。自分がお母さん役やりたいだけじゃないか。第一僕はままごとするなんて一言も…」
紅「私に逆らう気?」
J 「いえ…そんなつもりでは…」
紅「ならよろしい」
金「でも、真紅ばっかしお母さんでずるいかしら!カナだってたまにはお母さんやりたいかしら!」
雛「ヒナだって赤ちゃんはもうやーなのー!」
翠「翠星石は別にお花屋さんでもんくは無いですけど…やっぱり真紅が勝手に決めるって言うのは納得いかんです!」
蒼「やっぱ公平に決めないと。おままごとやってても楽しくないよ」
紅「くっ!みんながそういうなら仕方ないわ。じゃあ公平にじゃんけんするわよ」
「「「「「じゃーんけーん・・・」」」」」

の「クスクス。かわいいわねぇ。みんな無邪気で…」
(RRRRRRRRRR・・・)
の「あら電話…」
(ガチャ・・・)
の「はい桜田です。…カナちゃんのお母さんですか?いつもうちのJUM君がお世話になってます」
の「カナちゃんですか?はい、来てますけど…え?ほ、本当ですか!?はい、すぐに代わります!」


金「やった~!カナの勝ちかしら!」
紅「負けた?私が!?」
J 「まあ、たまにはそういうこともあるさ。落ち込むなよ真紅」

の「カナちゃん…ちょっと来てくれる?」
金「?どうしたの?のりお姉ちゃん?」
の「…お母さんからお電話よ」
金「みっちゃんから?どうしたのかしら?」

金「はーい代わりましたかしら。どうしたの?みっちゃん?」
み「…カナ?今から言うことをよく聞いてね…」
金「…え?パパが!?」

パパが乗ってた電車が事故にあった。そしてパパとの連絡が取れないと会社から連絡があった。
男性が一人病院に運ばれて意識不明。それがパパかもしれない。すぐ迎えに行くから待ってなさい。

みっちゃんが何を言ってるのかわからなかった。頭が真っ白だった。ただ呆然と立ち尽くしていた。
みんなが何か言ってるけど聞こえない。わからない。


すぐにみっちゃんが迎えに来た。そして私はみっちゃんの車に乗せられ、病院へと向かった。
車の中で私は何を考えてたんだろう。覚えてない。
ただ、みっちゃんの泣きそうで、不安そうな横顔ははっきり覚えている。


病院に着いた。みっちゃんと一緒に中に入った。そこスーツを着たおじさんがいた。
見たことある。たしかパパの上司だって言ってた人だ。
みっちゃんがその人と何か話してる。何を言ってるかよくわからなかったけど、とにかく運び込まれたのはパパだってことだけはわかった。
パパはどこ?

み「あっ!カナ!」

私は走り出した。パパはこの病院にいる。どこ?どこにいるの?
走り回ってたどり着いたのは大きな扉の前だった。上の方に赤いランプが光っている。

金「ハアハア…」
み「カナ!急に走り出してどうしたの!」
金「…パパは?パパはここにいるの?」
み「…そうよ。パパは今手術中なの」
金「しゅじゅつ?」
み「そう。パパはお怪我しちゃったからお医者さんに治してもらってるのよ」
金「パパは…パパは大丈夫なの?」
み「ええ…きっと大丈夫よ。だって…」
そう言ってみっちゃんは口をつぐんだ。必死に涙をこらえてる様だった。
み「…だってあの人が…こんなにかわいいカナを残して…いなくなっちゃうわけないもの」
金「……」
みっちゃんの顔を見ればわかる。パパが助からないだろうってことくらい。
…でも、みっちゃんのそんな顔を見てると何も言えなかった。


結局そのままパパが目を覚ますことは無かった。


パパが死んで…私はみっちゃんと二人きりになった。
みっちゃんは元々パパと同じ会社に勤めてて、結婚を機に退職した。
でも、パパがいなくなったから、みっちゃんは復職を決めた。
今回の事故のことを会社側もわかってくれたみたいで快く復職を認めてくれたらしい。

