弾丸と悪魔と準々決勝と


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  準々決勝の二回戦が終わり、会場の証明が再び灯を落としていく
  二回戦のバトルも見事だったが…解説はほとんど千沙都がやってくれていた
  準々決勝の一回戦を見た後の俺はまともに解説なんかしちゃいなかったんだ
  暗闇といっても全く何も見えないほどではない
  薄くボンヤリとした視界で、まだ血がにじむ己の掌を見つめる

  ルシフェル…その姿は興紀の指示を100%忠実に行おうとする戦闘マシン
  叫び、恐怖に飲み込まれ己を制御できぬ状態の相手に何の迷いも無く撃ちだされたグレネード
  散っていく神姫の断末魔が何故か俺の頭に残って離れない
  それは昔、俺が毎日耳にしていた声に似ていたからだろうか…

  「無感情で冷酷無比な魔王…まるで昔のあなたのようですね」
  放送用のマイクはOFFにしているのだろう千沙都はボケーと自分の手を見ている俺にそう言った
  「ご主人様が魔王…ですか?」
  ふと視線を少し横に移すと、行儀よく自分の神姫用観戦席に座っていたノアが顔だけをこちらに向けている
  いや、確かに今の俺を見て『魔王』って思うヤツなんかいやしないだろうさね
  「人聞きの悪いことを言うなよな…」
  「あら、私は事実を言ったまでですよ?」
  クスクスと茶化すその姿は年上の女の余裕なのだろうか…少し悔しい俺はガキなのでしょうか母さん…

  『まぁ、明人もまだまだ子供よねぇ~(笑)』
  うっせぇ!! アンタにだけは…アンタにだけは言われたくないぃ!!!

  そんな脳内で御袋に突っ込みを入れるなどと阿呆な事をしている間に会場の暗闇が一変、同時にドーム中央、バトルシステムの方から銃撃音が木霊する
  『さぁ! 準々決勝も折り返しまして第三回戦の幕を開きまし…っと!?』
  燕さんも言葉に詰まる
  そりゃそうだ、俺だって結構驚いてんだ
  開始直後に両者共に大ダメージを受けてるんだからなぁ
  「……いきなり…やってくれる…」
  サブアームの左腕《レフトアイアン》をばっさり切断されて左肩、左側腹部に銃弾を喰らったのであろうミュリエル
  「初撃から…打ち返してくるなんて…」
  対するアーンヴァルもウイングユニットの左翼が壊滅、力ない左腕を右腕で庇っていた
  バトルステージ古代遺跡中央付近で息を切らす二人
  いきなりの急展開だよオイ…
  『こ、これは……と、とにかく選手紹介を! 方角が虎には一回戦でトリッキーな戦術を見せてくれたアルティ・フォレスト選手、ミュリエル選手! 対しまして方角が龍には上岡修也選手と高速の弾丸、バレットエンジェルことリュミエ選手となっております!』
  なるほど、『弾丸神姫』なら今の状況も納得かもな
  再抽選で相手が誰になるのかわからない状況、暗闇が終わる時が開始の合図、十八番の戦術が高速奇襲&一撃離脱と好条件が揃ってんだ
  ミュリエルがいま立っている事が不思議でならないんだが
  おまけに反撃つきとはどういうことだ?
  ちらりと虎門のオーナーブースに眼をやると…
  「うっわぁ……」
  「どうかしたんですか?ご主人様」
  「いや、あれ見てみ?」
  俺はノアにオーナーブースの中にいる鬼を指差しながら言った
  「……アルティさん…です…よね?」
  「違う、アレはもう阿修羅の化身でしかねぇ…」
  原因は多分あれだろう、準々決勝一回戦
  ルシフェル、そしてそのマスターである鶴畑興紀を彼女は良く思っていない
  あの好青年の仮面の後ろに気づいているのか、それとも単に虫が好かないのかは別として、アルティ・フォレストの機嫌はすごぶる最高潮に悪いのであった
  「あの状態のアルはすごぶるヤバイ」
  「……ご主人様?」
  「マジデヤバイ、マジデ…コワイぞ!!」
  「あの…」
  「ふむ、実体験者であったのか…」
  冷や汗だらだらの俺を半ば呆れ気味で見る二人の神姫
  そんなおっかないモードのアルティは容赦がない
  それに対する向かいの龍門側ブースには…二十歳前後の青年が何やら神姫に指示を出している最中である


