ざわざわ―――

周囲から狼狽と焦燥の色を称えた言葉が耳に入ってくる。

(……あ、あぅ、)

頭を抱える教導官。
正規の作戦行動中においても、未だかつてここまでのピンチがあったであろうか?
現戦況をいかにして沈静化しつつ、あの雷池の中で踊り狂う親友を回収しこの場から立ち去るか――
それを限られた時間の中で考えなくてはならない。

「姉ちゃん。」

思慮に耽るなのはの肩を常連さんがポンと叩く。
ビクッと体を振るわせるなのは。

「ぁ………す、すいません。
 連れの者がご迷惑をかけて…すぐに対処しますから。」

「いや別に俺たちはいいんだよ。
 なかなか面白い勝負だったからな。」

快活な表情でそう言われる。ほんの少し罪の意識が軽くなる魔道士。

「だが………確かにそうした方がいいな。」

だがしかしその後、妙に声を潜めて続ける親父さん。

(…?)

何かを含んだような物言いに疑問を感じる。
見ると彼の後ろにいる他の常連も、その人と同じような面持ちでこちらを見ているのだ。
妙な態度だった。
彼らの態度は迷惑行為に対する怒りや不審ではなく、加害者である筈の自分らをどこか心配している風体すらある。

「どういう事ですか?」

「何。こんな場末の店にはよくある話さ……
 行楽の風に浮ついて客がちょっと暴れすぎるとな………奴が来る。」

「ああ……最強の用心棒がな」

「……用心棒?」

時代劇などで聞きなれたような言葉に目を白黒させるなのは。
警備員、ガードマンというなら話は分かるが――
酔っ払って粗相を働く客。他の客に難癖をつける者。
そのような悪質な客に対応するために「バウンサー」をつける店というのは西洋では割と良くある光景だ。
しかし基本、平和な日本ではあまり馴染みの無い話である。

「…………お、おい」

その時―――西側の一角にいるお客の間から、ざわっと
一際大きいどよめきのような声が上がった。

「やべえっ……もう来やがったぞ! 姉ちゃん逃げろ!!」

「お、遅かったか……」

「嘘だろっ!? 今日はまたえらく早いお付きじゃねえかっ!?」

「え、あの……一体、何が?」

事態が飲み込めず、辺りを見回す魔導士。
付近に問い掛けてもまともな答えが返って来ない。

(何……? 一体…)

<―――causion! ―――causion!  master!>

「!!!?」

なのはの相棒のデバイス――レイジングハートが危機的状況をを知らせてくる。
一瞬で心胆に冷たいものが流れ込む魔道士。
局随一のエースの感覚が火急の事態を肌に感じる。
このデバイスが反応するほどの危機――もはや洒落や酔狂で片付けられるものではない。

(何が……何が起こるの? 用心棒って…?)

「逃げろ! 巻き込まれるぞ!」

親父たちの泣きそうな声と共に――

<master!!!>

(上ッ!!?)

鳥肌と共に沸々と湧き上がる戦慄を遥か上空に見据えて、キッと睨みつけるなのは。
知らずレイジングハートの弁を開けてしまう。
それほどの圧倒的なナニカが―――

―――  来る!!  ―――

一直線に悠々と、空から場に向かって突き進む。
見上げる観衆。
ビール片手に楽しんでいた客が器官に麦芽100%を流し込み、むせ返る。
子供が指をさして「あれなに?」と尋ねるが、父に答えられる筈がない。
缶を取り落とし鉄の巨体を見上げるのみ

その威圧感―――――
造山で遊んでいた子供がガ○ダムだのウル○ラマンだのと大歓声を上げる。
だが、アレはそんな子供が夢に見、憧れる類のモノでは断じてない!

―――そう、そしてそれは常連のものなら知らぬものはいない!

「■■■■■ッッッッッ!!!!!!!」

山をも震わす雄たけびを上げて飛来する無敵のバウンサーの存在をッ!

「バっっ!!?」

なのはが、あの冷静沈着なエースオブエースが言葉を失い絶句する中――

―――    空想具現化と言う名の島と大地の怒り    ―――
< マ ー ブ ル フ ァ ン タ ズ ム ・ ラ ヴ ィ ィ ィ ィ イ イ イ イ >

狂の名を冠する古代の戦士の、その灰褐色の背中にへばりついてるナニかの魂の叫びが木霊し――
鋼鉄の巨人が雷神の坩堝と化した堀の中に突撃してきたのだ!


