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薔薇水晶の奇妙な学園『ファントムラビット』

その夜、どこからともなく一本の矢が空をやって来た。目的は分からない。
ただ、その矢は物凄いスピードで空を切り、幾人の人間をその身で貫き、
そして最後に一人の少女の胸を貫くと薔薇学園に、落ちていった。


ふとした瞬間、己の運命を全て変えてしまうような出来事が起こる

日常はすぐ側なのに運命が日常を遠く離す

日常が新たな物語を呼び込む

少女の運ばれた病院、そこからこの物語は始まる


誰・・・・?誰が・・・・・私の名前を・・・・?
私の名前を呼ぶ声に私は鉛のように重たいまぶたをどうにか開けた。
世界がぼぉっと霞んでいて私の視界を蛍光灯の光が
一本の筋になって流れていく。
体は動かない、ただ胸に熱くて焼けるような痛みが走る。
どうも私は病院にいるみたい。私の視界の中に看護婦さんがいて
しきりに意味不明な言葉を言ってる。
シッケツガオオイ?脈が弱い?・・・・あ、これは分かるや。
でもおかしいな、さっきの声はこの看護婦さんじゃないよ。
誰だろ・・・・・?

・・・・!!!!

あ、まただ。声のする方を見る。するとそこにはみんながいた。
ジュンに真紅、雛苺、金糸雀、銀ちゃん、翠星石に蒼星石。
あ、ベジータと笹塚もいる。
でも・・・・・残念だなぁ・・・・話したいのに・・・すごく・・・
あれ・・・・・すごく・・・・・ね・・・・む・・・・い。

深夜を過ぎた待ち合い室、そこで数人の男女が椅子に座っていた。
皆一様にして面持ちは暗く、時折誰かの啜り泣く声がした。
銀「何でよぉ・・・何であの娘がぁ・・・」
紅「落ち着きなさい水銀燈・・・大丈夫よ、あの娘なら・・・きっと。」
顔を押さえて号泣する水銀燈、そんな彼女の肩を引き寄せ、
支えになってやろうとただ抱きしめてやる真紅。
その隣でも同じように翠星石が蒼星石の胸を借りて泣いている。
雛苺と金糸雀はお互い泣き疲れたのか待ち合い室にあった
ソファで毛布を掛けられ眠っていた。
そんな光景を横目に見ながら三人の男子が窓の外を見ていた。
ジ「何が・・・あったんだよ、ベジータ・・・・」
ベ「俺も知らん。銀嬢が血まみれの薔薇水晶を抱えて俺のトコに来たんだ。」
笹「それって・・・水銀燈が・・・・」
ジ「そんな訳ないだろ。不謹慎すぎるぞ笹塚。」
笹「ごめん・・・・でも、一体何があったんだろ・・・」
ベ「さあな、でも今日で何人も薔薇水晶と同じような目にあった奴が
  いるらしいな。通り魔か何か・・・・・そんなトコか。」
ジ「ああ、だろうな・・・しかし、もう手術が始まって三時間か。」
ベ「もうそんなになるか。最悪の気分だ・・・地獄だな。」

それから一時間後、手術が終わり、赤のランプが消えると手術室のドアが開いた。
中から緑の手術着を着た医者がでてくる。
紅「・・・あっ!水銀燈っ!!」
真紅の叫び声、クラスの人間がそちらを振り向く。見ると水銀燈が今にも医者を
殴り飛ばしかねない勢いで医者の胸元を掴んで叫んでいた。
銀「薔薇水晶は!!薔薇水晶は無事なの!!??ねえ!!答えなさい!!」
突然の事に驚く医者。ヒステリックな声を上げる水銀燈をベジータとジュンが
どうにかして引き離して落ちつかせる。乱れた着衣を直しながら
その医者は涙でグシャグシャになった水銀燈に近寄り、彼女の前に立った。
医者「大丈夫だよ、君の友達は・・・・もう安心だ!」
その瞬間、待ち合い室を大歓声が響いた。クラスメイトが助かった嬉しさで
男女構わず手を取り合い抱き合う。
銀「じゃ・・・じゃあ薔薇水晶はもう大丈夫なのね!?
  ああ!!良かった・・・・良かったよぉ真紅ぅ・・・!!!」
紅「ええ、そうね水銀燈・・・」
ジ「でも先生、いったい・・・薔薇水晶に何があったんですか?」
医者「ああ。右胸、心臓の近くに大きな穴が開いていた。
  まるで矢で撃たれたような、ね。」
笹「矢・・・・?」
医者「今日だけでも同じような患者が数人運ばれてる。死人も何人か出ている。
  まったく・・・・危ない世の中になったもんだ・・・」
医者はそこまで言うとその場を去った。と、ベジータのケータイが鳴った。
笹「ベジータ・・・病院はケータイ禁止だよ・・?」
悪い悪いと笑いながら謝るベジータ、が、ケータイを見た瞬間彼の顔が凍りついた。
ジ「どうしたんだベジータ?」

