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「貴方に贈る」



僕の名前は桜田ジュン。
高校時代から付き合ってるヒトがいる。
女王様気質でプライドが高くて不器用なヒト。
でも、一番愛してるヒト。
僕は彼女に結婚を申し込もうと1ヶ月前に指輪を買った。……まぁ、僕の給料では限界があり、そこまで高価とは言えない。
しかし、1ヶ月前からの計画も伝える勇気がなく、なかなか言い出せない。本当に自分が情けない。
今日こそは何とか頑張ってみよう。



私の名は真紅。
私には高校時代から付き合ってるヒトがいる。
いまいちパッとせず、頼りなく、甲斐性がないヒト。
でも、私が一番愛してるヒト。
…なのだけど、ここ最近どうも様子がおかしい。
私に何か隠しているような態度をとる。私と話している時もあの人の心は上の空。
…正直、嫌な予感がする。私たちの関係が終わってしまいそうな……。
今日こそはその不安も解消できるといいのだけれど…。


僕たちは仕事帰りにいつものように一緒に帰っている。
今日こそは頑張れよ、僕。
「それで今日も水銀燈がね……ジュン?聞いているの?」
「…あ、聞いてるよ。それで雛苺がどうしたって?」
「…そう。ならいいのだわ。」
まずい。さっぱり聞いていなかった。まぁ、絆パンチが飛んでこないってことは、話の内容は合ってるのだろう。
今日こそは……うん。今なら言える…かも。

「あのさ…。大事な話があるんだ。」



やっぱりジュンの様子がおかしい。
もしかして、別れ話なのかも…。この人は自分の気持ちを外に出さない人だから。
「あのさ…。大事な話があるんだ。」
えっ?大事な……話?
…いや。聞きたくない。
足が震える。目が回る。とにかくここに居たくない!
いやだ、嫌だ、いやだ、嫌だ!!
聞きたくない!何も聞きたくない!!
「…ご、ごめんなさい。…ちょっと用事があるから!」
そう言い残して私は走った。
どこに向かうのかもわからない。
とにかく、ジュンから離れたかった。



「…用事があるから!」
そう言って真紅は行ってしまった。
何か様子がおかしかったが、僕は止めることができなかった。
一人残された僕は、何とも言えない孤独感が押し寄せてきた。
「僕、何か真紅にしたっけ?」
僕の独り言は秋の夜空に消えて、やるせない気持ちだけが残った。



あれから数日、ジュンから連絡も来なくなった。
こんなことは初めてだわ…。
…とうとう、嫌われてしまったみたいね。
「そうよね。私は…不器用で、プライドが高くて……それは嫌われるわね…。まぁ、ジュンなんかよりいい人は…たくさん…いる…はず…。」
私は泣いていた。自分の頬を涙がつたうのがわかる。
自然と…。…私の意志に反して…。
「私は…。っ……ジュン……側に…居てちょうだい……。私は…貴方が…。」
私は泣いた。ずっと、ずっと…。でも貴方は側にいてくれない。
…私は泣き続けた。




あれから数日、僕は気まずくなって真紅に声をかけられないでいた。
…むこうからも連絡はない。
理由はわからないけど、怒っているのだろう。
前に真紅のくんくん探偵のDVDを割ってしまった時は、入院させられたあげく、1ヶ月も口をきいてもらえなかったからなぁ。
でもこのままじゃ、駄目だ。
「翠星石にでも相談してみるか。」
とにかく行動してみよう。…きっと何とかなるさ。



ずっと泣き続けて、少しは気持ちもすっきりした。
よく考えてみたらまだ嫌われたと決まったワケじゃないわね。
…でもジュンに直接聞くのは恐いし…。
「翠星石に相談してみようかしら。」
友達に話したら何か変わるかもしれないわね。
きっと、ジュンともいつもみたいに戻れるわ…。



「なーるほど。どーりで最近真紅を見かけない訳ですよ。」
僕は翠星石のバイト先に顔を出していた。
「何で真紅が起こってるのか、聞いてないかなと思ったんだけど…。」
どうやら翠星石にもわからないようだ。
「にしても、とうとうお前がプロポーズですか。……真紅を頼むですよ。」
「…まだ、うまくいくって決まったワケじゃ……。」





