ローゼンメイデンが教師だったら@Wiki 白馬の王子様

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 私には、彼氏がいた。
 でも、もう居ない。
 彼氏は、死んだ。それだけの話。
 彼は、白馬の王子様だった。
 だけど死んだ。
 彼は、素敵な男性だった。
 だけど死んだ。
 彼は、彼は彼は彼は彼は。
 私の初恋の人で、私が愛した最初で最後の人。
 彼が、死にもう十年。
 私はまだ、それを引きずっている。
 彼は、私の目の前で死んだ。
 暴走車に撥ねられ、何が起こったのかわからなかった。
「先、逝くわ」
 掠れた声、大量の血が彼から流れ落ちていた。
 そして、私はその場で涙を流し咆哮した。

「ああぁぁぁあ!!!!!!!!!!!!!」

 私は、大声を上げて跳ね起きる。
 息が荒い。嫌な汗が全身に出ている。
 自分の部屋だ。カーテンから薄い太陽の光が差し込んでいる。
 久しぶりに見た彼の夢。もう、大丈夫だと思っていたのに
 無性に涙が出た。

 シャワーを浴び、じっとりとした汗を流す。
 先ほどよりはマシになったが、気分はまったく晴れない。
 嫌な朝。嫌な夢。嫌な考え。嫌な嫌な嫌な嫌な。嫌な自分。
 風呂場の壁に拳を打ち付ける。自分の上から降りかかるシャワーの音が煩い。
 こんな事しても気分は、晴れずただ、拳が痛くなっただけだった。
 弁を閉めシャワーを止め、濡れたままで風呂場を後にする。
 ココまで自分は、弱かったのだろうか? そう思い短く舌打をした。
 一度深呼吸したあと、干してあったバスタオルで体を拭く。
 朝食をとる気分ではなかったし、何故かお腹は空いていなかった。
 ただ、やけに喉が渇いていたのでコップ二杯ほど水を飲む。
 故郷の水より不味い。カルキ臭い。
 私は、とりあえず着替えていつもの鞄……あぁコレも彼の形見だった……を手に自宅を後にした。
 空は、あおく青く蒼く。澄み通って居た。今の気分では、どれだけ美しい空を見ても
 気が滅入るだけだった。車庫のシャッターを開け自分の愛車に乗る。
 運転席に座りカギを刺しエンジンをかける。
「おいおい! スピードだしすぎだぁ!? うおぉ?! ドリフトぉおぉ?!」
 もう昔のことなのに、いつかの彼とのドライブの事を思い出してしまう。
 あぁ、安全運転しておけばよかったかな。と、今更後悔する。でも、それはもう意味が無い。
 今日は、昔の事ばかり思い出す。困る。

 学園の駐車場に愛車を止まらせ、エンジンを止める。
 背もたれに背を預けしばらくの間、フロントガラスから見える空を見ていた。
 ポケットから無造作にタバコを取り出し一本口に咥える。ピースアロマメンソール。
 火をつけるのをやめて、私は咥えたタバコを手に取り握りつぶす。
 これも彼が好きだった銘柄。なんだというの? 今日は………
 愛車から出て、乱暴に戸を閉める。こんなに嫌な気分は、生理の時だけでいいのに。そんな事を心の中で愚痴る。
 校舎に入り職員室に向かう、生徒達とすれ違うが誰も声をかけてこなかった。
 いつもなら、おはようございます。とか、会釈だけでもしてくれたのだが……
 表情に出ているのだろうか……まったく、今日は実に嫌な日。
「あ、おは……」
 同僚である蒼星石が、私に声をかけようとして停止した。
「な、何かあったの?」
 其処まで酷いのだろうか? 私の表情は、私は蒼星石に別に今日はそう言う日。と告げると蒼星石はそうか。
 と、同じ女性として分かってもらえたらしい。実際の原因は、全然違うのだが。蒼星石に話してもしょうがないし
 こう言う問題は、自分で蹴りをつけなければならない。
 自分の仕事机に座って、授業の準備をする。
 数分後、職員室での朝の連絡がラプラス教頭から、言われたが馬耳東風。まったく覚えていない。

 授業中。いつも賑やかな生徒達は、しんと静まり返って授業を受けている。
 いつもなら、生徒達から冗談話などが飛び交うのだが、今日はまったく無い。
 痛いほどに静寂で、生徒同士のこっそりの会話も耳の良い私には聞こえてしまう。
「な、なぁ……先生どうしたんだ?」
「しらねぇよ……なんか、機嫌悪そうだ」
「馬鹿。先生は女性なんだから……」
 私は、そのこっそりの会話を聴かなかった事にして授業を進める事にした。
 生徒にまで気を使わせているのか私は。
 早く授業の終了を告げる鐘が、鳴れば良いのにと私は思う。多分生徒達もそうだろう。
 こう言うときは、嫌に時間を長く感じる。一分60秒が、三分にも五分にも感じてしまう。
 授業終了の鐘が、鳴り私は、逃げるようにして教室を後にした。
 授業をしなければいけないクラスは、まだある。教師の仕事が終了するまでずっと今日はこうなのかと考えただけで
 気が滅入る。今朝見た夢のせいだ。心なしか、教員用教科書を持つ手に力が入った。
 次の授業もその次の授業もそのまた次の授業も、最初の授業と同じように痛いほどの静寂の中授業を進めた。
 昼休み。私は、屋上に逃げた。どちらかと言うとジッとしていられなかった。
 私は、金網に手をかけため息をつく。今の私は、私じゃない。金網にあけた手に力を込めた。
 鈍い音を立てて金網が、少々変形する。
 そのまま、空を見上げれば、一つの流れる雲。
「自由の極みって言ったら雲だな。流れて消えてまた現れて。まさに自由じゃないか?」
 また思い出す。今日は、彼の事ばかり思い出す。未練? 今の自分に腹がたつ。
 金網を思いっきり殴る。ただ、拳を痛め金網の跡がついただけだった。