――――――

―――正午前

20前後の若い女性二人が入り組んだ路地裏――
つまりはこちらに向かって地図を片手に歩いてくるのを捕捉。

「うわぁ………結構、人いるねー。平日なのに」

「そうだね。 ……それにしても変わった名前だ。
 グレー、…? あまり釣りとは関係ないような…」

会話からして目的地はここに違いない。
ほどなくして門前にて立つ二人。
当地のシンボルである看板を見上げ――特に何の反応も感慨もなくゲートを潜る。

「ムッカーッッ! ネズミーマウスやテディ・ヒグマと並ぶ国民的マスコットたる
 このアタシの等身大看板に対して無反応とは何たる不遜!
 神をも恐れぬカッペどもめ……地獄の業火に焼かれてしまえぃ!」

「またそんな事を……新規のお客さんですよ? 大事にしていきましょうよ。」

「それに異論は無い。お客様は養分ニャ。
 落とすもん落としていくならデカ尻シエルでも拒まぬわ。
 しかしながら………」

首をくにゃりと傾げて不気味な目を光らせながら、う~むと考え込む声の主。

「何か気になる事でも?」

「ふむ。メガネ――この金髪の方、目を離すニャ。
 逐一監視を続け、妙な素振りをするようなら即アタシに報せるべし。」

「はぁ……金髪の、男の人ですかね?
 外人の人はやっぱりスタイルいいなぁ。」

「こいつはメスにゃ。」

「え、あ……本当ですか? 格好からして若い男性かと。
 うーん、それにしても美形だ……帽子なんて被ってるのが勿体無い。」

管制室で交わされるバイトと店長の会話。
その視線が注がれているとも知らずに二人の美しき乙女が門をくぐる。
既に向かう先が戦場となっている事を知らぬまま――
楽しい筈の慰安旅行の行き着く先が、修羅界の入り口だったなどと夢にも思わぬままに。

―― G・C・V ―――

彼女らによってくぐられた門には――
歪なネコ耳生物と、そしてそれを抱くように店の名前のイニシャルが――
大きく記してあったのだった……


―――――

―――夕刻前

「――――と、まあ……」

場は再び管制室。
店長の命令により、失礼とは思いつつも新規客の女性二人の一日の行動を逐一記録。
彼女らによって起きた一日の騒動を、場内に設置された監視カメラの映像と合わせて上に報告するバイトの青年。

「あんな感じでさっきから盛り上がってまして……
 そろそろ店長の判断を仰ぎたいなーとか思ったわけです。はい」

―――、!!!??
―――、、ッ!! !!

背後のモニター内からの喧騒。
それをバックに苦笑しつつ、青年は話を進める。

「いや、でもまあ……これくらいの騒ぎは割と日常茶飯事ですからね。
 オーナーも一緒になって騒いでるから放っておいてもいいかなーなんて。
 何度か接客しましたけど、悪質なお客ではないと思いますよ、彼女たちは。」

「―――凡人メガネ」

「え?」

店長と呼ばれた人物。
いや、人物というかナマモノによって一言で切り捨てられる青年の言葉。

「その程度の眼力で地球の平和を守れると本気で思っているぞなもし!
 このパッキンから逐一、目を離すなと言ったはずニャ!
 巧妙に隠されてはいるが少し注意すれば人間のお前にも分かるはず――ー
 ことに我輩のサーチアイを以ってすれば正体なんぞ一目瞭然ッ!」

「はぁ…?」

ハテナ顔で疑問を促している青年。
対して店長、聊か溜めを作った後――

「――――――――こいつはエイリアンにゃ」

などと寝言をのたまいやがった。


――――――

「はぁ……………、ハァッ!!??」

眉をしかめて聞き返すバイトである。
某有名漫画のように「な、何だっ(ry」とでも返せれば一流なのだが
彼にそこまでのコメディアンの素質は無い。残念ながら。

「にゃっふっふっふ……あちしには分かる。 
 あのメスは明らかに地球の生態系にそぐわぬDNAを有しておる事。細胞組織も全くの別物。
 謂わばヒトとは異なる生物――間違いなく奴は外宇宙から来た物体X。
 人型に扮した地球外知的生命体の尖兵に違いないニャ!」

「な、何でそんな事が分かるんです…?」

「お前はネコを舐めているのか?」

「いや確かに放電とかしてますけど……いくら何でも、ねぇ。」

「…………」

「…………」

間に微妙な沈黙が訪れた後――

「何故、かばう?」

猫の紅い両目が蛍光灯のように発光する。
店長の怒りのサインだ。

「い、いや庇うとかじゃなくて…」

「これか?」

「え…?」

「お前もこれが好きか?」

探るような流し目を作る店長が肉球で器用に端末を動かし――
画面上に写る黒い下着姿の女性の、たわわに実った胸の部分にカーソルを合わせて言った。

「なっ!? 違いますって!」

「シャーー!!! とぼけるにゃ!! 男はみんな狼ニャ! 
 胸部に余計なギミックついてるだけで下半身がゲシュタルト崩壊おこしやがる!
 そして正常な判断が出来なくなる!これだから人間のオスは使い物にならん! 
 あちしが気付いてなかったらお前、今頃あの女に捕縛されて体内にタマゴ埋め込まれてっぞ!」

