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此処は、日本の防衛支部

関東の西の端くれ。
大体、大阪支部の隣ぐらいだ。
其処に一人の男と、一人の御爺さんがいた。
御爺さんは、椅子に座りながら、お茶を飲んでいる。
一方男は、其れを椅子に座って傍観している。


男「貴方の息子は?どうなったんですか?」
爺「それがな・・・少し前の戦争で、逝っちまったんだ・・・」
男「!・・・其れは済まない事を・・・」


そう言うと御爺さんは、微笑みながらこう言った。


爺「良いんだよ、あの子はある人の中で生きてる。」
男「?其れはどう言う・・・」
爺「之から説明するよ・・・」


すると御爺さんは、お茶を全部飲み込んで。
一息ついた後、重い口をあけて、喋り始めた。


爺「その戦争の途中でな?桜田って奴が、爆弾で吹っ飛ばされたんだよ。」


すると男は、ごくりと生唾を飲み込む。
其れを意に介さず、御爺さんは話を進める。


爺「腕は爛れて・・・いや、アレは千切れてたな。」
爺「腹を右足の付け根から、股間の上、へその所、心臓、右腕の付け根にかけて。」
爺「其処を線で縫ったように、飛ばされててな。」
爺「生きてたのは、あいつが物の怪って呼ばれる。」
爺「特殊な血を引いていた、だからしいが。」
爺「もうそんな奴でも、死んでも可笑しくない状態だった。」
爺「其処にな、俺の死んだ息子の死体が、運ばれたらしいんだ。」
爺「俺はもうその子を、如何こうする気も無かったが。」
爺「其処にとある、医者がやってきたんだ。」
爺「奴は、桜田を生かす代わりに、この子を貰うと言って来たんだ。」
爺「可笑しな話だろ?東南アジアにそいつは、居たのによ。」
爺「するとな、俺が許可するとそいつは、有難うと言って行っちまったよ。」


辻妻の合わない話だ、しかし、その子は今生きている。
不思議な話も有る物だ、と訊いていると。
御爺さんは、話を進め始めた。


爺「その翌日の話かな?、そうらしいんだが。」
爺「その子が地下の実験室で、特殊な改造を受るって話なんだ。」
爺「何でも知らない医者が来て、二人の体を余す所無く使い切って。」
爺「一人の人間を、作り上げちまったそうだ。」
爺「その子は昏睡状況だったらしいんだが。」
爺「医者がその子を連れて、実験室に3ヶ月篭ったそうなんだ。」
爺「始めの2ヶ月は失敗して、その子が変態を起こして。」
爺「見るも絶えない姿や、精神異常者になっちまったそうだが。」
爺「何ヶ月かして、一人の世界の安全の為の、人間兵器が出来た。」
爺「その子の中で、わしの子は生きている。」
爺「その後で、私はその子に会ったが。」
爺「とても良い子だったよ、カズキもきっとあの世で・・・」
爺「それで、わしに何のようじゃ?」
男「その医者の名前、なんて言ったか知ってるか?」


御爺さんは、暫く考え込んで。
こう言った。


爺「うーん・・・覚えてないのぉ・・・」
男「・・・そうですか・・・」
爺「スマンな、役に立てなくって。」
男「良いんです、大体足跡が分かりましたから。」
爺「そうか・・・お兄さんも頑張れよ?」
男「では・・・」


男はそう言うと、部屋から出た。


男「・・・ローゼン公爵・・・」
男「・・・残された民達は、彼方を探しています・・・」
男「いるのなら・・・出てきてくださいよ?」


そう言うと、男はドアから出ると、消失した。
その男が消えてから数分後、御爺さんは独り言を呟いていた。


爺「桜田君は、覚えてるかのぉ・・・」
爺「最初に会ったとき、あの子はずっと泣いて、謝って来たな・・・」
爺「わしが、理由を聞くと、あの子は。」
爺「【僕のせいで、貴方の子供の亡骸を、全部使ってしまってゴメンなさい。】だったっけ?」
爺「1時間位ずっと泣きっ放しで・・・疲れたろうに・・・」
爺「その後だ・・・アレをくれたのは。」


そう言うと、部屋の隅から。
白く、人の腕の程の太さの“杖”を取り出す。
その杖は、まるで質量を感じさせないように、御爺さんが軽々持っていて。
杖の所々に、色々な装飾が施されていた。


爺「之はな・・・あの子の骨なんじゃ。」
爺「何でも【之は、カズキ君の骨の部分を使って、作った物です。】ってな。」
爺「あの子は、そういう子なんじゃよ。」
爺「・・・あの子。」
爺「之をカズキの形見に、しろと言ったんじゃが。」
爺「如何にも、あの子の中に居る様な気がしてな・・・」
爺「全く使えんのじゃ、これ。」


そう言うと、その杖を机に置く。


爺「如何しようかのぉ・・・この杖・・・」
爺「・・・置いておくかの・・・」


そう言うと、杖を元の所に仕舞った。
・・・御爺さんは、気が付いていない。
その杖が、年に数センチ変形しているのを。
御爺さんは知らない。
その杖で、ジュンのDNAが息衝いているのを。
御爺さんは・・・
何も知らない。


・・・ガタッ・・・


爺「?今何か動いたかの?」


そう言うと、杖のある部屋を覗く。
その部屋には、一応作った息子の遺影と。
ジュンの骨から作った杖を、仕舞った箱しかない。
御爺さんは空耳だと思うと、その部屋から出て行く。


・・・ゴソッ・・・


・・・杖の成長は、今も続いていく。


それに気が付いているのは。
誰も居ない、そして・・・
その杖の表面に・・・
ジュンを求めて蠢く・・・
小さな小さな、細胞があるのも・・・
誰も・・・
知らない・・・


爺「ふむ・・・」
爺「今度あの杖を、ジュン君に送るかの・・・」
爺「もしかしたら、役に立つかもしれんし。」
爺「役に立たないわけでも、恐らくなかろう。」
爺「そうなったら、郵便手続きを踏まんとなぁ・・・」


・・・ピクン・・・


爺「それにしても・・・あの部屋にカズキの亡霊でもおるのかの?」
爺「良く空耳が聞こえるんじゃが・・・」


かくして運命は・・・
少しづつ少しづつ・・・
謎の方向に向かって・・・
進んでいた・・・
結末を知るのは・・・
之を作ったはずの神でさえ・・・
分からなくなるほど・・・
何千年前から・・・
蠢いていた・・・


それは、一つの些細な出来事だった。
一人の男の撒いた、些細な種は。
かくして実を為し。
ストーリーとして。
成熟しつつあった。


紅い、紅い、彼岸花となって。
紅い、紅い、雨を降らせる為に。


ジュクッ・・・


骨は嬉々として、小さく音を立てた。

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