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 いつもの、登校シーン。
あくびをかみ殺す俺と、その隣にこれまたあくびをかみ殺すこなた。
「ね、ゆーくんっ♪」
…と思ったら、今日はなんかやけに上機嫌だ。
「どうした?」
「…………」
と俺が聞くと、とたんに表情が沈む。
「…何?」
「…………んーん、なんでも」
ぷいっと目をそらし、俺たちの前を歩いていた柊姉妹を見つけて、そっちへ走っていく。

「…………なんかしたか、俺?」


ぶーけっと☆ふぉーゆー


「あんた、それマジで言ってるわけ?」
昼休み、隣のクラスのかがみさんに聞いてみると、ジト目でにらまれた。
「な、なにがさ」
「今日、こなたの誕生日じゃないの」





………はい?

「…知らなかったみたいよ、柊ちゃん」
「あっきれた。あんたたち仮にも恋人なんでしょうが」
まぁ、知ってると思い込んでたこなたもどーかと思うけど。
そう言って、かがみさんがおおげさに溜息をついた。

「そーゆーわけだから、あんたも彼氏ならプレゼントくらい用意してあげなよ」
なるほど、それでこなたが機嫌悪くなってたのか。
「…ところで、あてはあるの?」
問いかける峰岸さんに、首を振って答えとする。
「ないけど…なんとかしてみるよ」
「よかったら相談に乗るわよ」
そう提案するかがみさん。
「お願いしたいところだけど、今回はいいよ。俺がプレゼントするものだから、自分で選びたいんだ」
「なかなか殊勝じゃない」
がんばりな、とかがみさんがはっぱをかけた。


…さて、そうは言ったものの。
「なにプレゼントしたもんかなぁ…」
自慢じゃないし自慢にもならないが、女の子にプレゼントとかしたことなど、生まれてこのかた一度も無い。
ましてや、ただの友人じゃなくて恋人だ。ヘタは打てない。

こなたの好きなもの…

単純に言えばアニメ・マンガ・ゲーム関係か。

…ダメだ。
こなたと付き合うようになってある程度知識が増えたとはいえ、やはりこーゆーのはこなたに一日の長ってのがある。多少好き好きがあることを差っ引いても、俺がプレゼントしたものが既にこなたの所持しているものである可能性は否定できない。
それに彼女は欲しいものは自分で手に入れるタチだしな…

よし、そっち方面は外そう。







………いかん、手詰まりだ。


「うーん……」
頭を捻りながら廊下を歩く。
「…ん?」
ふと、中庭に設置された花壇の一角が視界に入った。
「……これ、いいかも!」



放課後。
バイトがあると言って、こなたは先に帰ってしまった。
もっとも、プレゼントを用意する時間が欲しい俺としては好都合だ。
目的のものは入手した。
プレゼントは、バイト先で渡せばいい。


「いらっしゃいまs…なんだ、ゆーくんか」
「なんだとはひどいなぁ」

「……ひどいのはどっちだか」
聴こえるか聴こえないかくらいの小さな声で、こなたが呟く。

「…ごめん。誕生日だったの知らなくてさ」
教えてくれなかったじゃん、とは言わない。聞かなかった俺も悪い。
「その埋め合わせになるかわかんないけど…」
後ろ手に隠していたプレゼントを、ばっと差し出す。

「………え?」
目を丸くするこなた。
甘い香りと共に、彼女の眼前にバラの花束が現れた。
「ホントは、もうちょっと数買うつもりだったんだけどさ。バラって案外高いのな」
手持ちのお金じゃ20本が限界だった。50本ぐらいは欲しかったんだが。
苦笑する俺。こなたはというと、花束と俺の顔とを交互に見比べて……

「ふぁ…っ」
瞳が、潤んだ。

あ…だめだったかな…
と思った途端、

ぎゅっ

「!?」
こなたが、俺にしがみつく。
「………ありがと」
「…あ、あぁ」
思いがけないリアクションに、言葉が出ない。
「てゆーか、ごめん。私、誕生日ゆってなかったよね」
「……気にするな。俺が聞くべきだったし」
こなたの頭を優しく撫でる。
「…ふふ」
「ん?」
含み笑いを浮かべるこなた。
「いやぁ、初めて男の子から…それも彼氏からプレゼントもらったんだけどさ。…結構嬉しいもんだね」
しかもバラの花束だよ? ゲームでもイマドキないようなシチュだけどさ。
なんて言って、くすくす笑う。
「…悪かったな」
「んーん、言ったでしょ? …………すっごく嬉しい」
こなたが、抱きしめる腕に力を込める。
「…ちょ、こなた」
「んー?」
「……見られてるんだけど」
ってゆーか、バイト中だろうに。
「見せ付けちゃえ♪」
「おいおい」
困ったなぁと思いながら、嬉しいと思っている俺もいる。
俺のプレゼントに、想いに、全力で喜んでくれている、彼女。


「ゆーくん……大好き☆」
愛しい人の言葉が、花束のように、俺の胸に届いた。