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 雨は相も変わらず降り続けていた。雨脚がそれほど強くないのも、いつもと変わらない
ところ。
 僕は自分の部屋から、少し外を覗いてみた。其処には、本来ならこの日本に溢れている
筈の住宅やビルを認識することが出来ない。見えるのは、これもいつもと変わらない木々
の緑だけ。
 全寮制の学校なんて、私立であればそんなに珍しくはないのだと思う。ただ、多分一般
の『高校』と異なっているところは、この学校が都会から離れた山奥にあるということだ
ろう。

 生活に必要なものは、学校の敷地内である程度揃ってしまう。それでも足りないという
生徒は、実家の方から荷物を送ってもらう。所持品に対しては、それほど厳しい校則はこ
こには無い。だからパソコンを持ち込むことも自由だし、生活に対して不便だと思うこと
はまずなかった。

 普通の高校生ならば、学校帰りにゲームセンターやカラオケ、ともかくそういった娯楽
施設に寄っていったりもするのだろう。それがなければ生活に張り合いがなくなってしま
う、という性質の持ち主ならば此処は本当に不便に感じてしまう場所なのかもしれない。
 ただ僕はというと、そういったものに興味を持つこともないから……困ることなんて、
何もないのだ。

 僕がこの学校を選んだ理由は、自分の成績を考慮した部分もあったけれど……この『隔
離された雰囲気』に惹かれたというところも少なからずある。そう、ここは、閉鎖されて
いるのだ。狭い狭い、コミュニティを形成している。

 姉は僕がこの学校を選んだことに難色を示していた。

『ジュン君が居なくなったら……お姉ちゃん、ちょっと寂しいかなあ』

 そんな姉の言葉に、後ろ髪を全く引かれなかったと言えば嘘になる。しかしながら、僕
自身の選択は……自分を『守る』という意味も含まれていたのだろう、と。今に至ってよ
うやく感じるようになってきた(今の僕が当時の僕にそれを伝えても、聞く耳を持たないの
だろうけど)。

 実際、この学校にやってきてからも『発作』は起きている。僕は、自身が『回復した』
と思い込んでいただけで、実際はちっとも"それ"を乗り越えられていないのだということ
を自覚せざるを得なかった。

 もし僕が、普通に市内の高校へ入学したとして(レベル的には進学校と呼べるところだ
ったとしても)、中学時代に僕の趣味を馬鹿にした輩……『冷めた』あとは、普通に接し
続けた人たちと、顔を合わせる確率は、きっと今よりも遥かに大きい。もしそうなって
いたら、一体自分はどんなことになっていたのやら。

 あの中学から今の高校へ進学したのは、僕と雛苺だけだ。県内でもトップクラスの成
績を誇る高校。きっと僕は、この場所へ『逃げ場』を見出したかったのだと思う。

 僕の選択は、きっと間違ってはいなかった。ここは閉鎖されていて、とても住みよい
ところ。世界全体は、きっと複雑な構成になっているいるのだろうけど……ここは、と
ても単純な成り立ちを保っているに違いないから。

 少なくとも僕は、そう信じている。



―――――――――



 午前中の授業を適当に終わらせて、昼休みの時間になった。食料を調達しようと廊下に
出たところで、雛苺と出くわす。

「あ、ジュン~。お昼ごはんはどうするのー?」

「ん……適当に購買で買って食べるよ」

「うよ。買い食いばっかりじゃ栄養バランス崩れちゃうのよー。今度からヒナが作ってあ
 げよっか? お弁当。今日はちょっと時間なかったから、サンドウィッチくらいしか作
 れなかったけど……」

 そう言って雛苺は、手に持っているランチボックスを示す。それにしても、料理も出来
るのか。性格的には幼く見えるようでも、何だかんだ言ってしっかりしてるよなあ。
 料理を作る補食室なるものが一応寮には備わってはいるが、男子寮にはは少なくとも自
分で昼の弁当を作るという殊勝な輩は居ない。
 女子寮とは隣り合わせになっているが、基本的に男子生徒は立ち入り禁止。だからその
内装までは伺い知れないけれど、多分同じようなものだろう。

