猫耳少女と召使の物語@wiki保管庫(戎)

岩と森の国ものがたり05

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岩と森の国ものがたり 第5話

 
 
ライファス宮殿、謁見の間。
美しい女王の前に跪き、騎士が報告を行っている。
まだ若い。二十歳を少し超えた程度か。銀色の髪との端正な顔立ちのカモシカの青年だ。
名門の出であろうことは容易に想像がつく。平民では、たとえ騎士昇格試験に通っていてもまだ一騎士のままか、よくて小隊長程度の年齢だ。
しかしこの男の鎧につけられているのは千人隊長を表す、銀の飛竜のエンブレムである。
この年齢でその立場につくことができるなど、かなりの名門の出自で、なおかつ相当な実力がなくてはならない。
「陛下。グランダウス攻略は成功したとの報告がございました」
「……そうか。して、叔父上の身柄は?」
「申し訳ございません。いまだ不明なままでございます」
「いや、そちが謝ることではない。あの叔父上が易々と捕らえられるような方ではないことはわかっている」
 そう言って慰めの言葉をかける女王。女王エリザベートと瓜二つだが、エリザベートではない。妾腹の妹であるローザである。
 しかし、誰も玉座に座る彼女がエリザベートと別人だとは気づいていない。それだけ顔も声音も、気品さえも似ているのだ。
「はっ……」
「しかし、グランダウスそのものよりも、八千もの兵をほとんど損害なく打ち破ったということが大きい。よくやってくれた」
「ありがたきお言葉にございます」
「このような時だ。褒美は土地よりも金の方がよいであろう。……銀剣三百本を授けるとする」
「はっ。ありがたき幸せ」
 騎士が退出した後、カモシカの老人がそっと近づいてきた。
「陛下」
「どうした、ギュレム。私の判断は間違っていたか」
「……いえ、なかなかの判断でございます。あの者は試用らい有望な者ですからな。しっかりつなぎとめておかねばなりせん」
「ならばよかった。……姉上のようにはなかなかゆかぬ。迷ってばかりだ」
「自信をお持ちくださりませ。陛下が行方をくらまされたことは一部のものしか知っておりませぬ。今は、ローザ様がエリザベート女王なのです」
「そうだな。……いつの日か、姉上がお戻りになられる日まで、しっかりとせねばならぬ」
「はい。陛下にはこのギュレムがついております」
 そう言って玉座の前から離れるギュレム。
──あの分なら、問題はない。あらゆる意味において……な。
 
 同じ頃、ライファスの地下。
 十字架に縛られた少女を嬲る、いくつもの触手。
 もう何日も十字架に縛られたまま、人ならぬものに責められ続けている虜囚の存在は、宮殿の一握りのものしか知らない。
 ほんの二週間前までは、この国の若き女王だった少女エリザベート。
 今はドレスを剥ぎ取られ、肌もあらわな姿でこの地下室に拘束されている少女に、その面影はない。
 望まぬ快楽に身悶え、荒い息づかいで喘ぎ、目に涙を浮かべて嬲られるままにされている。
「……あぁ……んっ……いゃあ……やめ……」
 かすかに漏れる声。嫌がる声にも、こらえ切れぬ官能の甘い響きが混じっている。
 拷問植物の球状の本体から伸びる無数の緑色の触手。
 ヒポグリフ研究の副産物として開発されたそれは、三種類の触手を持っている。
 全身に絡みついて揉む、ぬめり気のある触手。ぬめり気に含まれた催淫成分が全身の性感を高めつつ、人間の指を模した力と動きで揉む。
 乳房や腹部、わき腹などを中心に責め立てる、繊毛の生えた触手。羽根のように軽い力で、敏感な箇所をくすぐるように撫でる。
 そして、直径5ミリ程度の細い触手。それはほんのわずかな隙間にも忍び込み、他の触手が与えられないような微妙な刺激を、体の内と外から与える。
 それらが、十字架に縛られて身動きできない少女に一方的な快楽を与え続ける。
「……あっ……いや……」
 乳房に絡みつき、揉みしだく触手。
 その先端の、つんと硬くなった桃色の突起に繊毛が触れるたびに、エリザベートの口から喘ぎ声が漏れる。
 胸の谷間や下乳には細い触手が忍び込み、太い触手が与えられない繊細な刺激を与える。
 その少し下、腰まわりでは太い触手がぬめりながらうごめき、催淫成分を肌に塗りつけている。
 汗と触手のぬめりが、ランプの光でてらてらと光る。
 そして、そんな腰周りを、繊毛が軽くくすぐり、細い触手が肌を這う。
「いや……そこは……」
 力のない哀願の声。それを無視して恥部に忍び込む、無数の細い触手。
 十字架に拘束されているとはいえ、ほんのわずかに両足は左右に広げられている。
 そのわずかな隙間から、細い触手が何本も陰毛をかき分けて秘裂の中にもぐりこむ。
 そしてそれらが、まったく別々の動きで暴れまわる。
 
