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第六話 「UNKNOWN研究会」


僕はドアを開けて目の前の光景に驚きを隠せない。
花屋の店主だと思った翠星石さんが大学の講師だった。
そして今目の前にまた現れた。

「えーと……翠星石さんが此処に?」
「翠星石は花屋の店主ですけど此処の大学の講師でもあるし
 UNKNOWN研究会の初期からの会員ですぅ。
 わかったですか?チビ人間」
「ええ……まぁ何とか」

あっさりと返事を返されてしまう。まぁ何とか把握は出来たけど……。
花屋の店主に講師ってのも大変だろうに。

「ってかチビ人間って何ですか」
「チビ人間はチビ人間ですぅ」

駄目だ、聞きやしない。この人は一度言った事はそのまま貫き通す気がするし
もうチビ人間て呼ばれていいや、どこかむかつけど。



「店主さんとまた会えるなんてこれまた運命の悪戯かしらー!」
「悪戯を通り越して悪意を感じてきたな、道化やらから」
「全くですね、ところで店主じゃなく翠星石さんとか翠星石先生でいいですよ」

まぁ一応僕らの講師のようだしそっちで呼ぶのもいいかもしれないけど
別にもう“翠星石さん”でいいや。

「あなた達、人を会話から置いてきぼりにしないで欲しいわ」
「うんうん、君達だけで仲良くしてると寂しいな」
「それもそうですねデカ人間に真紅、ほれチビ人間挨拶するですぅ」

翠星石さんばかりが話してて気付かなかったが
後ろにもう二人会員であろう人が居る。
一人は金髪で長いツインテールが目立つ偉そうな女の子、同じ歳に見える。
もう一人は髪を真ん中で分けて眼鏡をかけている
落ち着いた人だがやけに老けている気がする。

「初めまして、桜田ジュンです。今日は見学に来ました」
「金糸雀です、見学させにもらいにきたかしら」
「うん、そうか。まぁ見学と言っても見せれるようなものがあるのでもないけどね」
「そうね、会議を除いたら憩いの場と変わりはないわね」
「は、はぁ……」




此処に来てようやく心配になる。
ちゃんと機能しているサークルなのだろうか?

「主に何をしていますか?」
「主には雑談ですが日の最後にやる会議は大真面目ですぅ」
「色々と議論しているんだ。
 ミステリーサークルの正体から“タイムマシンの実現”まで」
「……へ?」

一瞬戸惑ってしまった。
タイムマシンの……実現?

「実現……と言いますと?」
「そのまんまの意味ですチビ人間」
「またまたご冗談を……」
「人が想像できることは必ず人が実現できる」

違う声がいきなり聞こえる。
どうやら奥の女の子が言ったようだ。
確か翠星石さんは真紅……って言ってたっけ?




「ジュール・ベルヌの言葉よ」
「彼女の言う通り、僕らは人の考えた事を実現させようとしているにすぎない。
 神を目指してバベルの塔を昇るんじゃあるまいし無理じゃない。だって人間なんだから」
「まぁですが……」
「それに現実味が無いように思ってるみたいですが
 タイムマシンは実現に近付きつつあるのですぅ」

……もしかして危ない人たちなんだろうか?
タイムマシンがどうのこうの、出来るやら。

「面白そうかしらー!」

一方金糸雀の方はこのサークルに惹かれつつあるようだ。
まぁ、危なかったとしても悪い人でも無さそうだしな……。
これは入るべきなんだろうか……?入らないべきなんだろうか……?

「まぁ今日はのんびりしていきなよ、入るかどうかは別として」
「じゃあ……そうさしてもらいます」

どっちにしろ興味深い。
タイムマシンの実現に関する議論、どんなものかも見てみたい。



周りを見回す。
部室は意外と広い。
だがほとんど本棚で埋め尽くされている。
タイトルを見てみるとオカルト関係のものが多いようだ。
その中で一番多いのはさっき言っていた“タイムマシン”関係だった。

「一杯本があるかしらー」
「だな……読みきれ無さそうだな」
「そりゃそうなのだわ、私だってまだほんの少ししか読んでないのに」
「へぇ……そういえば……君は名前は?」
「そういえば言ってなかったわね、真紅よ。よろしくなのだわ。あなたは?」
「桜田ジュン、こっちは……」
「金糸雀かしら」
「そう、よろしくね。翠星石先生に会長さん、あなた達も名前を言った方が」

さっきから紅茶ばかりを飲んでいるこの子。
多少偉そうだが悪い人では無さそうだ。
この子もタイムマシンなど必死になってるんだろうか?

「私の名前はわかってるだろうから後はデカ人間が名前を言うですぅ」
「はは……僕は白崎、適当に呼んでくれたって構わない。よろしくね」




「よろしくお願いします、あの……失礼ですが何歳なのですか?」
「んー?そうだねぇ……確か四十の後半ぐらいだと思うよ」
「結構な歳なんですね」
「うん、昔からこの大学に愛着があってね。ずっと居るんだ」
「へぇ……」

“ずっと”というのがかなり気になったが敢えて聞かない事にした。
なんだか聞いてはいけない気がする。それと、ずっと気になってるのだが……。

「あの、翠星石さん」
「なんですぅ?」
「花屋で会った時より老けてません?」

その言葉を言い終わって僕は何をされたか理解できなかった。
床に転がってようやくハッとして痛みが込みあがる。痛い、そうだ。蹴られたんだ。
鳩尾に広がる痛みと上がった足がそれを教える。