ベ「梅岡も・・・・・入院した。」

翌日から学園は大混乱だった。一日で生徒一人、教師一人が謎の通り魔に襲われ入院。
しかも犯人はいまだ捕まらず。この為学園では二日後緊急の全校集会が開かれ、
当分の間、学校周辺の見回りを行う事が決まった。
ジ「しかし、薔薇水晶だけじゃなく梅岡まで襲われてたなんてな。」
紅「ええ、驚きだわね。大の大人まで襲うなんてリスクが高すぎるわ。」
蒼「だね。しかもこの犯人、何も証拠を残してないらしいよ。」
ベ「洒落にならないな。まぁ、あの教師の顔が見れないのは幸いか。」
雛「ベジータ~、それは言い過ぎ・・・」
そこまで雛苺が言った時だった。体育館のドアが大きな音を立てて開いた。
光の差し込むそこには梅岡の姿。体育館の中をどよめきが走った。
入院しているはずの梅岡が平然とそこに立っていたのだから。
ムスカが檀上から降りて来て梅岡に駆け寄る。
ムスカ「梅岡君!!君はもう大丈夫なのか!?かなりの怪我だと・・・」
梅「ああ~、全然大丈夫ですよムスカ校長。ええ、何だかすっごい良い気分ですよ・・・」
ムスカ「しかし、体に無理はいけないのではないのかね?」
梅「い~やいや、生徒を放ってはおけないでしょ?授業を放棄しちゃうとか
  せーとのやる事ですしねぇぇ?だからやりますよ、ええバッチリ。」
ニヤリと笑う梅岡、その不気味さにムスカの背筋に脂汗が流れた。
その笑いに生命の危険を感じた。
ムスカ「な・・・なら授業に復帰すると良い。君が良ければ・・・・」
梅「それは、どーもどーもありがとうございます。はい、私、
頑張らせて頂きますよ・・・校長。」

この時、誰も梅岡の異変に気付く者はいなかった。ムスカを除いて・・・・

全校集会が終わり、いつものように授業が始まる。この薔薇学園、
一部の教師を除き(アーカードなど)、私語などが起きるのは
日常茶飯事である。
もちろん、病院から復帰したばかりの梅岡も例に漏れずである。
ベ「は~、せっかく病み上がりでもやってる事は変わらないんだな、つまらん。」
銀「はあ・・・・これだったら薔薇水晶のお見舞いに行く方が有意義だわぁ。」
蒼「ちょっと・・・二人とも、騒がしすぎるよ?あんまりうるさいと・・・」
梅「おォォーい、そこの二人ぃぃ~~。うるせぇんだけどなぁぁー?」
蒼「ほら!」
ベ「ほっとけ。またいつものように授業するだろ。」
銀「そぉよ蒼星石ぃ~♪怒る気なんてアイツには・・・・っきゃぁ!!」
突然の水銀燈の悲鳴、クラスが水銀燈を見た。梅岡が水銀燈の目の前に立ち
彼女の髪を引っ張っていたのだ。今までの梅岡では考えられない
その行為に全員が息を飲んだ。
梅「あぁぁ~ん??今、俺が私語を止めろって言っだのが聞こえませんでしたかァー?
  今は授業中なんですがねェェーー?!分がっだら黙れ、良いか?オーケー?」
余りにも乱暴な梅岡の行為、痛い痛いと呻く水銀燈の姿を見兼ねて
ベジータが立ち上がり未だ水銀燈の銀髪を掴む梅岡へ近寄る。
ベ「おい梅岡!!いくら何でもやり過ぎだ!!銀嬢から手を放せ!」
梅岡の肩に手をかけベジータ、と梅岡がベジータに振り向いた。
梅岡「黙れェェーー!!貴様も黙れって言ったんだよベジータァァ!!」
梅岡が叫んだ瞬間、ベジータの身体が床に崩れた。