「いやもしもーし…」

「ふん……志貴に似てるから重宝してやったのにこの体たらく!
 着物の同級生をストーキングして殺されそうになったくせに全く懲りておらんとはお盛ん過ぎだコノヤロー!
 和食から洋食まで守備範囲がワールドワイドってか!そこんとこどうなのよぅ?」

「あの……」

「―――で、メガネよ。本命はどっちニャ? 
 個人的にはあの着物の方が妙に我輩の既視感くすぐるんだよねー。特にあの目とか」

「殴っていいですか?」

「まあ冗談はさておき―――」

猫の鋭い眼力がモニターの女性――フェイトを射抜いた。
どう見てもUMAはこの猫の方なのだが……
いや故にだろうか? 蛇の道は蛇。
同種としての太陽系外生物の匂いを嗅ぎつけたという事だろうか?

「我が縄張りにてインデペンデンス・デイかましてくれるとは良い度胸ニャ!
 これ以上の狼藉は断じて許すまじ―――排除せねばなるまいて!」

ナマモノの目が炎を宿す。

「尻から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタいわしてやるニャ!
 出ろォォォォ!!! 鉄の城ォォォ!!」

猫の甲高い声が部屋一杯に響く。
するとその声に呼応するかのように背後の壁の一点がゴゥン、と――
妙な効果音を出し、赤く光った。

否―――それはよく見ると壁ではなく
壁と見紛うばかりの視覚全てを覆うほどの巨大なナニカ。
その埒外の巨魁な物体が今……のそりと、大気を震わせながら動き出したのだ。
デカイ……あまりにも……
後方の物体の目らしき箇所が再び、紅き光を点す。

「英霊最強―――小悪魔少女より高額でリースした、その圧倒的なカイナぢからを今こそ見せるべし!
 楽園を乱す不届き者め……地球を舐めるなよゲインオーバー!!」

「■■■■___」

ゴウンゴウン、と後方の天井が開き、圧倒的な巨体がリフトアップされていく。
その黒岩のような背中にピタリと張り付く釣堀屋さんの主。
そして一見スカートに見える下半身から轟音を伴って―――ロケットの如きバーニアが吹出する。
するとみるみるうちに巨体が宙へと押し上げられていく。
宇宙からの侵略者――時空管理局の尖兵を打ち破るべく
今、無敵のガーディアンエンジェルが出陣したのである。

「お手柔らかに~」

それを見送りながらぱたぱたと手を振って見送るアルバイトA。

(つくづくアクティブな職場に縁があるなぁ…)

そしてつくづく動じない凡庸メガネ。
こいつも大概、凡人離れした凡人なのであった。


――――――

―――勝った!

快心の手応え。
総勢30以上の目標対象全てに気絶以上、心停止未満の電撃を確実に叩き込んだ!

   ああ……やったんだ

執務官の感情が歓喜に染まる。

   なのは……私、頑張ったよ! 

水かきをしながら水上の親友に体全体を使ってアピールする。
彼女からはその親友の顔は良く見えないけれど
いつもの愛くるしい笑顔を浮かべてこちらを見ているに違いない。
ガッツポーズをしつつ、ぶんぶんと手を振る。

すると、大声でこちらの名前を呼んでくれているなのはの声が確かに聞こえた――

あんなに喜んでくれて――嬉しい。

――嬉しい

――嬉しい!


「――、てぇ ――――」

今すぐ友達の……なのはの声を間近で聞きたいが、まずは戦利品を全て回収してからだ。
餌の自分が掬った魚の量はどう見繕っても相手のサーヴァント二人を足したものより多い。

―― 完全勝利 ――

見たかサーヴァント。
なのはのためならば自分はいつだってその身を投げ出すし、その肌を大衆に晒すのも厭わない。
どんな困難な壁だって乗り越えて見せるのだ。

   胸を張ろう、なのは
   私たちの勝ちだ…

そんなフェイトの少しはにかんだ微笑は――

なのはの悲鳴と交じりの絶叫と血の気の引いた表情とは対照的で――

「――、イトちゃん! 避け、――ッ!!!」

「……………え?」

必死の表情で叫ぶ教導官の姿を彼女が認める前に―――

――――――――、

カタストロフは起こった。

凄まじい轟音。
火山の噴火のような爆発。
内から外へ噴出したものではなく外部から何かを打ち込まれた事による衝撃。
その圧倒的質量が醸し出す 破壊によって――場内はおろか、付近一帯の大地が揺れる。
マグニチュードに換算しても遜色のない衝撃と共に巨大なナニカが今、着水―――
否、堀に着弾したのだ。

「っっっっっ、うああぁあっっ!??」

天に突き立つ水の柱と共に雷神の主が上空に跳ね上げられる。
信じられない。
Sランクオーバー魔道士の作り出した雷迅の池は、いわば稲妻によって形成された障壁も同じ。
生半可な力では突破など出来ない。
物理的な膂力など容易く弾き返され、微塵の介入も出来ないはずなのに――
それを奴は一息に抜いて見せたのだ!

