英霊ナノハに関する第二回調査報告書中間報告

制作者『調べ屋』アマネ

──そこは戦場だった。

戦場とは、戦で多くの人が傷つき死んでいく場所でありそれは真実。
だが、それを是とせずもがきあがく、そんな人物が存ることも確かに真実である。
しかし、そんな人物は往々にして、自己に関しては、疎かになるものである。

「殿はまかせて。」
そういった彼女も、満身創痍に近い姿をしていた。それでも、彼女は笑って
「大丈夫、今この中で一番硬くて、一番動けるのは私。そうでしょ?」
成る程。確かに、彼女の守りは硬く、並みの攻撃ではびくともしない。
全身の傷も歴戦の勇士である彼女にとっては慣れたものなのだろう。
なにより彼女のかつての二つ名は
『不屈のエース・オブ・エース』
空という彼女の領域では、文字どおりの一騎当千の存在となるだろう。
加えて現在、敵は既に目と鼻の先の位置まで迫って来ており、
こちらは多数の重傷者と、その重傷者を出してまで手に入れた、
絶対に持ちかえなければいけない、敵に関する重要な情報が入っているはずの、
『生体コアメモリ』を持っている。
よって、彼女が殿(実質囮)となって、遅延戦闘を行い、 こちらは重傷者とコアメモリを一度本部まで持っていき、
重傷者とコアメモリを置いた後、応援を連れて改めて此処へ戻ってくる、
というのは正しい判断と言えるだろう。
      • 殿を勤める相手が普通の身体であったなら。
「でもなのはさんは身体がっ・・・!」
「自己犠牲をするつもりはないよ?──そういうのは11歳で後悔してるし。」
殿を買って出た女性──高町なのは一等空尉が言う。
「ヴィヴィオもユーノくんもいるし、フェイトちゃんには悪いけど、だから・・・ね?」
「・・・わかり・・ました。」
なのはが殿になるのを反対していた女性──ティアナ・ランスター執務官は、
渋々といった様子で遂に根負けした。
「では、・・・正直な所、どのくらい持ちそうですか?」
「──普通に戦って二時間、魔力を節約しながら戦えば、五時間って、所かな?」
『まあ、そんなところでしょう。』
なのはは二十年来の相棒である己が愛杖であるレイジングハートと相談しながら答えた。
「分かりました。では、三時間で戻ってきます。」
そう言うや否や、ティアナは踵を返し、重傷者やコアメモリを艦に乗せ、
戦闘領域から去っていった。


『──あと、七分後に接敵てす。・・・マスター。』
「なに?RH。」
『何故、残ったのですか?』
「・・・何故って、あの中で一番硬くて、一番動けるのは私だったから。──それに・・・。」
『それに?』
「死ぬにしろ、生き残るにしろ、この作戦で私は引退するつもりだしね。
だったら未来のある新世代に生き残ってほしかったんだ・・・。
でも、ティアナには見透かされちゃったのかな?
あんな事言われたら、三時間頑張るしかないよね。」『・・・「みんなの為に死ぬ」という類の答えでしたら、
強制的に転移魔法で跳ばすつもりでしたが──
生き残る気があるならば、たとえここで朽ち果てる事になろうとも、
最期までお供します。──接敵まであと二分。ですが、先手を打つならば今です。』
「うん。ありがとう。──敵が見えたね、じゃあ─全力全開!
      • は、体が持たないから、出力60%で。」
『イエス、マスター。』
「スターライト・・・ブレイカァァァァァ!!」
(生き残れたら、ユーノくんの子供がほしいな。)
(やめてくださいマスター、それ、死亡フラグです。)
そうして、彼女と彼女の愛杖は戦闘の火蓋を切った。


第二回最終報告書に続く。



英霊ナノハに関する第三回調査報告書中間報告

製作者『調べ屋』アマネ


関連項目

現在のミッドチルダについて

JS事件から200年以上の年月が流れ、時空管理局は元第97管理外世界『地球』と文化交流をするまでになっていた。
現地に在った魔術文明とは紆余曲折はあったものの、
ミッドチルダ式魔法の陰に隠れることで、むしろ『神秘』が護られ
(事実、地球の『魔術』を知っているものは200年前の約三分の二ほどに減った。)
又、新たな魔導技術が手に入るため、『根源』へ到達出来る可能性が増えると考え協定に同意したようだ。
尚、地球では質量兵器の所持と使用は禁止されていない。
これは魔術協会との協定あった条件によるものであり、
『究極の一』の存在や武闘派の魔術師達の活躍により、
管理局側もある程度、譲歩せざるおえなかったためである。
(それゆえ地球は一部の者には第6特殊世界とも呼ばれている)
そんなミッドチルダには、百年ほど前から、ある伝説が語られている
曰く、『ミッドチルダが危機に陥ったとき、天から砲撃が降り注ぎ不屈のエースが再臨するだろう』
実際に災いが起こるたびに現れ、その砲撃をもって
全ての災いを粉砕するその姿を
人々は畏怖と敬意を込めてこう呼んだ