 ピストン運動を行う触手。体の内側から柔らかな力で愛撫する触手。肉芽に襲い掛かり、容赦なく皮を剥いて責め嬲る触手。
「いやぁ……いや……」
 涙を流しながら、全身を襲う快楽に耐えるエリザベート。身動きひとつできないまま、ただ快楽に耐えることしかできない。
 無数の触手が入り込んだ恥部からは、すでに愛液が太腿を伝ってとろりと流れ出している。
「お願い……許して……もう……」
 その目は、少し離れた場所で少女の痴態を見つめる青年に向けられている。
 地下室には、かつて女王だった少女と、青年と、そして拷問植物しかいない。今、少女をこの淫楽地獄から救い出すことができるのは、その男しかいなかった。
「……」
 しかし哀願を無視して、責められるままの少女をみる男。無力な少女が、触手に弄ばれ、全身を桃色に染めて悶える姿をじっと見ている。
「ナオ……お願い……こんなの……」
 少し前までは、ペット同然だった男に涙ながらに懇願する。しかしそれさえも無視され、触手の責め苦を与えられ続ける。
「んっ……」
 快楽の中、どくんと体の中からこみ上げてくる感情。それに飲み込まれまいと、必死になって耐える。
 だがそんな抵抗をあざ笑うように、触手は陵辱を続ける。
 乳房を揉むように這い回る、太い触手。
 汗ばんだ乳房にからみついた触手から逃れようと身悶える少女は、しかし十字架に縛り付けられていてどうすることもできない。
 そんな少女をいたぶるように、うなじやわき腹、そして乳首など、敏感な部分をくすぐる繊毛。
「んんっ……んくっ……」
 必死になって、襲い来る快感とくすぐったさに耐える少女。口はきゅっと閉じられ、両手はぎゅっと握り締められている。
 そんなかすかな抵抗を無視して、下腹部にもぐりこむいくつもの細い触手。
 何日もの陵辱ですっかり開発された少女の秘部は、快楽に必死に耐える心とは裏腹に、すんなりと触手を受け入れる。
 体中を這い回り、ありとあらゆる性感帯を責め立てる触手。
 十字架に縛られてなすすべもない少女は、それでも目を閉じ、唇をかみ締め、両手を握り締めて必死に耐える。
 そんな少女が、どこまで耐え切れるか、まるでからかうように触手は蠢き、執拗に責め嬲る。
「……んっ……」
 閉じられた唇から、それでも時折漏れる短いうめき声。
 
 やがて、触手は少女の限界が近いことを悟ったのか、動きを激しくした。
「あっ! いや、やめてっ!」
 激しい動きに、たまらず声が出る。口を開けた瞬間、その口の中にまで太い触手が数本入り込んできた。
「んくっ! んっ、んんっっ!!」
 言葉すら出せなくなり、うめき声をあげるエリザベート。そんなエリザベートの全身を、さらに激しい動きで責める触手。
「んっ! んっ……んんーっっ……」
 言葉にならない、くぐもったようなうめき声。ぴくんぴくんと全身を震わせながら、少女は快感に飲み込まれてゆく。
 そんななかで、限界は訪れた。
 びくんと、縛られた裸体が何度か大きく跳ね、そして、果てた。
「…………」
 さっきからその様を見ていた青年……ナオトが、無言で近づく。そして、拷問植物の壷を少し強く蹴る。
 エリザベートの全身に絡み付いていた触手が、汗と愛液とぬめりにまみれた裸身から離れ、くるくると丸くなって大きな球状に姿を変えた。
 それを、壷ごとごろごろと運び、少し離れた場所にあるリフトに乗せる。そして鐘をならすと、リフトが上の階へと上っていった。
 いかに気持ちの悪い植物であっても、時折は光合成させないと枯れてしまう。一日おきぐらいには太陽の光に当てる必要があった。
 拷問植物を上の階に送り終えると、ナオトはエリザベートの元に近づく。
 責められてぐったりとなったエリザベートに、ナオトは聞いた。
「さて、鍵、のありかですが……まだ白状なされる気はないようですね」
「……」
 無言のエリザベート。言葉を言う力もないようだった。
「……これは、ずいぶんとご満足なされたようで……それほどまでに気持ちよかったのですか?」
「……だ……誰が……そのような……」
 気丈な言葉を口にするエリザベート。しかしその声は弱弱しい。
「うーん、気持ちよくはなかったと」
 そう言って、恥部に手を伸ばすナオト。
「んっ……」
 思わず、声をだして体をのけぞらせる。指が、さっきまで触手にいたぶられていた肉芽をこする。
「あっ! いやっ!」
 暴れるエリザベート。しかしどうすることもできない。
「どうです、まだ気持ちよくないですか?」
 そう言いつつ、もうひとつの手が胸に触れる。
 
