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「一つ屋根の下 第六十二話 JUMと受験」



「ふぅ……そろそろ寝ようかな……」
時計の針はすでに深夜1時を少し過ぎていた。明日が休みならまだまだ起きとくんだけど、残念ながら明日も
学校だ。あまり遅くまで起きとくと朝から翠姉ちゃん辺りにどやされる。そろそろ、寝とくべきだろう。が……
「何か喉渇いたな。寝るまでに飲み物飲んでくるか。」
僕はドアを開けて、姉妹の部屋の前を通り階段を下りて台所へ向かう。キラ姉ちゃんの部屋の前を通ると
「むにゃ……こ、これは幻のミスター味っ子~~!!?う~ま~い~ぞ~~!!」
と寝言が聞こえてきた。どんな夢を見てるんだろうか。
我が家の台所とリビングは繋がっている。まぁ、ついに限らず大半の家がそうだろうけど。リビングからは
光が漏れてる。誰かこんな時間に起きてるんだろうか。そう思ってると中から声が聞こえる。
「ねぇ、金糸雀。ここってどう解くのぉ?」
「見せて……えっと、ここはxに4を代入して……」
声の主は銀姉ちゃんとカナ姉ちゃんだ。内容からすると勉強だろうか。
「姉ちゃん達遅くまで勉強?随分精が出るね。」
僕はリビングに入っていく。銀姉ちゃんはネグリジェ。カナ姉ちゃんはパジャマで向かい合ってテーブルに
座ってノートと問題集を開いていた。
「あらぁ、JUMまだ起きてたのぉ?うふふっ、抜きまくってたのぉ?ダメよ、適度に抑えないとぉ。」
銀姉ちゃんが何言ってるか分からないのでとりあえず無視しておく。
「そうよ、お勉強かしら。水銀燈が一緒にやりたいって言うから教えてあげてたかしら。」
それは珍しい光景だろうな。銀姉ちゃんがカナ姉ちゃんに教えを請うって。さすがの銀姉ちゃんも勉強に関して
はカナ姉ちゃんに敵わないようだ。
「あれ?でもさ。定期テスト終わったばかりでしょ。何で今頃勉強を?」
そう、学生の天敵の定期テストは先日終わったばかりだった。
「受験に決まってるでしょぉ?私も金糸雀も三年生よぉ?」
そうだった。あまりに余裕だからすっかり忘れてたが二人は受験生だった。
「はは、そっかそっか。それで、どこ受けるの?やっぱ県外のいい大学?」
「カナも水銀燈も地元のアリス大学受けるかしら~。」



アリス大学。地元の大学ながらも、国内でも結構優秀な大学だ。無難な選択でもあるだろう。
「へぇ、すごいなぁ。でもさ、二人ならもっといい大学狙えるんじゃないの?」
「JUMは分かってないかしら。イイ大学に行くだけじゃダメかしら。その大学で何をするか。そっちの方が大事
なのよ。カナも水銀燈も勉強したい内容がアリス大学にあるから、受験するの。」
成る程ね。ただただ、ビッグネームの大学に行ってもそこでやりたい事がなければ意味がないって事か。
「まぁ、私も金糸雀も指定校推薦貰ってるからいいんだけどねぇ。」
銀姉ちゃんが言う。へぇ、指定校か。って、指定校!!?
「マジ!?凄いじゃん。だったら、何で勉強なんてしてるの?あれ、ほぼ合格確定でしょ?」
指定校推薦とはそういうものだ。学校が大学に自信を持って推薦できる生徒しか推薦をもらえない。
代わりに、合格率はほぼ絶対だ。故に、推薦を貰ったら勉強しなくなる人も居るらしい。
「そうねぇ……絶対合格したいからかなぁ。柄にもない事言うけどぉ……私は姉妹やJUMと一緒に
いたいのよぉ。だから、絶対に落ちれないのよぉ。」
「カナもかしら。カナだってJUMやみんなと一緒に暮らしたいかしら。」
二人は言う。ああ、そっか。ウチは騒がしい。超がつくくらいに。小さい姉妹喧嘩もしょちゅうだ。それでも……
銀姉ちゃんもカナ姉ちゃんも好きなんだ。この一つ屋根の下で暮らす生活が……
「まぁ、一番の理由は私の不在をいい事に姉妹がJUMを誘惑するのを阻止するためだけどねぇ。」
「カナが居ないうちにJUMを奪うなんて策……このローゼン家一の頭脳はのカナには通用しないかしら!」
あれれ?ちょっと感動しかけたのに、結局それなんですか?姉様方。



