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元旦、午前0:00。
 東京都千代田区は明治神宮にて。
 遠くから聞こえる除夜の鐘が108つ鳴り止み、年の瀬までの煩悩を吹き払い、
新年を迎えた。

「あけましておめでとう、ジュン君」
「あけましておめでとう」
 この日の毎度おなじみの挨拶を交わす。
 それは一緒に来ている、蒼星石に柏葉、めぐ、雛苺、金糸雀、オディール、
笹塚に槐さんにラプラ……じゃなくて白崎さんも同じ。
 性別、年齢、国籍、種(おい!)に関係なく、この言葉から1年が始まる。

「お参りに行くのー!」
「そうするかしら!」
 雛苺と金糸雀ははしゃぎながら人でいっぱいの参道を駆け出す。

「ちょっと、雛苺。落ち着きなさい」
「本当におこちゃまのだから……」
「まったくね」
「金糸雀もそんなに慌てたらこけちゃうよ」
 そんな雛苺と金糸雀を見て、くすくすと笑う柏葉にめぐにオディールに蒼
星石の4人。
 みんな色とりどりの振袖を着ていた。
 正直かわいい。また、めぐは色っぽく見えるし、フランス人のオディール
も結構似合っていて、おしとやかな感じが出ている。


蒼星石にいたっては最初は、僕に振袖なんか似合わないよ、なんて照れて
いたが、いざ着てみたらかなりサマになっている。
 そんなことないよ、かわいいよと声を掛けてあげたいぐらいに。

「みんなの和服姿も結構いいねえ」
 笹塚が少し鼻の下を伸ばしながら、皆の和服姿を眺めていた。
「おいおい、煩悩丸出しだぜ」
「まったくだな。でも、薔薇水晶に雪華綺晶がいないのは惜しい。見たかっ
たのに……楽しみにしていたのに……」
「ははは、そう言うなよ、槐。彼女はお伊勢さんにお参りに行っているからね。
 帰ってきたら華やかな和服姿も見れるさ」
 笹塚を諌める僕の横では、愛娘の雪華綺晶と薔薇水晶の晴れ姿を見れずに
しょげる槐さんを白崎さんがなだめていた。
 僕もそうだけど、笹塚に槐さんに白崎さんも和服できめていた。
 槐さんや白崎さんに至っては、もともと美形の顔に黒い紋付袴ときたもの
で、結構渋くみえる。そばを通る女性も時折気にしている様子だった。

「そういえば、ベジータの奴も馬鹿だぜ。ここにいたらあこがれの蒼星石の
和服姿も見れたのによ」
「まったくだな。まあ、あっちはあっちでいいんじゃねえか?」
 俺は笹塚の呟きを耳にしながらため息を吐いた。
「しかし、あいつらはなんで元旦はお伊勢さんなんだろうね」
「さあな」
 多数の人でごった返している参道をゆっくり歩きながら、僕は目の前では
しゃぐ雛苺らを目にしていた。


笹塚の疑問が示す通り、この場にいない真紅、水銀燈、翠星石、雪華綺晶
に薔薇水晶は伊勢神宮に初詣に行くと、12月30日の夕方に出かけてしまった。
 まあ、ここ数年、毎年のようにやってることなので、別に驚きはしないが。
(そして、1月2日の昼過ぎには帰ってくるのだけど)

 しかし、僕はつくづくこの彼女らのお伊勢参りに疑問を抱くことがある。
 第一に、なんで大晦日ではなく12月30日の夕方なのか。
 前に真紅にその疑問を投げかけたら、大晦日に出かけたら間に合わないの
だわ、なんて突っ返されてしまった。
 第二に……彼女らのそのときに使う金額の多さ。
 3年前は9万、一昨年は19万、去年に至っては25万。
 使う金額が年々増えている……じゃなくて、金額が常識の範疇を越えている。
 てか、宿泊料や交通費でそんなに掛かるわけないし、まさかお賽銭やおみ
くじでそこまでの額を使うのかとも思ってしまう。
 ふとしたことで、そのことを真紅に突っ込んだが、レディーにそんなこと
訊くなんて失礼極まりないわ、なんて逆ギレされて殴られた。
 本当に訳がわからない。何考えてるんだよ、あいつは。