「やだっ! やめて、お願いっ!」
 必死に懇願する少女。しかしその声を無視するように指を動かす青年。
「だめ、だめっ、お願いっ!」
 動けない体を身悶えさせながら、それで必死に懇願する。それでも、ナオの責めは終わらなかった。
「やっ……あっ、いやあぁぁっ!」
 やがて、少女は二度目の限界に達した。
「……はあっ……はあ……」
 荒い息の少女。一糸まとわぬ姿で十字架に縛られ、全身を汗に光らせる姿は、もはや誰もかつての女王とは思わないほど淫らに見える。
「昔から、陛下は素直になれない方でしたね」
 そういって笑うナオト。
「だからこそ、俺も長く楽しめる」
 そう言って、唇を奪う。舌を絡ませながら、柔らかな唇の感触を堪能すると、そっと唇を離した。
「どうせ、陛下は白状されないだろうし、俺も心ゆくまで楽しめるというものです」
「……卑劣漢……」
「そう言われましても、これも仕事ですから」
「実の主をこのような目にあわせることがですかっ……?」
 涙ながらに、そう罵る。
「まあ、俺の主は……この国ですから」
「ふざけないでっ……」
「ふざけてないですよ。これでも、いろいろ見聞きしていすから。この国がどこから狙われているか、そしてその狙いが何か」
 そう口にするナオト。さっきまでとは違った真剣な顔になつている。
「……」
 その表情を見て、つい無言になるエリザベート。
「申し訳ありませんが、陛下ではこの難局を切り抜けられないというのがギュレムさまのお考え。……そして、俺も同感です」
「……ローザなら切り抜けられるというのですか?」
「……ローザ様というよりは、ギュレム様なら、ですね。ギュレム様の傀儡が必要なんですよ、今のわが国には」
 きっぱりと、ナオトは言った。
 
「……ナオが……そのような逆賊だったなんて……」
「愛国者、と言って欲しいものですが。……いろいろと裏ではやってますしね。シャリア様の部下とも、秘密裏に連絡を取ってたり」
「何ですって……?」
「リュナ・ルークス卿。なかなか切れる方です。……おそらく、国外からの動きについて最も危機感を持っておられる一人かと」
「……」
「まあ、陛下には今は関係ないことです。陛下は、いつか秘宝の鍵のことをおっしゃってくださればそれで結構です」
「……私が……あなたなんかに屈服すると思うのですか……」
「いえ、残念ながら。ですから、本当に時間がなくなったときには、こいつを使います」
 そう言って、薬ビンを見せる。
「自白剤です。陛下のお体に合わせていますから、効果はてきめんですよ」
「……そのようなことをしたら、舌を噛んで死にます……」
 涙ぐんだ顔でそう言うエリザベートに、微笑を浮かべて首を横に振るナオト。
「無理ですよ。亡き前王陛下と太后さまの血は、陛下しか引かれていませんからね。王家の血の意味をご存知の陛下が自ら死を選ばれるはずがない」
「……」
「だから、俺も躊躇しなくてすむ……とはいっても、これは最後の手段です。それまでは」
 そういいながら、ナオは両手を囚われのエリザベートの裸体に伸ばす。
「いやっ……」
「からだに、お尋ねしますよ」
 そう言うと、火照ったエリザベートの裸体を再び弄び始めた。
 
 囚われの女王の絶望の日々は、まだ終わらなく、そしてそれを知るものはほんの一握りしかいない。
 ライファスの人々のほとんどにとっては、いつもと同じ日々が続いている。
 女王エリザベートは宮殿に健在で、内乱も遠い果てどこかでの出来事で、他国の暗躍も何も知らなかった。
 そんな中で、それぞれの勢力でそれぞれの動きがある。
 
 
 白のピラミッド。
 かつて、太陽神信仰のために建てられた巨大祭壇である。
 巨大なピラミッドを中心に、その周囲には神殿などの宗教施設が建ち並び、さらにそれらを囲むように生活居住施設が建ち、さながらピラミッドを中心とした円状の町の姿を為している。
 そこは、完全な中立地帯。激しい内乱のなかでも、この一年余、まったく戦渦に晒されることがなかった。
 レーマたちが目指しているのは、そんな場所だった。
 
「くぅ……すぅ……」
 レーマの背中で、気持ちよさそうにアルナが眠っている。
「……ふぅ……」
 そんなアルナを背負い、険しい山道を少々息を切らせながら歩くレーマ。
「疲れるか」
 アンシェルが問いかける。
「……はい」
 さすがに強がる気力もない。素直に頷く。
「まあ、そうだろうな。だがこれも訓練のひとつだと思っておけ。下半身の安定は長い戦いには不可欠だ。まして、ヒトのお前はどうしても下半身に不安がある」
 確かに、それはそうに違いない。カモシカ特有の敏捷な身のこなしを生む下半身の俊敏さと粘りは、レーマにはない。
 よこから、リシェルが口を挟む。
「そうですわ。だからこそ私や姉さまが夜な夜なレーマと……」
「そ、それは関係ないっ!!」
 あわててさえぎるアンシェル。
「あら、違いますの? じゃあ姉さまは、やっぱりレーマと……」
 そういって、少しいたずらっぽい目をアンシェルに向ける。
「い、いや、それは……リシェル、私はまじめな話をしているのだから茶化すなっ!」
 顔を少し赤らめてそういうアンシェル。
「はぁい」
 笑顔でそう言って、リシェルはまた歩き出す。
「……まったく……よいかレーマ。とにかく、戦いにおいては下半身の安定が不可欠なのだ。そのことを常に忘れるな」
「はい」
 
