街のいたるところから、クリスマスソングがメドレーで流れる。
クリスマスツリーがイルミネーションで彩られ、世界中が赤と緑に染まってしまうような錯覚さえ覚えてしまう。
12月24日。
今日は、クリスマス・イヴ。
Kissing Santa Claus
「ゆうきくん、こっちに脚立おねがーい」
「ん、ここでいい?」
「ユーキ、ツギはそのリースをトってくだサイ」
「おっけ。…と、これね」
パティとこなたさんのバイト先であるコスプレ喫茶で、俺たちは飾りつけに奔走していた。
なんとこなたさん、一日店を貸し切ってクリスマスパーティを企画していたのだ。
もちろん、参加するのはいつものメンツ。
「……って、なんで俺まで準備にかりだされてるんだよ」
俺バイトじゃないんだけど。
「いーじゃん。こーゆーときは男手が必要なんだもん」
左様でございますか。
…やれやれ。今年のクリスマスはパティと二人っきりでって思ってたんだけどな……
「…まぁ、パティが楽しそうだし、いいけどね」
鼻歌交じりに飾りつけをこなしていくパティを見ていると、自分の表情もほころんでくるのがわかる。
「そーいや、パティは日本のクリスマス、初めてなんだよな」
「Yes! 11ガツくらいからクリスマスイベントやってるトコロとかあって、おマツリみたいでたのしーデス♪」
宗教色の薄い日本のクリスマスは、商戦兼ねてるからってのもあるけど。
こーゆー風に好意的な捉え方もあるのか。
ぱたぱたと軽快に動き回るパティは、早くもサンタコスプレに身を包んで臨戦態勢って感じだ。
「No! コレはハルカのボーカル服“ノエルアンジェリーク”と、サンタシリーズのアクセサリーセットなのデス。ただのサンタじゃないデスよ?」
…いや、それを俺に言われても良くわかんないってば。
*
パーティはいい感じに盛り上がっていた。
悪ノリしたこなたさんの手により、かがみさんたちもサンタコスプレを身に纏ったり、プレゼント交換でちょっとしたミニゲームに興じたり。
終始笑顔の女の子たちを見るのは、悪くない。
…もちろん、一番はパティだけどね。
「…ふぅ」
室内の熱気にアテられ、外の空気を吸いに出る。
流石にホワイトクリスマス、なんて都合よくはいかないようで、見上げた空には星がいくつか輝いていた。
「…ア、ここにいたデスカ」
背後から声。振り返るまでも無くパティだってわかる。
「キュウにいなくなるからシンパイしたデス」
「ごめんごめん」
俺の隣によりそって、そっと手を握る。
「…ひょっとして、オコってるデスか?」
「なんで?」
「コイビトは、クリスマスはフタリでスごすって、コナタがイってましたから。だからユーキも、フタリっきりがヨかったのカナって」
もうしわけなさそうに、目を伏せる。
「…まぁ、どっちかって言えば二人きりの方が良かったけどさ」
ウソついても仕方ない。
「こっちに来て最初のクリスマスだもの。パティが楽しんでくれるなら、こーゆーのだって大歓迎さ」
「ハイ! タノしいデス!」
パティが笑顔で頷く。
「……デモ、やっぱりフタリきりのクリスマスもやってみたいですネ」
「じゃ、それは来年ってことでどうかな?」
「ライネン…ライネンも、イッショにイてくれますカ?」
「当然」
俺がそう言うと、パティの頬が桜色に染まった。
「……くしゅんっ」
と、パティがか小さくくしゃみ。
「冷えて来たね、入ろうか」
「ハイ」
扉を開けると、大きめのクリスマスツリーが出迎える。
「…ユーキ、知ってますか?」
「何が?」
「ツリーにカザってるリース、mistletoe…ヤドリギでできてるデス。…そして」
次の瞬間、唇が重なる。
「!?」
「ヤドリギのシタでkissしたカップルは…シアワセになれるんですヨ☆」
照れ笑いを浮かべて、パティが俺を抱きしめた。