今、何が起きたんだ?クラス全員の視線がその場に倒れたベジータと梅岡に注がれる。
確かに梅岡はベジータに触れてはいなかった。しかし、ベジータは
まるで腹を殴られたみたいに腹を抱えて苦しそうな呻き声をあげている。
梅「あーあ、叫んだ位でへばるなよベジータ~。お前っとそんなヘタレかぁ?」
呻くベジータを見下ろしながら蔑むように笑う梅岡、と水銀燈から髪を放し、
ベジータに近付く梅岡。今度は何を?生徒は梅岡に恐怖し身を堅くした。
梅岡はベジータの顎を掴むと自分に視線を合わさせた。するとベジータの全身が
ガタガタと震え始め、瞳が恐怖一色に染まっていく。
ベ「あ・・・・ぅあぁ・・・ああ・・・」
梅岡はベジータが震える様子にニヤリと笑い、教壇に戻った。
誰も動けなかった。
梅「まぁ、今まで何もしなかったけどさぁ、今度からはあんまりうるさいと
  俺、マジで怒る訳だから。まあ、良く覚えててくれよなぁ♪」
不気味に笑う梅岡、涙を頬に浮かべ震える水銀燈、そして放心状態のベジータ。
不気味なオーラを漂わすこの教室で梅岡に反抗する者は誰もいなかった。

この日、梅岡は学園内で最も恐れられる教師となった

目を覚ますと、空はもう日が傾き始め、病室の中はあかね色になっていた。
薔薇「結構・・・・寝てたんだ・・・私。」
確か、お昼を食べてスグだったから4時間は寝てたみたい。
一回大きくアクビをして、私はパジャマのボタンを外して胸の傷口を見てみた。
あの日私の胸を貫いた何かの痕、不思議な事にそれはもう塞がり始めてる。
これを見た先生、傷の直りの早さにビックリしてたなぁ。
私はパジャマのボタンを戻して外を見た。
薔薇「もうすぐ・・・・みんなに・・・・会えるなぁ♪」
私は窓の外を見ながらちょっと口笛を吹いた。ちょっと傷口が痛むけど気にしない。
だって昨日まではダメだった家族以外の面会が今日からは皆に会える久々の日だから。
私は皆が来るまでの暇な時間をマンガを見て過ごす事にした。
お母さんが私の部屋から沢山持ってきてくれていたから
飽きる事はなくて、気付いたら、いつのまにか時計は5時になりかけていた。
皆遅いな、そう思った時だった。
「薔薇水晶~お友達が来たよぉ。」
お母さんの声が病室の外からした。それに続いて皆の姿がドアから出てきた。

薔薇「あ♪・・・みんなおひさし・・・・」

私はそこまで言って言葉を失った。有り得ない光景が広がっていた。

私の病室にやって来たのは真紅、ジュン、銀ちゃんの三人だった。
三人がそれぞれ私に挨拶をしてくる。だけど私にはその言葉は入らない。
私は銀ちゃんについたあるモノから目が離せなかったから。
銀ちゃんの綺麗な銀色の髪、そこにオモチャの人形にしては悪趣味な、
頭の異様に大きいキンパチみたいな小人がくっついていた。そしてそれは
銀ちゃんの頭を押さえ付けるようにしがみついて鋭いその爪を
銀ちゃんの頭に突き刺していた。
私は声が出なかった。だって、こんな不気味なモノが目の前にあるのに
真紅もジュンも銀ちゃんの異変にまったく気付いていなかったから。
薔薇「真紅!!ぎ・・・銀ちゃんの・・・か・・髪に・・・・変なのついてる!!」
私は大声を上げてジュンや真紅に知らせる。だけど二人とも変な顔をして私をみる。
ジ「何言ってんだ薔薇水晶?いつも通りの水銀燈じゃないか。」
紅「髪になんか何もついてないじゃない。変な娘ね。」
二人にはあの人形が見えていない!?私は銀ちゃんを見た。いつものように
笑う銀ちゃん。だけど今目の前で笑ってるの銀ちゃんは私の知ってる銀ちゃんじゃない。
私の中で何かがそう告げている。