「いやいや、悪いよ。気持ちは有難く受け取っとく。ありがとな。それにしても雛苺、時
 間が無かったって……寝坊か? 今日も一限の間壮大に寝てたよな」

 僕がそう言うと、彼女は伏目がちな様子で応える。

「うゅ……コンテスト用の絵が、まだ仕上がらないの。それで最近、遅くまで学校残って
 るし、夜も寮で描いたりしてるから……」

 そういえば彼女は、美術部に入ってたっけな。小学校くらいの時は、家に遊びに来たと
きにはスケッチブックを持ってきてたっけ。
 その時描いていた絵は、お世辞にも上手いとは言えないものだったけど。今はどうなん
だろうか。

「そっか、あんまり無理するなよ」

「……うん! ありがと、ジュン。おべんとう、必要になったらいつでも言ってね!」

「ああ、わかった」

 手を振って、別れる。さて、購買でパンでも買うことにするか。



―――――



「で、今日も桜田君はここへやってくるわけだ」

「保健室チルドレンですから」

「……なんでそんな単語知ってるの」

「先生の影響じゃないですかね?」

 僕がそう言うと、先生は少しばかり溜息をついてお茶の準備にかかり始める。

「今日は僕が淹れますよ。いつも頂くばっかりじゃ申し訳ないんで」

「ん、ありがと。じゃあ今日は紅茶にしようか。新しいダージリンが入荷したから、お願
 いできるかな?」

 どうやら、例の紅茶好きの女生徒が持ち込んだらしい。顔も知らない同士だけど、とり
もあえず感謝してみる。
 なんといっても、誰かに強制的に淹れさせれらるのならともかく。僕が先生に紅茶を淹
れることなど、嫌になる筈がないのだ。
 だから僕は、いつものようにこう応える。

「了解しました、先生」



―――



「んー、美味しいねえ。私の知り合いにも紅茶を淹れるのが上手なひとが居るけど、それ
 に勝るとも劣らないかな」

「ありがとうございます」

 購買で買ったパンを齧りつつ、そんな掛け合いをする。こういう時を過ごしていると、
ここが保健室であるという事実をたまに忘れそうになる。
 それも、僕がここへやってくる時は。何故か他の生徒と、かち合うときがないからだ。
それはそれで、僕にとって過ごしやすさが増す要因のひとつとなるから、別に困るとこ
ろは何も無いのだけれど。

「……相変わらず、あんまり他の生徒とお話してないの?」

「ん、そうですねえ。でも、全く話さない訳じゃないですよ」

「少しずつ、慣らしていったほうがいいかもね。桜田君は、何でもそつなくこなすよう
 で……実際にそれが出来ちゃうタイプだから。その時に、自分が"軋む"様子に気付か
 ないまま」

「軋む、ですか」

「うん。相当無理しちゃうってことかな。気分で乗り切れちゃうこと自体は悪くないん
 だけどね。……まあ、まだ休んでても特に問題はないと思うよ」

 先生はもうお昼は食べてしまったらしく、棚の奥から取り出したお茶請けを口にして
いる。そんないつもの会話の中、今日は更にもうひとり、ここへお客が現れた。

「めぐ~……ちょっと、お薬……」

「あら、またきつくなっちゃった? お昼はもう食べたの?」

「ちょっとだけど、お腹にはいれといたわぁ……」

「じゃあ、食後用のでいっか、ちょっと待っててね」

 先生はそう言って薬の入っている棚を漁り始め、入ってきた女生徒は僕の座っていた
ソファの左隣りに腰をかけた。手に持ってた本を数冊、眼の前の机に置く。……これ、
漫画だろうか?