「ふぁ……そろそろ寝るかな。でも、明日休みだしな。」
時計は深夜1時頃。何時もなら寝る時間だけど、明日は有難い事に休みだ。
「そうだ。姉ちゃん達今日も勉強かな…見に行くか。」
僕はギシッと音を立てながら椅子を立つ。そしてリビングへ。
「う~ん……危ないの!!苺の大群なの!!ヒナにお任せなのよ~~!!」
「むにゃむにゃ……ヒナ、危ないですわ。ですから、私も食べるのに……いえ、殲滅を手伝いますわ!」
あれ?この二人、寝言がリンクしてないか?
リビングは、勉強道具は二つあった。ただ、問題を解いてるのはカナ姉ちゃんだけだった。
「精が出るね、カナ姉ちゃん。銀姉ちゃんは?」
「あ、JUM。今日も夜更かしかしら?水銀燈はさっきお風呂行ったかしら。」
「ん、夜更かし。まぁ、明日は休みだしね。」
僕はカナ姉ちゃんの隣に腰掛ける。カナ姉ちゃんはすでにお風呂上りのようだ。姉妹で一番お風呂上りで
変身するのはカナ姉ちゃんだ。何時も出てるオデコは前髪で隠れてるし、巻き髪もストレートに下ろされてて
肩より少し下位だ。正直、何時もよりかなり大人っぽい。僕はそんなカナ姉ちゃんを見つつ、問題を見る。
「……物理……かな?さっぱりだ。」
「これは三年生でやる内容かしら。JUMがその時になったらカナが教えてあげるわ。」
カナ姉ちゃんはそう言ってほにゃりと笑う。僕は思わずドキッとする。見た目は大人っぽいのに、中身はまだまだ
幼さが残ってる。そのギャップが何とも言えない。ふと、カナ姉ちゃんがペンを置く。
「ね、JUM。お膝に乗っていいかしら?」
「ん?いいよ。はい、どうぞ。」
僕は膝をパンパンと叩く。カナ姉ちゃんは僕の膝に、僕と向き合うように座りそのまま胸に顔を埋める。
「えへへ……今日はカナがJUMを独占かしら……何時もは姉妹に取られちゃってるけど…」
カナ姉ちゃんが僕を抱きしめる。僕はカナ姉ちゃんの頭を撫でながら髪を梳く。サラサラと髪が指を流す。
綺麗な髪だな……まぁ、髪が綺麗なのはカナ姉ちゃんに限った事じゃないが…



