912 :Fateはやてルート89:2008/07/22(火) 22:52:31 ID:LbYY7RN9
二年C組、そこは衛宮士郎にとって親しい人間の多いクラスであり
彼にとって過ごしやすいところであった。

「副会長、衛宮はどうしたのだ?」
「それやけど、ちょお体調崩してな。午後からくると思う」

クロスワードを広げつつ柳洞一成は尋ねる。

「ほんとにお前は衛宮、衛宮ってマジで衛宮の尻狙ってるわけ?これだからホモは」
「…廊下に出るか…間桐…」

奥歯を噛み締め暗い表情で立ち上がると、慎二を睨みつける一成。

「はい、はいせっかくクロスワードを柳桐君がもってきてくれたんやから
慎二も得意な名推理見せてや。二人とも座った、座った」

はやてが椅子を叩き、二人を席に誘うと渋々と席につく二人。

「ふん、僕のこの鋭い推理をクロスワードだけで満足させろってのかよ?」
「慎二の予想はびっくりさせられるくらい当たることもあって
みんなの期待やない。今日も見せてや、な?」
「は、たまにだって?僕の頭脳はいつだって冴えてるんだよ。
柳洞どこからやるんだよ?」
「ここからだ…間桐、いいか?」
「は、瞬殺だね」

この二人に士郎、はやてを合わせたならば二年C組のやや、変なグループ一個のできあがり。
沸点の低い対照的な二人を衛宮二人で取り持ちそれなりに仲の良い関係を築いていた。

「お、お、やるなぁ二人とも、今日は士郎の出番もなしやね」

慎二、一成の二人は順調に問いを埋めていく。

「当たり前だろ、衛宮なんていても役に立たないんだよ。
せいぜいが、んーとか、むーとか言ってるだけしね」
「間桐、お前は衛宮の真骨頂を全く理解していないのだな。
三人が詰まってどうしようもない時、最後まで諦めずに
粘って答えを導き出してくれるのが衛宮であろう?」
「知ってるよ。馬鹿なあいつはそんな時にでも役に立ってもらわないと意味ないじゃん?だろ、タヌキ?」
「私としてはノーコメントで」

はやては柔らかく笑う。

「衛宮に甘いタヌキがこの反応じゃあ、衛宮の価値も知れたもんだ」
「いや、衛宮の価値は俺が一番知っている。
そういえば、藤村先生はまだ、来ないのか。そろそろ地響きが聞こえてきてもいい頃合いなのだが」

一成のふいに零した言葉にピクリと反応した者が一名いたが
慎二の言葉にかき消され誰も気づかなかった。


913 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/07/22(火) 22:54:28 ID:ZJqLtGv3
支援


914 :Fateはやてルート90:2008/07/22(火) 22:56:59 ID:LbYY7RN9
「僕が昨日夜遅くまで付き合わせたからね。もしかしたら起きられないのもしれない。
クク、教師冥利に尽きただろうな藤村も」
「えと、慎二と藤村先生が?…何してたん?」
「間桐…まさかお前…」
「何してたかって?そんなの言えるわけないだろ。
極めてプライベートなことだぜ」

慎二が余裕の笑みを浮かべながら肩をすくませると
教室に入ってきたのは大河とは別の教師だった。

「C組の担任藤村先生は都合により本日は学校を休まれ、代わって私が本日、C組のホームルームを担当する」

そして、藤村大河がこの日学校に姿を見せることはなかった。


「衛宮シャマルの妹、セイバー・ヴォルケンは甥の授業を見るため
学校へ行くと?これでいいのですか?まんま過ぎてひねりが感じられないのですが」
「だ、大丈夫、最近はモンスターペアレンツだとか生徒の親族に
学校はすごく弱いから、多分な…」

自信なさげな士郎の様子にセイバーはジト目を送る。

「マスター…本当にそれでいいのですか?」
「あっと、それそれ。マスターって禁止だぞ。セイバーは俺の叔母さんになるわけだから
士郎君とか士郎とかが自然だろ?」
「叔母ですか…では、私のことは人前ではセイバーさんと
マス…いえ、シ、シロ、ウ、シロウ。この響きで間違いはありませんか?」
「うん…問題ないかな」
「では、私は人前ではマスターのことをシロウと」