「それ僕も疑問に思っていたんだ」
 横で僕と笹塚の会話を聞いていたのか、蒼星石も割って入ってくる。
「まさか、翠星石もかよ?」
「そうなんだ。毎年のように三重に行って、いつも財布をスッカラカンにし
て帰ってくるんだ。その後で近くの神社にお参りに行った時なんかは、お賽
銭貸してくれですう、なんてねだってきたんだよ。正直その時は情けなかっ
たよ。去年は21万使ったらしいけど、何をやっていたのだか……」
 蒼星石もそのことで大きくため息を吐く。


「貴方たちもそうなの?それ水銀燈も一緒よ」
 さらにめぐも割って入ってくる。
「なんだって?」
 僕らは一斉に驚きの声を上げる。
「彼女もなぜか伊勢に行っては、結構な金額を使って帰ってくるのよね。
 聞いたら、賽銭箱に全部突っ込んだわよぉ、なんて悪びれていたけど。
 今年も今度こそは大吉を引いて帰ってくるわよぉ、なんて息巻いていたけど。
 ちなみに去年、彼女の通帳を覗いたら27万は使っていたみたい……」
 なんだよ、それ。

 僕らはすっかりあきれ返っていると……
「何だ。それ雪華綺晶もだな」
 割って入ってくる槐さんに白崎さん。
「なんですって?」
 さらに僕らは驚きの声を上げる。
「うん。彼女も去年は大凶ばかりでしたわ、なんてしょげて帰ってきたんだ。
 29万は使って、危うくヤミ金に手を出しそうになったから止めたけどな」
 なんちゅうことしてるんだ、雪華綺晶。
 そんな危ない橋を渡ってまで大吉を引きたいのか?

「それに比べて不思議なのは薔薇水晶だね」
 いきなりそんな事を言い出す白崎さん。
「え?」
 驚きの声をあげる僕を置いて白崎さんはさらに続ける。


「彼女だけ、毎年のように今年も大吉……なんて言って、うきうきしながら
帰ってくるんだ。近所の子にやるお年玉の額も半端じゃないぜ。
 なにせ去年は一人3万だったからね」
 何て言いますか……素晴らしいぐらいの大盤振舞だな。
 大凶で30万近く使う一方で、大吉でそんな高額の金を得るなんて……。

「伊勢神宮のおみくじって、そんな強烈なギャンブル的なものなのか?」
 思わずそんな事を口にしてしまった。
「それはないよジュン君。神社で……ましてや日本の神社の大元でそんなギ
ャンブルをやるはずがないよ」
 蒼星石がすかさず突っ込んでくる。
 まあ、確かに常識で考えればその通り。
「それはないわよ。私、去年の夏に伊勢神宮にお参りに行っておみくじをし
たけど……そんないかついものはなかったよ。料金も1万なんて到底届かな
い額だったし」
 めぐまでも突っ込んでくる。
 やっぱりありえないかとも思ってしまうけど……だったら、あいつらは何
にそんな金額の金を使っているんだ?

「そーいや、今年はベジータの奴が真紅に誘われてうきうきしながら同伴し
ていたな。詳しい事情はあいつから聞いたら手っ取り早いだろ」
「そうだな」
 笹塚の言葉に僕は頷く。
 ベジータも蒼星石の晴れ姿を見るのを差し置いて行ったぐらいだ。
 本当、煩悩の塊だな、あいつは。


「あと、梅岡の奴も大晦日の夕方に水銀燈に呼ばれて三重に行ったぜ」
 梅岡もかよ。連中、一体何のつもりだ?

「あっ、桜田君。私たちの番がきたよ」
 柏葉の声にふと前を見上げると、神宮の本舎がすぐ前に見えた。
 多くの人が巨大な賽銭箱に向けて、賽銭を勢いよく投げていた。

 僕は財布から10円玉を取り出すと、勢いをつけて投げて、その後、拍手を
勢いよく打つ。そして願いを掛ける。

 ――今年は平穏に過ごせますように……というありきたりなやつだが。

 皆も同じように拍手を打って、願いを掛けていたが……見て驚いたのは槐
さんだった。
 なんと1万円を投げていたのである。
 豪快というかなんというか。

「なんでって?歳の始まりには景気よく行かなくては良い年は始まらないだろ」
 槐さんはにべもなく言っていた。
 願っているのは商売繁盛あたりとか?

 やっぱ、一生に関わることを願うのだから、賽銭もショボイものではいけ
ないということなのだろう。
 それを考えると真紅らも……そうなのか!?


