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「一つ屋根の下 第三十五話 JUMと赤ちゃん」



「JU~M!ちょっときやがれですぅ!」
僕が部屋でPCをいじってると階下から翠姉ちゃんの呼ぶ声がした。
「ん~?なぁに、翠姉ちゃん。」
「これから晩御飯の買い物いくですぅ。JUMも着いて来やがれですぅ。」
まぁ、体のいい荷物持ちだろう。ちなみに、現在我が家には僕と翠姉ちゃんだけだ。銀姉ちゃんはめぐ先輩と
遊びに行ったし、カナ姉ちゃんは部活。蒼姉ちゃんは薔薇姉ちゃんに拉致されて喫茶ラプラスでバイトだ。
んで、真紅、ヒナ、キラ姉ちゃんの1年生チームは柏葉と遊びに行ってるらしい。
「え~……めんどくs(ry」
「来ないならJUMのパソコンの中にあるエロイ動画を姉妹にばら撒くですよ?」
そろそろパスワードの変え時のようだ。他の人に知られてはパスは意味を成さない。
「はぁ……分かったよ。じゃあ、僕着替えてくるから。」
「分かれば宜しいですぅ。か、勘違いするんじゃねぇですよ?男手が欲しいだけで別にJUMと買い物でデート
気分を味わいたいわけじゃねぇですからね!?」
いや、そんなトコでツンデレられても。しかも、ベタ。とりあえず僕は部屋で着替える。ふと、インターホンが鳴る。
「は~いですぅ~。あ、桃種さん。はい……はい……」
どうやら来客はお隣の新婚さんの桃種さんのようだ。桃種さんは若い夫婦とまだ1歳にならない赤ちゃんの
3人暮らしのお隣さんだ。姉弟だけで住んでるウチをよく気にかけてくれるいい人だ。着替え終わった僕は
財布を持って階下へ行く。
「姉ちゃん、桃種さん何だって……ナニソレ?」
僕が玄関に行くと、赤ん坊を抱いた翠姉ちゃんがいた。
「はぅ……可愛いですぅ……桃種さんがどうしても今日だけ預かって欲しいって。普段からお世話になってる
から赤ちゃん預かったですよ。きゃっ、翠星石の手を握ったですぅ……」
翠姉ちゃんは赤ちゃんにデレデレしている。まぁ……一日くらいなら何とかなるだろう。


「おや、翠ちゃんの赤ちゃんかい?旦那さんは……ははぁ、JUM君だねぇ?」
「ち、違うですぅ!す、翠星石が何でJUMとの赤ちゃんなんかを……桃種さんの赤ちゃんですぅ。」
結局、僕等赤ちゃんを抱いたまま街に繰り出した。翠姉ちゃんはよく買い物してるせいか、お店の人とかとは
結構顔見知りだ。桃種さんの赤ちゃんは随分大人しく、翠姉ちゃんにジャレつきながらキャッキャッと笑ってる。
「さて……JUM、ちょっとこの子を抱っこしとけですぅ。荷物は翠星石が持つですから。」
翠姉ちゃんは僕に赤ちゃんを抱き渡す。僕は、赤ちゃんを受け取る。有難い事に泣きそうになるわけでもなく、
人懐こいのか今度は僕とジャレだした。翠姉ちゃんと二人で、僕は赤ちゃんを。翠姉ちゃんは晩御飯の
材料をもって街を歩く。ふと、そんな僕らをみた人たちの声が耳に入ってくる。
「見て見て、若い夫婦ねぇ~。新婚さんよきっと。でも、赤ちゃん可愛い~。」
「いいんじゃない?若くても、とっても仲良さそうな夫婦よ。赤ちゃんも幸せそうだもの。」
いや、実際若い……ていうか、翠姉ちゃんはともかく僕は結婚できる歳じゃないんだが。
翠姉ちゃんを見ると、顔を赤くして歩いていた。
「J、JUM……その……翠星石達は……新婚さんに見られてるですかね…?」
「……さぁ?僕等は姉弟だし、そもそもこの子は桃種さんの赤ちゃんだし。」
「そんな事聞いてるんじゃねぇですよ……そう見られてるって事は…ああ、もういいですよ!JUMの鈍感!」
翠姉ちゃんは何故か、ムスっとしながら家へ歩いていった。
「だぁ~?」
「ねぇ~。あのお姉ちゃん変だね~?」
僕は赤ちゃんと会話っぽいものをしながら家路へついた。