士郎は穏やかに頷く。

「ああ、授業を見ると言っても教室に入ってきたりしなくていいからな。
廊下から覗くくらいで」
「そうなのですか?少し、残念ですね。マスターの勉学の様子を側で確認しておきたかったのですが」

少し寂しそうな顔になるセイバーを士郎は不思議がる。

「そんなに見たかったのか?」
「…そう、ですね…息子の面倒はよくみてあげられなかったので…」

目を閉じ、深く何かを回想する少女を前に固まる少年。

「む…む…むすこ?」

目の前の少女は少年よりも年下に見えるというのに少女は士郎を通し誰かを
懐かしんでいた。

「外見はもちろん違いますが外見年齢的には士郎に近いものがありますね」
「え?…」

親の顔をして柔らかく微笑む姿は士郎にセイバーの新たな一面を感じさせた。


915 :Fateはやてルート91:2008/07/22(火) 23:01:19 ID:LbYY7RN9
午前から午後へ時刻が変わろうとするころ赤髪の少年と金髪の少女は家を出、
学校へと向かう。
少年は制服、少女はスカートスーツといういでたち。

「はやてのだけどサイズが合ってよかったな」
「そうですね。けれど、何故スーツなどもっているのです?
私の知識に拠ればマスター達の年代では学生服が礼装としても使用できるはずですが」

セイバーの疑問に士郎は鼻をかきながら答える。

「まぁその辺は俺も詳しくないんだけどはやての切嗣の前の養父の人が
働いてたとこの物らしい。はやてがもらったっていう今じゃ古ぼけたカタログに載ってる。
そういえばどこに置いてたかな。
そのカタログを見本に作ってもらったんだ。
それで、はやては年に一回はその養父の人の家まで墓参りに行くからそん時にそれを着て行ってる。
多分、形見みたいな感じなんだろうな」
「なんだか警察の制服に似てる気がします」

ブラウンの服を眺めながらセイバーは感想を述べる。

「シグナム達もそんなこと言ってたな。軍と警察の相の子みたいなので
あんまり好きじゃないとかさ」

寒さも和らいだ昼下がり二人は穂群原に向かう坂を登っていく。
と、二人の前に穂群原の制服を身につけた女学生三人と一人の男が
目の前を校門へ向けて歩いてくるのが見えた。

「あれは、A組の女子か。後ろの男は…」

彼らもまた士郎達に気づいた様子で流し目に士郎、セイバーを見つつ校門をくぐっていく。

「クロノさん、面白い話ありがとうございました」

ほんわかした笑顔を向け校内に消えていく三枝由紀香ら三人を男は疲れた顔で見送ると
正門へ歩いてくる士郎達に目を向けた。

「…あんた…ここで何してる…学校まで来てはやてを連れてこうってのか!
あと、A組の女子に接触していた理由はなんだ!!」
「………」
「答えろ!!」

熱くなり、前かがみになっていこうとする士郎をセイバーは引き止めた。

「この男がはやてを欲しいと言っていた者ですか?」
「ああ」
「では、話の通りであれば地球外生命体なのですね?」
「まぁ…そうなるのかな。実感沸かないけど…」

士郎の返事を聞くとセイバーはクロノのことを上から下までじっくり観察する。


916 :Fateはやてルート92:2008/07/22(火) 23:05:56 ID:LbYY7RN9
「普通ですね…」

クロノを観察し終えたセイバーは少し残念そうにため息をついた。

「何を…期待していたんだ?セイバー」
「いえ、話に聞く宇宙人のような特徴はないものかと…しかしそううまい話はないものですね」

セイバーから落胆の視線を向けられようやくクロノも口を開く。

「サーヴァント、その制服は管理局の物だけど衛宮はやてのものか?」
「ほう、マスターの問いには答えないのに自分は質問すると?」

腰に手をおき、少しセイバーはご立腹の様子。

「いいってセイバー。黒野、あんたは嫌いだけど話はキチッとしとく。
これは、確かにはやてのだ。グレアムって人からもらった雑誌に載ってた物を
参考に作った」
「そうか…やはりグレアム提督は闇の書の所在を掴んでいたんだな」