「あのね……本当はカナ。県外の大学受けようとしてたの。」
「え……?」
昨日の話だろうか。だったら、何で地元の大学を?
「そこは、カナがやりたい事をかなり専門的にやってるの。そして、想像したわ……そしたら、ダメだったかしら。
カナはJUMが居ないとダメかしら……例えJUMが姉妹に取られてても、JUMが同じ家にいる…側にいる…
カナは寂しがりだから……JUMが一緒にいないとダメ…かしら…」
カナ姉ちゃんは言った。僕はそんなカナ姉ちゃんが愛しくてギュッと抱きしめる。カナ姉ちゃんの小さな体は
今完全に僕の腕の中にある。
「大丈夫だよ、カナ姉ちゃん。僕はずっと側にいる……カナ姉ちゃんと…姉ちゃん達と一緒にいるから。」
カナ姉ちゃんが顔をあげる。カナ姉ちゃんの碧眼が僕を見つめる。
「水銀燈は……まだ出てこないわね…もうちょっとだけ時間あるかしら…」
銀姉ちゃんは風呂が長い。軽く一時間は入ってる。僕なんて20分くらいでのぼせるのに。
「だったら、今がチャンス…かしらぁ。」
カナ姉ちゃんが僕を見つめながら顔を近づけてくる。カナ姉ちゃんの匂いが鼻先まで届く。
「うん……JUM…好きよ…んっ…」
そして、僕とカナ姉ちゃんは唇を触れ合わせた。ただ、触れ合うだけのキス。でも、その時間は長く、長く。
とても長くて。時計が時を刻む音だけが部屋に響いていた。
唇を離して尚、僕はカナ姉ちゃんと見詰め合っていた。カナ姉ちゃんが口を開く。
「あのね……カナもっとJUMを感じたいの……だから…んんっ…」
再び僕等はキスをする。今度は、触れ合うだけじゃなく。深い口づけ。カナ姉ちゃんの小さな手が僕の腕を
ギュッと掴む。僕はカナ姉ちゃんの頭を優しく包みこむ。徐々に二人の息は荒くなっていく。
部屋には、時計の音と。僕らの息遣いと。何かが絡み合う音だけが聞こえていた。



「んっ……カナのお舌とJUMのお舌がまさちゅーせっちゅかしら?えへへ…カナも少し大人になったかしら。」
カナ姉ちゃんが顔を赤くして言う。いや、きっと僕の顔を赤い。僕は未だにカナ姉ちゃんの肩を掴んでいた。
「JUM……えっと…カナ水銀燈みたいに色気ないけど……その…JUMなら…いいかしら…」
色気がないと言うけど。僕は、正直カナ姉ちゃんに今までにないほどの色気を感じていた。髪を下ろして
大人っぽいカナ姉ちゃん。お気に入りの黄色のパジャマは少し乱れてる。頬を紅潮させ、息も少し荒い。
僕は、そのままカナ姉ちゃんの首筋に顔を下ろそうとする。カナ姉ちゃんの体がビクッとする。が……
「ふんふ~~ん……お風呂上りはヤクルトよねぇ~♪」
銀姉ちゃんの鼻歌が聞こえてくる。僕等は即座に体を離し、カナ姉ちゃんは問題集を解く…フリをする。
僕は、顔が赤いままそんなカナ姉ちゃんを見ていた。
「あらぁ?JUM今日も来てたのねぇ。あ、分かったわぁ。お姉ちゃんに会いにきたのねぇ?水銀燈嬉しいわぁ。」
銀姉ちゃんが後ろから抱き付いてくる。ただ、銀姉ちゃんには悪いけど、今回は全くドキドキしなかった。
というのもさ……隣のカナ姉ちゃんが……
「あらぁ?金糸雀何してるの?」
「にゃ!?にゃにって問題集を…」
落ち着いてないカナ姉ちゃんはかなりきょどってる。銀姉ちゃんは問題集を指差すと言った。
「逆さまじゃない、それ。」
「かしらー!?」
カナ姉ちゃんがお約束のドジを披露する。僕はそのドジっ子の手をひっそりと握った。
「ぁ…JUM……さ、さぁ水銀燈。しっかり勉強するかしら!JUMとこれからも一緒にいるために…ね?」
「?何時も以上に変な金糸雀ねぇ。まぁ、言われるまでもないわよぉ。」
二人は勉強を再開する。この隙に僕は部屋に戻る。早く寝よう。一刻も早く。そうじゃないと……
僕の体中に染み込んだカナ姉ちゃんの匂いを思い出して寝れなくなりそうだから……
END

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