そしてみっちゃんが働き始めて…私はまた一人になった。
学校から帰ると一人でずっと部屋の隅に座っていた。そして、おなかがすいたらみっちゃんが作ってくれたお弁当を食べた。一人きりで。
みっちゃんはお仕事が忙しくて、帰ってくるのは夜中だった。だから私はみっちゃんが帰ってくる前には寝ていた。

そしてそのまま一月が経った。

(キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン)

J 「やっと学校が終わった~!ねえ金糸雀!たまには一緒に遊ぼうよ!」
金「…カナは…いいかしら。ごめんねJUM…」
そう言って私は足早に教室を出た。遊ぶ気になんてなれなかったから。

J 「あっ!カナr…」
紅「JUM。今はまだ…そっとしておいてあげなさい…」
J 「…でも…もう一月もあんな調子だぞ!そりゃ…パパが死んで悲しいのはわかるけど、このままじゃ…」
紅「それは私だってわかってるのだわ!……でもこれはあの子が自分で解決するしかないの」

翠「金糸雀の心の中の雨はまだ止まないですぅ…このままじゃ金糸雀の心は壊れてしまうです」
雛「えぅぅー?そんなのやなのー…」
蒼「うん…このままじゃいけない…こうなったら僕たちで…」
銀「それはやめなさぁい」
翠・蒼「水銀燈!でも…」
銀「あの子はそんなに弱い子じゃないわぁ。自分で立ち直るのを待ちましょう?」
薔「私たちは…優しく見守る…」
翠・蒼「……」


お家に帰り着いた。そして、いつものように何をするでもなく一人で座っていた。
そして夜になった。いつもならもう寝てる時間。
…でも今日はどうしてもみっちゃんに言いたいことがあった。

(ガチャ・・・)

み「ただいま…ってもう寝てるよね。起こさないように静かにしないと…」
金「おかえりなさい…」
み「!カナ、まだ起きてたの?ダメよ早く寝なきゃ」
金「…ごめんなさい」
み「?どうしたの?またなんか悪戯したんでしょ?」
金「違うの。カナのせいで…カナのせいでみっちゃんが毎日こんな遅くまで働いて…」
み「! そんなこと…カナは気にしなくていいのよ。娘のためにがんばるのは当然でしょ?」
金「カナさえ…カナさえいなきゃ…みっちゃんは他の人といっしょになれるのに…」
み「…もうそんな悲しい事言わないの。ね?」
金「ううん!カナがいるから悪いの!…そうだ。あの時パパじゃなくてカナが死んでたらよかったんだわ」
み「カナ!」
金「だってそうでしょ!そしたらみっちゃんはパパと二人で幸せに暮らせたんだもの!だってカナはみっちゃんの本当の子供じゃ…」


(パシッ!)

鋭い音が響いた。何が起きたのか一瞬理解できなかった。
み「どうして…どうしてそんな事言うの!」
え?何?ほっぺたが痛い?なんで?
み「カナがいるから…カナのこと本当の娘だって思ってるから、私は頑張れるの!」
みっちゃんが私を叩いた?今までどんな事をしても、どんなに怒ったときでも手を上げたことはなかったみっちゃんが?
み「カナがいない生活なんて考えられない!カナがいなくなったら…私も死んじゃうんだから!」
みっちゃんが泣いてる。
み「だから…だからもうカナがいなければいいなんて言わないで!」
そう言ってみっちゃんは泣き崩れた。こんなみっちゃんを見たのは初めてだった。
だってみっちゃんはいつも優しくて…笑ってて…


金「ご・・な・い」
なんでみっちゃんが泣かないといけないの?
金「ヒック…ごめんなさい」
悪いのは私なのに。どうして?
金「ごめんなさい…ヒック…ごめんなさいごめんなさい!カナが…エッグ…カナが悪いの!」
みっちゃんがどれだけ私のことを愛してくれてるかもわからずに
金「カナが馬鹿なこと…エック…言っちゃったから…エグッ…悪いの!」
みっちゃんは私を本当の子供だと思ってくれてたのに
金「もうこんな事…ヒッグ…言わないから…」
本当の子供じゃないなんて言ってしまった
金「だからもう泣かないで……ママ…」
大好きなママを傷つけてしまった。