遠い目をするクロノに士郎は昨夜はやてと確認したかった事項を口にする。

「グレアムという人はあんたの知り合い、なんだな?」
「あの人は僕の恩師だ。僕がここにいるのもあの人ができなかったことを引き継ぎたいという意志からでもある」
「できなかったこと?」
「闇の書の完全消滅、それがおそらくグレアム提督も考えてたことだろう」
「はやての養父だった人だぞ?はやてはとても優しい人だったって…
それんな人が闇の書を消すだけのためにはやての面倒を見てたってのかよ!」

士郎はクロノに掴みかからんばかりの剣幕で叫ぶ。

「闇の書の危険性がまだわからないみたいだな!衛宮士郎!
事と次第によってはこの星自体を飲み込むんだぞ!!
グレアム提督ほどの人が重要視するのも当然だ!
アレを消さないちゃ多くの人が不幸になる!本当にわからないのか!?」

士郎に触発されたのかクロノの声も大きくなる。

「それが胡散臭いってんだよ!俺はこの十年あの本のことは見てきてるんだ。
けど、はやての魔力を吸うだけで破壊的なことは何一つしてない!」
「その吸い取られた十年に渡る膨大な魔力はどこへ行った!
ため込まれたままだろう!それが覚醒したらどうなるか想像もできないのか!?」
「膨大な魔力があろうとなかろうと決めるのははやてだ!
そんなことしないだろうし、俺がさせない!」
「このっ分からず屋!過去のデータをみせてやるから家に来い!」
「ああ、望むところだ!」


918 :Fateはやてルート93:2008/07/22(火) 23:16:24 ID:LbYY7RN9
士郎がクロノと意気投合?し、口論しながらクロノの指し示す方向へ向かっていこうとする。
それを止めたのはセイバーの腕だった。

「マスター、熱くなり過ぎです。冷静に。今日は大事な話しがあったのではないのですか?
私としてはマスターが行く必要はないとは思いますが」

掴まれた腕の柔らかい感触に士郎は我にかえる。

「あ、ああ…そうだった」

士郎が急に冷めていくのを横目にクロノもクールダウンする。

「…無駄な時間をとったな。気が向いたら来るといい。君が協力的になってくれることを祈るよ」

胸元からメモ帳を取り出しなにやら書くと千切って投げた。

「なんだよ、これ?」
「僕の住所だ。じゃあな」

メモを拾い上げた士郎ら二人に背を向けクロノは反対方向へ歩き出す。

「待ちなさいクロノ、あなたをこのまま返すわけにはいかない」

そう鋭い一言を厳しい目つきでセイバーはクロノへ浴びせかけた。


二年C組、昼休みになってもはやては手持ち無沙汰で自分の席で頬杖を付いていた。

「タヌキ、お前飯食わないのかよ。昼休み終わるよ」
「ん~士郎が来るまで待っとる」
「ほんっと付き合い切れないね。これだから色ボケは。
いいいか、僕の前ではいちゃつくなよ」
「いや、今日はそういうんちゃうやけど…」

しかめっ面で言い放つ慎二にはやては苦笑いで答える。

「それにしてもほんまに来んなぁ。私だけで話つけてきてしまおかな」

教室を出て行った慎二を視線で見送った後、ぼーっと窓の外を見ていたはやて、
その背後ににゆっくりと迫る影があった。

「―――御館様――」
「ひゃ!?」

椅子、右脇から囁くような突然呼びかけに驚き仰け反り固まる。

「御館様にお取次を願う者が廊下に来ているようにございます」

横を見ると片膝をつき畏まった表情のクラスメート。

「そ、そうか」
「では、御免」

一度飛び上がると着地し床を這って後退していく。

「何を…しとるのかな、後藤君」
「今、天井裏を這っておりまする」
「今日は忍者やったんやね…」


919 :Fateはやてルート94:2008/07/22(火) 23:20:31 ID:LbYY7RN9
「衛宮さーん、ちょっと人が来てるよー」

廊下の方から聞こえるクラスの女子の声、はやては立ち上がり廊下へ向かう。
廊下に出た先に見えたのは気品ある佇まいの少女。

「…そっちから来るとは思わんかったな」
「そう?わかってたんじゃないあなたなら。昨日挨拶に行ってもよかったのだけど
どうやら昨日はお楽しみだったみたいだしね。1日待ってあげたわ。
とりあえず、屋上行くけどいい?」
「そやね。ええよ」