「……」 「……」

 彼女は、その間何もしゃべらない。なんというか、しゃべるのも億劫と言った感じで
お腹の部分を押さえながら、ソファにだらしない感じでのけぞっている。

「……あの……大丈夫、ですか?」

「んー、あんまり、大丈夫じゃないかしらぁ……ほんともう、毎月毎月……」

「……?」

 彼女は僕の方を向くこともなく、ぽつりとそう返してきた。
 それぎり何も話さなかったが、それもほんの一分くらいのことだった筈。それでも何
故か、その時間は長く感じられた。

 先生が錠剤とコップを持ってくる。

「はい、これ……あんまり酷いようなら、やっぱり病院にいったほうがいいよ、水銀燈。
 最近は若い子でも油断ならないって言うし」

「わかったわぁ……ありがと、めぐ」

 彼女は弱々しい感じの声を返し、錠剤を二粒ほど口に放り込んでそれを飲み下した。
 何か病気、なのだろうか? 僕は気になって口を開きかけるが、先生がそれを遮る。

「女の子は大変なの。気を利かせてそっとしとくのがいいよ、桜田君」

「は、はぁ」

 よくわからないが、とりあえず従っておこう。


――――


 薬を飲んで大分落ち着いたのか、彼女が僕に話しかけてくる。

「貴方、よくここに来るのぉ?」

「はい」

「ふふっ、『はい』だなんて……私達、同じ学年なんじゃないのぉ?」

 言われて、慌てつつ彼女の履いている上履きの紐の色を確認してみる。
 ……青色だ。ってことは、彼女も僕と同じ、一年生ということだ。馬鹿な……この独特
の大人的雰囲気。てっきり上級生だと思ってしまった。
 ちなみに、この学校では学年によって上履きの靴紐の色が異なり、それで学年を判断す
ることが出来る。一年から順に、青・黄・緑という塩梅になっている。

「そういうこと。だから敬語なんて使う必要はないのよぉ。……あ、自己紹介を先にする
 べきだったわねぇ。私の名前は水銀燈。貴方のお名前は何ていうのかしらぁ?」

「桜田、ジュン」

「ああ……貴方がそうなのねぇ。ジュンって呼んでもいいかしら?」

髪をすっと掻きあげながら、彼女が言う。透き通るような銀髪がその名に相応しいと感じ
てしまった。背も僕より高いし……なんというか、モデルみたいな体系をしている。
 少しどぎまぎしながらも、僕は答えた。

「ああ、構わないよ」

「宜しくねえ、ジュン」

 さっきまであんなに具合が悪そうだったのに、そんな空気は何処へやら。少しはしゃい
だ感じで、彼女は言う。

「あ……これ、真紅の紅茶じゃなぁい? めぐ、私も飲みたいなぁ」

「今日は僕が淹れたんだ。ちょっと待ってて、今淹れるから」

「あらぁ、じゃあお願いしてもいいかしらぁ」

 どうやらこの紅茶の葉は"真紅"が持ってきたものらしい。僕はいつものように、紅茶を
淹れる。

「はい、どうぞ」

「ありがとぉ。……ん、いい香り……」

 水銀燈は満足そうに、紅茶に口をつける。
 それにしても。さっき、彼女は僕のことを知っているような素振りだったが……?

「水銀燈と逢うのは……初めてだよな。僕のこと、知ってるのか?」

「えっとぉ。貴方、雛苺と知り合いなんじゃなぁい?」

「知り合いっていうか、幼馴染だよ」

「私は彼女と友達だから……ちょっとだけ、貴方のこと、聞いたことがあるのよぉ。
 ま、保健室繋がりなんだけどねぇ」

 成る程、そういうことか。雛苺に友人が沢山居ることは知っているが、……保健室繋が
り? 僕は彼女と、ここで逢ったことはないのだけれど。

 まあ、鉢合わせになることなんて、そうそうあるものではないかとも思う。水銀燈の口
ぶりからして、彼女もここへよくやってくるようだけど、今まで遭遇したことがなかった
のだから。別に不思議なことでもないのだろう。