 昼ごろまで歩いて、ようやくピラミッドの最外郭の居住区にたどり着いた。
「さて……リュナ様はピラミッドで落ち合うとおっしゃられましたが……こう広いと……」
「中央神殿の広間よ、レーマ」
 リシェルが答える。
「中央神殿……ですか」
「そうだな、待ち合わせにはそこだ。が、その前にアルナのことだな」
 そう言って、アンシェルはレーマの背中で眠っているアルナを見る。
「はぐれマイマイの世話をしているといえば、北面神殿の救済園か。先にそちらに向かったほうがよさそうだな」
「んっ……ん~っ……」
 そんな話をしていると、アルナが目を覚ました。
「う~ん……“きゅーさいえん”ですかぁ……そういえばマイマイのお友達がいっぱいいましたですぅ……」
「なんだ、知っていたのか」
「はい、昔ご主人様が“せーちじゅんれい”にきたとき、私はそこで遊んでましたから。とっても楽しい場所でしたよ」
「そうか。とりあえず、私たちはおまえをそこに連れて行こうと思うんだが……いいか?」
「もちろんですっ」
 満面の笑みで、アルナが答えた。
 
 北面神殿は、ピラミッドの陰に位置するため日差しがあまりよくない場所だが、それだけに涼しく、マイマイの生活環境としては最適の環境になっている。
 もともとは孤児院や養老施設などを合わせた複合的な施設だったが、今では孤児院や養老院は西面神殿に移転している。
 だから今は、マイマイや、あるいはカモシカ以外の亜人で、体の一部を失うなど、何らかの理由で生活能力を失ったものたちがここには住んでいる。
 北面神殿に入ると、受付を済ませる。
「えーと……マイマイ一名、保護者が人間二名」
 受付嬢が、事務的な口調でそういいながら書類に書き込む。
「そちらのヒトも、こちらに入られますか?」
「いや、レーマはわれわれの所有物だ。あくまでも、主を失ったはぐれマイマイの世話を頼みに来た」
「わかりました。……えーっと、マイマイさん、お名前は?」
「アルナ……です」
「アルナちゃん……ね。年齢は?」
「13歳ですぅ」
――じ、じゅうさん?
 昨夜のことを思い出して、青ざめるレーマ。体つきなどから、もう少し成長しているかと思っていたが、これでは犯罪だとおもった。
 
「………」
 言葉が出ないレーマ。考えてみれば、言動が幼い。
 固まったレーマの肘を、こんとリシェルがつつく。
「大丈夫ですよ。マイマイの13歳ならぜんぜん大丈夫です」
 何が大丈夫なのか、よくわからないがリシェルの言葉で、少しだけ気分が落ち着く。
「……では、これから救済園にご案内いたしますので、皆様もご一緒にきてください」
 そう言って、受付嬢が案内係に書類を渡した。
「では、こちらへ」
 案内係が、四人の先に立って歩き出した。
 
 そこは、日陰だが涼しくて快適な環境だった。
 広い空間の中で、清潔な水が流れ、地面にはふわふわとした芝生が敷かれていて、そんな空間に何十匹ものマイマイがいた。
 仲良く談笑したり、巨大なきのこのような机で本のようなものを読んでいたり、向こうのほうでは水遊びして遊んでいるものもいる。
 誰もが、楽しそうだった。
「……」
 ぽかんとした表情のレーマ。マイマイという種族をはじめてみたのが昨日だったから、まさかこれだけの数がいるとはおもわなかった。
「わぁ~……今日もみんな楽しそうですぅ……」
 満面の笑顔でその光景を見ているアルナ。頭の上の触覚が、興味深そうにきょろきょろと動き回っている。
「行っておいで」
 と、案内係のカモシカが促す。
「はいっ。……みなさん、本当にお世話になりましたですぅ」
「気にするな。ここなら安全だ」
「はい。……それから、レーマさん……」
「ん?」
「とっても、気持ちよかったですぅ」
 笑顔でそんなことを言われて、つんのめりそうになる。そんなレーマにかまわず、アルナはぺこりと頭を下げると、マイマイたちの元へと向かっていった。
 明るく快活なマイマイたちは、誰とでもすぐに打ち解ける特技を持つ。彼女も、すぐにここの仲間と仲良くなることだろう。
 
「……ここにきたのは初めてだが……なんとも広大な空間だな」
 と、これはアンシェル。
「北面神殿の半分近い面積を使っています。最近は戦火で死者も増え、はぐれマイマイも多くなりましたので」
「そうか……そうだな」
「しかし、彼女たちは楽しそうですが、我々からすると可哀想な面もあるのですよ」
「……と、いうと?」
「ここはマイマイしかいませんから、彼女たちは子孫を残せないのですよ……ある意味、そうせざるを得ない部分もある」
「増える一方だからな、はぐれマイマイは……」
「はい。ある意味、ここはマイマイの収容所みたいなものなのです。ですから、せめて彼らにはできる限りの幸せを与え続けたいと思います」
「……そうだな」
 少し沈痛な表情で、アンシェルが言った。
 