薔薇「真紅・・・ジュン・・・・銀ちゃんと話があるの・・・
  二人だけに・・・・・して・・・・。」

私の胸は急激に熱を持ち始めていた。

いぶかしげな顔をして真紅とジュンは私の病室から出ていった。
薔薇「オマエ・・・・一体・・・何者?銀ちゃんに・・・何をした?」
私は銀ちゃんでなく、人形に話しかける。人形は動かない、
代わりに銀ちゃんの口が動く。
銀「何言ってるの?私だよ、水銀燈だよ?変だね、薔薇水晶。」
無機質的な音声、抑揚のない口調。違う、こんなの銀ちゃんじゃない。
銀ちゃんはコイツに操られている、直感だったけどそう思った。
だから確かめてみた、これが私の幻覚じゃないかどうか。
薔薇「銀ちゃんから・・・・離れろ・・・・オマエ。」
銀「何を言うの薔薇水晶?私だよ?変な事言わないで。悲しいよ、私。」
薔薇「お前は・・・銀ちゃんじゃない・・・・銀ちゃんは・・・・
  私の前では・・・・ボクって・・・言う!」
銀「あ・・・・ボクは水銀燈だよ。変な・・・」
薔薇「簡単な手に・・・・・騙されたな・・・マヌケ!!・・・銀ちゃんは・・・・
   そんな話し方・・・・しないんだ・・・・人形!」
私に騙されたのが分かったのか人形は顔を歪め、銀ちゃんの頭を離れ
私に襲い掛かってきた。気絶した銀ちゃんを抱えた私に、
鈍い光を放った爪が私を切り裂こうとする。
間に合わない、私は目をつむった。

誰か・・・・・助けて!!!!

そう思った瞬間だった。


私の胸が今までにない熱を持った


ドグシャァ!!!

スイカか何か、中身の詰まった物が潰れたような音が私の耳に届いた。
『グギャァァァァァアアアア!!!』
突然の甲高い叫び声、驚いて私は思いがけず目を開けた。また、目の前に
信じられない光景が広がっていた。
壁に叩きつけられたのか頭をバックリと割られ地面を転がりまわる人形、
そしてそれに相対するようにタキシードを着たウサギ頭の男が私と
銀ちゃんの前に立っていた。余りにも突拍子もない事ばかり、
だけど、何故か私はこのウサギを理解できた。
私は立ち上がり、銀ちゃんをベッドに寝かせると、またあの人形に相対した。
人形は私を狙ってかカチカチと爪を鳴らした。
薔薇「来い・・・・お前なんか・・・ 恐くない。」

人形が私に飛びかかる

私は人形に意識を集中させた

イメージを抱く、奴を殴るイメージ、ボコボコに・・・・形がなくなる程の!!

瞬間、ウサギが人形をステッキで突き上げ空中に投げた

これで・・・・・・終わりだ!!


トリャトリャトリャトリャトリャトリトリビアァァーーーールッッ!!!!!!!


掛け声と共に放たれるウサギのステッキの連打の応酬、人形は完全に砕け散った


破片になった人形、それは床に落ちるとチリになって消えてしまった。
それを見届けてからウサギは私の中へと姿を消した。しかし今の人形にしろ、
私の中に消えたウサギにしろ一体何が?確かに今、私は無意識にウサギを操って
あの人形をやっつけた。だけど何で私がこんな力を?
銀「ん・・・んん・・・」
あ、銀ちゃんが気付いたみたいだ。私は考えを一先ず止めて銀ちゃんにかけよる。
薔薇「銀ちゃん・・・・・大丈夫?」
声をかけると銀ちゃんはうっすらと目を開けて私を見た。
銀「薔薇水晶・・・?あれ、私何で病院にいるわけぇ?
  おかしいわぁ、まだ授業してたのにぃ。」
キョロキョロと訳が分からないと言った顔で辺りを見回す銀ちゃん。
さっきまでの記憶がない?という事はやっぱり今、私が体験したのは夢じゃない?
薔薇「どしたの・・・・銀ちゃん?今・・・私の病室に来たばっかだよ?
   私の・・・お見舞いしに。それで・・・・いきなり・・・・・倒れた。」
銀「え、そうなのぉ!?あ、ごめんね薔薇水晶ぉ、いきなりそんな事しちゃって。
  でもおかしいわぁ、さっき梅岡の授業受けてたばっかなのよ、それでアイツに
  髪引っ張られて、ベジータが殴られてそれで・・・・・
  あれ?おかしいわね、思いだせない。」
やっぱり、夢じゃない。銀ちゃんに付いていたあの人形はいた。多分、
あの頭に刺した爪で銀ちゃんを操っていたんだ。
そして人形の持ち主は・・・・・

銀「あ、薔薇水晶!何で立ってんの傷が開いちゃうじゃなぁい!もお!!」
薔薇「うわぁ!・・・ワタシ・・・大丈夫だって・・・平気だから・・銀ちゃん!」
私をベッドに押し倒して無理矢理寝かせようとする銀ちゃんに
抵抗してパジャマが拍子にはだける。
銀「だめ!!アンタ胸に大怪我して・・・・た・・・・・」
銀ちゃんははだけたパジャマの下にある傷口を見て驚いていた。
薔薇「??・・・・銀ちゃん?」
銀「あれ・・・・ない、キズが・・・・ない?」
私はすぐさま胸元を見た。
銀ちゃんの言った通りだった。

