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教室に板書する音が響く。
黒板に向かってチョークを走らせているのは、生物教師の桜庭ひかるだった。

「…と、まぁこんなとこだ。分からないとこがあったら聞きに来い」

どこか適当な感じもするが、板書された内容は丁寧で、途中に挟んだ解説も至極分かりやすいものだった。

(適当に見えてちゃんと授業になってるんだもんな…)

手に付いたチョークを払う桜庭先生を、○○は敬意の想いを込めて眺めていた。
桜庭先生がチラリと時計に目をやると、ちょうど終業のチャイムが鳴った。

「お、ちょうど終わりか。では、今日はこれまで」

教室から出る桜庭先生の姿を目で追いながら、○○は物思いに耽っていた。

(クールで理知的で…。でも可愛いところもあって…)

○○は桜藤祭前の事を思い出していた。
時間がループする中で、扉を開ける度に場所や時間が飛ばされるという体験をしていた時を。
その時に見回りをする黒井先生と桜庭先生を脅かした事があったのだ。

(…普段の先生からは考えられなかったな…。あんなに慌てて…)

その時を思い出しながら、普段とのギャップに愛しさを覚える。 
 
(…何故か天原先生の名前を呼んでたけど)
(意外と結婚願望が強いのかな? …いや、天原先生と結婚したがってる…? ――いやいやまさか)

信じられない…、と言うよりは信じたくないという気持ちを込めて否定する。

(…ギャップに弱かったのかな…、俺…。こんなに桜庭先生が気になるなんて…)

鞄を取り出し、教科書を入れながら二つの顔を思い返す。
いつも理知的で、クールな桜庭先生。
桜藤祭前に見せた脅かされて慌てる桜庭先生。
その二つを想い○○が胸をときめかせていると、みゆきが話し掛けてきた。

「○○さん? 顔が赤いですよ? 風邪をひかれたのですか?」

そう言いながら、心配そうな顔をしている。

「え? いや、そんな事ないんだけど、赤くなってるかな?」
「ええ、もし体調が悪い様でしたら、一度保健室へ寄られてはいかがですか?」
「大丈夫だよ。ちょっと暑いだけだから」
「ダメダメ! 私が看病してあげるよ! 感謝したまへ!」

いつの間にかこなたがみゆきの後ろに来ていた。 
「こなたさん居たの? みゆきさんの影で見えなかった」
「ひどっ! う~…。確かに縦も横も足りて無いけどさ…」
「いや、悪気があった訳では…」
「泉さん? …『横』とはどこの事でしょう?」

こちらからはみゆきさんの表情は見えないが、相対しているこなたさんの表情を見ると、
この世の終わりの様な顔をしている。

(…見える…。みゆきさんの周りの空間が歪んでいくのが…)

間に入らないと、こなたさんがとんでもない事になりかねないと思った時――。

「でもホントにお熱はない? 顔赤いよ?」

○○の視線の外から、つかさが額に手を伸ばしてきた。

「ん…。ちょっと熱いよ? 良かったら明日お見舞いに…」
「つかさ! 抜け駆け…じゃない。何してるのよ!」

いつの間にかつかささんの隣りにかがみさんもいた。

「…抜け駆け…?」
「な、何でもないわよ。気にしたら負けよ?」
「むぅ…、イベントを起こそうとしてるのは私だけではなかったか…」
「…イベント…?」
「何でもないのだよ。気にすると禿げるよ?」 
「さっきから気にすると散々だな。…でも何だか頭クラクラしてきたし…、保健室寄ってから帰ろうかな…」

そう言って立ち上がると、4人が一斉に声を上げる。

「付き添ってあげるよ!」
「仕方ないわね…。付き添ってあげるわよ。…か、勘違いしないでよ!?」
「私に付き添わせて欲しいな…」
「何でしたら世界的権威をお呼びいたしますよ?」

4人が同時に口を開いたので○○にはよく聞き取れなかったが、
4人には言葉が聞こえたようで、お互いをじっと見ている。

(…見える…。4人の間の空間が歪んでいくのが…)

ここに居ては危険と判断した○○は、4人を置いて保健室へと急いだ。



保健室の前まで来ると、中から話し声が聞こえる。

(桜庭先生だ。天原先生とおしゃべりしてるのかな?)