そんな事を思っていると、僕の携帯が鳴った。
 発信者を見ると……薔薇水晶から。
 すかさず電話を取る。

「……やっほー……あけおめ、ジュン……」
 相変わらずの抑揚のない声で新年の挨拶を電話越しにしてくる彼女。
「あけおめ……って、今は伊勢神宮にいるとか?」
「そう……いまお伊勢さんにお参りしてきたとこ……」
「そっちも人がいっぱいとか?」
「そんなところ……」
「そういえば、真紅も一緒にいるとか?できれば代わって……」
「ここにいるのは私だけ……真紅は今は離れられないって言ってた……。
 きらきーお姉ちゃんや銀ちゃんや翠星石も今は手が離せられないから後で
お参りするって言ってた……」

 手が離せられない?
 まったくもって意味不明。
 このときにわざわざ三重まで行ってやることと言ったら、初詣だろ?
 それとも、二見浦あたりに初日の出の場所取りをしに行ったとか?

「おい、薔薇水晶からか?僕に代わってくれ!」
 横から槐さんが興奮しながら僕に迫ってくる。
 うっとうしいと思いながらも仕方なく、彼に代わる。

 最初は嬉しそうにしていた槐さんだが、離すうちになぜか涙を流しだす。


「……ジュンに代わってくれだと……」
 すっかりヘコみながら、涙混じりの視線を向けて電話を差し出す槐さん。
 大方いつものとおり、素っ気無くされたので落ち込んだといったあたりか。

「……ジュンも初詣したよね……何を願ったの……?」
「え?ぼ、僕は……」
 いきなりの薔薇水晶からの問いかけに、僕は先ほど願ったことをありのま
まに言った。

「……なぁんだ、しょーもない……。私はジュンと結ばれますようにって願
ったのに……」
 おいおい、人の願い事にしょうもないもくそもないだろ。
 てか、直球だな、その願い事。

「で、お前は今からどうするつもりなんだ?」
「……私はいまから夫婦岩の初日の出を見に行くよ……ジュンと結ばれて、
可愛い赤ちゃんが産まれるようにって願を掛けに……。
 今年も狙い目を絞って大吉をいっぱい引いたから、叶いそうな気がする……」
 なんて願い事するんだよ、おい!
 しかし、大吉を引くのに狙い目なんてあるのか?
 正直訳がわからない。

「……とにかく、今日の夕方には帰るから……。横にいるヘタレなオッサン
にもそう言っておいて……あでゅー……」
 そこで電話は切れた。
 しかし、相変わらずの酷い言い様だな。槐さんが本当に哀れに思える。


「うゆ~、トイレに行きたいのよ~!」
「カナもかしらー!」
 雛苺と金糸雀が我慢できない様子で、人ごみを掻き分けながらトイレへと
走り出す。

 だが、トイレ……とりわけ女子用には長蛇の列。
「それはないのかしら~!」
「限界なのー!!」
 もうこらえきれないといった様子で金糸雀と雛苺が絶叫を上げる。
 恥ずかしくないのかよ、お前ら。

「仕方ないから、少し歩いたところにあるコンビニまで行こう。それまで我
慢できるよね」
 柏葉がため息を吐きながら、雛苺と金糸雀の手を引きながら、人ごみの中
に消える。

「本当になんなんだよ、この混雑ぶりは。おちおちお参りも出来ないな」
「まったくだな。さすが日本一の初詣者数を誇るだけあるぜ」
 そんな光景を目にしながら、笹塚はぽつりと漏らす。
「日本の初詣って人手が強烈だって聞いたけど、まさにその通りね」
 オディールまでも目の前の異様な光景にため息を吐く。


「今こそ深夜でもやっているコンビニなんかがあったけど、昔はそんなのな
かったから大変だったって、お婆様から聞いたことがあるわ。
 お伊勢さんで思い出したけど、三重県ではなんでもお伊勢さんの初詣客に
トイレを貸す目的で、元旦だけ深夜にパチンコ屋が深夜営業しているって耳
にしたけど、こんな状態じゃそれも頷けるわね」

 ――え?
 三重ではパチンコ屋が深夜営業だって?マジかよ?