はやては一度、下へ続く階段をちらり見てから頷く。
そして、遠坂凛、衛宮はやては並んで屋上へと向かった。

299 :Fateはやてルート95:2008/07/30(水) 00:14:05 ID:A1CR/7tn
「待ちなさいクロノ、あなたをこのまま返すわけにはいかない」

セイバーの一言にクロノは足を止め振り返る。

「セイバー?」
「この男は私のことをサーヴァントと呼びました。
つまり、聖杯戦争を知る者です。ならばこの男がマスターである可能性もあり得ます。
確認をすべきです」
「確かに、可能性がないとはいえないな。調べるか」
「いいえ、マスターは下がっていてください。私が調べます」

士郎がクロノに近づこうとするのをセイバーは止める。

「何をする気だ?」
「あなたの体に令呪がないか確認するということです。
逃げようとしても無駄ですよ。この距離、一息であなたを切り捨てることが可能だ」

にじりよるセイバーにクロノは観念したようにため息をつく。

「好きにしてくれ」
「では、動かないように」

セイバーはクロノの手を掴み上げじっくりと確認する。

「手の甲にはないようですね。では続いて服を脱ぎなさい」
「なっ!?……本気か?ここは真っ昼間の路上だぞ?」
「私は構いませんが?」
「…衛宮士郎…頼む…この娘を止めてくれ…」
「セイバー、確かに路上は…な…」

血の気の引くクロノに士郎もさすがに同情を隠せない。

「…マスターがそう言うならば、わかりました。あちらの木陰で調べるとしましょう。来なさい。
マスター、できるだけ早く済ますつもりですが
知っている聖杯戦争の情報を吐かせたりするのに少しばかり時間がかかるかもしれません。
マスターは学校へ行ってください。この結果は追って報告します。
私がいない間はくれぐれも気をつけて、シグナム達と連絡をとれる状態でいてください」
「ああ」

クロノの腕を引っ張っていくセイバーに頷き、士郎は校門へと駆けた。
校門を抜けこのまま昇降口まで駆け抜けようかとした時に突然に横から声をかけられる。

「「「衛宮(君)!!!」」」
「おわっ!?」
「あの女子と君とはやてとクロノさんの関係について聞きたいのだがいいかな?」

校門の裏に隠れるように固まっていた三人は士郎に詰め寄ろうとするも
士郎の足は止まらない。

「す、すまない。またあとでな」


300 :Fateはやてルート96:2008/07/30(水) 00:17:06 ID:A1CR/7tn
「いつかはあなた達にこうして話をしなくてはならないと思っていたわ。
セカンドオーナーとしてもぐりの魔術師は放置しておけないから」
「士郎のことやな」

屋上の手すり脇で二人は佇み相対する。 二人の表情は余裕あるようであるも
場の空気は決して緩くはない。相手の出方を探る思考が互いの頭を占めていた。

「そうね。でもあなたのことも衛宮君同様捨て置けないのよ。
四体もの強力な使い魔を召喚する魔術。これは、かなり高度なものだし。
正直その体を解剖してどんな術式使ってるのか調べてやりたいくらいよ」

暗い笑みを浮かべる凛にははやても苦笑いとなる。

「いやー、冗談きついなぁ。あとその点やけど私のは生まれつきというか
無意識のやから術式とか言われてもさっぱりや」
「そういうのって嫌みっていうの知ってる?
まぁあなたが彼らを召喚した時の異常でもぐりの魔術師を見つけることができたんで良しとするけど」

あっけらかんと喋るはやてに凛は冷たい視線をおくる。

「それから私らをずっと監視しとったん?」
「…フンっあなたの使い魔は結構優秀よ」
「ん?どういう意味や」
「うるさいわね!…で、確認したいんだけど彼はちゃんと生きてる?」

