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 ドアにノックをする。考えてもみれば、とても久しぶりに会う気がする。
忙しいようで、同窓会にはあまり来なかった。そう考えると、理由はともかく、この再会は素直に嬉しい。
「どうぞ~」
ノックの返事が返ってくる。
ドアの向こうには、陵桜に転校してきて、一番最初にできた友人がいる。

「久しぶり、こなたさん」
「久しぶりだねぇ、ロリコン閣下」
なんというか、漠然と変わっていないことを実感する。

「……こなたさん、それはさすがに酷くない……?」
「酷くなんてないっスよ、伊藤先輩。ガチでなくても、その気はあるってことは、証明されてるっス」
「そうそう、ゆーちゃんにベタ惚れだもんね~、まこと君」
話しかけられて、ようやくいることに気付いた。
「それはそうなんだけど……、田村さん、いたんだね」
「ちょっ、先輩の方がよっぽど酷いっスよ!」
「ごめん、ちょうど死角にいたから、気付かなかったよ」
どうせ私は背景っスよー。そんなことを言って、拗ねてしまった。悪いことをした……。
「それで、相談したいことって何?」
田村さんへのフォローはないようだ。
「えと、実は――」

「――というわけで、ちょっとしたアドバイスでも、もらえないかなあと」
「それを私に聞くの?」
「ゲームやアニメや漫画を、たくさん見てたりするから、色々アドバイスをもらえるんじゃないかと思ったんだけど」
「確かに、物によっては、結婚まで書かれてるものもあるっスよね」
田村さんが復活した。
「でも、そーいうの見ても、大して意味ないでしょ」
「えっ? どうして?」
「そーいう大事な事は、自分の言葉で、自分の気持ちを伝えないとダメってこと」
「……やっぱり、そうだよね。アドバイスを、なんて考えてたのが、間違いだったのかな」
「いやー、人生の中でも、特に大切なイベントだからね~。不安になるのも当然だよ」
こなたさんの言葉で、自分の決意を思い出す。
「うん。でも、不安には負けない、自分の気持ちをちゃんと伝えるよ。きっと、ゆたかを待たせてる」
「おおぅ! ヘタレの覚醒だ! ベタだけど熱い展開だねぇ、ネタにしよっかなー」
「泉先輩、私もネタにしたいっス!」
「おぉ、じゃあ次回は、合作シナリオ!?」
「ええ!? 泉先輩とっスか!? オラワクワクしてきたぞ!!」
二人の勢いに置いてかれる俺。盛り上がってるなー。
「あー、そう言えば、今月は早い方と遅い方、二度の絶好のチャンスがあるけど、どっちでプロポーズするの?」
「それなら、早い方に決めてるよ」
「早い方っていうと、ゆーちゃんの誕生日ってことっスよね?」
「うん、クリスマスは、婚約の後がいいかなって思って」
「ハッピークリスマスになりそうですね、良かったっス。私らはデッドラインギリギリっスよ~」
「そんなにギリギリなの? 俺と話なんかしてて、間に合う?」
「あははー、息抜きは必要なのだよ」
なぜ田村さんがいるのか、何となく見えてきた。
「あははー、じゃないっス! 早く最終シナリオを書き終えるっスよ! せめて、プロットだけでも! じゃないと、イベントCGのイメージが湧かないっスよー!」
これは……、本当に間に合うのだろうか? 次回の話なんて、してる場合じゃないだろうに……。
編集も担当してる八坂さんが見たら、説教じゃ済まないぞ、間違いなく。
 こなたさんは、田村さんや八坂さんたちと組んで、ゲームを作っている。
そうじろうさんから、書き方のノウハウをしっかり学び、シナリオライターになったのだ。
最初の作品は、全く知名度が無かったけれど、言伝てにジワジワと売れ出し、最終的には小ブームにまでなったらしい。
しかも、日本に帰ってきたパティさんが、こなたさんたちと協力し、ゲームを翻訳。アメリカで少し販売してみたところ、向こうでも割と好評だとか。
二つ目の作品も、順調に売れたそうだ。遺伝かは知らないけれど、こなたさんには文才があったようだ。
だから、知名度が確実に上がってきている今、作品の発売が遅れるということは、避けたいだろう。
邪魔をしないように、俺は帰るべきだ。あまり遅いと、ゆたかも心配するだろう。

「それじゃ、俺は邪魔しないように帰るよ。アドバイス、ありがとう」
「あいよー、結婚式の招待よろ~」
「お幸せにっス、吉報待ってますね」
「うん、二人もがんばってね」

泉家を後にする。
ゆたかの誕生日まで、あと少しだ。色々な事を考えるよりも、まず行動。