※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。


  翠×雛の『マターリ歳時記』

―皐月の頃 その2―  【5月5日  端午】前編


蒼星石の留学先に来て早三日が過ぎ、明日には帰国の途に就かねばならないのに、
翠星石は、依然として蒼星石に会えずにいた。
日中は、みっちゃんの手伝いでキャンパスに詰めているから、
昼食時や休み時間などに、ひょいと再会できるものと思っていたのだが……。

「……どうにも、私の考えが甘かったみてぇです」

雛苺、みっちゃんに挟まれ、食堂のテーブルに着いていた翠星石が、
白いソーセージの付け合わせであるザワークラウトをフォークで突き突き、憮然と呟いた。
それを聞きつけて、みっちゃんがチラと視線を向ける。

「どうかしたの、翠星石ちゃん? もしかして、ザワークラウト嫌い?
 まさか、ヴァイスブルストが苦手ってワケないわよね」
「好き嫌いは、良くないのよー。だから、翠ちゃんは頭に栄養が回らなくて、
 肝心なところで間が抜――痛ったぁ~い!」

暴言を吐く雛苺の脳天に手刀を叩き込んでから、
翠星石は、みっちゃんの疑問に答えた。

「食事の好みとかの話じゃねぇです。みっちゃんの手伝いだと聞いてたから、
 もっと簡単な雑用で、それが終われば自由時間になると思ってたです」
「あれぇ? ひょっとして、遊び感覚だったのかなあ、君は」
みっちゃんは、からかうように眼鏡の奥の目を細めて、翠星石の頬を指でつついた。

「いけませんなあ。これも講義の一環なんだってば」
「あ痛たっ! みっちゃん、爪が刺さるですぅ!」
「ええ~? そんなに尖らせてないわよお?」

と戯けながらも、指を除けるみっちゃん。女の子の顔に傷を付ける様な真似はしない。

「まあ、冗談はさておいて……なにか、用事でも有るの?」

さり気なく、翠星石の皿からソーセージを奪取して、みっちゃんは訊ねた。
その問に答えたのは、訊かれた本人ではなく、雛苺だった。

「実はね、翠ちゃんの妹の蒼星石って娘が、この大学に留学してるの」
「私の、双子の妹ですぅ」
「っ?! マジで? それなら、きっと良い被写……げふんげふん。
 あ~……つまり、その子に会いに行く時間が無い――と、こういうワケね」
「流石は、みっちゃんなの。話が早いのよー」
「んふふふ…………まぁねぇ」

みっちゃんは、新しい玩具を見付けた子供みたいに、にへら……と笑った。

「そう言う大事なことは、予め報告しておくものよ。意志の疎通の為にもね」
「は、はい……ですぅ」
「まあ、話は解ったわ。今日の午後は、もういいから、会って来なさいな」
「!! ほ、ホントです? ホントに良いですか?」

予期しない答えに、素っ頓狂な声を上げる翠星石。
みっちゃん、ウインクしてサムズアップ。「その代わり、今夜、妹さんを紹介してね♪」


思いがけず時間を得た翠星石は、雛苺に付き添って貰い、蒼星石を探した。
キャンパスは広く、何処が何処だか分かり難い。
帰国子女にして語学に堪能な雛苺の協力なしに、探すことは困難だった。

「ねえ、蒼ちゃんって、どんな学科を専攻してるのー?」

それを知らずして、探し当てる事など出来ない。
翠星石は、訊ねる雛苺に答えた。

「私にも、詳しい名称は分からねぇですぅ。大まかに、植物学くらいしか」
「それじゃ大まかすぎるの。まあ、学科棟は絞り込めると思うけど――」
「そうそう、新種の植物の研究とか、栽培をしてるみたいですぅ。
 最近の地球環境の変化で、人知れず絶滅してゆく植物を保護するのが、
 蒼星石の夢なのです」
「うよー……それって、凄くスケールの大きいお話なのよー」
「でも、後世に知識を残すための、大切な仕事です。素晴らしい夢ですぅ」