「ジュンはここによく来るって言ってたけど……ひょっとして、めぐを狙ったりしてるの
 かしらぁ?」

 不意に、小悪魔的な表情を浮かべながらそんなことを言い出す水銀燈。

「なっ! 僕は単にここが過ごしやすいから来てる訳で……! それにしても水銀燈、さ
 っきから先生のこと呼び捨てにしてるよな」

 とりあえず、否定しておく。確かに先生は美人だし、魅力あるひとだけど……ああ、そ
れはいいんだって。
 あとは少し、抵抗の意味を含めて疑問を返してみた。先生を名前で呼ぶ生徒が居ること
は知っていたのだが、実際にそれを見るのは初めてだったし。

「えっとねぇ。私とめぐは、もともと昔からの知り合いなのよぉ。親戚同士だからぁ」

「こら、水銀燈。あまり桜田君をいじらないの。ほんと、黙って聞いてれば何言い出すか
 わかったもんじゃないわ」

「なによ、めぐぅ。ちょっと位いいじゃなぁい」

 先生が会話に入ってきた。『やれやれ』といった表情を顔に浮かべている。一応水銀燈
を窘める言葉を発してはいるものの、その声に怒気が含まれている感じはしない。水銀燈
は会話を途切れさせられたのが不満だったのか、ちょっと頬を膨らませている。そんな表
情は、外見は大人びているものの、やっぱり年相応だなあと思ってしまった。

「あ……こないだ借りた漫画、返すわぁ。ありがと、めぐ」

 そう言って水銀燈は、机に置いていた数冊の本を示す。というか、いくら親戚とは言え。
生徒に漫画なんか貸してもいいんですか、先生。

「面白かったでしょ?」

「んー、なかなか好みのタイプだったけど。台詞が少なくないかしらぁ? これ」

「そんなぁ、それだけ重みがあるんだよ。ほら、これとか……」

先生はそう言って、ぱらりぱらりと頁をめくりつつ、目的の言葉が載っているらしい箇所
に辿りつく。

「『冷たく静かな大地が明るくなる頃 人影は丘の上に登った』」

「『大地って何だ』」

そんな言葉を発しつつ、先生は僕の方を見て言った。

「……ね?」

「いや先生、『ね?』って言われても」

「この作品に出てくる人達はね、『大地』っていうものを知らないの。だから、もし文献
 に『大地』という言葉が出てきても、それを理解することが出来ない」

「……」

「結局、それを知りたいと思っていたのかはわからないけどね。ともかく、純粋に作品と
 してもオススメだよ。良かったらもってく? 桜田君」

「いや、これから教室戻るんで。流石に堂々と漫画もってくわけにはいかないですし」

 その後、別の妙に薄っぺらい冊子の漫画(どうやら同じ作者らしいもの)も薦められたり
もしたが、とりもあえず今は遠慮しておいた。……ちょっと、心苦しかったが。

「うーん、残念だなあ。まあ、また今度ね。さあ二人とも、そろそろお昼休み終わっちゃ
 うよ? そろそろ教室に戻らなきゃ」

「私は大丈夫よぉ。具合悪いからって言って、午後居なかったら先生に『保健室に居る
 から』って伝えてもらうように友達に言ってあるからぁ」

 ん、それはなかなか用意周到なことだ。僕もそうしておけば良かったかなと、少し考え
るが。勿論そんな言付けは備えてなかったので、教室に戻る他無い。

「じゃあ、僕はそろそろ戻ります」

「行っちゃうのぉ? さぼっちゃえばいいのにぃ」

「水銀燈」

 静かな声を、先生が発する。あ、これはちょっと怒ってるな。

「! うぅ……めぐ、怒らないでよぉ。冗談じゃなぁい。じゃあジュン、また紅茶淹れ
 てねぇ?」

「ああ、また機会があったら。じゃあ先生、失礼します」

「うん、頑張ってね」

 そうして、保健室を後にした。今日はちょっと賑わっていて、水銀燈という新たな知り
合いも増えた。彼女も少し不思議な感じだが……嫌な感じは、しなかった。この分なら、
もしまたあの場所で逢うことがあっても、うまくやっていくことが出来るかもしれない。