中に桜庭先生がいると思うと、思わず胸が高鳴る。軽く深呼吸しつつ、○○は扉を開けた。

「失礼しまーす」

そう言いながら入ると、少し頬を赤くしながらこっちを見ている桜庭先生と、
いつものニコニコ顔が5割増しになっている天原先生がいた。 
「…○○! いつからそこに居たんだ!?」
「…今来たんですが? どうかしましたか?」

○○がそう言うと、桜庭先生は幾分落ち着きを取り戻した。

「…そうか…。いや、なら良いんだ。ところで、何か用事か?」
「いえ、頭がクラクラするので…、帰る前にちょっと診てもらおうかと」
「…だそうだ、ふゆき」
「桜庭先生に用がなくて残念ですね。良ければ桜庭先生が診てあげてはどうですか?」
「私の専攻は生物学だぞ」
「生物の事ですよ?」
「医学とは別物だ! …早く見てやれ」
「はいはい。それで、○○くんどうしましたか?」

桜庭先生に急かされながら、天原先生がニコニコ顔のまま聞いてくる。

「いえ、何だか熱があるような気がするんです。頭もクラクラするし…」
「あらあら、それは大変ですね。じゃあちょっとお熱を計ってみましょうか」

そう言いながら、天原先生は体温計を――何故か桜庭先生に渡している。

「では桜庭先生、彼の熱を計ってあげて下さい」
「…何で私なんだ?」
「お暇でしょう?」
「…いや、そうゆう問題では無くてな…」
「私は書類を取って来るので。お願いしますね?」 
 
有無を言わさぬペースで桜庭先生に体温計を押し付け、
天原先生は保健室を出て行った。

「…まったく…、ふゆきのヤツ…」
「…あの、体温計貸してもらえますか? 自分で出来ますし」

そう○○が言うと、桜庭先生は一瞬寂しげに眉をひそめたが、何事も無かった様に体温計を渡した。

「…約5分挟んでおけよ」
「はい、分かりました」

体温計を脇に挟んでじっとしている。保健室の時を刻む音だけが響く。

(…何だこの間は…。せっかく桜庭先生といるんだし…、何か話さないと…)

そう思い必死に話題を探していると、桜庭先生から声を掛けてきた。

「どうだ? 授業で分からないところはなかったか?」
「あ、はい。大丈夫です。先生の授業は適当に見えて凄く分かりやすいですよ」
「適当とはなんだ、適当とは」
「いや、凄いなって思ってるんですよ! ただ、たまにメチャクチャ難しい
話に飛ぶと流石に分からなくなるんですが…」
「難しい?」
「ほら、この前言ってた『シュレーディンガーの猫』とか」 
「あぁ、あれか。なに、そんなに難しく考える事は無い。
要は『思い込みはダメだ』ということだ。それが分かっていれば問題無い」
「う~ん…、思い込みですか…」

そんな話しに夢中になっていると、体温計が音を鳴らして計り終えた事を知らせる。

「貸してみろ。…37度8分か。微熱より高いぞ、今日は早く帰れ」
「思ったより熱があったんですね…」
「そうだな、明日も下がらないようなら休むんだな」
「はい、それでは帰りますね」
「あぁ…。…おい、○○」

不意に呼び止められ、扉の前で振り返る。

「はい?」
「…あ~、その、なんだ。…気をつけて帰れよ」

しどろもどろになりながら、桜庭先生はそう言った。

「はい、それじゃあ失礼しますね」

そう言いながら、○○は保健室を後にした。




○○の出て行った扉を眺めながら、ひかるは体温計を綺麗にして元に戻す。
しばらくすると、手ぶらのふゆきが戻ってきた。 
「…書類を取りに行ったんじゃなかったのか?」
「あらあら、忘れちゃいましたね」

にこやかに笑いながら、ひかるはしれっと言いのける。

「…余計な事をするな。私はもう諦めはついてる」
「随分と早いんですね、諦めるのが。何も始まってないというのに」
「…早くなどない…桜藤祭から――。いや、もう少し前から抱いていた想いなんだからな」

