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 プロローグ

 それに気付いたのはいつからか。
 ただ呆けているだけと思っていた顔。眼もただどこかを見ているだけ。
 しかし、気付けばそこにあるのは双眸の恐ろしい炯眼だった。
 何も無い場所に、何かがある事を捉える鋭い双眸。
 でも、それはとても優しい視線だった。
 彼を知りたくて、1つ知るごとに知る事を恐れ、そしてそれ故に知りたくなっていく。
 解った事は沢山ある。そして、解らなくなった事も沢山ある。
 一番解らないのは、彼は今何を思っているのか。

 夏ですね。 第一話「直死のJU[M]AGAN ~プロローグ~」



 ひぐらしのなく頃。夏真っ盛りの季節は毎日が暑い。
 地球温暖化のせいか、物凄い暑さに倒れる人も居る。
 僕も倒れた一人だ。
 保健室の冷えた部屋で、一人ベッドに横になる僕。
 保険の先生は今何か仕事があるようで近場の病院へ出向いている。
 かなかな、つくつくぼーし、みーんみんみんみんみんみーん。
 蝉がけたたましく、そして美しく鳴く。
 誰もが騒音と呼ぶその声が愛の歌。それを綺麗と呼ばずに何と呼べば良いのか。
 夏のオーケストラは美人短命。蝉とはそんな生物だ。
 それに比べてみれば、人間の命は長過ぎる。
 そして、僕が彼に思いを寄せる期間も長すぎる。
 幼馴染の彼、JUM君に片思いを寄せたのは幼稚園の頃だろう。
 いや、好きという気持ちも解らない年代だ。どうか解らない。
 ただ、こんな気持ちが幼稚園の頃にもあったとだけは言える。
「・・・・・」
 何も無い、保健室。真っ白で、真っ白で、とても眩しい。
 日の光が少し入ってくるだけでここまで照らされる。
 ああ、眠い。このまま、今は、寝よう。

 なんだろう。
 何か、暖かいモノを近くに感じて、僕の意識が覚めた。
 首だけ動かして横を見る。
「すー・・・すー・・・」
 すぐそこに、JUM君の寝顔があった。なんで居るのだろう。解らない。
 とりあえず、起こそうかと思ったけど、その寝顔がとても素敵だった。
 だから、やめた。寝顔を観察する。綺麗な寝顔だった。
 眼鏡を起こさないようにそっと外す。
 改めて近くで見て整った顔をしている事が解る。
 女の子みたいに可愛いけど、男の子らしい格好良さがある。
「あ・・・」
 寝息を漏らす、半開きの口。それに目を移した時、心が跳ねた。
「・・・キスしても、ばれない、かな・・・」
 そこには、誘惑があった。
 ああ、おかしい。いつもの僕らしくない。
 無意識のうちに、その唇に、吸い込まれていく自分が居る。
 どきどき。
 あと、少しで触れる。
 そして・・・
 ちゅっ。

「・・・」
 柔らかかった。とても、柔らかい。
 心臓が凄く早く鼓動を打つ。大好きな、JUM君とキスしてるから。
 このまま離すのは名残惜しい。いっそ、このままで良い。
 でも、離れないと。起きたら、困るから。
「JUM君、好きだよ・・・」
 唇を離して、僕はそう言った。少し、悲しい。
 だって、JUM君は誰にでも優しいのだ。妬けてしまう。けど、それがJUM君の好きなところ。
 僕にだって、優しい。
 重い物を持ってる時に手伝ってくれたり、傘が無くて困ってた時に相合傘してってお願いしたらしてくれたりとか。
 きっと、彼にとって優しい事が普通なのだ。そんなJUM君は誰からも好かれる。
 もしかしたら、彼女が居るのかもしれない。でも、この前聞いたら居ないって答えた。
 幼稚園からの付き合いだから、嘘が吐けないのは重々理解している。
 だとしたら、今のJUM君には誰が一番見えているのだろう。
 もしかしたら、僕じゃない誰かかもしれない。いや、きっとそうに違いない。
 僕は女の子らしくない。きっとそんな僕には見向きもしないだろう。
「ぐすっ・・・」
 そう考えたら、段々と悲しくなって、泣いてしまった。
「うぅ・・・ぐすっ・・・JUM君・・・うぇ・・・・・」
 JUM君を起こさないように口を手で押さえ、嗚咽を抑える。
 でも、手の隙間から次々と漏れていく。ああ、どうしてだろう。
「・・・・・蒼星石?」
「!!」
 そして、JUM君が起きてしまった。