「は、ぁ……っ!」

そんな爆心地の中心にいたのだから、さしもの雷光の魔道士も堪らない。
一瞬で失われかけた意識、平衡感覚を必死に繋ぎ止め
コンクリの地面に落着という最悪の事態を避けようと必死に受身を取るのが精一杯。

「え……なっ!??」

故に瞬時にその存在に気づき、なお対応するなどという事が出来るはずが無い。
フェイトは今や為す術も鳴く――
その全身を、差し込む太陽の光を軽く遮るほどの巨大なナニかに拘束されていたのだ。


――――――

――間に入って受け止める暇も無かった

当然、一般人に魔法を見せてはいけないという躊躇いもあったが
しかし、もし間に合ってフェイトとの間に入ったとしてもアレを受け止める事が果たして出来ただろうか?
否―――あんなものは巨大質量……いわば隕石の落下と変わらない。
管理局屈指の防御壁を持つ高町なのはをして、まともにぶつかれば受け止めきれずに潰されていただろう。
そんな人間(?)爆弾が堀の水を穿ち
穿たれた水が上空に跳ね上げられて雨となり、場内に降り注ぐ。

「、――――」

どこから出したのか黄金のパラソルを差しながら上空を見上げる英雄王。
気だるげな視線がソレを捕らえ―――

「ふん―――」

不躾な来訪者に一瞥をくれた。
しかしながらそんな余裕を持っていられるのはこの場において彼一人のみ。
観客も、なのはですらもその威容にただただ息を呑む。

―――――バーサーカー

その怪物の名を――
からからに干上がった口から辛うじて紡ぎ出す高町なのは。

曰く、最強のサーヴァント――
個の戦闘において彼に比肩しうる英霊はいないとまで言われる
真の無双を体現する英霊中の英霊。
あのセイバーですら正面から当たれば為す術も無く潰されてしまうだろう。
その恐るべきサーヴァントの真名は――英雄ヘラクレス
かのギリシャ神話にその名を轟かせる大英雄であった。

「あれだよ姉ちゃん……あれが腕利きのバウンサーだ」

「荒くれ者が集い、地上げ屋が日常のように立ち退きを迫ってくるこの界隈……
 奴のような用心棒を雇ってる店は多い。
 実際、必要不可欠な存在なんだ。俺らの楽園を守るためのガーディアンはな……
 だが……それにしたって今日は早すぎる!」

「数週間前も泥酔して暴れてた小僧どもを纏めて10人……あっという間にシメちまったんだ。
 ありゃあ圧巻だった。化け物だぜ奴は…」

(………)

いや、そりゃそうだろう。
むしろアレに突っかかっていくような暴走族やヤンキーが凄い。
最近の不良さんは気合入ってるんだなぁと、少しズレた感想を持つなのはであったが――
しかしどこの魔界の盛り場だ?確かここは日本ではなかったか?
日常と乖離された風景に迷い込んだ錯覚に顔をしかめるなのはさん。
この店は、やはりどこかおかしくてアブノーマルに過ぎる。
魔法の事後処理――あまり深く考えなくてもいいかも知れない。

(! アーチャーさんは……!)

さて、その爆発に吹き飛ばされたもう一人――
必死に魚を追い回していた弓兵の影を探す。

―――――、、、、、……

すると視線の先、向こうで頭からコンクリにめり込んでる赤いコートが見える。
あれはもう駄目だ。放っておこう。

「う、くぁっ……、」

「!? フェイトちゃん!」

そんな事より今はこちら。狂戦士の大木のような太さの手の中で
それこそ缶ジュースの缶のように無造作に掴まれているのは他ならぬ――水に塗れた執務官の体だ。
苦悶の声をあげるフェイト。
食い込んだ指に感じる圧壊の力の感触はあまりにも、あまりにも埒外。

しかもこの手の主はさして力を入れていない。
恐らく虫を潰さないよう丁寧に摘むように、微細な力しか出していないだろう。
もし本気で握られれば―――
BJを纏っていないフェイトの体など一瞬を待たずに潰されてしまうに違いない。

「よりによって堀の中に電流流すとはそれ何てテロ行為? 
 もはや営業妨害ってレベルじゃねー。
 馬脚をあらわしたニャ―――薄汚い侵略者め…」

動けないフェイトと、そしてなのは達の耳に聞き覚えの無い声が響く。

「おとなしく軍帽被ったカエルにでも化けていれば、まだ可愛げがあったものを……
 アングラーズヘブン・GCV――グレート・キャッツ・ビレッジ・出張代理店18号
 その店長たるあちしの逆鱗に今、お前は触れた。
 てめえの血は何色ニャ!覚悟は出来ておろうな物体X!」