そう。もしかしたら真紅は僕に愛想を尽かしたのかもしれない。……確かに自分でも、頼りない男だと思うしな。
「なーに言ってやがるですか!お前たちほどお互いを想っているバカップルはいねーですよ。」
そうなのか?…でも…。
「あーもー!辛気くさいツラしやがってですっ。ここは翠星石が気合い入れてやるですよ!くらえ!真紅直伝!絆パンチ!ですぅ!」
「うわっ!危なっ!」
反射的に避けてしまった。
ふんっ。本人からいつもくらっている僕を舐めるなよ。
「避けるなですってキャアアアア!」
バランスを崩した翠星石を抱き止める。
っと、こんな所を真紅にみせたら殺されるな。
「っすまねぇです。…って、真紅?」
えっ!?真紅!?
確かに向けた視線の先には真紅がいた。
でも、真紅…泣いて…るのか?
「…真紅?お前、どーしたん…。」
「……っ!」
真紅は何も言わずに走り去ってしまう。





ぼーっと突っ立っていたら、頭に衝撃。
「何やってるです!?さっさと追いかけるですよ!」
ハッと我に返る。
そうだ、真紅!どこだ?どっちに行った!?
とにかく僕は真紅を追って走り始めた。



私が翠星石の所に行ってみると、ジュンがいた。
二人で何か話しているようだわ。
何だか楽しそうで入りにくい。
「ジュンの馬鹿。…私をほったらかしにして…。」
友達に嫉妬するなんて、私は本当にいやなヤツね。
「キャアアアア!」
翠星石の悲鳴に顔を上げて二人を見てみる。
抱き…合ってる?ジュンと翠星石が?
…ウソよ。こんなのウソ!…私は。…私は…!
「真紅?お前…。」
二人がこっちをみている。
嫌!もう止めて!もう……ダメ…。
私は走った。逃げだした。…ジュンから…全てから。
泣いているのがわかる。
私は…もう……いらないのだわ……。





「ハァッ…ハァ…ハァ……うぅ…あぅ……ジュ…ン…。」
どれくらい走っただろう。
私は声をあげて泣いた。
泣いても、何も変わらない…でも、泣かずにはいられなかった。
「真紅!」
振り返るとジュンがいた。肩で息をしているのを見ると、追って来たのだろう。
ジュンがゆっくり歩いて来る。
「来ないで!!」
私は声を張り上げて拒絶した。
私はジュンの顔を見ることが恐くてできなかった。
もう……傷つきたくなかった。
「真紅…。」
ジュンがこっちに歩いて来る。
私は声が出なかった。ただ…耳をふさいで…何も見ないように眼を閉じて…全てを拒絶した。
あっちに行って!貴方の顔なんて見たくないっ!早く、いなくなって!
そう叫ぼうとした時だった。

「結婚しよう。」



僕が追いついた時、彼女は泣いていた。
「来ないで!!」
彼女は怯えていた。
いつもは他人に弱いところをみせない真紅が…泣いていたんだ。
僕のせいだ!君をこんなに傷つけて…。
「真紅…。」
もう僕は逃げない。君からも…自分からも…。
君は…僕が守る!!「結婚しよう。」




自分でも驚くほど正直に言えた。
真紅も目を見開いてこちらを見てる。
すると、真紅が唇を噛み締めて拳を振り上げた。
まずい、絆パンチだ!!何でここで!?
「っ!!」
僕は観念して目をつぶる。
そして僕の頬にペチンと当たる。
……痛くない?
真紅も泣きながら、自分でも驚いているようだ。
今度は左手が飛んできて当たる。…だが、痛くない。
「…バカ。…バカッ。…馬鹿!……ジュンの…ばかぁ!!」
何度も…何度も…顔に当たる。
僕は全てを受けた。
気がつけば、僕も泣いていた。
そして、そっと真紅を抱きしめた…。
「ジュンは…本当に大バカなのだわ…。私を…こんなに泣かせて…。」
「……ごめん。」
「ずっと…ずっと…一緒にいて……。私は……」
真紅が涙を両手で拭いながら言う。
「私は、貴方の…幸せな…っん?」
僕は無理やり真紅の口を閉じさせた。
二人のキスは、甘く、切なく、夢のように続いた。






二人が唇を離すと、ジュンは小さな箱を私にくれた。
「これ…安物なんだけどさ…。」
ジュンが顔を真っ赤にして渡してくれたのは指輪だった。
小さな赤い宝石が散りばめられた、薔薇の指輪。
本当に、綺麗だった。
これを、私に…?
また涙が出てきたので、私はそれを隠すために後ろを向いた。
「…ま、この真紅の物としては確かに安っぽいけれど、もらっといてあげるわ。」
いつもの照れ隠し。…そう、いつもの私。
「なっ!?人が今まで必死に貯めて買ったのに……って、聞いてるのか、真紅!!」
私は笑っていた。
私は今、とっても幸せだわ。
見上げた空はどこまでも高く、晴れ渡っていた。
私はジュンに振り返って一言。
「大好きよ!ジュン!!」

      end
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