傷はどこにもなくなっていた

それから大変だった。傷がなくなった話はすぐさま先生に伝えられ、
私は検査にかけられた。
大丈夫って言ってるのに何回も検査された後、ようやく私はどこにも異常が
ないと認められやっと退院をしていいと先生に言われた。
結局、ジュンや真紅、銀ちゃんとはまったく話はできなかったなぁ。
薔薇「はあ・・・・・やっと・・・・帰って来たよ・・」
私は自分の部屋に入るとそのまま自分のベッドに横になった。退院祝いで
お母さんとお父さんにご馳走されてお腹はいっぱいだったけど
眠くなるどころか不思議と頭はハッキリとしていた。
昼間の事が頭から全然離れなかったから。
銀ちゃんの頭に取り付いた不気味な人形、私の身体から出て来たウサギ男、
それを操って人形を倒した私自身、色んな事で頭がいっぱいだった。
私は起き上がり、Tシャツを脱いで、傷があったはずの場所を鏡で見てみた。
傷はやっぱりどこにもない。いったい何で消えてしまったのか、
本当に訳がわかんない。私は服を着直して、今度は部屋の電気を落として
ベッドに横になった。
ベッドから見える窓の外、月はなくて星が綺麗に光っている。
薔薇「いったい・・・・何だったんだろ・・・・あれ。」
私は星の光に見ながら溜め息をついた。

「なら、教えてやろう。」

私はいきなり部屋の中で聞こえた声に驚き、その方を見た。青白い光に包まれた、
車椅子の外人さんが私を見ていた。
薔薇「あ・・・・貴方・・・・だれ?」

「私の名はジャン・ピエール・ポルナレフ。君の今を良く知る者だ。」

ポルナレフと名乗ったその人は車椅子を押しながらベッドの上で座る私に近付いてきた。
ポル「まずは私の名前を名乗らせてもらったが君の名前も教えてくれ、お嬢さん。」
薔薇「私は・・・・薔薇・・・・水晶。」
ポル「そうか。ではミス薔薇水晶、君の今のその状態を話そう。」
ポルナレフはそう言うと、また私から離れ、私に相対した。
ポル「君は大怪我をした、ある『矢』で貫かれて。その『矢』は元々はこの世界に
   存在しなかった物だったのだがあるキッカケでここに来た。」
薔薇「どういう・・・・・キッカケ?」
ポル「話したいのだがその前に話さないといけない事が多いんだ、さきにそちらを話そう。
薔薇「・・・・・うん。」
ポル「とにかくだ、君は『矢』で撃たれ、命を落とす事なく、
ある『力』を得た・・・・『スタンド』という『力』だ。」
薔薇「『スタンド』・・・あ!!・・・・あのウサギ!!」
ポル「そう、それだ。君は君の『スタンド』を使い、同じ『スタンド』を倒した。」
薔薇「あの・・・・人形・・・・貴方・・・・見ていた?」
ポル「ああ、見させてもらった。君の戦いを、『スタンド使い』の戦いを。」
薔薇「スタンド・・・・使い?」
ポル「君の事だ、ミス薔薇水晶。君は『スタンド使い』だ。」
薔薇「私が・・・・・・『スタンド使い』」

ポル「そう、君は『スタンド使い』だ。そして『スタンド』とは君の精神、
   生命のエネルギーが像(ビジョン)となったものだ。」
薔薇「夢じゃ・・・・ないんだよね。」
ポル「ああ夢ではない、残念ながら。更に残念な事だが、その『スタンド』を使い
   悪事を働く『スタンド使い』がこの街に生まれてしまった。君を襲った人形も
   その『スタンド使い』の仕業だ。」
薔薇「分かってる・・・でも・・・皆には・・・人形は・・・見えてなかった。」
ポル「ああ、『スタンド』は『スタンド使い』にしか見えない、
   そして『スタンド』を倒せるのは『スタンド使い』だけ、君だけなんだ。」
薔薇「私・・・・だけ?」
ポル「そうだ、現に私もスタンド使い、かつて多くのスタンド使いと戦ってきた。
   今は死んで魂だけの存在になってしまったがね。」
薔薇「貴方も・・・・・?」
ポル「そうだ、私のスタンドは『シルバー・チャリオッツ』。
   魂となった今でもスタンドはある。今、ここでお見せしよう。」
そう言うとポルナレフは私から更に距離を取った。
ポル「これが夢でなく現実であり、君が数奇な運命に巻き込まれた事を今、証明しよう!!」

 
         シ ル バ ー チ ャ リ オ ッ ツ ! ! ! 


