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岡崎先輩が卒業してすでに2ヶ月近く過ぎる。
私も2年生になり、1ヶ月は経っている。
ゆたかや田村さんとは2年生でも同じクラスになることができた。
けれど・・・。


「みなみちゃん・・・。昨日は先輩から連絡来たの?」
「・・・いや・・・昨日も来なかった・・・」
「一度、直接話してガツンと言った方がいいッスよ!」


先輩からの連絡はあまりない。
友達がこうやって励ましてくれるのはとても嬉しい。
しかし、私の寂しさがそれで満たされるわけではなかった。


 ~不信 みなみ編~


私は先輩に嫌われたのではないだろうか。
そう思うことがここ最近増えてきた。
けど・・・卒業の日、先輩は私に言ってくれた。


『約束するよ。俺はこれから先ずっと君と一緒にいるって』


この言葉が今の私を支えている。
そう言っても何も恥ずかしくない。
この言葉を思い出すと胸が熱くなり、切ない気持ちになる。
けれどもそれ以上に・・・先輩に愛されているんだと再確認できる。
先輩は忙しいんだと今の私は自分に言い聞かせていた。


「・・・みちゃん?みなみちゃん?」
「大丈夫ッスか?顔赤いよ?」
「え・・・?あ、うん。・・・大丈夫・・・」
「良かった!じゃあ、続けるね」


今は昼休み。
こうやって3人で話しているんだけど・・・。

「やっぱりデートとかした方がいいんじゃないのかなぁ?」
「そうッスね・・・行くとしたらどこがいいだろ?」
「うーん。映画とかどうだろ?おもしろいそうなのいっぱいあるし」
「あの映画おすすめッスよ!主人公かっこよくて・・・」
「へぇー、私も見たいなぁ!」

今ここで話しているのは私と先輩について。
久々に遊んだらどう?
ゆたかのその言葉からどんどん話が進んでいる。
正直嬉しいんだけど・・・。


「けど、あの映画も面白そうだよね?」
「あれは評判、あんまりよくないらしいッスよ」
「へぇー面白そうだけどなぁ」
「まぁ、某掲示板情報だからどこまであてになるかは分からないッス」


途中から話が脱線してる・・・。
けど、私だって先輩に会いたい。


「ねぇ?みなみちゃん!先輩誘ってみようよ!」
「それがいいッスよ。頑張るッス、岩崎さん!」
「・・・でも」

先輩は大学で演劇サークルに入ったと言っていた。
人数が少なくてやりがいはあるが大変という言葉を思い出す。
先輩に迷惑をあまりかけたくない・・・。


「けど、言ってみなくちゃ分からないよ!」
「スタートしなくちゃ何も始まらないッス!」
「・・・・・・うん。分かってる・・・」


先輩に会いたい。
電話で話せないことだってたくさんある。
それに・・・先輩のぬくもりを感じたい・・・・・・。


「・・・うん。ありがとう、2人とも・・・。連絡・・・してみる」


心の中の寂しさが少し晴れた気がする。


「そうと決まれば・・・」
「・・・?」
「何がいいか話し合いの続きッス!」
「やっぱり私はあの映画がいいなぁ・・・」
「あれは主人公の子がいまいちッス」
「田村さん、厳しいよ」


私の昼休みはあっという間に過ぎた。
けど、今の私には夜が待ち遠しくて堪らない。

「じゃあがんばってね!みなみちゃん!」
「応援してるッス!」
「・・・ありがとう・・・」


放課後。
みんなと別れた私は一人、駅に向かいながら今夜の事を考えていた。
電話ではだめかもしれないけど、メールだったら。
なんて送ろう。
先輩と電話するの久しぶりだな。
先輩は映画で大丈夫かな。


「・・・岡崎先輩・・・」


ふと呟く。
電車の中の視線が私に集まったことさえ私は気づいていなかった。


「ごちそう様・・・」
「あら、今日は早いわね?」
「・・・うん。ちょっと用があるの」


足早に自分の部屋に向かう。
時計を見ると8時30分。
先輩はまだ電話に出れない時間のはず。
もう一度話す内容を考える。
何て誘えばいいだろう?
いきなりでいいのかな・・・。
いざ電話を前にすると少し緊張する。

「~~♪♪」
「えぇ!!??」


驚いた・・・。
え・・・?先輩だ。
深呼吸をして息を整える。


『・・・・・・あ、岩崎さん?』
「・・・先輩、お久しぶりです・・・」


胸が高鳴る。
久しぶりに先輩の声を聞くことができた。


『うん・・・ごめんね。忙しくって・・・』
「しょうがないです・・・。けど・・・声が聞けて嬉しいです・・・」
『本当にごめんね。もっと電話できたらいいんだけど・・・』
「・・・いえ。無理されなくても大丈夫です・・・」
『・・・・・・・・・』


