誰かのために自分が何かをしてあげる
多くの人がそれを素敵なことだとか、偉いね等と褒めてくれる

けど、今日は学校でこんなことを聞いてしまった


友達①「のり~今日さあ学校の帰り一緒に寄り道しない?すっごいおいしいパフェの
  食べられるお店見つけたんだよ」
のり「ふえ?え~と、ごめん今日は…」
友達②「駄目よ、のりは弟君のお世話があるじゃない」
のり「う、うん そうなの、だからごめんね」
友達①「ううん気にしないで、それじゃあまた今度ね バイバイ」
のり「うん、バイバイまた明日」

いつものように家に帰れば良かったのにな
なんで今日に限って忘れ物なんかしちゃうんだろう…
私のバカ

のり「ふう、まいっちゃうな 教室に鞄忘れちゃうなんて あれ?
まだ中に誰かいるのかな?」

友達①「のりってさ~良い娘だけどいつも人付き合い悪いよね、家に両親いないのは
知ってるけど 弟君って何歳なの?」
友達②「あなた知らないの?のりの弟ってさ、引きこもりらしいよ それで弟君の
  食事や選択とか買い物とか全て一人でこなしてるんだって」
友達①「本当に~?でもそれってさ、聞こえは良いけどなんか偽善者っぽいよね」

ふぇ?

偽善者 ?

誰が?私が?

友達②「そうそう、そういうの自己犠牲とかって言うけどさ 単なる自己満足で優越感に
  浸ってるんじゃないのかな」

違う、違うよ
みんな誤解だよ 私はただ、JUN君のために…

友達①「それにさ、きっと弟君ものりのこと嫌ってるよね」

え…?

友達②「こんだけ世話してもらって引きこもり続けたらきっとうざく感じるよね」
友達①「まぁそれだけは実際見てみないと分かんないけど、もし全然感謝の気持ちとかなかったら相当嫌われてるよね」

――うざいんだよ!このお茶漬けのり!――

――僕の部屋に勝手に入るなって言ったろブス!――

――学校行って二度と帰っていくるなよ!――

ガラガラ…

ビクッ…

友達①「のっのり!?」
友達②「え、あ!?違うのよ のり これは…」
のり「ううん、気にしないで 忘れ物しちゃっただけだから…バイバイ」

ピシャンッ! タッタッタッ…

ハァ、ハァ、ハァ…

――偽善者っぽいよね――

いや!

ハァ、ハァ…

――単なる自己満足で優越感に浸ってるんじゃないのかな――

やめて!!

ハァ、ハァ…

言われてみれば最近はJUN君の姿さえ全然見てない
いつもドジばかりしてJUN君のこと何も分かってなくて…
JUN君も多分ずっと思ってるんだよね…
私のことうざいってしつこいって…

そして…偽善者だって

私って…桜田のりっていったい 何なんだろう…


≪  カタカタカタ…
第3話 g

カタカタ…

<第3話 偽善者>  ≫


真「のりは私の召し使いだわ 彼女の作った花丸ハンバーグは絶品なのだわ」
翠「いきなり何を言い出すですか?おめえは 昼まで待ちきれなくて気が狂ったですか?」
真「いえ、ただ最近彼女の手料理を食べることがなくなってしまったから 
再確認したのだわ」
翠「あ~いかわらず、よく分からん野郎です」
真「でも紅茶を入れるのはいつも下手だったわ 紅茶はJUNが入れるのが
一番美味しかった」
 「のりの花丸ハンバーグを食べて、JUNの紅茶を飲む 私が一番幸せを感じる時だった
  もう、こんな幸せは望むべきじゃないのかしら…」
翠「…ですぅ」


ピキ―ン☆
雛(重いムード発見なのー)

雛「翠星石ー!真紅ー!何のお話してるのーーーヾ(゜0゜*)ノ雛も混ぜてなのーー」
翠「だああああ!!おめえはーこの空気を少しは感じ取りやがれですぅ!」
雛「人呼んで雛はムードクラッシャーなのよー」
翠「クラッシュするのはフラグだけにしとくです!このお馬鹿苺!」

真(クスッ…)

真「まぁ良いじゃない、あんな空気でいるより私はこっちの方が楽しくて好きだわ」
翠「ま、まぁ真紅がそこまで言うなら許してやっても良いですけど…」
雛「それでいったい何のお話をしていたの?」
翠「お馬鹿苺には関係ねえですよ」
雛「どおしてなの?」
真「翠星石のいう通りよ、まだこっちにきて日が浅いあなたが心配する必要はないわ」

雛「関係なくないのよ、だって翠星石も真紅も雛の友達だもの 友達の問題は
  雛の問題でもあるのよ」

また…
彼女は全てを見透かすような深い瞳をしている
この瞳を見ているとまるでどんなことも見抜かれてしまいそうな、そんな瞳

真「どおしても知りたいの?雛苺」
雛「うん!雛は力になりたいのよ」

はぁ…やれやれ、その笑顔には負けるのだわ

真「じゃあ、今日学校帰りにうちに来て頂戴 翠星石も一緒に来て」
翠「はいですぅ」

今日の私はどうかしてるのだろうか
あんなに思い出したくはないようなことを、人に話す気になるなんて

――――――――――――

グスッ…ヒクッ…

いったいどの位泣いたんだろう
公園で泣くのなんて何年振りかな
きっと周りの人は変な目で私を見たんだろうな

8時か…JUN君ご飯どうしてるかな?
泣いてばかりなんていられない、そろそろ帰らなくちゃ


ガチャ…

のり「ただいま~…あれ?JUN君いないのかな」

いつもは2階の電気が付いてるのに

ガチャ…

のり「JUNく~ん…?やっぱりお部屋にいない…」

そうか、きっとお腹が空いたからご飯買いに行ったんだね
夜なら外に出れたんだ、知らなかったな

そういえば、JUN君の部屋って以前と大分違うな
私、JUN君のこと見てるようで全然見てなかったのかな?