私も、蒼星石の隣で手伝えたら……どんなに嬉しいだろう。
蒼星石と、同じ夢を追い掛けられたら……どんなに幸せだろう。

翠星石は、そう思わずにいられなかった。

(でも…………私まで家を出るワケには、いかねぇです。
 おじじも、おばばも、きっと寂しがるです。寿命が縮んじまうです)

今は、まだ……別々の道を歩み続けるしかない。
けれど、いつかは二つの道を一本に纏めて、二人並んで歩いていきたい。
そんな願望を胸にキャンパス内を見回っていた翠星石が、急に狼狽えて、
雛苺の背後にこそこそと隠れた。

「うゆ? どうしたなの?」
「しいっ! や、や、ヤツですっ」
「ヤツ?」
「オディールですぅ!」

翠星石は、雛苺の耳元で囁き、ある一方を指差した。
雛苺が、視線で彼女の指先を辿っていくと、そこには可愛らしい金髪の娘が、
友達と愉しげにお喋りしながら歩いていた。

「あの娘なのね。翠ちゃんが話してた、蒼ちゃんのルームメイトって」
「そ、そうです。あの泥棒猫に間違いねぇですっ!」
「泥棒って……証拠もないのに、人聞き悪いのよー。
 取り敢えず、ヒナがお話してくるの。あの娘に聞けば、蒼ちゃんの居場所が判るの」

雛苺は「ちょっと、待っててなの」と告げて、翠星石を残し、
オディールの元へ駆け寄って行った。なにやら外国語で話しかける雛苺。
どうやら言葉が通じたらしく、雛苺とオディールは、にこやかに談笑していた。
……が、なかなか、本題に入っていない様子だ。

「ああ、もう。な~に雑談なんかしてるです!
 さっさと蒼星石の居場所を聞き出しやがれですっ」

翠星石は焦れったそうに、親指の爪を噛んだ。
すると、翠星石のフラストレーションが伝播したのか、不意に雛苺は振り返って、
翠星石の居る方を指差した。オディールも、雛苺の示す方に顔を向ける。
「あわわわわっ! な、なんで、こっちを指差すですっ?!」

慌てた翠星石は、手近な木の陰に飛び込み、隠れた。
いざとなると、どうしても人見知りしてしまう。
まして、オディールとは初対面。何から話して良いのか、ちっとも解らない。
キッチリと話を付けてやるつもりだったのに…………膝が震えていた。

「うぅ~。ここまで来ていながら、情けねぇです。
 こーなったら、話なんかせず、ひと思いに後頭部をガツンと――」
「もー。なんで隠れてるのー」
「ひうっ?!」

いきなり声を掛けられて、翠星石は五センチほど飛び上がった。
よからぬ事を企んでいたのだから、無理もない。

「お、おバカ苺っ! 驚かすなで……ですうぅ?!?!」

いきり立った翠星石が振り返った先には、不思議そうな面持ちの雛苺と、
彼女の背後に佇むオディールの姿があった。

「こんにちは。貴女が、蒼星石のお姉さんね」

いきなり蒼星石を呼び捨てにされて、ムッと眉を吊り上げる翠星石。

(な、馴れ馴れしいヤツですぅ!
 なんです、その『蒼星石は俺の嫁』みたいな態度は。気に入らねぇですっ!
 この泥棒猫をヌッ殺して、私も死ぬですぅ!)

