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「一つ屋根の下 第五十五話 JUMと乙女騎馬戦」



午後。棒高跳びや走り幅跳び等の個人競技を挟んでその時は来た。いや、正確には来てしまったって
言った方が正しいかな。なんせ、急な出来事だったんだから。
「は?何で僕が騎馬戦に出ないといけないのさ。」
「何でもなにも、初めからお前の出場は決まってたぞ。」
ベジータは言う。いや、初耳なんだけど。すると、薔薇姉ちゃんはちょっとだけ申し訳なさそうに言った。
「ごめんね、JUM。文化祭の準備で忙しそうだったから…言い忘れてちゃった……」
てへっと舌を出す薔薇姉ちゃん。いや、言い忘れるとか勘弁して下さい。
「まあ、そんなわけだからよ。薔薇嬢もお前以外に純潔を捧げる気は無いとか言ってるしな。」
意味が分かりません。何で騎馬になるのが純潔に繋がるんだ?でもまあ、薔薇姉ちゃんが出ないと戦力は
大幅にダウンだろう。僕の為にもそれは不味い。
「やれやれ。分かったよ。僕も出るよ。僕だって優勝したいからね。」
「JUM……ポッ…やっぱりJUMは…私が欲しいんだね……」 
ふっ…学年優勝した姉妹のクラスは僕を一日自由にできる…相変わらず僕の人権を無視し
た景品だが、僕が貞操を守るには負けるわけにはいかないのだ。
『まもなく、乙女騎馬戦を開始いたします。出場選手は集合して下さい。』アナウンスが鳴る。
「よし!行くぜ!」ベジータが気合いを入れるように頬をパンと叩いた。



ここで、乙女騎馬戦の説明をしておこう。乙女騎馬戦は学校対抗競技で、各クラス2騎ずつ計30騎が
入り乱れて戦いが繰り広げられる。因みに、うちの学校は一学年5クラスの計15クラスだ。
男子は必ず騎馬で、女子が騎馬の上で肩からかけているタスキを奪い合うのである。時間制限はなく、
最後の一クラスになるまでデスゲームは繰り広げられる。
最終的に、一番タスキを奪ったクラスが大量の得点を取得できる。生き残りボーナス等甘い物は存在せず、
奪ったタスキの数だけがモノを言うので、乙女騎馬戦なんて何だかドキドキしそうなファンシーな名前とは
裏腹に、女のルール無用な残虐ファイトが繰り広げられる訳だ。僕達男はぶっちゃけ蚊帳の外と言ってもいい。「JUM……頑張って勝とうね……お姉ちゃん達に私達の愛のパワーを…見せつける…」
「愛のパワーかは分からないけど、やるからには勝つさ。」
周りを見る。ウチのクラスのもう1騎は桑田さんだ。少し頼りないが、馬がベジータなんで何とかなるだろう。
点数が高いだけあってどこの精鋭が揃ってる。姉ちゃん達もみんな出てるな…
『それでは、本日のメイン競技乙女騎馬戦…いざ尋常に…勝負!!』


一斉に30騎の騎馬が所狭しと運動場……もとい、戦場に散っていった。
「どうする?薔薇姉ちゃん。」
「ん…桑ぴーはベジータがいるから任せれる…どんどんタスキを狩っていこう…」
強気な作戦だ。でもまあ、実際薔薇姉ちゃんならそうそう負けないだろう。
「!?来た!」
薔薇姉ちゃんが横からの襲撃に素早く反応する。薔薇姉ちゃんのタスキを取ろうと伸びてきた手を払いのけ、
逆に相手のタスキに手を伸ばし一瞬で奪い取る。因みに、タスキは紙テープで出来てるので簡単に
取れるようになってる。
「よし……一つは貰った……」
無事タスキを一つ手に入れる。僕は辺りを見回す。そこでは、文字通り女の闘いが繰り広げられていた。
「楽してズルして……いっただきかしら!」
カナ姉ちゃんは相方と常に行動を共にし、二対一を作って有利に進めている。
「はぐれないでね、翠星石。おっと。」
蒼姉ちゃんもなるべく相方の翠姉ちゃんと一緒に行動している。
「…タスキを多く取るなら…分散したほうがいい…私達はこのままで行こう…金糸雀は手強そうだから回避
しよう……今回は……迂闊に闘えない。」