「泣いてるのか・・・どうした?」
「べ、別になんでもないよ・・・」
 一所懸命に笑顔を取り繕う。が、
「嘘だ!!」
 と、一喝されてしまった。
「何も無いなら・・・泣かないんじゃないかな?かな?」
 夕日が差し込む窓を背後に背負い、陰るJUM君の顔。
 そこにある異様に光を放つ炯眼。その双眸は嘘を吐く事を認めてはくれそうにない。
「たしかにそうだね・・・ごめん」
「ああ、いや・・・別に謝られてもな・・・で、どうしたんだ?」
「・・・ちょっと、ね」
「僕には、話せないか?」
「・・・ごめんね」
「いや、別に構わないさ。でも、僕としては困るんだなぁ、これが」
「どうして?」
「そりゃ・・・好きな子に目の前で泣かれると困るのは当然だろ?・・・あ」
 言って、JUM君がしまったという顔をして、そっぽ向いた。
 その頬が赤いのは、夕日の所為ではないだろう。
「ふふふ・・・ありがとう、JUM君。私も好きだよ」
 途端に、場が一気に沈黙した。
 しばらくして、JUM君が口を開いた。重々しく。
「え、っと・・・・・じゃあ、告白するけど・・・僕と付き合ってくれる?」
「よろこんで」
 そう返事をするとJUM君は、嬉しそうに満面の笑顔を浮かべた。
 泣いて損したのか、泣いて得したのか、解らない。
 けど、確かに僕はとてもその時嬉しかった。

 ふと、その時、何か強い光が外で発生し、爆音と猛烈な風、強烈な衝撃が襲ってきた。
 窓が割れ、保健室の中がぐちゃぐちゃになる。
「っ・・・!!」
 とても立ってられない。足がふらつく。そして、
 ガンッ!
 運悪く頭を棚にぶつけてしまった。どさりと、倒れる自分。
 意識が朦朧としていく。必死にJUM君が僕を呼んでいる。
 意識が暗幕に包まれる直前、JUM君へと薬品棚がゆっくりと倒れるのが見えた。
 ―――ここで意味無くJUM目線に変更―――
「・・・・・・」
 僕は、眼が、覚めた。置いてある物が全て真っ白な部屋。
 沢山ひび割れた部屋だ。あと、薬品が酷くにおう。
 病院。そう気付くのに時間は要らなかった。
「・・・どうしてたんだったっけ?」
 確か、保健室に居たはず・・・保健、室?
「そうだ・・・すっかり、忘れてた・・・・・」
 蒼星石は、何処に居るのだろう。確か、告白したあとに何か強い光があったんだ。
 それで、保健室が揺れて、僕に棚が倒れてきたんだ。僕は、立ち上がろうとした。
「・・・」
 しかし、それをやめた。手に、ヒビが入っていたからだ。
 いや、ヒビではない。線だ。手に線が映えていたのだ。
「なんだ、これ・・・」
 よく見てみれば、部屋もひび割れているわけじゃない。
 線が映えているのだ。あちらこちらに。
 ベッド、カーテン、パジャマ、天井、壁。
「なんなんだよ、これは・・・・・」
 体が、それを見る事を拒絶している。解る。
 見るたび見るたび気分が悪くなるからだ。

