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「以前より……、安定してる」
「みなみちゃん、ホント?」
「本当……。けれど、決して油断はしないで」
どんなに体調が安定しても、元々体は弱い。それは、どうしても変えることのできない事実だ。
「うん、わかってる」

みなみちゃんは医学部へと進学し、内科医になった。
理由を聞いたら、憧れている人が医師を目指しているし、何より、私が体調を崩した時に、すぐに助ける事が
できるからだと言っていた。少し照れくさい。
みなみちゃんは、いつも私を案じてくれる。
いつも、その代わりに何もできない私が、悔しかった。
せっかく、久しぶりに会ったのだから、感謝の気持ちをきちんと伝えておかないと。それくらいしか、私には
できないのだから。
「みなみちゃん。いつもいつも、ありがとう」
「……気にしないで。私は……、自分が正しいと思ったことを、しているだけ」
みなみちゃんは、少し俯きながら答える。
どうやら、照れているようだ。私の感謝の気持ちが、ちゃんと伝わったとわかる。
「そんなことないよ。みなみちゃんがいるから、今の私があるんだよ。みなみちゃんに出会えて、ホントに良か
ったって思ってる」
「……私だけじゃない、伊藤先輩の事を忘れてる……」
「お兄ちゃんとは、また違うところでってことだよ」
「わかってる……」
「あうー、みなみちゃん、ひどいよー」
みなみちゃんは、柔らかく微笑む。医師として、色々な人と出会ったからか、イメージが変わった。
以前は、優しいところがわかりにくかったようだけれど、今は、雰囲気から優しさが伝わるらしく、患者さん
達から好かれているようだ。
「……最近、伊藤先輩とはどう?」
「大丈夫、何も問題はないよ」
「……もう八年になる。なのに……、今のままで満足?」
「え?」
「結婚願望は、ないの……?」
「……あるよ。けど、これ以上なんて、望めないよ」
「なぜ……?」
「きっと、お兄ちゃんを不幸にする」
私の体質は、私の大切な人に、負担をかけることしかできない。
「もし、大切な人を、苦しめる事になるなら……」
いっそ、自分から離れてしまえば、大切な人を、苦しめなくて、済むの、かも、し――。
「ゆたか……」
私を、優しさが包む。
「大丈夫……。先輩なら、ゆたかを支えて歩いていける。だから、不安にならないで……。だから、泣かないで
……」
その言葉で、泣いていることに初めて気付く。
「ご、ごめん、ね」
「不安になるのもわかる。……けれど、伊藤先輩は、邪険にした私でも認めて……、優しく接してくれた」
だから、大丈夫。先輩は、優しい人だから――と背中を摩ってくれる。不安が薄らいでゆく――。
「みなみちゃん。もう大丈夫だよ。変なとこ見せて、ごめんね」
「気にしないで……。不安になることは、誰にでもあること」
「そう……だよね。みなみちゃん、ありがとう」
「不安は、抱え込まない方がいい……。また不安になったら、誰かに相談するべき……」
「うん、わかった」
「それじゃあ、お大事に――」

内科を後にする。どこか、少し心が軽くなった気がする。
結婚なんて、実感がわかないし、未だ不安もある。けれど、望めるのなら、大切な人と共に歩きたい。
私は、お兄ちゃんのことを、愛しているのだから。
だから、私も支えてあげられるように、強くならないと。お互いに支え合わなければ、人という字は容作られ
ないのだ。
決意を胸に、私は歩き出した。