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「・・・ここは何処だ?」
一面に広がる白い世界。上下左右、ホワイトアウトの状態だ。
「ここは貴方の夢の中・・・イメージの世界でもあります。」
J「誰だ?」
声の主の姿は見えない。
「私は夢の案内人―あなたの化身です。」
J「僕の・・・化身?」
「作用でございます。あなたは自分自身にはっきりとしたイメージをお持ちではありませんね?そのままだと消えてしまいますよ?」
J「何だって?」
自分の体を見る―確かに、実体があるとは言い難い状態にあった。
J「何じゃこりゃ!?」
「ですから申しましたでしょう。イメージをお持ちくださいと。」
僕は自分のイメージをする。
J「えぇと・・こうか?」
再び体に目をやると何時もの制服姿になっていた。
J「で、夢の案内人。何の用だ?」
「これはこれは滑稽な事を仰せになりますなぁ。私は貴方の化身―あなたがお呼びしなければ現れることはございません。」


J「僕が・・お前を呼んだ?」
「左様でございます。」
J「意味がわからないんだが・・」
「無意識のうちにお呼びになられております。恐らく現実世界での転機を迎えられていると御察しします。」
転機―その言葉に思い当たる節は、ない。
「自覚されていないようですが、実感するときが必ずや訪れることでしょう。本日はここまででお暇させていただきます。それでは、またの機械に。」
J「お、おい!!」
世界が―自分がホワイトアウトしていく。

(・・・ッ!?)
目を開けると天井が見えた。
(・・・夢か。って夢の案内人なんてもんが出てきたくらいだし夢だよな・・・)
ふと時計に目をやる。
時刻は午前8時をとうに回っていた。
(・・・遅刻か)
今日もまた、ラテを飲みに行く。


着替えを済ませ、準備をして朝食を取らずにいつもの場所へと向かった。
やはりまだ暑い。9月ももうすぐ中盤に入ろうと言うのに、空気は暦通りになってくれそうにはなかった。

「おはようございます」
気持ちのよい朝の挨拶と軽快なジャズのサウンドがもたらす雰囲気はとても心地好い―そして、ここにあの人がいるというスパイスが加わっている。
銀「ホントに来たわね」
彼女が微笑む。
J「約束は守らないと」
銀「あなたってホントは真面目なのね」
J「水銀燈さんだからですよ」
僕は何を言っているんだろう。
どこからともなく発せられる言葉は淀みなく流れているものの思考回路にその文字はない。
これが本音と言うものなんだろうか。
銀「ありがとねぇ。じゃあ今日はショット追加の分引いとくわぁ」
J「あ、ありがとうございます」
銀「今日だけよぉ」


銀「じゃあ、お作りしますのであちらの黄色いランプの下でお待ちください・・ねぇ、タンブラー買わない?」
J「タンブラーですか?」
銀「よく来てくれてるし、タンブラーもって来てくれたら20円引きよぉ」
J「そうですか。じゃあ・・・このタンブラー買います」
僕が選んだのはオーソドックスなタイプのタンブラー。ブラックアウトされた感じがいい雰囲気だった。
銀「ありがとうございます♪最初の1杯目は無料よぉ。今度来た時にね?」
J「明日か明後日ですね」
銀「明日は朝私いないわよぉ」
J「あ、そうなんですか」
銀「週に1回だけ夕方のシフトなのよ。来るなら夕方に来てねぇ」
J「じゃあそうさせてもらいます」
冗談なのか本気なのかは別にして、心底楽しいと思えたのは久しぶりだった。