その時、屋上の扉を勢いよく開けるとその勢いのまま屋上へ飛び出す影。
はやて、凛の前まで来ると荒い息を整えることもせず、側へと立つ。

「はぁ…はぁ…ま、間に合った」
「ま、この通りピンピンしとる」
「そうですか、昼は確認だけしたかったので、もうこんな時間ですし詳しい話はまた、放課後でどうでしょう?」
「ぷっ」
「なんですか?衛宮さん?」
「いや、なんも」

笑い合う二人を見て仲はよくなさそうだと士郎の生物的直感が危険を訴えていた。

「あ、と…放課後にこの場所でいいのか遠坂?」
「ええ、衛宮君も来てくださいね」

愛想を向け、士郎の前を横切る凛。そんな清楚な横顔に士郎はついつい目がいってしまう。
そして、凛の波打つ黒髪が眼前を通り過ぎようとする瞬間、
もう一棟ある建物の屋上によく知る桃色髪の女性の姿が
見えたように思えたがまばたきをするともう欠片もみえなかった。


301 :Fateはやてルート97:2008/07/30(水) 00:20:30 ID:A1CR/7tn
「と、いうわけでセイバーが来る。あとな、昨日の件の黒野ははやての養父の人の知り合いで間違いなかった」

教室へ向かうなか、午前中での出来事を互いに話、伝える。

「そうか…まだ校門の前におる?」
「わからない…けど住所は教えてもらった。
だけどさ、あいつに会ったって何もいいことなんてないぞ」
「んー?さては黒野さんと喧嘩したんやろー」

ブスッとした表情の士郎を見れば何があったのか察するのは容易。

「あいつは書の消滅しか考えてないんだ。そんなやつになんて会う必要あるのかよ」
「ある。あるんよ、士郎。私が本当にそんなことにならんとも限らんし
そうなったら私をズバーっやってくれるんは正義の味方やないと締まらん。
そん時は黒野さんの知識が役に立つかもしれんよ」
「あいつを信用するのかよ!?そんなことより何言ってんだ。俺やシグナム達を信じろ」

じっと目を合わせる。そのまま廊下で立ち尽くす二人には周りのことは視界に入らないようで。

「二人とも授業の時間になっているのだが…」

二年C組の面子が廊下へ顔を覗かせヒソヒソと囁いたり、
真面目にジッとみたりという光景が生起していた。
二人がハッと振り返ると彼らの後ろには難しい顔の一成。

「悪い…一成」
「は、はいろか、士郎」

そそくさと背中を丸めて教室へ入る。ところが二人が教室へ入って
しばらくしてもクラスのざわめきは収まらなかった。
それもそのはずみんなの視線は士郎達から新しい人物へと向けられていた。
その先を見ると開いている廊下側のドア隙間から
誰かと向かい合って話している葛城教諭の姿。

「一体どうしたんだ?」
「俺が聞きたいくらいだぞ、衛宮。セイバーさんが来てるではないか」

クラスの面々がキレー、かわいいぜ、いくつだろう?とか騒ぎ立てている様子が 士郎の耳にも入ってくる。

「ああ、今日は俺の授業がみたいってさ」
「それはまぁよいことだな。セイバーさんが授業を見るとなると衛宮も身が入るだろう?」
「なんだよ、普段の俺が不真面目みたいに」
「ははっすまなかった」

そんな陽気に笑う一成を慎二は不気味そうに見ていた。


302 :Fateはやてルート98:2008/07/30(水) 00:26:05 ID:A1CR/7tn
「どういうことだよ、気味が悪くてしょうがないったらない。
柳洞が女の話を機嫌よく話してるぞ?タヌキ」
「セイバーさんならしゃあないかなぁ。うちの会長さんにも春が来たんやないやろか?」
「…本気で言ってるのかよ?お前も酷い奴だよね。あんな化け物を勧めるなんてさ」
「なんやて?」