「あ、桜田さん目覚めたようですね」
 若い看護婦さんが入ってきた。なんとなく見たことがある人だ。
 そして、ふと気付いた。柿崎の所へたまに見舞いに行く際よく見た人だ。
 いや、何人も見たんだけど、その中でも特に明るい人だ。
 確か、鈴木さんだったかな。
「お久しぶりです。鈴木さんは相変わらず元気そうですね」
「あら、私の事を覚えてくださってたんですか」
「あれだけ顔を見れば猿でも覚えますよ」
「そうですね、ふふ」
 ふと、頭に蒼星石の事が浮かんだ。
「そういえば、僕はどうしてここに?」
「解らないけど、爆発が貴方の学校の近くで起きたのよ。原因不明。
 一部ではとうとうテロが始まったなんて騒ぐ人も居て、大騒ぎよ」
「あの・・・僕ともう一人ここに運び込まれてませんでした?」
「女の子が居たわね。えっと・・・蒼星石さん」
「あ、はい。そうです。今、彼女何処に居ます?」
「何処に居るも何も」
 鈴木さんはカーテンて仕切られた隣のベッドを指差す。
「そこよ?」

 カーテンで仕切られてて解らなかったが、どうやら蒼星石は隣のベッドらしい。
「あ、そうですか・・・」
 なんとなく、拍子抜けだ。
「それにしても、良い子ね。先に起きて早々に君の名前を呼んで大騒ぎ。あの時の顔といったら・・・」
「鈴木さん!!」
 カーテンがガバッと開いて顔が真っ赤な蒼星石が顔を出した。
「冗談よ。さて、邪魔者は退散するとしましょうか・・・うふふ」
「うぅ・・・・・」
 恥ずかしがる蒼星石。とても、可愛い。
 残念なのは、その蒼星石の顔にも線が見えてしまうこと。ちょっと、邪魔だ。
 まぁ、そんな事より目や脳に異常があるかどうかが気になって仕方が無い。
 とりあえず、ナースコールを押した。
 ・・・・・・。
 検査してみた結果、異常無しとのことだった。
 精神的なものから来てるんじゃないかな、と言われたが今一信じられない。
 とりあえず、散歩をしながら考える。
「・・・・・」
 だとすれば、なんだろうか。ふと、足元に錆びたメスが落ちていた。
 近くにゴミが落ちているのを見るとどうやらゴミを零すついでに落としたらしい。
 それをひょっこりと拾い上げる。
 そして、近くに置いてある椅子の線に何となく通してみた。
 すつと、抵抗もなく、いとも簡単にあっさりと入った。
 そのまま通すとガタンという音と共に真っ二つに裂かれた。

「・・・・・!!」
 断面が可笑しいぐらいに綺麗だった。
 目の前の事が信じられない。頬をつねる。痛い。どうやら、事実らしい。
 ふと、遠くを見ると散歩している人や病院関係者が居た。
 どうやらこっちには気付いていないようだった。
「・・・・・」
 この線が、人にも見える。と言う事は人さえも、切れるのか。
 こんな錆びたメスでもあっさりと。
「・・・・・」
 恐ろしい。命が軽薄に見えてしまう。
 いや、考えてみれば元々軽薄なんだ。殴れば死ぬし、首を絞めれば死ぬ。
 元々があっけないものなんだ。
 気付いてしまった。気付いてはいけなかったのに。
 途端に怖くなって、僕は病室へと戻った。
 その時は、何も知らなかった。まさか、この線のせいで色々と厄介ごとに巻き込まれるとは。

            とぅー びー こんてぃにゅーど・・・



 次回予告
 変な力を手に入れたJUM。それを隠しながら毎日を過ごす。
 JUMと蒼星石とのラブラブな日々。
 梅岡とベジータのマジな殴り合いの戦い。
 薔薇水晶がベジータへ抱いた甘酸っぱい凄まじく純粋な片思い。
 校庭に建設された実物サイズのリック・ドムの模型?と10倍スケールの西郷隆盛の銅像。
 町内会主催の「ちびっこ集まれ!真剣チャンバラ大会」。
 そんな"平和"な町を覆う何か。次々と起こるちびっこが殺される連続殺人。
 廃屋へと罰ゲームで一人乗り込んだJUM。壊れた人形が嗤う小夜に。
 突如現れた喋る鹿、エトはJUMに何を語るのか。
 そして始まる、血で血を洗えないけど洗う壮大な人外との戦い。
 次回、第二話「真面目なのは第一話だけ ~その時、マリオはラーメンを食っていた~」
 EDソング cali≠gari「37564。」
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