「それ本当だぜ。三重のパチ屋は大晦日の朝9時から元旦の夜まで、深夜ぶ
っ通しのオールナイト営業をやるんだ。それ目当てで、大阪や名古屋からも
結構パチ好きが行くって言うぜ」
 それ、初耳だぞ、笹塚。
 待て。ということはあの博打大好きな彼女らの目当ては……?

「トリビュアル!」
 いきなり白崎さんがそんな絶叫を上げると、みるみるうちに本来の……タ
キシードをつけた兎の……ラプラスの姿になる。
 周囲の人の注目が一気に集まる。宮司や警官までも駆けつけてくる。
 てか、アホか、ラプラス。
 こんな所で本来の姿を見せるなよ!


「綺麗は汚い。汚いは綺麗。常識は非常識。非常識は常識。
 オディールさん、貴女は今いいことを言いました」
 ラプラスはそんな状況なんかこれっぽっちも気にしていない様子で、訳の
わからないことを語り出す。
 てか、僕らを呼ぶな。関わりがあるなんていわれたら、後が厄介だ!

「あの博打狂いの学習能力ゼロの馬鹿乙女どもがやる願掛けなんて決まって
おります!ぱちんこ機という名のおみくじに、回胴という名の賽銭箱に金を
ばらまいては、年始に破産寸前になるのは当然の理!まさに愚の骨頂……」
 相変わらず、ラプラスは意味不明な自説を説いていたが、すかさず周囲に
いた警官に身柄を拘束されて連行される。
 もちろん、僕らは皆他人の振りをしたのは言うまでもない。

 もっとも、ラプラスが僕らの名を吐いた日には本気で厄介なことになるの
は目に見えているが。
 どうやらしばらく遠方に身を隠さなければ。
 てか、後で覚えてろ。ラプラス。

 しかし……。
「ぱちんこ機という名のおみくじに」
「回胴という名の賽銭箱か……」
 まさに言いえて妙。そこだけはラプラスの言うことも頷ける。
「それで36時間ぶっ通しで突っ込んだら……なんて無駄遣いだよ!」
 蒼星石もすっかりあきれ返っていた。


「しかし……ベジータは本気で哀れだな」
「まったくだ。年明けには自己破産手続しているかも」
「自業自得だよ。破産なんて生ぬるいことせずに、借金のカタにタコ部屋や
原発に缶詰にされた方がせいせいするよ」
 結構辛口だな。蒼星石。
 それはともかく……大きくため息をつく僕らだった。

********

 同じ頃。
 三重県津市のとある大型パチンコ店。
 午前1時を廻っているにもかかわらず、店内はほぼ満台寸前の大盛況ときて
いた。オールナイト営業とだけあって、駐車場には他府県ナンバーの車も結構
見られる。

 その中のスロットの『押忍!番長』を打っている……翠星石。
 目を血走らせて、ひたすら出目や液晶を睨みつけている。

 ゲーム数はすでに1275。このままいけば天井が発動して、ボーナス確定とな
るはずなのだが……。

 天井発動の1280Gを悠々と越えてしまった。

「最低ですう!ストック飛ばしてやがるですぅ!」
 完全にブチ切れながら、台を殴りそうになってしまう。


「ご愁傷様ねぇ……」
「合掌ですわ……」
「この店、新装して間もないみたいだけど、まったくダメね。釘もガチ締めだわ」
 彼女の後ろには、いつの間にか水銀燈、雪華綺晶、真紅の3人。
 皆いずれもすっかり疲れきったというか……怒り心頭の様子だった。

 今年は三重県内のパチ屋をローラー作戦で攻めて、このボッタクリ営業真っ
最中といえる中でも眠っている良質の台を探り当てようとしたのだが……。

「その様子じゃ、まったく不発だったみたいですね」
「まったくよぉ!すでに26万使ったわ!」
 怒りを露にして、空のヤクルトの容器を床に投げつける水銀燈。
 名張から始まり、伊賀、亀山と国道165号線と名阪国道沿いのパチ屋をし
らみつぶしにあたった水銀燈。でも、結果は不発。

「私も……24万使っちゃいましたわ。どこも回らないし、オール1だし……。
 運命は本気で廻っていませんわ……」
 すっかり落ち込んで、さらには不気味な笑みを浮かべる雪華綺晶。
 熊野から始まり、尾鷲、紀北、多気と国道42号線と国道260号線沿いのパ
チ屋をあたったが、やっぱり不発。

