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『序章第一部~JUM~』

今から5年前、僕は故郷であるアイネランドから徴兵されて多くの仲間と共に故郷に別れを告げた・・・。

この紅王国では男は15才になったら10年間の兵役につかなければならない、僕の父の代からの掟である・・・勿論武名を挙げてソレが女王陛下の御目に止まれば徴発兵では無く事実上騎士として軍人になれる。

第五騎士団にいた父は戦死し、僕も最初父のいた第二歩兵魔術師団に配属された・・・そして例の大決戦に遭った、僕自身の話はそこから始まる。

あれは丁度初夏を迎えた頃の晴れた日だった、僕達歩兵魔術師は艦隊の斬り込み要員として乗船した・・・どうせまた訓練だろうと思っていたけど・・・沖に出た瞬間僕はそれがまるで詩人が描く戦史に思えた。

同盟国軍のアポロンの旗にアルテミスの旗、そして僕達の凛々しき雄ライオンの旗、それが一斉に各船団に翻った。

--これは本当の戦闘なんだ、僕がそう確信するのに時間はかからなかった・・・遙か向こうから真っ黒な船団が死の音を響かせて近づいてきた。


--アレは絶対悪だ、アレは僕らが耳にタコが出来るほど教えられた絶対悪『水銀帝国軍』--。

僕は恥ずかしい話だけど逃げ出したくなった、でもそれを拒むかのように船団はスピードを上げてまるで死神が大鎌を持って振りかぶってるかのように待ち受けるソレに向かっていった。

僕らに目掛けて黒い船から無数の矢がまるで嵐か何かのように飛んできた、僕の隣にいた叔父さんがうめき声を上げて倒れる、矢が・・・額に刺さってる。

でも船はまるでそんな物豆鉄砲でも食らったかのように平然と最初の船に突っ込んでいった、激しい衝撃で僕は思わず声を挙げてよろける。

でもソレですら戦いの音にかき消された、隊長が叫ぶ『恐れず進め、愛すべき祖国の為に!!そして女王陛下の御為に!!』とその声を背に受けて僕達は敵の船に飛び乗る。

とにかく生き残りたかった、国の為でも女王陛下の為でも無い・・・僕自身がそう強く願った、自分に襲いかかる刃はとにかくかいくぐった、左手に持った対魔術強化の鉄盾に刃が当たってガチンと何度も音がする。

僕達は教えられた各船にはそれを指揮する将校がいる、それさえ倒せばこの船での戦いの勝ちが決まる。

--いた、あいつだ!!剣を振るって大声を上げ続ける男、アレがキッと将校だ。

僕は対魔術強化の鉄盾を投げ捨て左手に魔力を集中させる、僕の魔術属性は炎だ・・・そして左手に魔力が集まったのを確認してこう叫ぶ。

『The lump of a flame(炎の塊)!!』


炎の塊が男へ向かってまっすぐ飛んでいく、でも僕ら歩兵魔術師が使える魔術の制限は目くらまし程度にしかならない。

怯んだら負ける、僕は叫び声を挙げてその男の鎧の隙間に剣を突き立てた・・・剣を伝って僕の手になま暖かい液体が僕の手を包み込む。

--真紅の血、それはなま暖かくドロドロしてた・・・一瞬の静寂の後、その男は僕を睨み付けると血の泡を吹いて大の字に倒れた。

それが僕の見たその戦場での最後の光景、気が付いたら戦闘は終わっていた・・・陽が昇り始めてから始まった戦闘が日没と共に終わる。

僕が再び目を開くとそこは一瞬地獄かと錯覚した、波間に浮かんでは消えていく敵や味方の死体・炎を挙げて沈んでいく船・血で真っ赤に染まった大海原・・・それが目に飛び込んできた瞬間、僕は死んだのか?と錯覚した。

