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『わらしべ長者』

あるところに一人の引きこもりの少年がいました。
彼は働くのがイヤだったので現代版わらしべ長者になろうと思い、姉のセーラー服を持って旅に出たのです。


彼は左右に草原が広がる一本道を歩いていました。
すると、少年の行く手から何か聞こえてきます。
「現役女子高校生のセーラー服売ってくれる人いないかしら~。変態ちっくな注文だけどいないかしら~」
「そこの人、お待ちなさい」
「何かしら」
「このセーラー服でいいかい? 着用者の写真はこれだ」
「売ってくれるのかしら~、でもカナはお金持っていないからこれをあげるのかしら~」
そう言って彼女が渡してくれたのはおやつの苺大福でした。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「それじゃあありがとうなのかしら~」
そういうと少女は走り去っていきました。
後に残されたのは呆然と立ち尽くす少年のみ。

「ま、まあ。気を取り直して次に行くか」
セーラー服を失って家に帰るに帰れない少年は苺大福を持って歩き出しました。
食べてしまいたい衝動に襲われますがわらしべ長者の為にはそうもいきません。
しばらくすると、道の真ん中に倒れている少女が見えました。
クールぶっていても根は善良な少年は急いでかけより、声をかけました。
「大丈夫かい?」
「うにゅ~、うにゅ~頂戴なの~」
「うにゅ~?」
「それなの~、ヒナに頂戴なの~。もらったの~」
「Σ!」
少年が呆然としているうちにその少女は苺大福を奪い取り、一口で食べてしまいました。
「美味しかったのー、お礼にこれ上げるのー」
少女がくれたのは金色に輝く鋏でした。
「い、いいのか。こんな高そうなものもらって」
「構わないのー、それメッキなのー。隣の蒼星石からもらったのー」
少女は空腹で倒れていたとは思えない様子で走っていきました。

「メッキかよ……」
呟いた少年は気を取り直して歩き始めました。
セーラー服が鋏になっちゃったというギャグが姉に通用するかを考えながら歩いていると向こうから緑色の服を着た少女が歩いてきました。
「お、そこのチビ。ちょっと待つですぅ」
「何だよ」
「その鋏を見せるですぅ」
「……まあ、いいけど」
少年は少女に鋏を渡しました。
少女はそれを丹念に眺め、一言呟きました。
「これは金メッキだけどその下の鋏はかなりいいやつですね。お前みたいな奴が持ってることが不思議なくらいですぅ」
「悪かったな、交換したんだよ」
「そうですか。なら、価値もわかってないやつなら同じくらい価値があるものと交換しても問題ねぇですね?」
「まあ、そうだけど」
「なら、これと交換してやるですぅ」
少女はそう言って銀色と赤色に塗られた如雨露を取り出しました。
「これは呪いの如雨露と言って、むかーしむかーし、ある王様がこれで花壇に水をやっていたのですが、成長した食人花がその王様をがぶりとやっちゃったという呪いの品ですぅ。感謝するですよ? 蒼星石のプレゼントのために掘り出し物と貴重品を交換してやるんですから」
「すっげー怪しいなそれ」
「ひひひひひ、これだから素人はだめですぅ。この如雨露に漂う怨念は並じゃねぇです。というわけで交換したですから、しっかり持ち歩くんですぅ。さらばですぅ」
「お、おい! ちょっと待てよ!」
少女はその体格からは考えられないほどの速さで、しかも腰から上は動かさずに走り去っていきました。
「は、はえー」

「ま、まあ。呪いのグッズなんて初めて触るものじゃないし。どうせこれも偽者さ、は、は、は――」
「クキヒィィヒヒヒヒフヘホホホロッホッテョテョテョテョテョ」
「うわぁぁぁああqwせdrftgyふじこl!11」
如雨露から湧き出た声に驚いた少年はどこかの女性の名前を叫んでしまいました。
少年は如雨露を投げ捨てようとしましたが手から離れません。
「く、くそ! 何で離れないんだよ。このっ! このっ!」
「何をやってるのかしら、貴方」
「えっ?」
手から離れない如雨露と格闘していた少年の目の前にいつの間にか紅い服を着たお嬢さんが立っています。
「何をしているのかと聞いてるのよ?」
「この如雨露を捨てようとしてるんだよ」
「あら、中々いいものを持ってるじゃない」
「欲しいか?」
(あれを水銀燈に上げたら……

「水銀燈、貴方にこれをあげるのだわ」
「あら、真紅。何をくれるのかしらぁ」
「これよ、如雨露なのだわ」
「この如雨露は……もしかしてぇ」
「そうよ、銀と紅で塗られた如雨露は貴女と私が一緒になるという意味なのだわ」
「真紅……」
「水銀燈……好きなのだわ」
「私も好きだったわ、真紅」
二人の唇が徐々に近づいていく、二人の目はゆっくりと閉じられて―― )

「おい! 聞いてるのか?」
「わ、わわわわ。何をするのだわ(折角もう少し妄想に浸っていたかったのに……)」
「ん? 何か言ったか」
「な、何でもないのだわ。それでそれは私が貰ってもいいわね?」
「別に構わないけど……とれるのか?」
「邪魔するの?」
真紅の目が光る。
基本的に強がっていても根は気弱な少年は怯えたように首を横に振りながら右手に張り付いた如雨露を差し出しました。
「よろしいのだわ。ふーん、中々いい品みたいね」
「と、とれた?」
「何を驚いてるのかしら。そうね、お礼にこれをあげるのだわ」
「え? ビン?」
「紅茶よ。覚えておきなさい、ではさようなら」
そういうと紅い少女は如雨露を大事そうに抱えて歩き去っていきました。
「……まぁ、わけのわからない如雨露から解放されたからいいか」