確かに、今回のカナ姉ちゃんは一味違いそうだ。相方と上手く連携している。何時ものカナ姉ちゃんと思って
甘く見れば、簡単にタスキを奪われるだろう。
「となると……手短なのから行くか。」
「おっけー…」
とりあえず僕は一番近い騎馬へ向かう。相手もこちらを見ると戦闘態勢に入る。
「はあっ!」
薔薇姉ちゃんの右手が一直線に相手のタスキに向かう。早い。しかし、相手もクラスから
選出された精鋭だ。薔薇姉ちゃんの手を弾き、反撃してくる。
「!?何の!」
僕の頭の上でパシパシと攻防の音が聞こえてくる。すげえ、気分はドラゴンボールだ。薔薇姉ちゃんと
相手が攻防を繰り広げていた時だった。
「横取り四十萬かしらー!」
乱入者が相手のタスキを背後から奪っていく。その正体は言うまでもなくないだろう。大体、横取り四十萬
なんて古すぎる。
「金糸雀!?熱中しすぎて気づかなかった……JUM動いて!囲まれる!」
僕は薔薇姉ちゃんに言われるままに騎馬を動かす。どうやら背後からカナ姉ちゃんの相方が迫ってたようで、
危機一髪だ。
「ふふっ、貰うわよバラバラ!」
カナ姉ちゃんが相方と同時に攻撃を仕掛けてくる。薔薇姉ちゃんも持ち前の運動神経で波状攻撃を
交わすが、いかんせん二対一は厳しい。
「くっ……このままじゃ…」
「おーほっほっほっほ!バラバラ敗れたりかしら!カナはこの作戦で勝ってJUMを手に入れるかしら!
おーほっほっほ……あら?」
カナ姉ちゃんが存分に胸を張って高笑いする。あ、そんなに上体を反らすと……
「キャーかしらー!?」
ドスンとカナ姉ちゃんが騎馬から落ちる。調子に乗って上体を反らしすぎて落下。何ともカナ姉ちゃんらしい
自爆だ。


「貰った……!!タイマンなら……負けない!!」
薔薇姉ちゃんがカナ姉ちゃんの相方のタスキを一気に奪う。カナ姉ちゃんのタスキは手に入れられなかったが、
まぁ結果オーライだろう。何とかカナ姉ちゃんを退けた僕等だったが、桑田さんの騎馬が何と陥落していた。
「べジータ!!桑田さん!大丈夫か!?」
「す、すまねぇJUM……油断した…」
べジータを倒すとは一体誰が……その人物は真正面から僕等の方に向かってきた。
「JUM君、薔薇水晶!貰うよ!!」
その人物は蒼姉ちゃんだった。後ろから翠姉ちゃんも着いて来ている。
「くっ……べジータ……どんな手でやられた…?参考にしたいから……」
「いやそれがよ。蒼嬢が『べジータ君、優しくしてね…』何て言うもんだからよ……」
ああ、一種の色仕掛けですか?全く参考にならないや。それにしても、蒼姉ちゃんにしては、大胆な事をする。
いや、今はそんな事がどうでもいいや。再び二対一。どうする?
「JUM……上手く動いてね……何とか退けるから…」
「甘いよ薔薇水晶。僕はそんなに甘くないよ。」
遂に正面から姉妹が激突する。蒼姉ちゃんの右腕が真っ直ぐ伸びたかと思えば、左腕が回りこむように
薔薇姉ちゃんに襲い掛かる。薔薇姉ちゃんは右腕は叩き落し、左腕は上体を反らして回避する。
「秘儀……マトリックス……」
薔薇姉ちゃん、今時それはないんでは?せめてイナバウアーとか……それも古いか。
「薔薇しーはJUMに乗れてるだけラッキーと思ってタスキをよこせですぅ!!」
側面から翠姉ちゃんが襲い掛かってくる。しかし、僕らは運がいいらしい。再び乱入者が現れる。
「水銀燈!?」
銀姉ちゃんが蒼姉ちゃんに襲い掛かっていたのだ。僕らに意識が集中していた蒼姉ちゃんは、銀姉ちゃんの
急襲で一気に形成が崩れる。
「貰ったわよぉ!!」
銀姉ちゃんの腕が蒼姉ちゃんのタスキをもぎ取る。
「ふふふっ、貰っちゃった貰っちゃった~♪蒼星石のタスキ貰っちゃった~。」