私は見た、ポルナレフの身体から銀色の甲冑に身を包んだ鎧騎士が、
昼間、私の中に消えたウサギの逆で現れたのを。
ポル「これが私のスタンド、『シルバーチャリオッツ』だ。
   そしてこれが!!夢ではない証拠だ!!!」
次の瞬間、銀色の鎧騎士、シルバーチャリオッツはその手に握った剣で
私の机にあった空のガラスの小ビンを真っ二つに両断した。
ポル「見てみるといい。」
私は机に駆け寄り、小ビンを手に取った。鋭利な断面、それは小ビンの表面と
同じ明度を保っていて、最初からその形では、と疑いたくなる程にキレイだった。
ポル「これは君の戦いの始まりの狼煙だ、ミス薔薇水晶。君はスタンド使いとして
   同じスタンド使いと戦う宿命に立たされた。」
ポルナレフの低く、重たい声が私に掛けられる。
ポル「スタンド使いとスタンド使いは引かれあう。戦うかどうかは君が選べ、
   ミス薔薇水晶。だが忘れないでくれ。スタンド使いを倒せるのは
   スタンド使いだけ、君だけだと。」
薔薇「どうして・・・・・私?何故・・・・貴方じゃ・・・駄目なの?」
私はポルナレフに質問していた。今更になって私は恐くなってた。
だって私はただの女子高生、片目も見えないし、戦える訳がない。
ましてや、そんなスタンド使いなんて言う超能力者なんかとは。
たとえ私がスタンド使いだとしても・・・・
薔薇「無理だよ・・・・私には・・・・無理だよ!」

ポル「いや、君ならできる。」

私はポルナレフを振り返った。優しい微笑みが私を見ていた。
ポル「さっきも言ったが私は魂だけの存在でね、私では彼らとは戦えないんだ。
   それに私はこの世界の人間じゃない、ここには長くいられない。」
薔薇「でも・・・・戦っても・・・・私は・・・・きっと・・・・弱いよ。」
ポル「そんな事はないミス薔薇水晶。君は強い女性だ。」
ポルナレフは掴めないながらも、私の手を握る真似をしながら私の目を覗いた。
ポル「君には瞳は一つしかないな。だがしかし、あの人形との戦いのさなか、
   私は君の隻眼の瞳の中、その中に『黄金の精神』を感じたよ。それはかつて
   私が共に戦った友の瞳を思い出させるような『覚悟』と『正義』だった。
   そのような君だからこそ、君はこの運命に立ち向かえると私は信じている。」
ポルナレフの力強い瞳、私の心が次第に熱くなっていくのを感じる。
ポル「だから、私は君に頼みたい。同じスタンドとして、悪しきスタンド使いを
   止めて欲しい。私は信じる、君を、君の『黄金の精神』を。」
その言葉、それが私の心を、覚悟を生んだ。

薔薇「ポルナレフ・・・私・・・・やってみるよ・・・私・・・戦う!!」

私の言葉を聞くとポルナレフは私に背を向けた。身体を包んだ青白い光が消え始めていた。
ポル「ありがとう、薔薇水晶。ならば君にこれからを託したい。君なら、
   悪しきスタンド使いを止められる。君なら大切な仲間を守れる。」
ポルナレフの身体はどんどん消えていく。
ポル「最後にアドバイスともう一つ頼みがある、聞いてくれないか?」
ポルナレフは車椅子越しに私に振り向いた。
薔薇「・・・・良いよ。」
ポル「まずはアドバイス、スタンドには殴るだけじゃなくスタンド使いの精神特有の能力を
   持つものがある。恐らく君にもだ。それを知り、上手く使うんだ。スタンドでの戦いは
   その能力の使い方、応用の仕方をフルに想像して戦う事と理解するんだ。」
薔薇「・・・・・わかった。」
ポル「次に頼みだ。この世界に来た、君のスタンド能力を引き出した『矢』が
   必ずどこかにあるはずだ。もしそれを見つけたらそれを破壊して欲しい。
   アレはこの世にあってはならない物だ。」
薔薇「うん・・・・でも・・・誰が・・・この世界に・・・?」
ポル「分からない、だが、その人物といつか君は出会うかもしれない。
   恐らくソイツはスタンド使い、くれぐれも気をつけてくれ。」
薔薇「分かった・・・・・」
ポル「それじゃ、お別れだ薔薇水晶。」
ポルナレフの身体はほとんど消えかけていた、向こう側が見える程に。
ポル「突拍子もない話を信じてくれてありがとう。もう会う事はないだろうが、
   君と出会えて良かった。さよなら。」
そしてスタンド使いポルナレフは消えた