岩のような背中から分離したブースター、もといピョンと飛び降りたのは――
狂戦士と比べ、ではなく普通の人間と比べてすら
その下半身くらいしか無い奇怪なネコミミ生物であった。

「テロ……? ち、違う…!」

謎の猫耳を前に気色ばむフェイト。
法を守る執務官がテロリスト扱いされるなど洒落にもならない。末代までの恥辱である。

「何か反論でもあるのかニャ? 言っておくが冬の幼女より借り付けた接客紳士の彼には
 金髪下着少女のいかなる賄賂、色香も通用しないのだった! 狂化されてっからな!」

「色香だなんて……そ、そんなつもりは無い!」

「控えろ小娘。あちしは今は法の執行人。
 冷静さを保たねば正しき裁きも下せまい――」

なのはヘブン状態から一気に冷めていくフェイト。
文字通り、血の気がさーっと引いていく。
数多の時空を統べるミッドチルダの執務官たる自分が
管理外世界で化け猫相手に裁判されている――冗談のような光景だ。

「魚は我ら集落において神聖なる存在――まさに我らと生死を共にするパートナー。
 それをないがしろに扱うなど言語道断!
 生類憐みの令・魚を犯すものは断じて許しちゃならねー!」

「ちょっと待って!意義あり!」

「許可する年増ツインテール。」

「ありがとう(#)…
 確かに私の友達もやり過ぎました……それは認めます。
 だけど、その前から向こうの人たちも好き勝手にやっていました。
 怪しげな液体を掘りに流し込んだり……私達はそれを受ける形で……
 だのにフェイトちゃん一人が拘束されるのは筋違いです。」

「あ、その王様は良いの。
 キャットフード100トンで独占契約を結んだから」

「………」

なるほど資本主義。所詮、世の中カネだった。

「まったく最近の萌えキャラはちょっと可愛くて乳が張ってりゃ何をやっても良いと思ってけつかる!
 ここは一つ、あちしが世間の厳しさを教えてやらねばなるまい!」

「っ……」

巨大な手に締め付けられ、苦しげにもがくフェイトの体。
首を押さえられ、悩ましい体を惜しげもなく振り乱す惨状はひたすらに痛々しい。

「にゃっふっふっふっふ――おらおら苦しいかァ?
 ちょっと人気があるからって調子に乗るんじゃねェぜこの<ピー>がァ!
 言ってみろよぉぉ……裸になって何が悪い!ってなァァァ!」

「い、言うものか……それだけは絶対に!」

「フェイトちゃん! 止めてっ……こんなの横暴だよ!」

こんな平等の欠片も無い裁判に納得できるはずがない。
不平を露に踏み込もうとするなのは。

「なのは………いいんだよ」

「えっ?」

だがそれを静止したのは他ならぬフェイトだった。

「私は執務官だ……
 どんなに不当な話であっても咎を犯したというのなら、それを軽んじるわけにはいかない。
 審議の必要はないよ。上告もしない……覚悟は―――出来てる。」

気丈に言い放つ。全ては覚悟の上の蛮行だった。
なのはの力になれるならば、金髪の乙女は文字通り火の中水の中でも迷わず飛び込むだろう。
元より捨て身の血路を開くつもりだったのだから。
今、自身が抵抗すれば連れのなのはまで巻き込んでしまう―――だから背負う
罪も罰も恥辱までも一手に引き受けて、フェイトは一人縛に付くのだ。

「よくいった――良い覚悟ニャ。」

パチンと指を鳴らす猫モドキ。
すると狂戦士の拘束が外れ、自由になったフェイトがタイルに下ろされた。

「ならば小娘。自らの足で刑場へと赴くがよい。
 我がグレート・キャッツ・ビレッジの縄張りを荒らした罪により
 死よりも辛い責め苦を味あわせるが異論は無いな。」

「………異論、無い」

「そんなっ!? 釣堀屋で粗相しただけで私刑にかけるだなんて…!?
 そんな法律は聞いた事がないよッ!!」

なのはの絶叫は――ごごごご、と開いていく刑場の音に掻き消されて届かない。

「―――デルタホース・エレクトリッガー!
 屈強な精神力の持ち主ですら数時間と持たずに廃人と化す四十八の責め具の一つ!
 思う存分、冥府の狭間を垣間見よ!
 なお、十八歳未満には閲覧できませんので詳しい描写はお許しください。」