さて、家に帰ったがまだ誰も家には帰ってきてなかった。早く夕飯作っても冷めたら意味ないし……って事で
僕と翠姉ちゃんはリビングで赤ちゃんと戯れていた。
「ん~、可愛いですねぇ~……何だかその…翠星石も赤ちゃん……欲しくなるですぅ…」
なかなかトンでもない事を翠姉ちゃんが言う。翠姉ちゃんは赤ちゃんを膝に乗せてウットリしてる。
まぁ、確かに……赤ちゃんってのは人を幸せにさせるオーラがある気がする。穏やかな気持ちになれる。
「J、JUM……そのぉ…今日だけは翠星石がこの子のママですよね?」
「ん?まぁ、確かにそんな感じかもね。なかなか似合ってるよ、翠姉ちゃん。」
何時もの毒気が完全に抜け切ってる翠姉ちゃんだ。普段からこうならなぁ……それはそれで怖いかもだが。
「それで、ママだけってのも変です。だからそのぉ……J、JUMがこの子の……えっと…ぱ、パパ…ですね。」
翠姉ちゃんが顔を真っ赤にして言う。それはつまり、そういう事だよね。
「翠姉ちゃん、それってその…僕と翠姉ちゃんが夫婦って事……」
「うぅ……JUMは嫌ですか…翠星石が…お嫁さんじゃ…」
何時もなら「調子に乗るんじゃねぇです!」とか言いそうなものだが、今日はドコまでもしおらしい翠姉ちゃん。
「そんな事は……ないかと……多分……」
何時もの翠姉ちゃんと違うだけでこんなにドキドキするものなんだろうか。僕と翠姉ちゃんは見つめあう。
「JUM……赤ちゃんにとっていい影響が出る夫婦生活知ってるですか?それは、夫婦と赤ちゃんが
いつでも仲良くいる事らしいですぅ……こ、この子に翠星石達が仲いい事を教えてあげるですぅ……
そ、その…あくまでこの子の為ですよ?だから……勘違いするなですぅ…」
「翠ねえちゃ……んんっ……」
それは余りに急な出来事だった気がする。翠姉ちゃんが赤ちゃんの為になる講座を開いたかと思えば、
僕と翠姉ちゃんはキスをしていた。急な事で僕は目を閉じたけど、薄っすら目を開けると翠姉ちゃんは
これ以上ないくらいに顔を赤くして目をギュッと瞑っていた。
「んんっ……ぷはっ、翠姉ちゃん…」
「翠姉ちゃんじゃねぇですぅ…今は夫婦だから、そのぉ…翠星石…って呼ぶですよ。」


「う、うん……」
「ほら、見るですぅ。この子も嬉しそうに笑ってるですよ?きっと翠星石達の想いが届いたですね。」
赤ちゃんは僕らを見て天使の様な笑顔を向けていた。翠姉ちゃんの言った事も満更じゃないのかもしれない。
「えへへっ…JUM…おっと、違うですぅ。夫婦だから…あなた…」
「翠ねえちゃ……いや…『ただいま~!帰りにみんなで会ってさ~…』翠星石……」
時が止まった。簡単に状況を言おうか。どうやら姉妹は帰りに合流したらしく、蒼姉ちゃんを先陣にリビングの
ドアを開いた。んで、姉妹の目に映る僕たちは赤ちゃんを抱っこしながら体を寄せ合ってる僕と翠姉ちゃん。
オマケに、普段は絶対に呼び捨てにしない僕が翠星石なんて呼び捨てで呼んでいる。そこから導かれる
答えを求めよ。
『……いやああああああああ!!!JUMと翠星石に子供がぁあああああ!!!???』
他の姉妹は見事に一字一句変わらずにはもって叫んだ。ああ、さすがは姉妹だ。
「いや、ちが!どう考えてもオカシイ……」
「そうですよ?今日は翠星石とJUMは夫婦。新婚さんで、この子が翠星石達の赤ちゃんですぅ!」
翠姉ちゃんが空気を読まずに状況を極限まで悪化させることを自慢げに胸を張って言う。
というか、姉ちゃんたちも気づいてください。
んでだ……数十分混乱してようやく事態は収拾された。
「はぁ、ビックリしたぁ…そうよねぇ…水銀燈が先を越されるわけないものねぇ…」
銀姉ちゃんが赤ちゃんを抱っこしながら言う。長女のせいか、多分末っ子のキラ姉ちゃんやヒナ姉ちゃんを
抱っこしてた事もあるのだろう。抱き方が堂に入っている。
「水銀燈、私にも抱かせるのだわ。はぅ……赤ん坊はいいわね……癒されるのだわ。」
「ぱい…ぱい…」
真紅姉ちゃんに抱かれた赤ちゃんは真紅姉ちゃんの胸をぺちぺちと叩く。お腹空いたのか?
「え……ごめんなさいね。私はまだおっぱいは出ないのだわ。」
「いや、真紅はおっぱい自体がない……ひっ!!?」
真紅姉ちゃんの鋭い眼光が銀姉ちゃんを射抜く。赤ちゃんが泣かないくらいにしといてね、二人とも。