『前回までのあらすじ』

薔薇学園高校に通う女子高生、薔薇水晶はある日大怪我を負う。
生死をさ迷った彼女であったが奇跡的に命を取り留めた。
しかし、彼女に大怪我を負わせを死の淵にまで追いやった『矢』により
彼女は『スタンド』能力を引き出された。
見舞いに来た親友、水銀燈に取り付いたスタンドを自分のスタンドで撃退した薔薇水晶。
謎の能力に戸惑う彼女だったが、その夜、車椅子の男ポルナレフと出会い
己がスタンド使いであり、自分以外にスタンド使いがいる事を知る。
彼女はスタンド使いとして戦いの道を選択した。
今、薔薇水晶の奇妙な学園生活が始まる。


BaraSuisho’s Bizarre School

『薔薇水晶の奇妙な学園』

私はベッドの上でさっきまでの事を思い返していた、余りにも現実離れした出来事を。
私の部屋に突然現れたポルナレフという男、彼が言う『スタンド』と言う存在、
それを扱う事ができる『スタンド使い』、そして私がスタンド使いと言う事。
普通なら自分の頭がおかしくなったのかと疑いたい所だったけど、私はそれを信じた。
私の手の中に握られた、ポルナレフのスタンドによって真っ二つになった小ビンが
全てが真実だと告げている。
現実で有り得ないような事態が今現実に目の前で起きつつある、
私は真っ暗な部屋の中立ち上がり、自分で名付けたスタンドの名を
言魂にして口から出した。

薔薇「出てこい・・・・『ラプラス・ザ・ラビット』!」

瞬間、私の身体の中から分離するようにスタンドが現れた。
真っ暗な室内だというのに私のスタンドは、『ラプラス・ザ・ラビット』は
彼の回りだけライトが当たっているようにボウっと光っている。
ポルナレフが言った生命と精神のパワー、それがこの光なのだろう。
私はそれから何度かスタンドを出し入れしたりして練習をしてみた。
昼間私が倒した人形、アイツを使っていたスタンド使いとの戦いに備えて。
銀ちゃんを操っていたスタンド使いはきっと学校にいる、私の中にある確信が
私の身体を動かしていた。
結局、その日寝たのは深夜の3時過ぎだった。

どんよりとした曇り空、薔薇学園の生徒達はいつも通りに校門を抜けて、
校舎に入っていく。その生徒達の中、真紅や水銀燈達の中に薔薇水晶もいた。
銀「でも不思議よねぇ、五日で傷が完治ってぇ。薔薇水晶って
  もしかしてスーパーマンなのかしらぁ?」
紅「そんな訳ないでしょ、水銀燈。お医者様の腕が良かったのだわ。後それに、
  薔薇水晶は女の子なのだから『スーパーマン』ではなくて
  『スーパーレディ』よ、お馬鹿さん。」
銀「うっ・・・・な、何よ何よ何よぉ~~!!ちょっと間違っただけ
  じゃなぁいペチャパイ!!」
紅「な、何ですって水銀燈!!!!」
銀「あら怒ったの真紅ぅ?怒ったら不細工な顔がもっと不細工になるわよぉ♪」
紅「キーーーーッ!!!」
ジ「懲りない奴ら・・・・」
水銀燈と真紅のいつもの口喧嘩、いつもは楽しくそれを見ている薔薇水晶だが今日は違った。
薔薇水晶は昨日水銀燈を操っていたスタンドの使い手を探していた。
あの人形のスタンド使いは水銀燈の話からは、少なくとも学校にいる間に水銀燈に
人形を貼付けた。つまり、スタンド使いは学校にいるという事になる。
薔薇「(いったい・・・・誰が・・・・スタンド使いなの?)」
薔薇水晶は学校に入っていく生徒達に視線を向けていたが、ある場所を見て、その視線は
釘付けになった。そこでは、いつもは騒がしい不良達が何の風の吹き回しか
おとなしく掃除をしていた。それだけでも不気味だが薔薇水晶の目に入ったのは
更に不気味でおぞましい光景だった。
掃除をする不良達の頭、そこに昨日見たのと同じ人形が引っ付いていたのだ。
薔薇「(人形が・・・・いっぱいいる!!)」
背筋にピリピリとした感覚が走る。やはり読み通り、この学園内に
スタンド使いがいたのだ。薔薇水晶の心臓が瞬く間に高鳴り始める。
それは昨日、あの人形と戦った時の感覚に近い心臓の高鳴り。
校舎に入ればおそらく戦いが自分を待つ、
嫌でも不安になる気持ち、
しかし・・・・・
薔薇水晶は自分の隣にいる水銀燈、真紅、ジュンを順に見る。
そして改めて理解する、自分にしか皆を守れない事を。
薔薇水晶は隻眼の瞳で校舎を見上げた、その瞳には決意の焔が灯っている。