戦闘が終わり僕は情けなくヘナヘナと倒れ込んでしまった、魔力もすっかり底をついている・・・もう立てないや。

そこに前に一度閲兵式で見た事のある騎士が僕の元に歩み寄ってきた、何も聞こえない・・・酷い耳鳴りがする。

その騎士は隊長と何か話した後もう一度僕の顔を見て驚いた顔をした、そして僕は隊長の手によって無理矢理立たされた。

『ついてこい、兵卒・・・陛下達が貴様を所望だ』


僕は自分の耳を疑った、ただの一兵卒が女王陛下にお目通りを?僕は何かとんでもない軍紀違反をしてしまったのだろうか・・・。

そうして僕はその騎士に連れ立って小舟に乗せられて船団の真ん中へと連れて行かれる、周りの仲間達の僕を見る目がまるで嘲笑ってるかのように感じた。

しばらくすると他の船団とは違ったひときわ大きな船が見えてきた、夕日を受けて翻る旗は凛々しい雄ライオン・アポロン・アルテミス・・・きっとコレが旗艦なんだ。

僕はその騎士に手を引張られ旗艦の中にある大きな部屋に連れて行かれる、中にはこの国の参謀や将軍の歴々が驚いたような目をしてこっちを見ていた。

そして一番奥に一人の少女がいた、ローゼン皇家第五姫真紅女王陛下・・・・。

真「皆、下がってよいのだわ・・・」

女王がそう言うと参謀や将軍達が頭を深々と下げて部屋から出て行く、女王は気怠そうに髪を掻き上げるとこちらを睨み付けた。

J「ひっ・・・」

僕は思わず情けない声をあげてしまった、僕自身そんなに気の強い方じゃ無い・・・しかも今まさに話そうとしているのはこの王国の最高権力者、弁明する訳じゃないけど当然と言えば当然だろう。

真「桜田JUM・・・君のお父上は知ってるのだわ」
J「ち、父をご存じなのですか?」
真「あぁ知ってるのだわ、幼い余を庇って果てた古今希に見る忠義の騎士・・・まさかその子とこうして対面するとは君の亡きお父上も思ってもいないのだわ」
J「あ、あの僭越ですが僕・・・何かとんでもない事をしてしまったのでしょうか?」
真「とんでもない事?アレでとんでもない事?」
J「ひっ・・・も、申し訳ございません!!べべべ弁明する訳ではございませぬが自分は一切の記憶が無く・・・」
真「記憶が無い?・・・ふふふ、面白いのだわ・・・JUM、面を上げよ・・・余が許すのだわ」
J「は、ははっ!!」
真「かしこまらずともよいのだわ・・・少し貴方の魔術路を見させて貰うのだわ、右手を差し出しなさい」
J「は、はい・・・」


そう言って僕は返り血に汚れた右手を女王陛下の前に差し出した、女王陛下はそれをマジマジと見ると手を取って色々触りだした。

真「ふむ・・・禁術の刻印はどこにも無いのだわ」
J「き、禁術でございますか?」
真「えぇ、余の父上の時代に禁術に指定され世界中の魔術師の間で使用を禁止されたのだわ・・・」
J「あ、あの・・・それと僕が何の関係が?」
真「ふぅ・・・まだ分かっていないの?それとも本当に記憶が無いのか」
J「も、申し訳ございません・・・」
真「どうやら・・・本当に覚えて無いようなのだわ、いいわ教えてあげるのだわ・・・貴方は禁術を用いて忌々しい水銀帝国軍の船団を一人で壊滅させたのだわ」
J「へ?」
真「ふふふふ・・・貴方の事気に入ったのだわ、桜田JUM!!本日付で貴様の兵役を解く!!以後は近衛隊長として余の側近くに仕えなさい!!いいわね?貴方は今日から騎士なのだわ・・・」
J「はい?」

どうやら僕の受難はまだまだ始まったばかりのようだ・・・。


まぁ何はともあれ僕は父と同じ騎士となれた、第一近衛騎士団通称『ローゼンナイツ』の頭として女王陛下の身辺警護を一手に引き受ける事となった。

女王陛下は何かと僕の事を気にかけてくれるし気さくに話しかけてくださる、何も知らない僕に女王陛下は色々と教えてくださる。

僕が女王陛下に仕えて2年、ようやく僕も騎士らしい形になってきた、いろいろな人に支えられ教えられてきた2年間だった。

そんなある日女王陛下が僕の屋敷を表敬訪問する為にいらっしゃった、ちなみに僕はあの海戦以降僕は首都であるロイエンタールの一等地に屋敷を与えられていて城とは目と鼻の先の距離に住んでいる。

真「JUM、今日で貴方が余に仕えてから丁度2年が経ったのだわ・・・」
J「はい、これまで女王陛下や様々な御人方に凡人同様の僕を鍛えて戴いた日々をどうして忘れられましょうか」
真「JUM、これを貴方に授けよう・・・我がローゼン家に伝わる名剣なのだわ」

そう言って女王陛下は持ってきた剣を僕に差し出した、さすが皇家に伝わる名剣・・・鞘には様々な装飾が施されている何より重さを全く感じない。

J「ご無礼ながら刃を拝見させて頂きます・・・」
真「構わないのだわ・・・ここは貴方の屋敷なのだわ、自由にするのだわ」

女王陛下に許可を取り僕は鞘から剣を抜いた、刃が見えない・・・否、それは透明度が非常に高く見る事が出来ない刃なのだ。

J「み、見事過ぎる・・・陛下、このような素晴らしき物を本当に僕などに?」
真「えぇ・・・余は剣は好かないのだわ、剣と言うのは持つべき人が持ってこそ本当の価値が見いだされるのだわ」
J「時に陛下、この剣の銘とは如何なる物でございましょうか?」