――偽善者っぽいよね――

違う!違う!
私はいつだってJUN君のことを見てたはず

――のりのこと嫌ってるよね――

そんなことはない!
ちょっと口が悪くて素直じゃないだけで、
JUN君が私のことを本気で嫌ってるなんてないもん

カチッ…

きゃっ、キーボード押しちゃった
もしかして壊れたの?
………なんだ、スクリーンセイバーがはずれちゃっただけか

<交流チャットコミュニティ【薔薇の楽園】>

ばらの…らくえん?何だろうこれ
JUN君チャットなんかしてるのかな

ガチャッ!

へ!?

JUN「な、何やってんだよ 僕の部屋で!」
のり「ふぇ!?ち、違うのよJUN君お姉ちゃんはお部屋を少し見てただけで…」
JUN「見てた?あれほど僕のパソコンはいじるなって言ってあったのに!?」
のり「パ、パソコンは違うよ お姉ちゃんはお部屋だけ」
JUN「うるさい!そうやって言うことだけは優しいくせに僕のことはどうせ
  全然信用してないんだろ!」
のり「違うよ、お姉ちゃんはいつもJUN君のこと信じてるから」
JUN「だまれよ!偽善者ぶるのもいい加減にしろよ!」

のり「ッッッ」
JUN「あっ…」

のり「う、うぅぅ…」

バタンッ!

タッタッタ…

JUN「飯、いつも作らせてるからあいつの分も買ってきたのに…
  どうして、いつもこうなんだ…」


ハァ、ハァ、ハァ…

駄目だな、私って
大好きなJUN君にまで偽善者って言われちゃった
もう…私、自分が嫌だよ
どうすれば言いの?
パパ、ママ…私もう分かんないよ

「お嬢さん」

のり「へ?わ、私ですか」

「はい、こんな雨の中一体どうしたものかと思いまして」

あ…雨降ってたんだ、気づかなかった

のり「えっと、それよりあなたは?」
白崎「おっと、自己紹介が遅れました わたくし
ここのネットカフェの店長を務めています白崎と申します」

ネットカフェ?本物のカフェの方が似合ってるけど…

白崎「何があったかは存じませんがそのままだと風邪を引かれてしまいます
  初回はお安くしておきますからうちでシャワーでも浴びて
制服を乾かしたらいかがでしょう?」

確かに凄いずぶ濡れだ
このままじゃ学校に行けなくなっちゃう―――学校、明日は行きたくないな

のり「すみません、ここは明日の午後まではいられますか?」
白崎「はい、一晩お休みになられるようにリクライニングベッドを完備しております」
のり「じゃあ、明日の午後までで」
白崎「かしこまりました、当店では只今大人気の薔薇の楽園を全てのパソコンに
  インストールしてあります」

薔薇の楽園?確かJUN君のパソコンに写ってたやつだ

のり「それをやらせてください」
白崎「かしこまりました」


ピッ…
ブウゥゥゥゥゥゥゥン…

<交流チャットコミュニティ【薔薇の楽園】>


これが薔薇の楽園…
どうやるんだろう?
まずは名前ね、“のりっち”で良いかな
次はお部屋作りね
えっと…

【誰か私の悩みを聞いてください】

これで良いかな

①>どうしたの?何かあったのかな
②>話してみてよ力になれるか分からないけどさ

わ、もう誰か入ってきた しかもタイピング早いなぁ

のりっち>実は弟のことで相談があるの
① >どんなこと?
のりっち>引きこもりの弟から拒絶されてるの、そして友達からは偽善者だって言われて
  どうすれば良いか分からなくて
②>うわ、いきなり重いなあ
③>俺たちにで何とかなるか
④>なるかじゃねえ!するんだよ
⑤>お前ら真面目に考えろよ、部屋に制限付けてねえから凄いたくさんくるな
⑥>俺らは大真面目よ
⑦>なあ、ここで話し合っても不毛じゃね?部屋に制限付け直すか
もしくはあの人に頼もうぜ
①> それ良いな、あの人ならのりっちの悩みも解決できるかもな
②> 今から俺たちが絶対の自信を持ってある人物を紹介するから
その人に手紙を出してみな

――――――――――――――

足取りが、重い
結局、話が終わった後真紅も翠星石も言葉を発することはなかった
真紅は話すのを辛そうにしていて、翠星石はそれを辛そうに聞いていた
もちろん私もだ

悲しい
幸せはほんの一瞬で崩れるものなんだと分かった
なんで自分はその場にいることができなかったのか、凄く悔しい
力になりたい
でもどうやって?
それに例え私がその場にいてもどうすることもできなかっただろう

だって、私は…

やめよう
今は何も考えないほうが辛くない


ピッ…
ブウゥゥゥゥゥゥゥン…

<交流チャットコミュニティ【薔薇の楽園】>

手紙>etc―――――――
  >etc―――――――
  >etc―――――――
  >etc―――――――


あ、いつもの癖でパソコンを点けてしまった
いっぱい来てるな
でも今日はやめよう、こんなもやもやした状態じゃ人の悩みを
聞いてあげることなんてできない

ごめんね、また明日みんなの手紙見るからね




手紙>弟のことで相談があります

To be continued.

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最終更新:2006年09月17日 23:23