悲しげな目をしながら、ひかるは俯く。

「まさかこの歳で本気の恋愛をしようとはな…。おまけに相手は年下の…、
しかも生徒だ。こんな数式、どんな学者にも解ける訳がないだろう…」
「だから、解くのを諦めるんですか?」
「唯一導き出せる解はそれだけだろう。…それに…、私の想いなどアイツにとって迷惑以外の何でもない」

寂しげに、吐き捨てるように呟くひかるを、ふゆきはニコニコ顔のまま見ていた。

(…ひかるちゃんは意外と自分の事に関しては鈍いから…。そこに敵対心があったら感付くのに…。
敬愛と恋慕に対してはまるっきり気付かないのかしら…?)

そう考えながら、ふゆきははゆっくり立ち上がる。 
「お茶にしましょう? 温かいお茶は気持ちを落ち着かせてくれますよ」
「…そうだな。下手に動揺したままではマズいしな」

二人はお茶を飲みながら、暫くの静かな時間を過ごし、それぞれの仕事を切り上げて帰路についた。




翌日。
○○は自室で冷えピタを張って寝込んでいた。
帰ってからさらに熱が上がり、最終的には38度を超えてしまった。
流石に学校へ行くは厳しいだろうと、黒井先生に病欠を伝え、休んでいたのだ。
どれだけ眠っていただろうか。
夢か現実か分からない中、額に手をあてがわれる感触を感じた。

(…母さん…?)

優しい手つきで○○の額を撫でている。その仕草から、心配している事がありありと伝わった。

(…母さん…。ありがとう、俺は大丈夫だよ…)

そう呟きながら、額にあてられている手をギュッと握る。
すると、手がビクッと強張るのを感じた。
やけに現実味のある手の感覚に、ゆっくりと目を開けると、そこには困ったような顔をした桜庭先生がいた。 
「…先生…?」
「あ…あぁ、体調はどうかと思ってな」
「…何でここに…?」
「時計を見ろ。もう夕方だぞ」

言われて壁に掛かっている時計を見ると、既に夕方も6時になろうとしていた。

「随分寝てたんだ…。…お見舞いに来てくれたんですか?」
「ま、まぁな。ふゆきに急かされて様子を見に来たんだが…」

そう言うと、桜庭先生は困ったような顔のままそわそわしている。

「さっき軽く計ってみたが、熱は大分下がったようだな。…だから…、その…、手を離してくれないか?」

言われて自分の手を見ると、右手が桜庭先生の手をしっかりと握っていた。

「…あれ? …そうか、母さんの手かと勘違いしてた…」
「なんだ? お前は普段から母親の手を握っているのか?」
「ち、違いますよ!」
「それに…、幾らなんでも母親に間違われるとはなぁ…」
「だから違いますって。何だか夢の中にいるような感覚だったので…」

顔を赤くしながら○○が弁解する。

「まぁ何でもいい。ほら、手を離せ」

じっと握っている桜庭先生の手を見ていて、○○は首を横に振る。 
「…何だか落ち着くんです…。だから、もう少しだけこのままで居て下さい」
「…そうしてやりたいのは山々だが、水を持って来れないだろう」

そう言うと、桜庭先生はゆっくりと手を解くと立ち上がる。

「待っていろ。水を取って来るから」

部屋を出て行く桜庭先生を、○○はぼやける視界で眺めていた。

(…先生…)
(…なんで来てくれたんだろ…?)
(天原先生に急かされたからって…)
(わざわざ来てくれるものかな…?)
(―――先生…。…早く帰って来て下さい…)
(寂しいよ…先生…、先…生…)

風邪をひいているせいか、一人の時間が恐ろしく心細かった。
このままずっと一人なのではないかと不安に心が締め付けられ、気付くと○○は涙を流していた。




(…どうする…。どうすればいいんだふゆき!)

コップに水を汲みながら、ひかるは難しい顔をしていた。

(ふゆきの有無を言わせない迫力に押されて来たはいいが…)
(私に出来る事などこれくらいだぞ…?)