 北面神殿を出る。そこで、一人の男とすれ違った。
 みたところ、普通のカモシカで、マイマイの連れもいない。
「神殿の人かな」
「おそらくな」
 そのときは、さほど気にも留めず男とすれ違い、そしてそのまま中央神殿へと向かった。
「さて、中央神殿で登録を済まさなくてはな」
「登録?」
「はい。中央神殿で難民登録と居住地を指定すれば、後からリュナがそれを見て来てくれるんです」
「……難民……」
 複雑な表情のレーマ。
「まあ、難民に違いはないな。何しろ住んでいた家がないのだから」
「ええ。でもリュナと合流したら、すぐ元の暮らしに戻れますよ」
 明るくそう言うリシェル。快活な表情が、周りの空気を和ませる。
「じゃあ、行きますか」
「そうだな」
 レーマたちは、立て看板を見ながら、中央神殿の難民登録所へと向かった。
 
「……はい、登録のほう完了しました。では皆様の居住区ですが、東居住区の第52棟、245室になります」
 書き込んだ書類を奥に持ち込んで、受付嬢が戻ってきてそう言う。
「ありがとうございます」
 リシェルが丁寧に礼を述べてから、二人を連れて歩き出す。
「……人が多いですね。まさか、こんなに待たされるとは」
「そうだな。それだけ戦禍が激しいということだ」
「……いつになったら終わるんでしょうね」
「難しい問いだ。ただ殺し合いを終わらせればよいというものでもない」
「女王派、王弟派双方の思想対立や、勝者の敗者への暴虐行為などのことを考えると、ただ武力でどちらかを鎮圧すればよいというものではないのです」
「……それで、リュナ様があれだけ動き回っているのですか」
「おそらくは。……でも、リュナは何かもっと大きな何かのために動いてる気もします」
「……大きなもの?」
「ええ……それが何かはわからないのですが」
「いや、おそらくリシェルの考えている通りだろう」
 アンシェルが言う。
「リュナ卿は我々の前ではあんなふうに振舞っているが、しかし時折見せる表情は、深刻なものだ。何か、とてつもないものと向き合ってる気がする」
「…………」
「まあ、それは今の我々がどうこうできる問題ではない。まずは居住区へと向かおう」
「はい」
 
 難民居住区。その名前から、雑然としたスラムのようなものを想定していたレーマは、整然と立ち並ぶ団地のような建物に、まず息を呑んだ。
 百棟以上の建物が林立し、それらすべてが4階建てで、それぞれがささやかだが平和な日常を送っていた。
 ときおり、巡回する衛兵。もっとも、彼らの世話になる者などめったといない。それぞれが妙な共存意識を持ちながら暮らしている。
「……驚いた」
「私もだ」
「私も……です。リュナから話には聞いていましたが」
「よくもまあ、これだけ整然とした暮らしができるものだ」
「とりあえず、私たちの住む場所へ向かいましょう。52棟の245室に」
「はい」
「そうだな」
 
 三人がついた部屋。そこもやはり、狭いなりに清潔に整えられていて、快適な環境にされていた。石壁も分厚く、隣の声も聞こえない。
「……いい環境ですね」
「そうだな」
「……これは、下手な一般住宅より快適ですよね」
「ああ。やはり、長期間暮らすもののことを考えてのことなのだろうな」
「そうでしょうね。ところで」
「何だ?」
「先ほど、礼拝がどうのと受付で言っていましたが……」
「ああ、それか。それはな、ここは一応、神殿の土地だから、一種の義務として朝夕の礼拝だけはしなくてはならないのだ」
「礼拝といっても、賛美歌の流れる間、ピラミッドに向かってじーっと頭を下げてればいいだけです」
「そういうものなのですか」
 レーマも、なんだかんだであちこちリシェルに連れられているが、知らないことが多い。
 ペットという立場上、あまり学問を受けていないこともある。
 もっとも、ペットにあまり学問を与えないのは、そうすることで主人への依存性を強めるという目的もある。
 その点において、しょせんレーマも人間以下の存在にすぎない。
 まだしも、アンシェルやリシェルはペットへの教育熱心な部類である。
「さて、少し一服して、それから少しこの町を見てみるか。レーマも初めてらしいからな」
「私も初めてです」
「そうか。ならば三人で、少し散歩でもしてみよう」
「はい」
 
 神殿周りを、三人で歩く。
 この規模だと、普通ならどうしても雑然とするはずの町並みだが、恐ろしく整然と立ち並んでいる。
 ピラミッドから放射状に八方に伸びる大通り。そして同心円状で均等に延びる石造りの環状道。それらに合わせて、やはり緻密に建てられた無数の建物。
 まったくといっていいほど無駄がない。
「こういっては何だが、われらの力で建てられたのではない感じがする」
「そうてすね。この町並みがどうしてこれほど精緻に建てられたかはまだ不明ですわ。ただ、今はこの精緻さを保つため、新たな建築に際してはイヌ族から建築家を招いていると聞きます」
「……道理で」
「……イヌ族、ですか」
「はい。一説では、百年近く前から建築家にはイヌ族を招いているとも言います」
 
「……その割には、一人も見かけないですね」
「そうですわね。確かイヌ族の建築家の方は神殿南方のイヌ居住区にいますが、秩序を乱したくないということで、イヌ族以外は中に入れなくなっているはずです」
「……堅苦しい場所だな。正直、あまり近寄りたくはない」
「そうですわね。リュナも、行かない方がよいと言っていました」
 そう言って、肩をすくめる仕草を見せるリシェル。
「さて、そろそろ帰りましょう。ある程度は見ましたし、今日は疲れを取る必要がありますわ」
「……そうですね」
 