  「こちらの初撃にあわせてサブアームによる側面からの殴打、ちょうどこちらの死角を迎撃するとは…。左翼へのダメージがイタイな。エクステンドブースターも一機やられている…機動力が40パーセントまで落ちるとなると……向こうのダメージも計算のうちなんだろうな…」
  「マ…マスター」
  「となると相当はかなりの策士、それに戦闘経験が半端じゃない…厄介な相手だ。しかしあんな無茶なマスターの指示を的確に実行するほどの神姫も凄い。信頼関係がしっかりと成り立っている…というかマスターは何か凄く怒っているような気がするんだが…」
  「た、確かにそうですが…心当たりはないんですか?」
  「あるわけないだろ…っと、こんな話をしてる場合じゃないな。切り替えるんだ! 相手も同じようにダメージを抱えている。冷静に対処しろ!」
  「り、了解!」


  「よくやった、ミュリエル。警戒していて正解だったな」
  「…アル…簡単に言ってくれる…今…結構しんどいよ?」
  「素体に受けたダメージはこちらの方が上だろうが…高速天使の翼と交換となるとお得な買い物だろう。『肉を切らせて骨を絶つ』と言うやつさ」
  「…アル…なにげに言ってること怖い…」
  「おまえなら難無くこなせると思ったんだが?」
  「……まぁね…」
  「さてと、相手が早期決戦のスペシャリストなら今の私達には好都合だ。長引かせたくなどないのはこちらとて同じ。さっさと終わらせてあの空かした野郎を……私達が倒す!!」


  『おっと、攻撃を再開したのはミュリエル選手!』
  自慢の機動力を奪ったリュミエとの距離をサバーカの脚力でぐんぐんと縮めながら《アポカリプス》を起動させるミュリエル
  背中から打ち出されたミサイルはリュミエの頭上を越えて彼女の後方、空中で爆発
  「なっ!?」
  爆発と共に何かが飛び散り、リュミエの後方の地面に無差別に突き刺さる
  それによりリュミエは退路を絶たれてしまった
  『あ、あれはいったいなんなのでしょうか橘さん』
  『…おそらくあれは捕獲用の黒槍拡散弾頭でしょうね。相手の行動範囲を狭めることで接近戦に持ち込むようですが』
  ほんと、何でもアリだな《アポカリプス》…
  「来るぞ!」
  「はい!」
  退路を絶たれ、背水の陣となったことにも恐れることなく真正面から対峙しようとするリュミエの右腕にはパイルバンカー

  『天使…鋼の杭を用いて迫り来る悪魔の胸をば打ち貫かん…』

  ボソリと呟いたのは…冥夜だった

  その言葉と同時にフィールドの中央で二つの影が重なり合う
  リュミエの放ったパイルバンカーはミュリエルの左肩を打ち貫いていた
  大型スクリーンには苦痛の表情を浮かべるミュリエル
  しかしその口元には怪しげな微笑…
  「ひっか…かった…ね」
  「!!」
  小さな声でそう言うと、ミュリエルの右サブアームが水平を描き、その掌でリュミエの腰元をガッチリと捕らえた

  『悪魔…打ち貫かれてもその腕は敵を捉え…滅するであろう』

  「くぅっ…」
  「ホント…アルは…無茶させ過ぎ…。えっと…何だったけ………あぁ…思い出した…」
  「やぁ…放して…」
  「……ダメ…一気に決める…」
  「この状態で何を………ま、まさか…!!」
  ミュリエルのサブアームは徐々に輝き出し…
  「ちょ、ま、まって…!!」
  「肉を切らせて…骨を………絶つ!!」
  掌を接続させたまま《ライトオリジン》を展開、俺が初めて聞いた彼女の大声と共に大爆発を巻き起こした


  『勝者 ミュリエル!!』

  AIの勝者コールと大歓声の中、黒煙から姿を現したミュリエル
  ボロボロだったが…彼女の見せた笑顔が俺にはとても綺麗に見えたっつうことはウチの三人には内緒にしておくとしよう


  追記
  「どうでもいいけど最近のアタシらって扱い酷くねぇか?」
  「うん、確かに…ノアねぇばっかりずるいよね~」
  「お二人とも…明人様はお仕事中なのですから…」
  「香憐サンはアニキに甘いんだよ」
  「それは仕方ないよユーナちゃん。香憐ねえさんは昔っから兄さんにベタ甘だったし」
  「は、葉月様まで…」
  「つうかアルのやつ準決勝まで行っちまったぞ?」
  「そうですね…ミュリエルちゃん、四強入りですよねぇ…」
  「アネキ…ミュリエルに勝つ自信あるか?」
  「…ちょっちヤバイかも;」

                           続く

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