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少女がスカートの裾を持ち優雅な仕草で挨拶をする。
銀の髪と赤い瞳が特徴的なその少女はヴィータよりも少し年長に見えた。
大男とは存在自体が異質なこの少女の出現にはやての足は止まる。

「はやて妹いたのか?」
「いやぁーあれは近所のお姉ちゃんとかそういう意味やと思うなー多分」

大男の威容に顔を強ばらせていたはやてはぎこちない苦笑いで答える。

「違うわはやて、近所のお姉ちゃんなんかに
殺意が沸くほど私は節操なしじゃないもの」
「…そこのでかいのがサーヴァントとかいうやつだな!!
はやてのことはあたしがぜってーやらせねーからな!!
ガキはガキらしく家で寝てやがれってんだ」

並々ならぬ決意をもってヴィータはデバイスを構える。
ヴィータの言葉に銀髪の少女は口端を釣り上げヴィータを睨み付けた。

「…あなたがサーヴァントもどきね…生意気、
私の知らない魔術、存在、全てが気に入らないわ。
でもね、あなただけじゃ私のバーサーカーの相手は務まらない。
今はやてだけを殺してもいいけど
それじゃあ面白くない、士郎と2人一緒に苦痛を与えてあげたいもの。
だから今日は挨拶だけにしてあげる。
士郎にも伝えておいてね
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンが
あなた達を殺しますって」

イリヤスフィールはじゃあねとはやて達に笑いかける。
そうして規則正しい足音と地なりのような音は次第に遠ざかっていった。

「…アインツベルンて…切嗣の…そうか…しゃあないな…」

俯き重苦しい表情ではやては小さくそう呟く。
イリヤスフィールの姿がみえなくなっても
しばらくはやてはその場を動かなかった

「なぁはやてどうかしたのか?どっかわりぃのか?」

はやての顔を覗き込むヴィータ。
その顔には心配でしょうがないという文字が見て取れた。

「ごめんな。心配させてもうた。ちょっと驚いてただけや。
まぁ今の子のことも士郎達に伝えんとね。
ほな当初の予定済まして帰ろか」

はやては明るく自分を見上げる子に答えた。

「…もしあそこで戦ってたらあたし、あの大男から
はやてを守れなかったかもしれない…
ごめん…」

並んで歩く2人。今度はヴィータが顔を俯かせて呟く。

「…ええ…ええんよ…私達2人とも生きとる。なんもまずいことあらへん」
「…はやて…」
「せやけど寒いな~もうちょい厚着してくるんやった」

制服にカーディガンを羽織っただけのはやては腕を組んで身震いをする。

「じゃあ、じゃあホットドリンク買おうぜっ?あたしはココアがいいっ」
「せやな、そうしよか」

2月の冬木は寒い。吹きすさぶ強風の中はやてとヴィータは
唯一の救いのように見えるコンビニへと急ぐ。
そんな2人を異形の肉塊が遠くから見つめていた。

「はぁっはぁっ」
「悪くはない。だが私が最後に稽古をつけてやってから鍛錬を怠っていたな。
動きがよくなるまでに随分と間があった。
魔術の鍛錬も結構だが。私が教養を深める旅から
帰ってくるまでにどれだけ成長しているのか楽しみだったのだが、な」

普通に見たならば無表情で通るシグナムの表情は
ザフィーラには少し仏頂面をしているように感じられた。

「…き…教養をふ…深める…?は…わ…わ…和食巡りの温泉旅行…が?
もうちょっと家計に…こ…貢献して欲しいぜ…」
「減らず口を、まぁいい。
旅の費用を捻出してくれたことには感謝している、
それに免じて今日はこのくらいにしてやろう」
「…2人とも気は済んだか?話も途中だったのだ
あのセイバーという者も待っていよう」

シグナムが刃を収めるとザフィーラが2人に家に戻るよう促した。

「そうだな。主の考えも聞かなくてはなるまい。
あと細部計画も立てる必要がある」
「俺も覚悟は決まった。敵があの男のように
恐ろしい力量を持っている奴らばかりだろうと突き進むだけだ。
勝ってはやての苦しみを終わらせる。聖杯ってのでな」

「私はいささか聖杯というものに疑念がないわけではないが
あの真っ直ぐな瞳をした者を今は信じるとしよう。
あと士郎よ、我らがいることを忘れるな我らを頼れ。
お前はどこか先走り過ぎる帰来があるからな」
「わかってるヴォルケンリッターのみんなははやてと同じく俺の家族だ。
俺にだけ冷たいヴィータも頼りないけど優しいシャマルも
俺の料理の支配下のシグナムも癒やしのザフィーラもみんなな。
絶対に1人も欠けさせやしない。恩人のあの子もだ」
「…その気負いすぎる姿勢が心配なのだ
お前は自分とでき得るならば主を見ていてくれればよい」

ザフィーラは小さくかぶりをふる。

「それにしても出会って数時間の相手をもう守る相手に入れているとはな。
かわいい女なら誰でもよいのか?」
「…ば…ばかやろう。恩に恩で返すのは基本だろ?」
「動揺が顔に出てるぞ」

意地の悪い笑みを向けるシグナム。
士郎はさも心外という様子だったが相変わらずの
免疫の薄さも手伝ってこの男は簡単に踊らされた。

「あとな、私はお前の料理は好むが敗れたわけではない…忘れるな」

コホンと咳払いをするシグナムに今度は士郎が笑う。ザフィーラはため息をつく。


「待たせたな…ってなんでこんな空気が重いんだ…」

居間に戻った士郎達を待っていたのは部屋の隅でオロオロするシャマルと
部屋の空気の重さを一手に引き受ける少女。
その目には憎しみが浮かんでいた。

「主もいない!?これはどうしたことだ…シャマル説明しろ!」

珍しく激するシグナムにシャマルはきょとんとした顔で士郎たちをみた。
そしてすぐすがるような表情に変わる。

「シグナム!?ザフィーラに士郎君も…私どうしたらいいのか…」
「まずは落ち着け主はどこにいる?
そしてそこの者は一体どうしたのだ?」

ザフィーラがシグナムの後を継いで問う。

「は、はいえーとはやてちゃんはヴィータちゃんとコンビニまで。
それでこの子のがこんななのはそのえと、なんといいますか…」
「…雑です…」

親の敵をみるような目で少女はテーブルの上の皿に乗っているモノを
凝視していた。
そして呪詛が零れる…


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