店には彼女とあと1人―店長さんがいる。
水銀燈さんと僕が長々と喋っていることを止めずに、ただにこやかな笑みを浮かべながら仕事をしている人だ。
その店長さんからラテをもらって指定席へと向かう―彼女が話しかけてくれるのを待ちながら。
銀「ねぇ、妹見つけた?」
J「見つからないですね」
銀「探してるぅ?」
J「探して欲しいんですか?」
銀「そんなことないわぁ」
反語とお取りしてよろしいですね?水銀燈さん。
J「じゃあ頑張ってみますよ。あ、水銀燈さんってどこの大学なんですか?」
銀「私も有栖学園よぉ。あなたと一緒。国際関係学部よぉ。」
国際関係―内部でも狭き門とされる文系で法学部を抑える勢いのある学部だ。
J「国関ですか・・・僕も一応目指してるんですけどね。」
銀「ならサボっちゃだめじゃなあい。」
J「なんか虚しいんですよ・・最近特に」
銀「どうして?」
J「なんだかわからないんですけどね・・・」
彼女は少し考えて自分の携帯を取り出した。


銀「携帯かして?」
僕は一瞬なにが起こったのか、理解するのに時間を要した。
J「・・・あ、はい」
彼女は手慣れた手付きで僕の携帯を操作し、赤外線で何かを送受信しているようだった。
銀「はい、私の番号とメルアドよ。何かあったら言ってきてねぇ。聞くくらいならいつでもするわぁ。あ、デートのお誘いもあなたならOKよぉ」
J「あ、ありがとうございます・・・」
彼女は冗談混じりで僕にそんなことを言った―僕の心臓が今にも破裂しそうなのを知ってか知らずかはわからない。
(・・・ヤバい。)
夢の中でのあのフレーズがリピートされる。
(・・・転機、なのか?)

今日は、学校に行けそうにない。



2か3限目からは授業に出るようにしていたが、今僕は自分の部屋にいる。心臓の鼓動は落ち着くことを知らないようで、身体中に血液をせっせと巡らせている―いつもの倍の速度で。
冷房を効かせているのにも関わらず、とめどなく流れる汗。
(これじゃあ僕がベジータじゃないか・・・)
悪態をついてみるがあまり効果がない。自身を落ち着かせるのにはあまりにも不充分だった。
結局、僕が出した答えはもう一度"彼"に会うことだった。
瞼を閉じ、自身をイメージをする。
イメージを更に膨らませ、具体的なものへと修正をする。夢へのドアを開くため。段々と意識が翔んでいく。意識が朦朧とする中でも辛うじて自身のイメージは保たれているようだった。
そして・・・
「こんにちは。迷える羊さん」
J「化身にそこまで言われたくはないがな」
「失礼いたしました。お呼びですかな?」


J「今回はちゃんと意識的に呼べたみたいだな。とりあえず教えてくれ、僕はどうすればいいんだ」
「Trivial」
「何だと?」
「私はナビゲーターであってドライバーではないのです。自身を駆っておられるのは貴方の意識」
J「ナビゲーターなら指針を示せ」
「私はもうあなたに示させていただいております。転機が訪れると。人間としての大きな転機を。それにどう立ち向かい、対処するかは自身なのです。」
J「お前はどうなんだ?」
「私の存在は無であって有であり、現実世界には現れません」
J「つまり最終的には僕に判断しろと」
「左様でございます。貴方を駆るのは貴方の現実世界における意識。やり方は貴方にお任せしましょう」
J「わかった・・・」
「では、この辺で失礼させていただきます。」

目を開けると窓から入る西日が眩しく、視神経を刺激する。


【ピンポーン♪】
(・・・?誰だ?)
急いで降りてインターフォンを取る。
J「はい」
薔「・・・DASHしていい?」
J「・・・何の用?」
薔「・・・プリント」
J「あぁ。ちょっと待ってて」

玄関のドアを開けると薔薇水晶が立っていた。
薔「・・・ただいま」
J「おかえr・・・って違うだろ」
薔「・・・気にしたら負け。・・ぶぃ」
J「…。で、これが今日のプリント?」
薔「・・・うん。大丈夫?」
J「わざわざありがとな。別に平気なんだけど・・・」
薔「・・・おやつ」
J「…は?」
薔「・・・食べたい」
J「…。じゃあ、上がれよ」
薔「・・・ありがと♪」