本当はもっと声を聞きたい。
でも、先輩は忙しいんだ。
私がわがまま言うわけにはいかない・・・。

「・・・先輩?どうかしましたか・・・?」
『え?あっ、ごめん。ぼーっとしてた』
「大変そうですから・・・。お疲れのようですし・・・」


こういってしまうのは何故だろう・・・?
これは私の本心じゃないのに・・・。


『今日は早く終わったし大丈夫!それよりさ・・・』


その言葉を待っていた自分・・・。
先輩は疲れているのに私が気を使わせてどうするんだろう・・・。
こうやって迷惑をかけている自分がたまに嫌になる。
先輩は嫌じゃないのだろうか・・・。
こんな私のことを・・・。
私といたって特別に楽しい時間を過ごせるわけではないと思う。
それでも私は先輩が好き。
もしも・・・それが一方通行になってしまったら・・・。
考えたくもない。
でも、今のこんな私じゃ・・・。


『・・・岩崎さん?どうしたの?』
「・・・いえ、すみません・・・」


また先輩に迷惑を・・・。

『うんうん。それでね・・・』
「えぇ・・・。でも、それは・・・・・・」


先輩はこんな会話で本当に楽しめてるのだろうか・・・。


『それが臭くってさ。驚いたよ』
「そうだったんですか・・・」


色々と考えてしまうけど、先輩とこうやって話せる時間は何より幸せ・・・。
でも・・・。


「・・・先輩・・・。そろそろ・・・」
『え?』


時間は10時を大きく回っている。
残念だけど時間には逆らえない。


『もうこんな時間だ。明日も学校あるしそろそろ寝ないとね』


何かを忘れているような気がする・・・。
あっ!


「・・・先輩。最後に一つ聞きたいのですが・・・」
『ん?どうしたの?』

今週の日曜の事を聞かなくちゃ・・・。
今を逃せばまたしばらく話せないかもしれない。
言え!がんばれ私・・・。

「・・・今週の日曜日は・・・空いてませんか?」
『・・・今週』


言った。
でも・・・。


『・・・・・・ごめん。その日はもう予定があるんだ』
「・・・そうですか・・・・・・」
『けど、来週なら!』


どうしてだろう・・・。
私は来週も用事も何もないのに・・・。


「すみません・・・気を使わせてしまって・・・おやすみなさい」
『え、ちょ、岩崎さ・・・・・・』


早く電話を切りたかった。
先輩、驚いてるだろうな・・・。
もしかしたら嫌われたかもしれない。
ほんと、私どうしたんだろう・・・。
涙が止まらなかった。

日曜日。
私はゆたかと田村さんと映画を見に来ていた。
あの日起こったことを話すと、2人は私を励まそうと映画に誘ってくれた。
今日、私1人でいたらずっと泣いていたかもしれない。
2人の心配りが本当に心に染みる。


「良かったね!」
「最後のシーンは最高ッス!」
「・・・うん。楽しかった」


近くのファミレスで話す私たち。
こうやってみんなで話していると先輩の事を思い出さないですむ。
本当は映画なんてあんまり覚えてない。
ただ、みんなと一緒にいるだけで不安な気持ちが小さくなる。
それが今の私にとっては何より嬉しい。


「バイバイ!また明日!」
「明日また学校で!」


明日も学校だしあまり遅くなることはできない。
駅まで2人を送る。
今日は2人のおかげで楽しかった。
先輩は忙しいのだろうし、また会える機会はある。
そう思って駅を出た時だった。

「岡崎くぅーん!」


女性の声が聞こえた。
日本全国に岡崎なんていくらでもいるだろう・・・。
でも、私は何か胸騒ぎを感じた。


「大丈夫ですか?」


この声・・・。
聞きたくて会いたくて仕方なかったこの声・・・。


「一人じゃ立てなーい。手伝ってよぉ」
「はいはい・・・」

え・・・?
先輩・・・その女性は誰ですか?
先輩・・・何故そんなに親しそうなのですか?
先輩・・・今日の用事って何だったのですか?


先輩は私の知らない女性と仲良さそうに駅へ消えていった。


やっぱり先輩は私といても楽しくなかったんだろうな。
どうして言ってくれなかったんだろう・・・。
そしたら私だってもっともっと努力して・・・。
けど、あの女性すごく綺麗な人だった。
私に勝ち目なんてあるわけない。

「先輩・・・。どうして言ってくれなかったんですか?」


先輩の事を思い出してるだけなのに泣きたくなる。
私よりあの人の方が一緒にいて楽しんだろうな・・・。
私なんて・・・。
地味だし、スタイル良くないし、話も面白くないし・・・。
今まで先輩と一緒にいることができただけでも幸せだったんだろうな・・・。
決めた・・・。
その方が先輩にも迷惑がかからない。
そう思うと電話を握っていた。


『現在電話に出ることができm・・・』


良かった。
留守電だったら先輩の声を聞かなくてすむ・・・。
考えた事を一気にしゃべる。


「・・・・・・」

言えた。
泣かずに言えた・・・。
ほっと胸を撫で下ろす。
頬には暖かい感覚がつたっている。
違った。
私は泣いていた。
けど、泣くことをやめようとは思わなかった。