 放課後。今の状態の私に仕事が手につくわけでもなく屋上に居た。
 屋上に備えつけられたベンチに座る。タバコを取り出し一本口に咥え火をつける。
 一呼吸後に紫煙を吐く。幾分か気分が楽になる。
「俺にとっちゃ、タバコは精神安定剤代わりなんだよ。お前も吸ってみろよ」
 自分が、タバコを吸い始めたきっかけは彼のこんな一言から。
 銘柄も同じモノ。彼と一緒だという事が、そのときは嬉しくてしょうがなかった。
 初めて自分がタバコを買ってきた時。彼にそれを見せたら、彼は苦笑して
「おいおい。俺と同じ銘柄かよぉ~ちょっとは、冒険してみろよ。タバコって銘柄によって味ちがうんだぜ?」
 その後で、彼は少し照れくさそうにまぁ、お前と同じってのはなんか……えぇい! これ以上言わねぇ! と、大声を出した。
 懐かしい思い出。
 タバコの煙が、目にしみて涙が出てくる。
「いやになってくるなぁ……もぅ……」
 流れる涙をそのままに、私はベンチの背もたれに背を預け目を瞑る。
 タバコを半分ほど吸った後携帯灰皿で火を消し吸殻を携帯灰皿の中に捨てた。
「あ……居た」
 ふと、そう声かけられた。その声の主の方を向けば、同僚の雪華綺晶が紙袋を抱えて立っている。
 私は、なにかよう? と尋ねると、雪華綺晶は別にとそっけなく返し私の隣に座る。
 そして、ゴソゴソと紙袋から何かを取り出し私に差し出す。
「気が滅入ってる時……空腹だと……余計気が滅入る」
 雪華綺晶が差し出したものは、肉まんだった。

 どうやら、心配してくれてるらしかった。私は、ありがたく肉まんを受け取り一口食べる。
「今日は……昔の事とか……前世……別の世界を巡る日………」
 私の横で、雪華綺晶が良くわからないことを言う。
「…………日が、変われば………また戻る……でも、この日に罪はない……ただ、忘れないで……そう言ってる日」
 私は、雪華綺晶を見る。雪華綺晶は、いつもと変わらないポーカーフェイスで淡々と肉まんを食べていた。
「だから……今日は思う存分……昔を思い出し……前世を顧みて……別世界の自分を見ると良い」
 雪華綺晶の言葉は、良くわからない。だけど、何処かでソレを分かってる自分が居た。
 私は、肉まんを頬張る。どうやら、彼の事を気にかけすぎて腹の感覚が、麻痺していたらしい。
 私は、ペロリと肉まんを食べ終えた。
「……ねぇ」
「なに?」
「彼は、アナタと共に居る」
「え?」
 それだけ言うと雪華綺晶は、ベンチから立ち上がり空になった紙袋をプゥと膨らませて私の目の前で割った。
 弾ける音がして、私は驚いてしまった。その後私は、なにするのよ? と、言おうとしたのだが……
 もう其処に雪華綺晶の姿は無かった。
 私は、しばらく屋上に居た後職員室に戻り、簡単な仕事を終わらせて自宅に帰宅した。
 帰宅した後、寝巻きに着替えさっさと眠る事にした。

「ははは、お前。俺の事引きずりすぎだぜ?」
「なぁに、白馬の王子様はひとりだけじゃねぇ。新しい白馬の王子様をさがすんだぜ?」
「まったく、お前のその姿を見てるとオチオチと地獄でのんびりしてられねぇじゃねぇか」

 目を覚ます。
 もう、朝。
 昨日みたいな、気分は嘘みたいになかった。
 のんびりと、シャワーを浴び朝食を食べ学園に向かう。
 愛車を学園の駐車場に止め、職員室に向かう。
 授業の準備をして朝の連絡を聞き、さぁ授業だ。
「さぁ~今日は、59ページからよぅ~? この二次成長の過程についてを……そうねぇ~ジュン君読んでちょうだぁい」
「俺?!」
 いつもの授業。いつもの私。いつもの日常。
 ねぇ、アナタは地獄でのんびりしてるといいわ。
 でもね、私の白馬の王子様はアナタ一人なのよ? わかってるぅ?
「男性の場合だと……二次成長の特徴として」
「あ、女性の場合でおねがいねぇ?」
「水銀燈先生。それセクハラですよ?」
「あらぁ……いまは、授業中じゃなぁい」
「お化け苦手なくせに……」
「ジュゥウウンくぅうううん? ちょぉおおおおと、先生とおはなししましょうかぁ?」
「う、うわぁぁぁあああ!?!?」
「あ、皆ちょっと自習しててねぇ?」
 やっぱり私はこうでなきゃぁねぇ?