「そういえば、この子なんてお名前なのですか?」
キラ姉ちゃんが抱っこしながら言う。食べちゃダメだよ?まぁ、一応……
「そういえば聞いてねぇですぅ……」
「じゃあ、今日だけで決めちゃいましょうかぁ。JUM銀燈でどぉ?」
うわぁ、安直なネーミング。くっ付けただけが丸分かりだぁ。
「水銀燈ったら安直過ぎるかしら。カナならJU糸雀(ジュリア)ってつけるかしら!」
JUM銀燈よりはマシだけどさ……何だか田舎のヤンキーみたいな名前だよ?カナ姉ちゃん。
「僕なら……JUM星石……とか……」
それも安直です。しかも、明らかに翠姉ちゃんと被る気がしますよ、蒼姉ちゃん。
「JUM紅何てどうかしら?」
「それ、響きがジャンクみたいよぉ~?」
「うっ……じゃあ……じゅ、ジュウク……」
何だか夢をテストの裏に書いて、紙飛行機にして明日に投げそうな名前だ。
「はーい!ヒナはね~…」
「JUM苺とか言わないでね、ヒナ姉ちゃん。」
とりあえず僕は釘を刺しておく。図星だったのか、ビクッと体を震わせるヒナ姉ちゃん。
「そ、そんな事言わないのよ~?えっと……そう!苺JUMなのよ~!いっちごJUM~♪いっちごJUM~♪」
最早ツッコミどころが多すぎる。キラ姉ちゃんと薔薇姉ちゃんは赤ちゃんと遊ぶのに夢中なようで、赤ちゃんの
名前(仮名。あくまで仮名)を決めるのなんてどうでもよさそうだった。そんなこんなで、21時前には赤ちゃんは
寝てしまった。スヤスヤと幸せそうな顔で寝る赤ちゃんを見てるだけで本当に癒される。僕たちはただ無言で、
眠る天使の寝顔をずっと見ていた。


それからしばらくし、22時ごろに桃種さん夫婦が赤ちゃんを引き取りに来た。姉ちゃん達は相当名残惜しそうに
赤ちゃん達を見送っていた。まぁ、正直僕は子供ってあまり好きじゃなかったけど……やっぱりイイモノかなぁ
なんて今日一日で意識が変わってしまった。
「赤ちゃん可愛かったの~!ねぇねぇ、JUM~!
ヒナ姉ちゃんが目を輝かせて言う。それは、とんでもない発言だった。
「赤ちゃんてどうやったら出来るのなの?ヒナも赤ちゃん欲しいのよ~!」
真紅姉ちゃんが飲んでた紅茶を盛大に吐き出す。ヒナ姉ちゃん、保健の授業受けてましたか?
「ええっと、それは…おしべとめしべがごにょごにょ……マツタケとアワビが……かしら?」
カナ姉ちゃんが顔を赤くして意味不明な説明をする。すると、銀姉ちゃんが不敵な笑みを浮かべる。
「いいわぁ、ヒナ教えてあげるわぁ……そのために♪」
僕の背筋がゾクッとする。
「JUM!ヒナのためよぉ。お姉ちゃんと一緒に寝ましょう~?」
ガバっと抱きついてくる銀姉ちゃん。そんな銀姉ちゃんを引っ張り剥がしたのは意外な人だった。
「水銀燈!勝手な事言うなですぅ!」
その勇者は翠姉ちゃん。僕は翠姉ちゃんに感謝しつつ……同時に後悔もした。
「JUMと翠星石は今日は夫婦なんですぅ!夫婦ならナニしても問題ないです。だから……赤ちゃん作る
ですよ、JUM!!今日はまだ1時間ちょっと残ってるですぅ!」
何ともとんでもない事を言う翠姉ちゃん。それを皮切りに再び我が家では騒動が巻き起こっていた。
まぁでも……いつかは僕もきっと……
END


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