翠星石は、獲物を前にした豹のように、襲いかかるタイミングを計り始めた。

一方のオディールは、翠星石の殺気には全く気付かず、笑顔で話しかけてくる。

「初めまして。私はオディール=フォッセー。
 もう御存知でしょうけど、蒼星石のルームメイトよ」
「……し、し、知ってるです。メールで、写真を見たですから」
「私も、貴女のこと知ってるわ。貴女の姿は、毎日、目にしてきたのよ。
 蒼星石の机の写真立てに、貴女のブロマイドが飾られているんだもの」
「そ、そうなの……ですか?」
「ええ。蒼星石の、一番の宝物なんですって。とても大切にしているわ」

そんな話をされては、翠星石も満更ではない。
翠星石は単純にも、それまで抱いていた殺意を、すっかり忘れてしまった。

(うんうん。やっぱり、蒼星石は私のことを一番に想ってくれてるですぅ)

そうと解れば、あとは再会を楽しむのみだ。
翠星石は上機嫌で、オディールに蒼星石の所在を訊ねた。

ところが、オディールは「それがね――」と表情を曇らせ、言い辛そうに続けた。

「蒼星石は、今……この街に居ないのよ」
「……えっ?」

翠星石の笑顔が凍り付いた。「どういう…………コト、です?」

「今月の初頭から、教授のお手伝いで採取チームに同行しているの」
「そんなっ! いつです? 蒼星石は、いつ戻るです?」
縋り付いてくる翠星石に、オディールは沈痛な面持ちで告げた。

「採取調査は、一週間の予定よ。多分……早くても七日の午後になるわね」
「っ!!」

翠星石たちは、明日、この国を去らなければならない。
たった一日の差で、会えないだなんて――

「そんなのって…………ねぇです」

へなへなと、力無く膝から崩れ落ちる翠星石を、雛苺とオディールが支える。
翠星石の瞳から、ぽろ、ぽろ、と悲しみの雫が落ちて、アスファルトを濡らした。

「こんな酷ぇ話はねぇです! やっと、ここまで来たのに……何故なのですっ!」
「本当に、急に決まった話なのよ。蒼星石も、貴女に再会するのを心待ちにしてた。
 でも、慌ただしく出発することになって……。
 蒼星石も、なんとか貴女に連絡しようと試みていたのよ」
「でも……時差の関係で、間に合わなかったのね。翠ちゃん、可哀想なの」

――蒼星石も、再会を心待ちにしてくれていた。

オディールの口から語られた、その事実だけが、翠星石にとって唯一の慰めだった。
切望していただけに落胆も大きいけれど、これが今生の別れではない。
あと数ヶ月すれば、夏休みも有るし、蒼星石の留学期間も終わる。
会おうと思えば、まだまだチャンスは作れるのだ。
お互いが、会いたいと願い続ける限り――

翠星石は、人差し指の背で涙を拭うと、自分の足で、気丈に立ち上がった。
けれど、未練を表す涙が、あとからあとから……翠星石の頬を濡らし続けた。



『保守がわり番外編  ×××だよ人生は』

翠「お題が決まっちまったんじゃあ、しゃーねぇです。ハニワを創ってやるです!」
雪「了解しましたわ。では、早速・・・」
薔「粘土を配って、れっつごー!」

 こねこねこね・・・・・・

翠「粘土をこねてると、みんな静かですね。な~んか退屈ですぅ」
薔「・・・そういう時は、気晴らしに唄を歌うのがセオリー」
雪「いいアイディアですわ。それじゃあ、薔薇しぃちゃん。いきますわよ」
薔「おっけー。こほんこほん・・・では」

薔「飲めと言われて素直に(ry」
雪「肩を抱かれてその気に(ry」
翠「?!?! お、お前ら、どーして急に演歌を唄いだすですかっ!」
薔「・・・知らないの? これは、ハニワ造りの唄だよ~」
雪「ハニワ節だよ人生は・・・ですわ」
翠「・・・・・・ふふん。バカばっかですぅ」
雪「!!!」
薔「!!!」

翠「? な、なんです? お前ら、なんか・・・眼が怖ぇですよ」
雪「翠星石さん。貴女は禁句を口にしてしまったのですわ」
薔「私たちに暴言を吐いた罰として、生きたままハニワにしてやる」
翠「な、なななっ! 何しやがるですっ! は、放しやがれですぅ~っ!」

・・・続く
|