意外な発言に慎二を訝しげに見据える。

「そんな顔するなって。僕は正しいこと言ってるよ。僕に従順な奴なら構わないけどさ。
違かったら外人の女なんてやっかいなだけさ。
まぁ、柳洞が入れ込むのは勝手だし結末もどうなるか楽しみだけどね」
「はぁ慎二らしいというか…もう少し、柔らかく言えばええのに。
外人になんか悪い思い出とかあるん?」
「態度だけじゃなくなりもでかいんだよあいつらは、鬱陶しいったらないね」
「ふーん、そんなら家のみんなも嫌い?」
「お前のとこの?ああ、赤毛チビは反抗的だし、年増は藤村と同種だし、嫌いだね」
「シグナムは?」
「あいつ?一番うざいよ。弓がちょっとうまいからって顧問になんかなりやがってさ。
そのくせ碌に指導できないのに質問には真面目に答えようとするし、滑稽なんだよ。
まぁ、からかえるし退屈はしないから存在は許してやるけどね」
「そうか」
「ああ?なに笑ってんだよお前?」

饒舌な慎二の様子を微笑ましく見つめる。その視線に慎二は居心地悪そうに顔を背けた。

「それでは授業を始める」

廊下での会話も終わったのか教師は教壇の前に立ち教室を見渡す。

「その前に、衛宮士郎、衛宮はやて、授業に遅れたな。
廊下に立っていろと言いたいところだが親族が来てる手前今回は許してやる。
代わりにいいところを見せてやるといい。前回やったところの復習から始める。
ヨーロッパの人権の意識の発展に貢献した著名な三名が著した著書と
彼らが与えたその後のヨーロッパ世界への影響を述べろ。どちらでもいいぞ」

淡々と語る口調に冗談は感じられずそれは確定事項に違いない。
士郎とはやては苦笑いを浮かべまた、廊下から見ている叔母の方にも目を向けた後、
士郎はノートを手に椅子から立ち上がった。


303 :Fateはやてルート99:2008/07/30(水) 00:29:48 ID:A1CR/7tn
放課後、人が少なくなり校舎が静けさに包まれようしていこうという頃
屋上には三人の男女が向かい合っていた。

「さて、何から話します?衛宮君、衛宮さん。
あなた達が正式な活動許可を得ていない魔術師かどうかそこからの確認からでいいですか?」

切り出した少女はあくまで礼儀正しく丁寧に語る。
長く黒髪を伸ばしたこの少女に向かい合う少年は切り出された内容に驚いたという表情。
もう一人、赤毛の少年の隣に立つ少女は少年とは逆にその顔に驚きはない。
驚くというより開きそうになる口をなんとか閉じようと努力していた。

「…はは、もう、やめてな。その口調」

その仕草は手で口を抑え漏れそうになる笑いを我慢しているようだった。

「はやて?どういう意味だよ?」
「ええと、なんと言ったらええか…」
「はぁ、あなたのその態度見ていると予算の時の駆け引き思い出してほんっとむかっ腹が立つわ。
あなたにばらされるのも癪だし、いいわよ自分でばらすから。
いい、衛宮君、さっきまでのはよそ行き、ほんとの私、遠坂凛はこっち」

ムカムカイライラした様子の不機嫌少女に士郎は恐る恐る話しかける。

「え…ええと、つまり猫かぶり?」
「…なんか文句ある?文句なんか言ったら殺すけど?」
「あ、まぁ…こっちのが親しみ…やすい…か、な?」

迫力、というものに士郎は圧倒されることを覚えた。

「で、もぐりだったことは認めるの?二人とも?」
「ああ」
「ん、そやね」
「…軽いわね…、別にいいけど。じゃあ、セカンドオーナーとしてはあなた達の居住を認める代わりに
私の要求を飲んでもらうわ。飲めないならこの街から出てってもらうけどね」

自信たっぷりに、高慢と言ってもよい態度で凛は士郎達と改めて対峙する。

「要求の内容は、なんだよ?」
「その前にもう一つ確認するわ。土曜の夜、青い男に襲われたと思うけど
撃退したのはあなたの使い魔でいいのね?衛宮さん」
「そうや」

はやては目を閉じ答える。その答えは嘘ではないが全てではない。

「上出来!私の要求はあなた達の居住を認める代わりに
あの4人の使い魔を私にしばらく貸すこと。以上よ」

凛は満足そうに頷き、夕闇が迫る空の下そう士郎、はやてに告げた。


304 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/07/30(水) 00:31:47 ID:A1CR/7tn
今日は以上です。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年07月30日 06:11