もうこの際気にしない。気にしたら本気で負けそうだ。


薔「・・・ここがJUNの家」
彼女をリビングへと導く。ソファーに座ってもらい、僕は何かないか捜索を開始する。
J「じゃなきゃここはどこなんだよ」
薔「地球」
J「素で言うなよ。少しは躊躇ってから言えよな」
薔「・・・ねぇ」
J「何?はいこれ、5〇1のアイスキャンディー」
薔「・・・ありがと♪」
J「で、何言いかけたわけ?」
彼女はアイスキャンディーを嬉しそうに頬張っていた。
(今まで気付かなかったけど・・・かなりかわいい部類かも・・・)
薔「・・・ありがと///」
J「何が?」
僕はかなり焦っている。隠しきれそうには、ない。
薔「それより、最近大丈夫・・?」
J「普通に喋れるのかよ。大丈夫って何が?」
薔「何だか、飛んでるよ?」
あんたに言われたくはないなと強く思った。この際読心されても構わない。むしろしてくれ。
J「どうしてそう思うわけ?」
薔「・・・なんとなく。それと、私は普通だ」


J「断じて違う」
薔「失礼だよ?」
J「失礼した。しかし普通の部類には入らない・・・ってそんなこといいから」
薔「・・・結局何もないの?」
J「ないよ?」
薔「・・・嘘だ」
なんだかホントにやりにくいよなと思う。こいつは一体何者なんだろう。
薔「・・・やりにくいってよく言われる」
J「・・・読心禁止で」
薔「見えるのに見えないって嘘つかせるの?」
J「違うよ。デリカシーを持てってこと」
薔「同じだよ。こんなデリカシー、所詮は心地のいい嘘で真実をつつんでるだけ」
J「・・・何がしたいわけ?」
僕は次第に苛立ちを覚える。
薔「・・・虚しそうだから」
J「それが君と何の関係があるわけ?」
薔「ない。でも私が楽しくない」
J「それは君自身のもんだいじゃないの?」
薔「・・・君が絡んでるから。心配なんだよ?」
彼女が言っていることが少し理解できなかった。
J「僕が・・・絡んでる?」


薔「私はね、君に対して何か特別な感情をもって接してるわけじゃない。普通の友達として接してるつもり。君もそうだと思う。」
J「そのつもりだけど?」
薔「私は中身がこんなんだから友達少ないんだ。でも君は普通に友達として接してくれた。だから心配なんだよ?」
J「・・・」
薔「友達の事を心配するのは、友達の役目。君は優しいから―優しすぎるくらいに。自分が気付いた時には手遅れになりかねない。
だから、何かあったら相談して?それに私に何かあったら相談させて?」
こいつ、きっちり自己表現できるのか・・・
そんなことしか考えられない。
薔「人の事はいい。今は君のこと。」
J「・・・わかったよ。でもこれは自分で解決しなくちゃいけない問題だから。それに、言葉にするにはあまりに抽象的だ」
薔「・・・わかった。ごめんね。いきなり押し掛けて・・・」
J「気にするなよ。ほら、もう一本あげるから」
薔「・・・ありがと」


いつもの不思議な彼女に戻っていた。
薔「・・・じゃあ。明日は来てね?」
J「わかったよ」

彼女は帰って行った。

(さて、どうしたものか・・・)
ボーッと考えていると携帯が鳴った。メールのようだ。

From:水銀燈
no title
届いた?届いたら返信ちょおだい♪

まさか彼女の方からメールが来るとは思わなかった。
To:水銀燈
Re:
届きましたよ@
メールありがとうございます。

(送信っと)

その後数時間に渡って彼女とメールをした。僕は自分が今何故か虚しく感じていることや、急に孤独感を覚えたことなんかを話した。
彼女はそんな僕の悩みを親身に聞いてくれた。アトバイスのオマケもついて。

From:水銀燈
Re:Re:
あなたは今生きてるでしょ?自分の意思で呼吸して。そりゃ誰だって一人は嫌なものよ。でもあなたは一人じゃない。学校に行けば友達がいる。


自惚れてるわけじゃないけど、店に来てくれたら私もいるのよ。
だから、ちゃんと生きてね?
生きてるだけでもいいのよ。夢を追い掛けるには生きてなきゃ。約束よ?

彼女の言葉で、気が少し楽になった。

Phase2 End

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