 その夜。
 そろそろ寝ようかという時間になって、困った問題がおきた。
 寝室は一部屋。ベッドが二つある。が、レーマの分のベッドがない。
「……これは……どうするんだ?」
 アンシェルが困ったように聞く。
「どうするって……ねえ」
 いたずらっぽい笑顔で、レーマを見るリシェル。
「……な、何ですか……?」
「ベッドを二つ、横に並べて三人で眠りましょうよ」
「さ、三人で……か?」
 少しだけ戸惑い気味のアンシェル。
「ええ。レーマだけ床ってのも可哀想だし」
「……まあ、それはそうだな」
「じゃあ、みんなでベッドを並べましょう」
 リシェルが、そう二人に声をかけた。
 
 ベッドを二つ、横に並べると、三人が眠るのには十分な幅になった。
「これで、よし……と」
 レーマが、並べ終えたベッドを見てちょっと満足げに言う。歩き回った三日間だったが、やっと柔らかなベッドで眠れる。
「じゃ、脱いで」
 あっさりと、リシェルが言う。
「ぬ、脱ぐ?」
 さすがに驚くレーマ。
 
「年頃の男と女が同じベッドで寝るのよ。することなんて決まってるじゃない」
 そういいながら、自分も服を脱ぐリシェル。すばやく服を脱ぐと、一糸まとわぬ姿のままで服を折りたたんでその場に置く。
「ま、まて、私……もか?」
 戸惑うようにたずねるアンシェル。
「姉さまだけ一人ぼっちにするわけいかないじゃない。姉さまも脱いでよ」
「……い、いや、そんな、いきなり……」
 戸惑うアンシェル。顔が赤くなっている。
「私とリシェルは、一昨日一緒だったけど、姉さまはずっとご無沙汰だもん、可哀想じゃない」
「か、可哀想って……わっ……」
 戸惑うアンシェルの服に、リシェルが手をかける。
「ほら、姉さまも脱いでよ。三人一緒じゃなきゃ変じゃない」
「へ、変も何も……」
「レーマ、ほら、早く脱いだら手伝ってよっ」
 そう、レーマに声をかける。
「……は、はい」
 拒める雰囲気ではなかった。何かに取り付かれたように、体が勝手に服を脱ぎ、そしてアンシェルの背後に回りこんでいた。
「きゃあっ!」
 後ろから腕を取り、後方に押し倒すと、可愛い悲鳴を上げてベッドの上に倒れこむ。
 そのまま、両手首を上からつかみ、アンシェルの自由を奪う。
「ち、ちょっと、レーマっ……あっ、やめ、リシェルっ……」
 両手の自由を奪われた隙に、リシェルがアンシェルのスカートをするりと脱がせる。そして、上着のボタンを外す。
「ち、ちょっと、ふたりともっ……」
 暴れるアンシェル。しかし、ふたりがかりではどうすることもできない。
 たちまちのうちに、アンシェルも着ていた服を脱がされた。
 全裸でその場にいる三人。
 裸のまま、悪戯っぽい笑顔を見せるリシェル。両手で胸と恥部を隠すようにして、恥ずかしそうに頬を染めてレーマをにらむアンシェル。
 そして、戸惑ったような表情のレーマ。
 考えてみたら、アンシェルとリシェルの二人の裸を同時に見たことはなかった。
 見比べてみると、体つきは姉妹だけあって良く似ていた。
 しいて言えば、リシェルのほうが少しだけ豊満で、アンシェルのほうがややスレンダー。だがそれも、たいした違いではなかった。
 カモシカ族特有の、引き締まった無駄のない肉付き。それは同じだった。
 
 恥ずかしげなアンシェル。心の準備がまだできていない状態で裸にされたことで、恥ずかしさに全身が染まっている。
 両手で胸と秘所を隠したまま、レーマをにらむように見るアンシェル。レーマだけに気をとられて、リシェルの動きに気がつかなかった。
 そっと後ろに回りこみ、アンシェルを背後から羽交い絞めにするリシェル。
「きゃっ!」
 突然、両腕を上に持ち上げられ、隠していた裸体があらわになる。
「ち、ちょっと、見るなっ、レーマっ!」
 何度か体を重ねているとはいえ、それでも、こういう形で見られることには慣れていなかった。
 頬を赤らめて、じたばたと暴れる。
「レーマ、ほら、今のうちに!」
 羽交い絞めにしたまま、リシェルがレーマに命令する。
 レーマが、ばたばたと暴れるアンシェルの両足をつかむ。そして、ひょいと持ち上げた。
「ちょっと、やめてよ、ふたりとも!」
 特に意図したわけではなかったが、結果的にリシェルとレーマのふたりががりでアンシェルを責める形になった。
 羽交い絞めにしていた腕を外して、背中からアンシェルの胸に手を伸ばすリシェル。
「うふふっ……姉さま、こんなことされるのって弱いでしょ」
 そう言って、小ぶりな乳房をやさしくこねまわしながら、くりくりと乳首を転がす。
「やっ! リシェル、ちょっと、駄目だって……ひゃん!」
 リシェルの手を拒もうとしてたところに、秘部が電流のような刺激が襲い掛かってくる。
 レーマの舌が、割れ目の中にもぐりこみ、強くすすっていた。
「れ、れーまっ! そ、そこはまだ……あんっ!」
 恥部を責める刺激を拒もうとしたときに、また乳房を愛撫される。
「だめっ!そこっ、駄目、ふたりともっ……待って、だめっ……」
 必死に拒絶の声を発するアンシェル。しかし、何とかこのふたりがかりの責め苦から抜け出そうと暴れても、そのたびに強い快楽が与えられ、全身の力が抜ける。
「だ、ダメっ、ふたりとも、だめだって!やんっ! ひゃうっ!やぁっ!」
 抗議の声も、次第に快楽のあえぎ声に飲み込まれてゆく。
 くちゅっ、ぴちゃっと、下腹部から湿った音が聞こえる。それが、アンシェルの耳にいやおうなく聞こえる。
 自分が感じてしまっていることを思い知らされる音が、さらにアンシェルを官能の沼に沈めてゆく。
 