いつもの学校、だけどいつもの学校じゃない。薔薇水晶が見た人形のスタンドは
想像以上に校内に広がっていた。見た限りでは数にして二十体ほど。
取り付かれた人達は一様に昨日の水銀燈のように目に光がない。
薔薇水晶は人形に取り付かれた生徒達の横を通り過ぎながらある共通点に気が付いた。
薔薇水晶は途中加わった笹塚と喋っている水銀燈の横から真紅の横に移動した。
薔薇「ねえ・・・・真紅、私・・・・聞きたい事・・・・ある。」
おそらく自分の読みは当たっている、それを確認するために真紅に話し掛けた。
紅「何、薔薇水晶?授業のノートなら後で貸してあげるのだわ。」
薔薇「違う・・・私がいない間・・・学校の様子・・・・おかしくなかった?」
紅「??変な事を言うわね薔薇水晶。何かあったかしら、ジュン?」
ジ「さあ、気付かなかったけど何かあったか?」
気付いていない?一瞬不安に駆られる薔薇水晶。しかし、水銀燈と話しているはずの
笹塚の視線が怯えを持って自分を見ているのに気付き、
薔薇水晶は彼と話す必要を覚えた。

二年の教室のある階まで階段を上る真紅達、薔薇水晶は自然に笹塚の横に移動した。
薔薇「笹塚・・・・気付いてるんだね。」
薔薇水晶は笹塚に声をかけた。笹塚は薔薇水晶を見ずにコクリと頷く。
笹塚「皆・・・・おかしいんだ。僕・・・見ちゃったんだ。」
薔薇「何が・・・・あったの?」
薔薇水晶と笹塚は前を歩く真紅達から少し距離をとり話をする。
笹塚「おとといなんだけど、水銀燈とベジータが梅岡と一悶着あったんだ。
   その後なんだけど僕・・・・おかしな光景を見たんだ。」
薔薇「・・・・どんな?」
話そうと口を開きかけた笹塚、しかし思い直したように口をつぐむ。
薔薇「笹塚・・・・?」
笹塚「・・・いや、やっぱり止めとくよ。聞いたって信じられない話だし。」
薔薇「・・・・大丈夫だよ・・・私、信じる。」
笹塚「話したら絶対僕の頭おかしくなったって思うよ、聞かない方が良い。」
薔薇「私・・・・分かってる・・・・・うるさかった人達・・・
   皆・・・・急に皆おとなしくなった。」
笹塚「な!?薔薇水晶、君も気付いてるの?!」
薔薇「うん・・・」
笹塚「そうか・・・なら薔薇水晶には話せるよ。真紅とかジュンは
   ただの心変わりだろって取り合ってくれなかったからね。」
薔薇「お願い・・・・・」
笹塚「あの日授業の後なんだけど、僕、用事があって梅岡の授業準備室に
   行ったんだ。最初、ノックして入ろうとしたんだけど、中に人がいた。
   それで、口論してるみたいで、ちょっと興味半分に準備室の裏手に回って
   中を覗いたんだ。中には不良達と梅岡がいた。
   梅岡がアイツらと何をしてるかと思って見てたらいきなりアイツら
   倒れたんだ。うめき声上げて、昼間ベジータもそうなったんだ。
   それで、梅岡がアイツらに近付いていって、それで・・・それで・・・」
薔薇水晶はそこで始めて笹塚の肩が微かに震えているのに気付いた。
笹塚「アイツら、うめき声を急に止めて立ち上がったんだ。その時のアイツらの目を
   見て僕寒気がした。アイツらの目・・・・不気味なくらいに感情がなかった。
   まるで人形みたいだったよ、それでその後梅岡が言った言葉に更にゾッとした。
   『よくやった俺の人形さん、俺のために働いてくれ』って言ったんだアイツ。」
薔薇「・・・・・そう。」
笹塚「僕、思ったんだ。ここ最近、皆がおかしくなったのは梅岡のせいじゃないかって。
   水銀燈は元に戻ったみたいだけど、ベジータも・・・アイツも・・・」
薔薇水晶はそこまで聞き、笹塚の肩に手を置いた。
薔薇「ありがとう・・・・笹塚、話・・・・聞かせてくれて。」
笹塚「あ・・・・うん。」
薔薇「(梅岡が・・・・スタンド使いだった。後は・・・・私が・・・解決する!!!)」
薔薇水晶は教室に向かっていた足を梅岡の準備室に向けた。

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