「……」

「い……いい加減にっ!!」

もはや見過ごせる範疇を超えた。
懐からデバイスを抜き放ち、踏み込もうとする高町なのはを前に
あの最強のサーヴァントが立ち塞がる。

「……………ッッ!!」

「■■■■―――」

強烈な闘気を隠そうともせずに相手を睨むなのは。
常人ならばその一睨みで千の軍が道を空けるだろう。
だが―――目の前の相手はバーサーカー。
狂気に染まった思考は相手の気勢に押されて下がるなどという機能は死んでいて
そして、目の前の女魔道士を脅威とも思わぬ破滅的な力を有するモノだ。
ギリっと奥歯を鳴らす高町なのは。
コレを、この怪物を抜かなくては、フェイトが――

「どきなさいッッッ!!!!!」

だがもはや迷っている時間は無い。
地を蹴り、その翼をはためかせ全力全開を以って――
目前の山をぶち抜こうとする魔導士。

「なのは!!!」

「………!!!!」

が、それをフェイトの一括が押し留める。
踏み抜いた地面から飛び立とうとした白き魔道士の身が強制停止した事により――
衝撃がジェット気流のように場に吹き荒れ、衆目を吹き飛ばそうとする。
こちらも凄まじい力を持ったナニカだという事を十分に感じさせるパフォーマンスだ。
この両者がもし今、激突していたら――
列車同士の正面衝突に匹敵する大惨事を引き起こしていただろう。

「なのはは人の気持ちを……
 思いを……無駄になんてしない。そうだよね?」

「ッッフェイ、トちゃん……!!」

しかし惨劇は回避される。一人の乙女の言葉によって――
今にも突破を試みようとしたなのはの足が止まり
揺るがぬ不屈の瞳が、親友の言葉を前にぐらぐらと狼狽の色を見せる。

それは己が信念に添いて殉ずる聖者の言葉だ。
全ての罪を甘んじて受け、背負う覚悟を秘めた
誰にも止められぬ、汚せぬ言葉。
その行為に水を差すという事は――フェイトそのものをも侮辱する事になる。

不死身のサーヴァントの巨躯に隔たれた二人
高町なのはとフェイトテスタロッサ――
フェイトに手を伸ばそうと必死の形相のなのは。
対して、穏やかな微笑を浮かべ……親友に背を向ける金髪の魔道士。
後ろはバーサーカー。元より逃げ場はなく、そのつもりもない。
もし闘えば―――二人掛りならば互角以上に戦えるかも知れない。
だが咎を受ける事を拒めばそれは執務官・フェイトテスタロッサハラオウンの信念の崩壊だ。
今後どの面を下げて大手を振って犯罪者を裁くなどという事が出来ようか―――

「いいんだよ…なのは」

漆黒の闇に自ら歩いていくフェイトの声が鮮明になのはの耳に響いてくる。
その闇の先――角度的になのはの立つ場所からは中に何があるのか分からない。
だが口を引き結ぶフェイトの恐怖を押し殺した感情がこちらにまで伝わってきて――

「フェイトちゃんっ! 駄目ぇ!!」

「なのは…」

既に迸る魔力は臨界を超え、目前の漆黒の破壊者すら
一息で抜きかねないほどに猛り狂うエースオブエースの魔力。
しかし――その思い故に、なのはは暴風のように渦巻く己が体内の魔力を相手に叩きつける事が出来ない。

「…………負けちゃダメだよ」

フェイトの穏やかな声色がなのはの耳を優しく打つ。

「…………ぁ、」

対してなのはのわななく唇からはもはや次の言葉が発せられる事はなかった。
そんな教導官に対しもう一度振り向いて、優しい瞳を向ける欠けがえの無い親友。

「なのはには、やっぱり負けて項垂れたりとかそういうのは似合わないから。
 頑張ろう……なのは。そして……」


――― 勝って ―――


「……………え、えーと――」

一言一言紡ぐようにフェイトは思いを伝えるのだった。

「フェ、フェイトちゃん…」

「なのは……私の服の内ポケット。
 今日、最後に渡そうと思って作ったんだ…」

「…………あの、チミ達? いい加減、自重して?
 まるでこっちが悪役みたいな演出は断固控えるべし。
 時間を稼げばピンチに薔薇投げて助けてくれるヒーローなんてこの世にはいニャいのよ?」