「やだっ、お願い、やめてっ!へんに、変になっちゃう!」
「変になっちゃえば? それも姉さまでしょ?」
 そういいながら、さらに胸への刺激を強くするリシェル。太腿でアンシェルのわき腹を挟み込むようにして、かるく動かす。
 柔らかな肉の感触が、横腹に伝わる。
 耳元に、ふっと息を吹きかける。突然の刺激に、ついぴくんと体をはねさせる。
「姉さま、やっぱりここも弱いんだ」
 そういいながら、耳元に舌を這わせたり、息を吹きかけたりする。
「リシェルっ、お願い、もう……」
 半分泣き声になって、アンシェルが懇願する。
「だぁめ」
 悪戯っぽくそう言うリシェル。
「姉さま、素直じゃないもん。ねー、レーマ」
 その言葉に、舌の動きを止め、頭を持ち上げる。
「レーマ……こんなの、もう……」
 涙の浮かんだ目でレーマを見つめ、そう口にするアンシェル。
「ダメです」
 わざと、そう言う。
「今日はアンシェル様を、めちゃくちゃにするって決めたんですよ。ねえリシェルさま」
「うん」
「そんなっ……ふたりとも、そんな……」
「だから、このじたばたする手は邪魔ですね。ちょっと縛っちゃいますか」
「そうね」
 そう言って、愛撫をやめ、アンシェルの左手を両手でつかむリシェル。レーマが右手をつかみ、そしてふたりがかりでアンシェルをうつぶせにすると、後ろ手にまわす。
 そして、その状態でレーマが押さえつけている間に、リシェルが縄を持ってきた。
「縛っちゃえば、ちょっとは姉さまも素直になるかな」
 そういいながら、慣れた手つきで縛る。
「リュナが教えてくれたんだよ。こうすれば絶対ほどけないって」
 そういいながら、固く縛る。
「……どうする……つもりなの……ふたりとも……」
 弱弱しい声。かつてのトラウマのせいだろう、縛られたとたんにアンシェルは弱気な表情を浮かべる。
 
「姉さまに、気持ちよくなってもらうのよ。姉さま、騎士になってからずーっと、自分の気持ちを殺してきてたでしょ」
「……」
「見てたら、やっぱりかわいそうだもの。だから、今日は私とレーマで、姉さまの心をハダカにしてあげる」
「そ、そんな……」
 おびえるアンシェル。
「そんなに怯えなくっても。大丈夫ですよ、痛くはしませんから」
 そういいながら、今度はレーマがアンシェルの背後に回る。そして、わきの下から両手を乳房に伸ばして、きゅっと揉む。
 柔らかな愛撫から一転して力強くもまれる刺激に、縛られた体を必死に暴れさせて逃れようとする。
「いやっ……レーマ、そんなに強くっ……だめ……!」
「ダメですよ、そんなことしても」
 いくらばたついても、レーマの両腕は離れようとしない。それも当然で、わきの下から手を入れているため、暴れれば暴れるほど手が食い込むようになっていた。
「姉さま、こっちがお留守ですわ」
 そう言って、リシェルの指が両腿の付け根から、秘裂にもぐりこむ。
「こことか、こんなところとか、姉さま弱いでしょ?」
 そう言って、アンシェルの敏感な部分だけを的確に狙う。姉妹だけあって、弱点を熟知した責めが、下半身にしびれるような快楽を与える。
「ああっ! リシェル、そこ、ダメっ!」
 脚を閉じて逃れようとするアンシェル。しかしそんな抵抗におかまいなく、細い指は簡単に体の中にもぐりこみ、弱点を責め立てる。
「そういえば姉さま、お尻もお留守ですわ」
 さらにアンシェルを窮地に追いやるようにそう告げると、残ったもう一方の手が、アンシェルの尻の柔肉を揉みつつ、少しづつ奥に延び、菊門を軽くくすぐる。
「あんっ!」
 大きく、身悶えする。そのせいで、かえって秘裂に潜り込んでいた指が深く中に潜り込む。
 菊門は、あくまでくすぐるだけで中には入れない。しかし、いつ入れられるのかという疑心暗鬼が心の中を乱す。
 その間にも、胸と恥部への刺激は止まない。
「あっ……や……んんっ……」
 アンシェルの声が、弱弱しくなる。
 それを確認したレーマとリシェルが目配せすると、ふたりともアンシェルを責める指を抜いて、そしてまたレーマとリシェルの場所を入れ替えた。
 
