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ジュンの受難 第四話

翠星石の声がした刹那。ジュンはドアに鍵をかけ、さらに全体重を乗せた。
何故に鍵をかけたのにわざわざそんなことをしたのか?
説明はできなかった。だが、ジュンは何故か自分の判断を正しいと思った。
磨り硝子越しに、肌色が鮮やかな翠星石が話しかけてくる。
「ジュン、開けろですぅ!」
「ダメに決まってるだろ!」
「ちっ、仕方がねぇですぅ」
そういって翠星石が持っているのは五百円硬貨。
大体の家のトイレとかお風呂とかのドアは、硬貨類で開けれるのだ。
「これで・・・よし、開いたですぅ」
「なんでお前こんな事知ってるんだよ!」
「むかしむかし、皆でお泊り会をしたですぅ。その時に、一人だけ一緒に風呂に入らない奴がいたですぅ」
「そ・・・そいつはどうなったんだ?」
「今と同じことをして、見事に押し入られたですぅ」
「・・・かわいそうに」
「さて、もう楽しいお喋りの時間は終わりですぅ!とっとと裸を晒すがいいですぅ!」

そういって翠星石が力を込めた。しかし、ドアは開かない。
ジュンは自分の判断に感謝した。しかし、それも束の間だった。
小さくなってからのジュンでは、軽すぎたのだ。
その証拠にドアが微妙に開いている。
「あ、ジュンがもたれ掛かってたんですぅ?でも、もう無駄ですよぉ」
「何で?」
ジュンが短く問い返すと、翠星石は楽しそうに、
「だってもう、秘密兵器の登場ですぅ」
「ジュン君、一緒にお風呂に入ろうか」
「そっ・・・蒼星石!」
そして抵抗も虚しく終わり。
ジュンは体の隅々まできちんと洗ってもらい、
シャンプーをするときはシャンプーハットまでかぶせてもらって、
「へぇ、やっぱり可愛いんだね、この歳くらいだと」
「全くですねぇ。これがどんなのになるんですぅ?」
「あ・・・あんまり・・・見ないで・・・」
などと一歩手前の会話まで飛び出し。
ちゃんと一緒に100数えてから上がらされたのだった・・・

「ふぅ・・・いいお湯だったねぇ」
「いやぁ、風呂はやっぱり大勢で入ったほうが楽しいですぅ」
「姉さん、僕・・・お婿にいけなくなっちゃった・・・」
「僕がもらってあげるよ」
「翠星石がもらうんですぅ!」
双子の上がっていくテンションと裏腹にジュンのテンションは急降下。
しかし、一応泊まって行くらしいので、真紅と水銀橙を起こして風呂に入ってもらわなくてはならない。
「おい、起きろ二人とも」
先に反応したのは真紅で、
「はいはい・・・。わかったのだわ」
「タオルとか全部分かるよな?」
「そこらへんにあるもの使うわ」
そういって眠たげに欠伸を一つして、風呂へと向かった。
そしてジュンは水銀橙を揺り動かしてみる。
すると、水銀橙は薄く目を開き、
「ねぇ、ジュンがキスしてくれないと起きられなぁい」
「はぁ?」
「おはようのキスよぉ。ねぇ、キ・ス・し・てぇ・?」
そういって水銀橙は再び目を閉じる。
「もう、さっさと起きなよ。ジュン君困ってるよ」
蒼星石が多少キツめに言う。いや、自分たちがやってくれたことを思い出して欲しい。
とジュンは思ったが、突っ込むのはやめておいた。どうせややこしくなるに決まっている。
「もう、つまんないのぉ」
水銀橙はやや不満げに、風呂へと向かった。

「はぁ、疲れた・・・あいつらがきてから、僕の仕事量増えてないか?」
誰ともなく問いかけるが、答えは返って来ない。
ジュンは時計を見た。12時前だった。
そういえばそろそろ眠くなってきたころだった。
「いいや、もう寝ちゃおう」
そう思ってジュンは電気を消して、ベッドの中に入った。
ベッドの中に入ると、眠気が襲い来る。しかし、別のものも襲い来た。
「ジュン、一緒に寝てあげるのだわ」
「ほら、来たよ」
「どうかしたの?ほら、スペースを開けなさい」
「はいはい」
そういってジュンは端っこに寄った。真紅がベッドに入って来た。
(ま、真紅は良識派だからな)
「お休み」
「お休みなさい」
そう思って気を許したのがまずかった。

深夜。ジュンは何か背中に柔らかい物を感じて起きた。
何だか体に絡まっているものがある。しかも妙に柔らかい。
それが、真紅の体だと気づいたのは30秒後だった。
(うわっ!ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!)
ジュンのピンチを知らずに、ぐっすりと争奪戦(じゃんけん)に敗れた面子は寝ていた・・・。

歯車の狂いが、何を生むかはまだ分からない・・・。
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