「そ、蒼星石!!」
「隙あり……!」
タスキを奪われた蒼姉ちゃんに気がそれた翠姉ちゃんのタスキを薔薇姉ちゃんが奪い取る。一瞬で蒼姉ちゃんと
翠姉ちゃんが脱落する。これで姉妹で脱落は3人。しかし……現状をみるとすぐに脱落が出そうだった。
「そこまでよ、水銀燈!」
銀姉ちゃんを追ってきたのは真紅姉ちゃん。銀姉ちゃんも真紅姉ちゃんの方を向き迎え撃つのだろう。
「どうする、薔薇姉ちゃん?」
「ん~…・様子見。勝った方のタスキを貰おう……」
OK、漁夫の利作戦だね。若干卑怯臭いが、ルール内だ。問題はない。真紅姉ちゃんと銀姉ちゃんのバトルが
始まる。両者共に、牽制を交えた拳撃をかわす。
「ほらほらぁ、そんなもの?真紅ぅ。」
「余裕でいられるのもそこまでよ。」
パシパシと激しいぶつかり合い。永遠に続くかと思われた戦いは、痺れを切らしたのか。或いは充分な勝算
を見たのか。真紅姉ちゃんが先にタスキ目掛けて手を伸ばす。銀姉ちゃんも負けじと真紅姉ちゃんのタスキ
目掛けて手を伸ばす。砂埃の中で閃光が煌く。そして、砂埃が晴れるとタスキを握っていたのは真紅姉ちゃん
だった。勝ち誇る真紅姉ちゃん。対して銀姉ちゃんは何故か不思議そうな顔をしていた。
「ふっ、口ほどにもないわね水銀燈。」
銀姉ちゃんは黙って、自分と真紅姉ちゃんの腕。そして、お互いの胸を見てポンと手を打った。
「そういう事ねぇ。よかったじゃなぁい、真紅。貧乳が役に立ってぇ~。」
銀姉ちゃんがクスクス笑いながら喧嘩を売る。
「ちょ、ちょっと!胸は全く関係ないのだわ!」
うん、僕もそう思う。しかし、銀姉ちゃんはチッチッチと指を振ると論理的に説明しだした。
「それがあるのよぉ。真紅と私ではリーチは私の方があるでしょぉ?じゃあ、何で私の手は届かなかったか……」
「決まってるわ。私が早かったからよ。」



真紅姉ちゃんが言う。しかし、銀姉ちゃんは首を振った。
「違うわね。ね、真紅。肩から掛けてるタスキは必ず胸の前を通るわよねぇ。」
「……そうだけど。何が言いたいの?」
あ、何となく分かった気がする。銀姉ちゃんに限らず薔薇姉ちゃんや蒼姉ちゃんとかは、胸がある分タスキが
前に出てるんだ。ソレに対して真紅姉ちゃんは……
「ふふっ、つまりぃ。私と貴方の胸の差はぁ、リーチよりも大きいって事よぉ~。ま、当然よねぇ。リーチの差は
せいざい10cmでしょうけどぉ……私と真紅じゃあバストは15cmは違うものねぇ。」
「そ……そんな……」
試合に勝って勝負に負けるってこういう事なんだろうか。銀姉ちゃんは胸が大きい分、相手の手は届きやすく
逆に真紅姉ちゃんは胸が……ない分届きにくい。とまぁ、そういう事だろう。真紅姉ちゃんはその事実に
愕然とし、棒立ち状態だ。僕は真紅姉ちゃんに近づく。今ならタスキを奪える。しかし、真紅姉ちゃんのタスキ
は白い旋風に奪われた。
「ふふっ、真紅のタスキいただきましたわ。」
「……きらきー……」
真紅姉ちゃんのタスキを奪ったのはキラ姉ちゃんだ。僕は薔薇姉ちゃんに進退を問おうとして、止めた。
いつの間にか残りの騎馬も少ない。ならば、ここは対決しかないだろう。
「さぁ、薔薇しーちゃん。決着をつけましょうか?」
「……望むところ……」
薔薇姉ちゃんとキラ姉ちゃんが激突する。しかしまぁ、何でウチの姉ちゃんたちはこう武闘派が多いんだろう。
僕の頭の上でドラゴンボールな戦いが繰り広げられている。飛び交う閃光。交差する腕。二人の戦士が
馬上で激戦を繰り広げる。その戦いに、終わりは見えない。
「さすがは薔薇しーちゃんですわ。なら、私も本気でいくしかありませんね。」
キラ姉ちゃんはそう言うと、右目の眼帯を外す。金色の両目が露になる。
「薔薇姉ちゃん、ヤバイ。キラ姉ちゃんマジだ。」
キラ姉ちゃんの両目は美しい金色ながらも、どこか激しさを抱いている。
「大丈夫……私も種割れする……私が…きらきーを討つ……!!」
は?何だって?そう思ってると薔薇姉ちゃんも左の眼帯を外す。同じように金色の目が露になる。