「上手に作れたか分からないけれど…!
 口に合うか分からないけれど……!!」

「う、うん…! 胸ポケットだね!
 分かった……分かったから!」

「…………き、聞いちゃいねえ。
 周囲との温度差などアウト・オブ・眼中の百合色固有結界ってか!
 世も末よのう!くわばらくわばらっ!」

「「ちょっと黙ってて」」

「ギ、―――!?」

二人だけの世界に浸るなのはとフェイト。
その犯しがたい起臥の境界線の強固さはナマモノすら絶句するが――

「だが一皮剥けばただの露出狂の変態女なのであった―――
 おらキリキリ歩けぃ。あとで保護者に連絡すっから親の名前と住所と電話番号を言いなさい。」

猫の手がフェイトのフロントホックをむんずと掴み上げ
そのままズリズリと引き摺られていくフェイト。

「あっ…!? そこは、そこは引っ張っちゃ駄目だっ…!
 プ、プレシアテスタロッサ! 住所はアルハザードで……次元の狭間なので電話は通じてない!」

「猫だと思ってバカにしてんのかぁぁぁ!!」

「ウソなんて言ってない!! ホントだよっ!」

化け猫の怪力によって、やがてその姿が扉の奥へ消える。
するとギギギギ、と二人を飲み込んだ虚空の扉が閉じられて行く。

「フェイ、…………っ!!!」

なのはの絶叫は既に届かず――隔離された親友をただ呆然と見ている事しか出来ない。
その後姿が、まるで残像のように瞼に焼き付いている。
その儚げな細い背中が――

勝利のために、今一人の魔道士が――
自身の親友が――逝った。

そのはにかんだ笑顔を最後の最後まで絶やさずに―――

(う、うぅ………フェイト、ちゃんッ!!!)

いかなる困難な戦場でもあげた事のない慟哭が口の端から漏れるのを
もはやなのはは、抑える術すらなかったのである。


――――――

「えー。第二釣堀場は復旧のためしばらく閉鎖いたしまーす。
 大変ご迷惑をおかけして申し訳ございません。
 繰り返しまーす。第二――」

眼鏡の青年の場内誘導の声が場に響く。
それに従って次々と移動していく客の群れ。
その場にあって、人の波に乗らぬまま立ち尽くす白いワンピースの女性に対し――
常連さんがポンポンと肩を叩く。

「まあ……その、何だ。この店、いつも演出だけは過剰なんだよ。
 連れの娘もスタッフ室でこってり絞られるくらいだ…あまり心配すんなって。」

道往く人が次々と慰めの言葉をかけて、そして移動していく。

そんな言葉に軽く会釈をする事も出来ず――
やがて、その場に誰もいなくなった場にて――
なのはは未だにぽつんと佇んでいるのみであった。

「………」

何も……何も出来なかった―――
友達が連れていかれたというのに、何も…

「あの……」

立ち尽くす細い肩が小刻みに震えている。
そんな痛々しい後姿に優しい声がかけられる。

「すいませんね……うちの店長も悪いネコじゃないんですけど。」

そう言ってサービスですとジャスミンティーを差し出すバイトの青年。
興奮した心を落ち着かせる成分が含まれた異国の茶。
お客さんの昂ぶった心を癒そうという青年なりに気を使っての配慮だろう。

「そんな気分じゃ無いでしょうけど……せめて閉館まで楽しんでいって下さい。
 初めて来てくれたお客さんに嫌な思いをさせて帰すのはこちらとしても本意じゃないし……
 あの、お友達を待たれるのでしたら専用の部屋を用意しますよ。」

「…………、」

口を開き、何か一言返そうとするも上手く言葉を紡げないなのは。

「これ、お友達のでしょう?」

そんな彼女に対し青年は、フェイトの脱ぎ捨てた上着とジーパンを丁寧に差し出してきたのだった。
綺麗に折り畳まれている。この人がやってくれたのだろう。

「大事な人の物だって傍から見ても分かります。僕にもそういう対象、いますから。
 向こうは僕の事なんてどう思ってるか、いまいち掴みづらいところがあって
 たまに不安になるんですけど……だから、あんな風に素直に想い合えるお二人が羨ましいなぁなんて…
 はは、初対面の人に何言ってるんだろ俺。」

照れ隠しに鼻の頭を掻く青年。ノロケにしか聞こえない。
こんな好ましい若者にそこまで想われている女の人――
さぞかし素敵で、そしてさぞかし幸せなのだろう。

「ありがとう……」

やがて無理やりにでも笑顔を返して答える高町なのは。
ここまでしてくれたのだ。礼くらいは言わないと申し訳が無い。

「しばらくここにいたいのですが…いいでしょうか?」

「―――そうですか。ごゆっくり」

フェイトの上着を受け渡し、一礼をして下がるバイトの青年、黒桐幹也。
本当に気の良い人物だった。
最悪の状況で居た堪れないなのはの気持ちがいくらか癒されるほどに。

「…………」

――― なのは……私の服の内ポケット ―――

未だ沈んだ気分ではあるが―――
いくらか平静を取り戻した教導官がフェイトの最後の言葉をふと思い出す。

――― 今日、最後に渡そうと思って作ったんだ ―――

その言葉に従い、無言で黒いジャケットの内側。
その胸の内ポケットをまさぐる。
するとカサカサという感触が指に伝わり、手にすっぽりと収まる小箱の存在を認める事が出来た。
その箱は小さな胸ポケットの狭いスペースに二つ、大事に大事に収まっていて――