ひかるはコップをおぼんに置き、揺れる水面を眺めながら今日の昼休みを思い出していた。 
『今日は○○くんはお休みですよ?』
『何で知っているんだ』
『保健教員ですから』

うふふと笑うふゆきをひかるは肩を竦めて一瞥する。

『…で? お見舞いは行かないんですか?』

出されたお茶を口に運びながら、ひかるは首を振る。

『生徒が休んだだけだぞ? それに黒井先生によると、風邪による病欠なだけだ』
『でも○○くんは今お家に一人なんですよ?』
『ご両親は共働きなのか?』
『いいえ。昨日から町内会の旅行だそうですよ。帰宅は明後日だそうです』
『…だから何でそれをお前が知ってるんだ…』
『行き先もお聞きしますか?』
『いや、いい…。知るのが怖い』

ふゆきに畏怖しながらお茶を飲み干す。○○は心配だが、自分が行ったところで出来る事はたかが知れている。

『ごちそうさま。…ふむ、午後は授業はないし、書類の整理をして…』
『はい、桜庭先生』

そう言いながらひかるは一枚の紙を差し出した。 
『…何だこれは?』
『○○くんの家までの地図ですよ。お見舞い行かれるんでしょう?』
『お前は話を聞いて無かったのか? 午後は…』
『行かれるんでしょう?』
『だから…』
『…行くんですよね?』
『…あぁ、分かったよ。だからオーラを出すな』

やれやれと溜め息をつきながら、ひかるは腰を上げる。

『だが、私が行っても何も出来んだろう?』
『そんな事はありませんよ? …きっと一番の薬になると思いますよ』

いつも通りのニコニコ顔のままで、意味ありげに呟く。

『…うん? 何か言ったか?』
『いいえ? 何も♪ それよりちゃんと行くんですよ? お薬やお水を出してあげる事は出来るでしょう?』
『…まぁな。分かった、放課後行くよ』

(…これで出来る事はすべてだぞ…? やはり来た意味はなかったんじゃないのか?)

おぼんにふゆきから貰った薬と水を持って、○○の部屋へと戻る。 
「薬を持ってきた…ぞ…?」

そこまで言ってひかるは目を疑った。○○が仰向けのままで泣いていたのだ。

「ど、どうした!? どこか痛いのか? 頭か? 腹か?」
「うっ…ひっく…。ち、違うんです…」
「先生が部屋から出て行ったら…、急に寂しくて…、心細くて…」

ひかるは机におぼんを置き、○○の元へ駆け寄る。

「…心配するな。私はここにいる」
「…すみません…、先生…」

○○の額を優しく撫でてやる。どうすれば落ち着くのか分からなかったが、
ただ泣きながら震える○○が愛しくて堪らなかった。

しばらくそうしていると、○○が口を開いた。

「…先生…。昨日の『シュレーディンガーの猫』の話を覚えていますか…?」
「あぁ、覚えているぞ」
「あの時…、先生は『思い込みはダメだ』と言ってました」
「…俺…、このままじゃきっと、桜庭先生の事を思い込んで勘違いしてしまうから…」
「勘違いしたままの独り善がりなんて嫌だから。…だから…伝えます」
「俺は…桜庭先生が好きです」
「…桜庭先生の気持ち…、俺に教えて下さい」 
真剣なまなざしで自分を見つめる○○に、ひかるは言葉を失っていた。

――自分は今告白されているのか?
――しかし…、この告白を受けていいものか?
――私と○○は教師と生徒。
――それでなくても歳が大きく離れている。
――それに、風邪による気の迷いかも知れない。