み「……カナ?今…」
金「ママ…お願い…エック…だから…ヒッグ…泣かないで」
み「カナ……」
そう言って私はママに抱きついてわんわん泣き出した。ママはそんな私をやさしく抱きしめてくれた。
私はそのままママの腕の中で眠りに落ちた。とてもあったかくて…やさしくて…
その日、ようやく私たちは本当の親子になれた気がした。


翌日・・・

金「ママ!いってきまーすかしら!今日もお仕事頑張ってね!」
み「はい、いってらっしゃい!知らない人に声かけられてもついてっちゃダメよ!」
金「わかってるかしら~!」
(バタン)
み「…カナが元気になってくれてよかった。それに私のことをママって・・・ふふ♪」
み「さーて。今日もかわいい娘のためにお仕事頑張らないと♪」


金「JUM!おはようかしら~!」
J 「金糸雀!おはよう!もう・・・大丈夫なのか?」
金「うん!心配かけてごめんなさいかしら」
紅「ちょっと金糸雀!元気になったのはいいけど・・・いつまで私の下僕にくっついてる気?早く離れなさい!」
金「いやか~しら~」
紅「な、なんですって!」
金「JUMはカナのかしら!」
J 「おい!金糸雀!」
金「へへへ…」


「おい・・かな・あ・・お・・・」

……?

J 「おい!金糸雀!おい!起きろよ!」
金「……?JUM?」
J 「ようやく起きたか」

目を開くとそこにはJUMの顔があった。
金「…夢…かしら?」
J 「夢かしらじゃないだろ!こんなとこで寝て…風邪でもひいたらどうするんだ?」
金「うん。そうよね。ごめんなさいかしら」
J 「全く…もうお前一人の体じゃないんだから、もっと注意しろよ!」

JUMはそう言ってため息を吐くと台所へと向かっていた。
…そういえば最近は身重の私に負担をかけないようにJUMがご飯作ってくれてるんだった。
私はまだ夢見心地で彼の後姿を眺めていた。


J 「ほらできたぞ」
金「わぁ、おいしそう!JUMいつもありがとうかしら!」
J 「夫婦なんだから当然だろ?そんな体のお前にばっか負担かけるわけにいかないしな」
J 「まあ、誰かさんはそんな僕の気遣いを見事に裏切ってくれてるけどな」
JUMは少し怒ったようにそう言った。…まあ私が悪いのだから仕方ないか。

J 「なあ、金糸雀?」
金「? 何かしら?」
J 「さっきどんな夢見てたんだ?」
金「どうして?」
J 「いや、なんだか笑ってるように見えたからさ、楽しい夢でも見てたのかなって」
金「…小さいときの夢を見てたの」
金「初めてママに会って、それからパパが事故で…」
J 「そうか…聞いて悪かったな」
金「ううん。確かにパパが死んだときのことを思い出したのは悲しかったけど…」
でも
金「大切なことを思い出せたかしら」
親子だってことは血の繋がりがあるってことだけじゃないってこと。
もっと大事なことがあるってこと。


金「ねえJUM?」
J 「何だ?」
金「JUMはもしも…もしもカナがこの子を残して先に死んじゃったらどうする?」
J 「ブッ!お前な…縁起でもない事言うなよ!」
JUMは飲んでたお茶を勢いよく吹いた。まあ当然の反応かな?

金「もしも。もしもの話かしら。ねえどうする?」
J 「そうだな…僕がお前の分の愛情もその子に注いでやる。絶対にお母さんがいないからって淋しい思いはさせない」
金「一人で育てる気かしら?」
J 「いや、そうとは限らないさ。再婚するかもしれない」
J 「でも、再婚するとしたら、お前以上にその子を愛してくれる人とだけだけどな」
金「うふふ…」
J 「? 何笑ってるんだ?」
金「やっぱりJUMを選んで正解だったかしら!」
J 「?」
金「あっ!動いたかしら!」
J 「え?どれどれ・・・」
そう言ってJUMは私のおなかに耳を当てた。

きっとJUMならパパみたいな優しいお父さんになれる。
私もみっちゃん…いや、ママのようなお母さんになれるかなぁ…

おしまい

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