「今何て言ったですか?」
「え、えほっ……いや……だから……」
「翠星石は老けてなんかいないですよね?」

上がった足を床に転がる僕に振り落とす。
踵落としはこれより痛いのだろうがこれでも十分痛い。




「え、ええ……」
「ちゃんと返事するですぅ」

足をぐりぐりと僕の体へとえぐり込ませる。
これ以上やられると本気でやばい。

「ぜ、全然若いですよ……」
「翠星石は老けてなんかいないですよね?」

少々引きつった笑顔で金糸雀へと尋ねる。
金糸雀は怯えて首を必死に縦に振るだけだ。
全く、恐ろしい。

「まぁまぁ落ち着いて下さい翠星石さん。まだ若いですよ」
「“まだ”……?まだ……まだ……!
 もうすぐ……もう老けちまうですぅ!」
「落ち着くのだわ翠星石先生」

真紅が翠星石さんを後ろから押さえつける。その間に立ち上がる。

「もう老けちまうですぅ!」

なみだ目で言ってくる。歳の事気にしてるんだな……。




「落ち着くかしら!」
「落ち着いてください!まだまだ若いですよ翠星石さんはっ!」
「……ほんとですか?」
「ほんとです、ほんとです!まだ先生も若いでしょうに!」

僕は必死になって翠星石さんをなだめる。
じゃないと厄介な事になりそうだ。

「……そうですか?」
「ええ、一体何歳なのですか?まだそんな焦るような歳でもないでしょうに」
「翠星石は会長と同じ歳ですぅ」
「え?じゃあやっぱりおばさん……」

この時の僕はよっぽどの馬鹿だったと思う。
他の人が言うのも恐ろしい禁句を言ってしまったから。
翠星石さんは真紅の拘束を振り解くと走るには不十分な部室を
数歩で加速すると拳を握り締め思いっきり僕の顔面へと入れる。
入れた後も体重をかけて思いっきり地面へと叩きつける。



「絆ックルですぅ!」
「それは私の台詞なのだわ、翠星石先生」
「全く……あまり今の時代に鉄拳制裁とかは気を付けてくださいね翠星石」

真紅と会長さんが翠星石に突っ込みを入れてるが
金糸雀は怯えて壁際へと寄ってる。
僕は顔が痛くて起きる気力も沸かない。

「んーまぁ翠星石にそういう事は言っちゃ駄目だよ。
 それ以外は素直じゃないけど優しいんだから」
「は、はい……肝に命じておきます」

僕は素直にすぐ返事を返す。
もうこの話題はやめて方がいい、タブーだ。

「だ……大丈夫かしら?」
「……何とか、僕が悪かったんだ。しょうがない。すいませんでした」
「それでいいですぅ、翠星石はまだまだ若いですぅ」
「ええ、翠星石先生全然若いですわ」
「うんうん、“今も昔も”若いですよ翠星石」
「今も昔もって……会長さんと翠星石さんは昔から知り合いなのかしら?」




会長さんと翠星石さんが顔を見合わせる。そしてすぐに口を開く。

「うん、まぁね。腐れ縁かな?」
「ですぅ、ほんとずっと前からの知り合いですぅ」
「へぇ……道理で仲がいいんですね」
「はは……けど翠星石は姉妹ともっと仲が良いですからね」
「そうです、大事な大事な妹ですぅ、大切な妹ですぅ」

うーん……どうやらほんとに悪い人では無さそうだ。
禁句を言ったから悪かっただけで……。
というか姉妹なんだな。

「さて、皆そろそろ会議を始めようか。翠星石も準備して下さい。
 真紅は他の二人と待っていて下さい」
「わかったのだわ」

そう言って真紅はこっちに近付いてきた。
会長さんと翠星石さんはなにやら準備している。

「真紅はいつ此処に入ったのかしら?」
「つい昨日よ、結構おもしろそうだったから入ったのだわ。
 想像以上に面白いわ」
「へぇ」

うーん、真紅もこう言ってるしそんなにいいのだろうか?
それと気になるのは……。




「会議って何を話すんだ?」
「色々話すのだわ、都市伝説やら何やら。いつも締めくくりは“タイムマシン”の研究内容だわ」
「結構真面目なのかしらー」
「ええ、真面目も大真面目よ。けど内容が内容だから楽しいわ。
 にしても会長は凄いわ。今年の卒論に“タイムマシン”の理論を書こうかとなんて言ったから
 もしかしたら相当理論が完成してるかもしれないのだわ」
「はぁ……本気なんだ」

漫画やアニメの中だけの話かと思ってたタイムマシン。
それを現実にしようとする人が居る。
漫画やアニメで想像出来るのなら作ることも出来るってか……。

「凄いかしら……」
「だな、入ろうかな……」
「是非進めるのだわ、損はないわ」
「さてさて、皆準備が終わりましたのでこっちに」
「来やがれですぅ」

会長さんに翠星石さんが来るように言ってくるので
僕らは机の方へと向かっていく。
机は会議室などにあるような大きな机だ。
それにプロジェクターやスクリーンまである。

「凄い設備ですね……」
「うん、UNKNOWN研究会は結構昔からあるからね。
 設備も徐々に増えていったんだ」
「凄いかしらー、本格的かしら」




こりゃほんとに本格的だな。
気になる内容はどうなのだろう?
そう思いながら僕は会議を聞き始めた。
今日のテーマは宇宙人の有無だそうだ。
くだらないテーマに思えるが
ほんとに真面目に解析をするので聞き入ってしまう。

「宇宙人だってお化けだって、“居ないと証明した人は居ないんだから”
 だから逆に“居ると証明する事は可能だ”」

うーん、確かに。
逆に居るという人はかなり居るような気もする。
為になるとは言えないけどこれは本当におもしろい。

「さて、今日はこれぐらいにして“タイムマシン”の研究の続きに移ろうか」

きた、待っていたものが。
一体……会長さんらが考えるタイムマシンってのは一体……?
僕は期待と不安を胸に秘め会長の渡す冊子に目を通し始めた。

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