「……」
 涙を浮かべた目で、なすがままにされているアンシェル。
「指でイかせちゃうのは気の毒ですから、ね」
「うん。やっぱり、好きな人に気持ちよくしてもらったほうがいいでしょ?」
「……好きなひと……なんて……」
「あら、まだそんなこと言うんだ。ふーん……」
 意地悪そうにアンシェルの横顔を見るリシェル。
「れーま、こんな意地っ張りなお姉さまはめちゃくちゃにしちゃいましょ」
「そうですね」
 そう言って、レーマは肉棒をぐいと挿入する。
「……んっ……」
 かみ締めた口元からもれる小さなうめき。リシェルが再びアンシェルの背中に回りこみ、乳房を愛撫し始めたところで、レーマは激しく腰を動かし始めた。
「あんっ!」
 たまらず、大きな声が漏れる。そこからはもう、アンシェルに強がる余裕などなかった。
 ただ欲望の求めるままに、快楽に体をゆだね、声を上げて腰を振る。
「あっ、あっ、もっとっ……れーま……そこ……」
 その目が、いつものキツい表情でも、さっきまでの不安げなものでもなく、ただ純粋に快楽を求める悦びのものになっているのを確認すると、レーマはぴたりと動きを止めた。
「……れ……れーま……?」
「アンシェル様、ご自分で言ってみてくれませんか?」
「な……何を……?」
「どうして、ほしいかを」
「そ……そんな……」
「素直になってくれなきゃ、やめちゃいますよ」
「そうね。姉さま、ちゃんと自分の言葉で言って」
「…………」
 頬を赤くしてうつむくアンシェル。
「あら、まだ素直にならないんだ。じゃあ、こうしちゃおっと」
 そう言って、つんと尖った乳首を指でつまむ。
「ひぁんっ!」
 悲鳴のような声を上げてのけぞる。
「姉さまが素直にならなきゃ、もっといじめちゃうよ」
 そう言って、柔らかく揉みながら、桃色の乳首をもてあそぶ。
 
「あっ、あっ、ああんっ……」
 たまらずにもれる声。容赦のない刺激だが、それだけでは解放されない。
 果てることさえできずに、快楽だけを与えられる生き地獄の状態が続く。
 それでも、気丈に耐えるアンシェル。さすがに、レーマが気の毒になってリシェルに言った。
「……ねうそろそろ、許しちゃいましょうよ。もともと、アンシェル様を気持ちよくするのが目的なんですから」
「そうね。あんまりいじめると後が怖いし」
「……」
「じゃあ、挿れちゃいますよ」
 そう言って、再びピストン運動を再開する。じらされていた分、アンシェルは余計に強く刺激を感じてしまう。
「……あ……んっ……」
 ほんの数往復で、アンシェルは果てた。
「…………」
 半失神状態のアンシェル。その体を抱きかかえると、レーマが耳元でささやく。
「これからですよ、アンシェル様」
「そうよ。日が昇るまで、姉さまは眠らせないから」
 そう言うと、二人はまたぐったりしたアンシェルの体に手を回した。
 
 翌日。
「…………」
 少し怒ったような表情のアンシェル。
「立てますか?」
「貴様に心配される筋合いはない!」
 心配げなレーマに、怒ったようにそう言う。
「一応、心配してるんですよ」
 そう言って、腰に手を回す。
「あっ……」
 そのとたん、糸が切れた用に崩れ落ちるアンシェル。
「ほら、無理しないでください」
 そう言って抱きかかえると、ベッドに横にする。
「……誰のせいだ」
 小さな声で抗議するアンシェル。
 
「僕のせいですね」
「わかっているのだな」
「ええ、まあ」
「……れーま」
「何ですか?」
 困ったような表情をして、上目遣いにレーマを見るアンシェル。やがて、その口から言葉が漏れた。
「わたしは……淫らな女だと思うか?」
 その言葉に、つい笑い出すレーマ。
「なぜ笑う」
「アンシェル様は、本当に純情な乙女ですよ」
「……皮肉か」
「まさか」
 そう言って、唇を重ね、そしてすぐに離すと、アンシェルの瞳を見て言う。
「ほら、キスだけで簡単に頬を染める。本当に純情だと思いますよ」
「……れーま……」
「何ですか?」
「お前だけ……だからな……私の……」
 言い終わるより前に、アンシェルは目を閉じ、また眠り始めた。
「あら、姉さま……やっぱり昨日はいじめすぎたかしら」
 さすがにちょっとだけ心配そうにそういうリシェル。
「ちょっと……やりすぎちゃいましたね」
 肩をすくめて、レーマが言う。
「さすがに、ちょっと後が怖いですね。今のうちに、おたがい覚悟を決めておきましょうか」
「そうね」
 そう言って、アンシェルの寝顔を見つめるふたり。
 リュナたちが来るまで、まだ数日はかかりそうだった。
(fin)

 
 
 
 
 

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