「まったくダメだったわ。すでに28万使っちゃったのだわ」
 大きくため息をつき、手にしていた紅茶のペットボトルを握りつぶす真紅。
 桑名から始まり、四日市、鈴鹿と国道1号線と国道258号線沿いのパチ屋
に攻め込んだが、これもやはり不発。


「まったく……翠星石もダメダメですぅ。既に27万使ったですよ」
 やはり、志摩から始まり、伊勢、松阪と国道23号線と国道167号線沿いの
パチ屋を片っ端から攻めていった翠星石だが……結果は出せていない。

「しかし、どうしたものかしらぁ。このままじゃあ、40万負けよぉ!」
「それだけじゃ済まされないかも……ヘタしたら50万行きそうですわ!」
「まったくなのだわ。そろそろ手持ちの金も尽きそうね……」
「ベジータから毟り取った、キャッシュカードにローンカードにクレジット
カードの分はどうしたですか?」
「とっくにスッカラカンの限度いっぱいよぉ。あいつから毟り取る金なんて
ないわぁ」
「使えない人ですわ……ふふふ……」
 そして、ホールの片隅で縮こまっているベジータに怪しい視線を向ける4人。

「ま、マジでこれこそ本当の地獄だ……」
 奥歯をガチガチ震わせながら、怯えた目を向けるベジータ。
「し、しかし……もはや俺には何もないぞ」
 最後の強がりを見せるのが精一杯。

「何をおっしゃっていますの……まだあるじゃないですか……体が」
「てなわけでぇ、梅岡先生カモーン!」
 水銀燈が手招きをすると、そこにはベジータの天敵がボルテージMAXでや
ってきた。 
「とにかく、金を貸して欲しいです。一人30万。担保はベジータですぅ」


「了承!てか、や ら な い か」
 即効でベジータを拉致して、彼女らに札束を渡す梅岡。
 そしてそのまま、ベジータを抱きかかえながら、店内から姿を消したのだった。

「今度こそ、正真正銘の地獄だぁーーーーーー!!」
 そんな絶叫がしたが、もはや誰も気にしない。

「とにかく、津市内のパチ屋を当たるしかないわねぇ。今は1時半、閉店23
時って所もあるから、時間はまだまだあるわよぉ!」
「なかったら……いなべか菰野あたりを攻め込みましょう。国道421号と306
号と477号あたりは未探索ですから。ふふふ……」
「そうするですぅ。てか、津市内はお馬鹿水晶が食い荒らしちまったですぅ!
 ハイエナかましまくって、ストック取り尽くして食い逃げですぅ!」
「本当なの?で、35万の勝ち逃げ?本気でむかつくのだわ!」
「まったくよぉ!いい釘の羽根物やよさ気な5号機もすぐに彼女の後に他の
客ががっついた後よぉ!私たちに何も教えずによぉ!」
「本気で許せませんわね……ばらしーちゃん、後で覚えていなさい……」

 そして、残り20時間の勝負に奔走する4人であった。


(蛇足)
 1月1日23時時点での博打重症患者4人の平均収支:-57万円
 1月1日23時時点でのベジータの所在:梅岡家に監禁中、愛の抱擁を受けて気
                  絶寸前。

 1月末時点での博打重症患者の薔薇乙女4人の末路
 水銀燈:ヤクルト1年2ヶ月抜きの刑をめぐより言い渡され、今なお執行中。
 翠星石:スコーン1年4ヶ月抜きの刑を蒼星石より言い渡され、今なお執行中。
 真紅:紅茶1年抜きの刑をジュンより言い渡され、今なお執行中。
 雪華綺晶:肉系の食事1年6ヶ月を槐言い渡され……が、禁を破り槐を半殺し
      にする。
      さらに、保釈中のラプラスをすぐさま摂取。
      なお、刑の執行は無期限延期中。

 1月末時点での三重オールナイトパチンコ駅伝勝者の今
 薔薇水晶:上記の件から、雛苺を苺大福で、巴を秘蔵のジュンの隠し撮り写真
      で釣って柏葉家に避難中。

 1月末時点での巻き添えを食った者の末路
 ベジータ:梅岡に愛の抱擁を受けつづけ、精神に支障を来たす。泡を吹くのは
      日常茶飯事。
 梅岡:四六時間「や ら な い か」。もはや日常の風景。
    ―おわり―

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