真「約束された勝利の剣--『エクスカリバー』なのだわ」
J「ッ!?あの聖剣と名高きエクスカリバーでございますか!?」
真「えぇ、その通り・・・余の父上が戦場に赴くたびに帯剣していた品なのだわ」
J「はぁぁ・・・見事な、まさに聖剣の名に恥じぬ物でございますな・・・陛下、この様な我が身に不相応な物を戴き誠に恐縮でございます」

そう礼を述べると女王陛下はティーカップをテーブルの上に置いて静かに微笑んだ。

真「JUM・・・今日限りで余にその様な態度は取らなくともよいのだわ」
J「何故にござりますか?僕は騎士です、主人には礼節を尽くすが道理にございます」
真「JUM、あなたは主君の命が聞けないのかしら?」
J「・・・解り申した、ではこれ以降陛下の事を『真紅様』とお呼び致します」
真「えぇ、構わないのだわ・・・それに私自身、女王の言葉遣いよりも普通の言葉遣いの方が言いやすいのだわ」
J「そのようで、僕もこちらの方がやりやすいので・・・」
真「ふふふっ・・・JUM、紅茶のお代わりを・・・」
J「直ちに・・・」

そう言って僕は真紅様のカップに紅茶を注ぐ、僕が騎士になってから初めて教えられたのは美味しい紅茶の入れ方・・・それも既に身に付いてる。

僕と真紅様だけの時間は過ぎていく、そして夜半過ぎ僕は真紅様を城まで警護する為共に連れ立って月夜の大通りを歩く。

真「嫌な月ね・・・」
J「はっ、誠に紅月とは・・・不吉でございますな」

空に白い月は無い、あるのは血のように紅い月だけ・・・古来より紅い月が現れると不吉な事が起きると言うが、それが現実にならない様に願うだけである。

そしてその紅い月が雲に隠れ辺りが漆黒の闇に包まれたとき・・・その願いは儚くも踏みにじられた・・・。


暗い通りから踊り出す影が二つ、その者共の手に握られしは白刃と言う名の凶刃・・・。

真「JUM・・・」
J「御意・・・その方ら、ここにおわすのがローゼン家第五息女であり紅王国の女王・真紅様と知っての狼藉か!!」
?「無論よ・・・だからこそ殺しにきたまで」

その声に僕は一瞬肝が凍りそうになった、感情のない女の声・・・刺客は女だと直ぐに気が付いた、どこの手の者だろうが関係ない、僕は主を守るために戦うだけだ。

J「ならば・・・斬る!!」

そう叫ぶと僕はエクスカリバーの柄に手をかけそれを一気に引き抜いた、最初の刺客はその目に見える刃の前に動揺し一合も斬り合うことも無くあっさりと右肩から斬られ、地に倒れた。

?「へぇ・・・聖剣エクスカリバー・・・ならこっちもそれ相応の物でお相手しなければ失礼よね」
J「ほざけ女狐、汝が如何なる物を用いようともこの剣に斬れぬ物は無し!!」
?「・・・その台詞ゲロみたいね、でも・・・その台詞も言えぬ体にしてあげるわ・・・」

そう言うと彼女は黒のロープから右手を出し目に見えぬ空間を掴んだ、彼女がソレを掴んだ瞬間ソレは目に見える物となり僕達の目に飛び込んできた。


見た感じ槍・・・だが槍にしては装飾も何も無くただ先が尖った棒にしか見えなくもない、しかしソレを見た瞬間僕はソレがただの槍とは思えなかった、寧ろ不吉な感覚に襲われた。

真「それは・・・禁具の一つ魔槍『ゲイボルグ』ありえないのだわ、何故貴様がそれを!!」
?「あははは♪陛下が私にくださったの♪貴女を殺す為にね♪」

刺客はそう笑うとロープのフードを取ると両手でソレを握りしめた、その刺客の顔は美しかったどこか深い悲しみを知った目の色に薄いピンクの唇・・・。

J「真紅様・・・お行きください、ここは僕が引き受けます・・・」
真「任せたのだわJUM、私は将軍達を連れてくるのだわ!!」
J「御意に・・・」
真「それとJUM・・・気を付けるのだわ、勝てないと分かったら退きなさい」
J「騎士としてそれは出来ませぬ・・・さぁ!!お行きください!!・・・お気を付けて」
真「貴方もね・・・JUM」

この場に残るのは女刺客とJUM・・・今二人は互いに対峙する・・・。


<<次回予告>>

対峙する二人、忠義の騎士の手に握られしは聖剣・・・狂気の刺客に握られるは魔槍。

狂気の夜の舞踏会が今---その幕を開ける!!


次回、薔薇乙女大戦・・・「第一章~狂気の夜~」・・・その運命は狂気を音楽に踊り出す。

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