様々な推測と思いがひかるの中で浮かんでは消えていく。
ひかるの戸惑いを感じた○○は、さらに言葉を重ねる。

「…俺は、風邪をひいて心細いからじゃないです。看病されたからじゃないです。
――ずっと前から、貴女が好きでした。そして、これからも貴女が好きです」




――ひかるが思い悩んだ全ての解がその中にあった。

「…お前…本気か? 本気で私が…好きなのか?」
「本気で好きです。大好きです」
「…わ、私は…、私は――」

そう言いながら、ひかるは一筋の涙を流していた。

「…ふふっ。意外と乙女だったのかもな、私は」
「先生…」
「あぁ…、問われたのなら、答えが必要だな」

そう言うと、ひかるは○○の頭を優しく抱き締めた。 
「私も…好きだぞ。生徒としてではなく、一人の男性として…」

そう言いながら、○○の頭を優しく撫でる。
○○もひかるの背中へ、ゆっくりと手を回した。

「俺…、俺凄い嬉しいです…!」
「なんだ大袈裟だな。この程度で嬉しいのか?」

○○は顔を赤くして慌てる。

「ち、違いますよ! 先生と両想いになれたのが嬉しいんです! べ、別に抱き締められる事では…」
「抱き締められるのは嬉しくないのか?」
「…嬉しいです…」

そう呟く○○を、ひかるは愛しさを込めて見つめていた。 
「だが○○。まだ私とお前が教師と生徒なのは変わらん。そこはキッチリ区別するぞ?」
「はい、もちろんです」
「…でもな、『今』この時は私とお前の二人だけなんだ」
「…だから、今だけは私を名前で呼んでくれないか…?」
「…はい、喜んで! 愛しています、ひかるさん…」
「…随分恥ずかしいものだな…」
「ひかるさんは?」
「…愛しているよ。当たり前だろう?」

そう言いながら、お互いの身体を強く抱き締める。
人の想いは科学や数式では分からない。
言葉で、温もりで初めて理解出来るものである。
長らく悩んだその解を、ひかるは喜びと共に伝える。

「…○○…」



「大好きだぞ!」

FIN


おまけ
「大好きだぞ!」



甘い空気を醸し出す○○の部屋の外に、扉に張り付く複数の影があった。

(…出遅れた~! せっかくのイベントチャンスが…)
(それどころじゃないでしょ! ○○くんが桜庭先生を好きだったなんて…)
(え~? ○○くん年増が好きなの~?)
(…そばかすがぁ…っ)

こなた、かがみ、つかさ、みゆきがそこに居た。

(生徒と教師…。素晴らしいネタだけど…、書いたらいろいろマズいような…)
(OH! ○○は年上好きネ!?)
(そんな…先輩ぃ…)
(泣かないでゆたか…。あのツインテール切り落としてくるから…)

チェーンソー片手に乗り込もうとするみなみを、7人が取り押さえる。

(い、岩崎さん! 流石にそれはマズいッス!)
(それに、○○くんが選んだんだよ? そんな事したら○○くん悲しむでしょ!)

かがみがそう説くと、全員納得いかないながらも、静かになる。

(…でもさ~。いいの? かがみんは○○くんを取られたままで)
(…いいもなにも…。○○くんが…)
(恋愛は自由なんですよ?) 
(…みゆきが言うと何だか怖さがあるわね…)
(気のせいですよ? うふふ…)
(…だけど…やっぱり…)
(柊先輩…。恋愛は戦いなんですよ?)
(ゆたかちゃん、たくましくなったわね…)
(…で、どうするかがみ?)
(私達はこれから宣戦布告してくるよ、お姉ちゃん)
(…ま、待ちなさいよ! …私も諦めないんだから!)
(…では皆さん、行きましょうか)

みゆきがドアノブに手を掛けた瞬間、8人は背後の殺気と闘気に背筋を凍らせた。

(…皆さん? 何をしているのですか?)

8人がゆっくり振り向くと、空気を震わせながら、笑顔の天原先生がそこに居た。 
(あ、天原先生? いつのまに…)
(さっきからですよ? …もう一度聞きます。『な に を し て い る の で す か ?』」

その単語を発した瞬間、天原先生を中心に闘気が放たれる。
闘気にあてられた8人は、押し潰されそうになるのを堪えて、皆しゃがみ込む。

(…さあ、帰りましょう? 皆さん)
(…で、でも…)
(…帰りましょう?)

再び闘気をぶつけられ、8人は完全に心が折れてしまった。

(…はい…)×8
(良い子達ですね。では帰りましょうか)

ぞろぞろと降りていく8人を眺め、天原先生は闘気を収める。

(…あとは二人の問題ですね。…末永くお幸せに♪)

扉を一瞥して、ふゆきは階下に降りていった。
この後二人は天原先生の闘気にあてられ、折り重なって気絶したまま○○の両親に見つかり、
弁解したものの、その場で婚約させられたのはまた別のお話。

FIN