『天空の魔砲使い』と・・・
(これはミッドチルダにいる地球の魔術を知っている者が
洒落で付けた名前が、いつしか通り名になったものである。)

その正体には有力な説が二つあり、
一つは数百年前、古代ベルカの時代に、後の聖王家に仕え当時としては異端である
「砲撃魔術」を扱い聖王家を護りぬいた通称「聖王の母」であり、
もう一つは、200以上前の時代、当時『不屈のエースオブエース』とまで謳われた
砲撃魔導師で『スタンピート事件』で戦死したと思われる
「高町なのは」だと言われている。が、どちらも定かではなく、「高町なのは」を直接知っており
さらに現管理局の個人最高戦力で『天空の魔砲使い』との交戦経験もある、
八神リインフォースツヴァイ提督はノーコメントとしている──


「ふぅ。」
そういって調査報告書から顔をあげたのは、薄水色をした髪と
蒼い瞳を持つ、美しいの女性だった。


彼女こそ先ほどの報告書にも名前が出てきた、現管理局個人最高戦力であり、
八神はやてが持っていた、『夜天の書』の後継機『蒼天の書』の
持ち主、八神リインフォースツヴァイ提督である。

(ちなみに、本来ならもっと上の役職つくはずなのだが、本人が現役に拘り、
上層部との妥協案として提督に納まった、というエピソードがある。)
「随分と正確な報告書ですねー、まぁ、こちらとしては大助かりですが。」
ツヴァイはちらりと、時計をみると苦笑し
「なんとか今日中に終わりそうですね。──明日は、はやてちゃん達のお墓参りですから。」
そうつぶやくと、再び報告書を片付けていった。


JS事件より7年後、管理局に大打撃を与え多数の戦死者をだした
『スタンピート事件』より約200年後のある日、休暇を取ったツヴァイは、
はやてやフェイトの墓参りに行っていた。
まずは『スタンピート事件』の慰霊碑へ行くと、そこには二人の先客がいた。
一人は金髪と、白にピンクのラインが入った服だが、
所々に、人間には有り得ないパーツを身体に持った女性。
そしてもう一人は栗色の髪をサイドポニーに結い
白い外套を身に纏っている女性、外套の下はおそらく白い法衣だろう。
その姿にツヴァイは驚き、しかし嬉しそうに
「お久し振りです──ナノハさん、それに、RH。」
そう──声を掛けた。
「──久しぶりだね、リイン。百年ぶり位かな?」
振り向き、それに当然の様に答えたのは、
二百年以上前の時代の人物であるはずの「高町なのは(と、RH)」だった──。

フェイト、はやて、ユーノ、クロノ達の墓参りを済ませたナノハ、ツヴァイ、RHは、
ツヴァイの家で、ちびりちびりと飲みながら、
昔話に花を咲かせているうちに、眠ってしまった。

翌日、ツヴァイが目を覚ますと
「──起きた?」
と、ナノハが声を掛けてきた。ツヴァイはしばし固まっていたが、
すぐに『ああ』という顔をして、
「おはようございます。ナノハさん。」
「うん、おはよう。朝ごはん、勝手に作らせてもらったから。」
「ありがとうございま~すぅ。」
      • まだ寝呆けているツヴァイだった。

ツヴァイが朝食を食べ終えて、一息ついていると
「それじゃあ私は行くから、昨日の件よろしくね?」それだけ言うと、ナノハはさっさと帰ってしまった。
「昨日の件、か・・・英霊も大変ですね。」
それを見送ったツヴァイはふと、初めて『英霊ナノハ』に出会ったときのことを思い出していた。
管理局と地球が交流する切っ掛けとなった、決して忘れることの無い、
小さな、しかし確かに自分にとって初めての『戦争』を・・・

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最終更新:2008年11月19日 18:11