湖の騎士、シャマル。
主に仕えることこそ変わらずとも、今代の、そして恐らく最後となるであろう今の主は、
彼女を含めた四人の騎士を家族のように――と口に出しては怒られるが――扱ってくれる。
今までとは違い、普段の生活も自由が認められている環境にある。

管理局は多忙を極める組織ではるが、当然のことながら休暇もある。
全員が揃って休みを取れるように調整するのが常であるが、やはり都合がつかない場合もある。
局員ではないため万年休暇状態のザフィーラという例外はあるが、彼は彼で有事に備えて拘束される時間は長い。
今日も今日とてヴィヴィオの付き添いをしているのだろう。
ヴィータは教導隊でハンマーを振り回しているし、シグナムは主の付き添い兼護衛。もちろんリインも同席。

一人で休日を過ごすことなったシャマルは、いつもより丁寧に掃除をし、10時からはドラマを見て、
昼食をとり、さて買い物に行くかと立ち上がる段になってあることに気がついた。



私、ひょっとして影が薄くなってない?!


そう。
そうなのだ。
一流の戦闘力を持つ他のメンバーは、局員の中でも何かと一目置かれる存在である。
確かに彼女とて守護騎士の一人である。
実力派間違いなく一線級。戦闘時は司令塔としてかかせない役割を担う彼女である。
しかし平時はもっぱら医療活動に従事しているため、せいぜいが救護室のお姉さん程度の認識にすぎないのである!


――――なんて考えても仕方がないか。
主に仕えることが本分であって、別に一目置かれる必要も、出番などもこれっぽっちも――――
いや、駄目だ。
出番はないとマズいだろう色々と。
このままでは消えてしまうかもしれない。次回作に出られないかもしれない。
チョイ役でもいい、そこで存在感を出しさえすればいいのだ。
同じ出番の少ない緑でも、ラストにちょいと出ただけででしっかりパパの立ち位置に収まってるヤツもいるというのに! 私は!

どんどん盛り上がっていくシャマル。
背景はどんどん紅蓮に染まり、その場の熱も危険なほどに温度を上げていく。
このまま天元突破するか?!とも思われたが、しかし現実には一分で沈下した。

「でも、私が目立つなんてできないし。それにそんなことをしなくても、みんな認めてくれているんだし」

溜息をついて思考を変えようとした、まさにその時である。
謎の愛らしい――――聞き覚えがあるようなないような、愛くるしく、それでいて可憐さを感じさせる声が聞こえてきたのは。




「最近出番がないとお悩みのあにゃた! そう、そこのじっみーな緑っぽいアンタの事ですにゃ」

シャマルは突如聞こえて来た声に驚き、その声の主を探す。
しかしどこを見ても人影は存在しない。

「緑はいかんですにゃ、緑は。戦隊モノにゃら主役はレッド! クールキャラならブルー!
 お笑いにゃらばイエロー! それに比べてなんですにゃ、その中途半端にゃ緑というカラーわ!」

探す、探す、探す。
だがかなりのボリュームで話している筈の相手は一向に見つからない。
これはまさか幻術かと戦慄が走る。
即座にバリアジャケットを纏い、索敵魔法を行使する。

「おっや~? でましたよ、中途半端な色が」
「っ、これははやてちゃんに貰った、私の――――」
「その色こそが大敵だというのににゃ?」

聞いてはいけない。聞いてはいけない、聞いてはいけない!
ガンガンに鳴り響く危険のサイレン。クルクルまわる回転塔。
理性では理解している筈なのに、しかしその声を振り払うことができない。

「癒し? 情報収集? 結構、結構、しかしそんにゃことでは主役はおろかメインの話一本貰えませんにゃー!」
「メインの話――――っ?!」


胸を電撃が走りぬけた。
主役? メイン? 補助はダメ?
様々なキーワードが頭を駆け巡る。ワケがわからなくない酷い混乱状態。

「時代は攻め! 攻めて攻めて攻めまくるヤツこそが主役に相応しいのにゃ!
 緑! キサマもメインを逃したとはいえ柚の眷族! アチシはそれに相応しい技を知っている!
 丸々一本メインの話を得られるように、早速鍛えあげてやるにゃー!」

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最終更新:2009年05月27日 23:30