   <なのは……バレンタインデー、おめでとう>

   <なのは……ホワイトデー、おめでとう>

と―――包の表のギンガムチェックに日本語で、丁寧に綴られていたのだった。


――――――

二つの小包みをぎゅっと――――

いとおしい恋人本人にするかのように胸に抱きしめる魔導士。

「一方通行過ぎだよ……フェイトちゃん」

――――今は三月の上旬

そうだった……………

地球では男女共に最も盛り上がる定例のイベントの真っ最中だったんだ。
忙しすぎて地球の暦すら頭に無かった自分と違い、あの親友は何とかこれを渡せる機会を狙っていたのだろう。
バレンタインと書かれた包みの中には、星型で象ったこげ茶色のチョコが入っていた。
――星(スター)は自分のコールサイン。きっと自分になぞらえてくれたのだろう。
次にホワイトデーと書かれた包みを開けると……一風変わったモノが出てきた。

「うわ……」

思わず目が丸くなり、次いで眉を顰めてしまう。
おろん、と異様なオーラを纏いながら出てきたのは――
疲れた貴方にファイト一発・滋養強壮「マムシドリンク」

「……」

バレンタインと違って、ホワイトデーは何を送るかは厳密には決まっていない。
故に彼女は今の自分に最も必要なものとしてこれを選んでくれたのだろう。
だが、よっぽど過労寸前のヘロヘロに見えていたにせよ―――
ホワイトデーにマムシドリンク送られる女など世界中を探しても自分以外にはいないだろう。
明日から働きマン・高町なのはと名乗って出勤でもするか…?
きっと誰も何の違和感も感じてくれないのではないか?

「…………」

そんなにも――
そんなにも――

心配をかけていたのだろうか…?
温厚で控え目なフェイトにあそこまでさせるほどに―――

「バカだ……本当に」

否――心配されていないわけがないのだ。

全ては自分が送ったあのメールから始まったのだから――

今の今まで気恥ずかしさも手伝って、こちらからは全く触れずにおいたあのメール。
今日一日、楽しく過ごして、それで全部水に流してしまおう……また明日から普通に頑張ろうと――
そう思っていたのだ。独りよがりに。

―――心配するに決まっているのに

あのフェイトの性格だ。
こちらが触れないようにしたからといって、それで気軽に流すような親友ではない。
心配して心配して何とかしなきゃって思うに決まってるのに―――

思えば初めから様子がおかしかった。
行きの道中、車内でも少し怖いくらいに気を張っていた―――


「珍しいね? フェイトちゃんが帽子被ってる……見違えちゃったよ。」

「うん……これが釣りに行く時のフォーマルな格好なんだって」

「うわぁ、気合入ってるなぁ…」


――――あの、普段は決して被った事の無い帽子も
金が嫌いになったなんて書いて送った自分に気を使っての事だろう。

――――必死だったのだ

自分が楽しまなきゃ!って思っていた以上に
フェイトはこちらを楽しませようと四苦八苦して――
器用で、でも不器用なかけがえのない親友。
また自分は彼女に――フェイトに甘えてしまった。
そしてせっかくの一日をこんな後味の悪いものにしてしまったのだ。

――視界が涙で滲む。
切なくて、申し訳なくて―――
人の消えたここでなら、誰憚る事無くこの悲しみを表に出せる。
人前では決して涙を見せないエースオブエースが一人、目に手を当てて咽び泣きかけて――

「―――、」

「…………!」

そこで強引に両目を擦って涙を拭う。
霞む視界の後方に気配を感じたからだ。

視界に無理やり割り込んでくるような、そんな無遠慮で不遜な気配。
直視すると目が霞んでしまうほどの黄金の王気は―――あのサーヴァントのもの以外に有り得ない。

彼もまた他の場所に移動するところなのだろうか?
ともあれ今のくしゃくしゃの情けない顔を見られたくなくて相手から目を逸らす。
いつもの人を見下した視線を注がれているのか。
それとも一瞥もくれていないのか。
逸らした目からは、男の表情はよく見えない。
出来ればそのまま通り過ぎてくれればいいと思っていたのだが――
不本意にも男の気配は自分の斜め後ろから動いていない。
沈黙のままに佇む両者。
やがてその雰囲気を嫌い、無理にでも声を上げたのはなのはの方。

「貴方のお店だったんだね……ここ」

―――答えは返って来ない
代わりにふん、と鼻を鳴らす微かな音が聞こえた。

「結局、貴方のお膝元で必死に踊っていただけ……
 初めから勝てる見込みなんてなかったって事か……」

報われない。
あれだけ頑張ったのに。
あれだけ友達が頑張ってくれたというのに――

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最終更新:2010年11月29日 17:00