 先ほど先生が言っていた漫画の中にあるらしい台詞。

『大地って何だ』

 僕は認識している大地は、多分それで間違っていないもの。しかし、もし僕の知らない
事実が、実は当たり前のように広がっている"もの"なのだとしたら。
 そんな時、僕はどういう考えをするのだろう。僕はそんなことを考えながら、間もなく
始まってしまう午後の授業を受ける為に教室へ足を運ぶ。

 現代文か、ちょっとだるいな。



――――



 保健室には、一人の女生徒と教師が残されている。

「もう、水銀燈……あんまり桜田君をからかっちゃ駄目だよ」

「あらぁ、めぐ。可愛い男の子じゃなぁい、私は好みのタイプなんだけどなぁ」

「そういう問題じゃなくって……」

 女生徒が教師をからかうような言葉を繋げていた。どうやら教師の方は、普段からこの
女生徒に振り回されるような感じらしい。

 暫くそうやって談笑していたが、女生徒がその途中である話を切り出した。

「ジュンは……彼女と、幼馴染なのよねぇ。じゃあ、彼女のことも知ってるのぉ?」

「ん……多分、知らないよ。本人からそれを伝えられているなら話は別だけど、そんな様
 子もないしね。少なくとも、私の口から言うべきことではないかな」

「じゃあ、私もそれに倣った方がいいってことかしらぁ?」

「それは、貴女自身に任せるよ」

「……了解しましたぁ」

 それぎり、無言の時が保健室に流れる。五分、十分経っても、新たにこの場所へ他の人
物が現れる気配は無い。

 そんな中、女生徒が不意に言葉を切り出した。

「保健室の先生も、大変ねぇ」

「あら、気遣ってくれてるの?」

「もう……ジュンだって、いずれは知ることかもしれないじゃない。気苦労が絶えないか
 なって、ちょっと思っただけよぉ」

「ん……どうかなあ。別に悪いことじゃないし、その時はその時なんじゃないかな」

「楽観的ねぇ」

「昔が悲観的すぎたからね。その反動もあるんじゃない?」

「私はめぐが元気で居てくれれば、問題ないわぁ。……あ、紅茶なくなっちゃった。もう
 一杯飲みたいなぁ」

「飲みたかったら自分で淹れてね、水銀燈。ついでに私の分も」

「うぅ、待遇の差を感じるわぁ……」

 しぶしぶな雰囲気を表に出しながらも、ティーセットに手をつける女生徒。どうやら、
この教師には強く出ることが出来ないようだ。
 女生徒は二つのカップに紅茶を注ぎながら、ぽつりと言葉を零す。

「知っている、っていう状態そのものが……幸せなことだとは、限らないかもしれないわ
 よねぇ」

「ん……本人の意識の差によるかな。それでも知りたがるのが、ひとの業なんだとは思う
 けど。ひとつの"知りたいこと"に辿りつけること自体が、本当は珍しいことなんだよ、
 水銀燈。だって世界には、自分の知らないことが溢れてるんだから」

「自分が"当たり前"と思っていることでも。ひょっとしたら、それは"当たり前"じゃない
 かもしれない? ……住む世界が、ずれてしまっているとして」

「……私達は、同じ世界に居るよ。それが、私達の繋がり。私と、貴女もね」

 教師がその言葉を発したあとに、紅茶を注ぎ終えた女生徒がカップを運ぶ。

「はい、お待たせしましたぁ」

「ありがと、水銀燈」

 そうして、穏やかな時間が流れる。それだけ、それだけの時間が流れる、一瞬の幕間が
其処にはあった。



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