少年の旅は続きます。
紅茶を持った少年がそろそろお腹すいたから家に帰ろうかなと思っているところでした。
向こうからまた少女がやってきます。
そろそろ、学習した少年はその少女をじっと見つめながら歩きます。
後数歩というところまで近づくと少女は足を止め正面を見つめます、少年もそれにつられて足を止めて少女をまじまじと眺めてしまいました。
「何を見てるんだい? 僕に何か用?」
「い、いや。別にそんなことはないんだけど……」
「ん? 君が持ってるそのビンはもしかして薔薇紅茶かい?」
「ぼ、僕はわからない。さっき交換しただけだから」
「そうなんだ。ちょっと貸してくれるかな?」
「あ、ああ」
少年はビンを渡しました。
少女は蓋を開けて中の葉っぱの匂いを嗅いでいます。
「うん、これが僕の探していたやつだ。ちょっとわけてもらってもいいかな? あげたい人がいるんだ」
「別に僕は紅茶飲まないから全部上げてもいいけど代わりに何かもらえないか?」
「うーん。代わりか……」
蒼い服をきた少女は腕を組んで空を見上げました。
「そうだ、これをあげるよ」
そういうと、少女は腰から棒状の物を抜き取り少年に投げ渡しました。
少年の鈍った運動神経では難しい技でしたが、どうにかD6のぞろ目をそろえたのかキャッチに成功しました。
「これは……ナイフか?」
少年は鞘らしきものから刀身を抜き出すと、ギラリと光る刃が出てきます。
「気をつけてね、それ本物の刃だから。指くらいすぱっと切り落としちゃうよ」
「うわぁ、そんな危ないもの投げるなよ」
「ごめんごめん、それこの紅茶の代金としては十分だと思うけどどう?」
少年は考えました。
まあ、どうせ元々僕のものじゃないしな。
「まあ、これで勘弁してやるよ。それじゃあな」
「大事にしてよ。真紅の為だから手放すんだから。ばいばい」
少年と少女は別れました。

「しっかし綺麗な刃だな……本当によく切れそうだ」
少年はやはり刃物への好奇心には勝てなかったのか、ちょっと抜いては鞘に収めまたちょっと抜いては鞘に収めるを繰り返してついには全部抜いてしまいました。
「ちょっと何か切ってみようかな……アレにするか」
少年は道端の草に近づいて花を切ろうとしました。
「ちょっとぉ。そこ何をやっているのかしらぁ?」
「えっ!?」
少年の後ろから声を掛けてきた少女がいました。
「お花だって生きてるのよぉ、意味もなく切ったりなんかしちゃかわいそうでしょぉ?」
「う、うん。……ごめん」
「わかればいいのよぉ。お花も木もそこらへんの雑草だって、皆口をあけて話したりはしないけど皆生きてるのよぉ。だからね、大切にしないと」
「わかったよ」
少年はナイフを鞘にしまいました。
「まぁ、私も偉そうに言っちゃったけどぉ。これ他人の受け売りなのよねぇ、翠星石って人がね、私の好きな人なんだけどぉ、その人がね言ってたのを真似しただけだから、そんなにかしこまらないでねぇ」
「……これをその人にあげてください」
少年はナイフを黒色の服で身を包んだ少女に差し出した。
「いいのぉ?」
「ええ、僕がナイフを持ってても使い道がないから」
「そぉ、ならもらっておくわねぇ……じゃあ代わりにこれ上げるわぁ」
少女は羽の髪飾りから一枚の羽を抜き出し僕の胸に付けてくれた。
「それは幸運の羽よぉ。お守りにつけておきなさぁい、それじゃあねぇ」
そう言うと少女は立ち上がって歩いていきました。

少年がそろそろ家に帰ろうかと思ったときに向こうからまた一人の少女がやってきました。
少女は少年の前で足を止め、じっと顔を見上げてきます。
少年も静かに見つめ返しました。
二人の視線は静かに絡み合い、そしてどれだけの時間がたったのでしょう。
悪戯な風の精の仕業でしょうか、二人の横から風が吹き少年の胸の羽がひらひらと舞い上がります。
「「あっ」」
二人は同時にその羽に手を伸ばします。
少年の手はあと少しで羽に届かず、少女の手はぎりぎりで捕まえました。
少年はムリに手を伸ばしたせいで体勢を崩して、正面に、つまりは少女の方に倒れこみ二人は草むらに倒れました。
少年が上で、少女が下。
二人の接点はその唇。
二人の目はまたもや見つめあい、しばらくして少年は少女の唇から唇を離し、言いました。
「その幸せの羽とキミを交換してくれないか」
「……喜んで」


「――こうして優しいJUNと美しい薔薇水晶は幸せに暮らしました。めでたし、めでたし。」
「薔薇水晶……ちょっと配役が気になるのだけどぉ(何で翠星石のそのセリフ知ってるのよぉ)」
「貴女、覚悟は出来てるのでしょうね(水銀燈に気づかれてしまったかしら)」
「蒼星石、違うですよね? (真紅はいい子ですけど、それでも蒼星石は翠星石の……)」
「す、翠星石? 何のことかなぁ(真紅、誤解しないでよ。翠星石はただの双子なんだ……)」
「ふふふふふ、色々めでたし、めでたし(ニヤッ」


              終
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