キュイーンと効果音が鳴ったような気さえする。普段は隠している目を露にした二人は対峙している。
先に動いたのはキラ姉ちゃんだった。
「ばぁぁぁらぁぁぁぁしぃぃぃぃぃぃぃいいいいい!!!!」
声と共に襲い掛かるキラ姉ちゃん。しかし、薔薇姉ちゃんも負けていない。
「キラァアアアアアアアアア!!!!………きー……」
お互いの利き腕である、右腕が交差し互いの胸のタスキを目掛けて伸びる。勝負は一瞬だった。
「……お見事……ですわ……」
キラ姉ちゃんの騎馬が崩れ落ちる。その胸にはタスキはない。そのタスキは……薔薇姉ちゃんが握っていた。
「……やった……勝った……」
どうやら勝ったらしい。余りの大勝負だったせいか一気に力が抜ける気さえした。しかし、その油断が最悪の
自体を招いた。
「貰うよ、薔薇水晶。」
「えっ!?」
背後から聞こえる声。薔薇姉ちゃんは振り向こうとして、体制を崩す。それに伴って騎馬である僕らも
崩れる。僕らが崩れ去る一瞬。ほんの一瞬だけ。太陽の影で隠れた顔の左目の下の泣黒子が見えた。
「どわあああああああああ!!!!」
ドスーンと支えきれず薔薇姉ちゃんは落馬し、僕らも地に伏した。ガツンと頭を打った気がする。目の前が暗い。
ああ、暗いのは目を瞑ってるからか。僕は起き上がろうととりあえず手を伸ばす。すると、手にフニッと柔らかい
感触が伝わる。その謎の物体がビクッと震えた。
「あんっ……JUMったら……こんな人前で……」
……凄く嫌な予感がする。僕はゆっくり目を開けた。目の前にあったのは薔薇姉ちゃんのお尻。そして、僕は
それをしっかりと掴んでいた。六十九。六十九。
「うわーい!!トモエ凄いのぉ~!」
すっかり忘れていた戦場とは程遠い姉妹の声が聞こえる。完全に迂闊だった。柏葉とヒナ姉ちゃんのペアが
完全に頭から抜け落ちていたのだ。
『そこまで!!何と1-Bは二騎の生存です!!』


そして、結果が発表される。相変わらず柏葉は油断できない奴ってのを再認識。どうやら、僕らが姉妹と
闘ってる内に、次々とタスキを奪っていったようでダントツでトップを手に入れたのだ。ヒナ姉ちゃんは全く
タスキを取っておらず、事実上一人で全部奪ったようだ。
「うぅ……巴にはアリスも持って行かれるし……次こそは油断しない……」
騎馬戦が終わって、また眼帯をつけた薔薇姉ちゃんが言う。確かに柏葉には美味しいトコ持っていかれすぎだ。
「みんなお疲れ様!!一日目はB組リードされる結果になったけど大丈夫!!まだまだ明日の応援合戦
があるんだ!!そこで挽回すればいいんだよ!!」
余計疲れるような担任が現れる。ちなみに、校長あたりに諌められたのかブルマからハーフパンツに変わって
いる。まぁ、それでもスネがツルツルだから嫌なんだが。
「そうだな。まだ体育祭は初日が終わったばかりだ。明日の応援合戦で逆転するぞ!!」
今回失態しか見せてないべジータがクラスを鼓舞する。
「そっか、明日は応援合戦がメインだったね。じゃあ、僕の出番はないかな。」
「そんな事ないよ……」
薔薇姉ちゃんが僕の手を握る。そして、僕を見ながら言った。
「JUMがいるだけで頑張れる……好きな人の為なら……頑張れる……」
僕は一気に赤面していくのが分かる。そんな真顔で言われたら赤面するしかない。
ただ、夕暮れ時。夕日のお陰でそれがバレなかったのが唯一の救いだったかもしれない。
END

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