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俺は野上あきら。陵桜に転校してきた。ちなみに一人暮らしだ。
「さぁて・・・行きますか・・・」
ちゃんと迷わずに着くかなぁ・・・。地図は持った!これで大丈夫!!

20分後、道に迷った・・・。ココはどこ?
大丈夫!俺にはこの地図が・・・無い。落とした・・・。
「最悪じゃねぇかぁ!!コンチクショー!!」

「あの・・・どうかしましたか?」
突然うしろから声を掛けられたので、少しビックリした。
その子は、緑のショートカットに、ツリ目の女の子。

「あぁ実は俺、転校生なんだ。でも、道に迷っちゃって・・・」
「・・・なら・・・一緒に行きますか・・・?」
「え、いいの?」
「ハイ・・・こっちです・・・」

いやぁ、助かった。学校に着いたのは、予鈴ギリギリだった。
「ありがとう。助かったよ!」
女の子は少し照れながら、頷いた。

女の子にお礼を言って、俺は職員室へと急いだ。

担任の先生にあいさつを済ますと、早速教室に案内された。
1-D組。ここが俺のクラスのようだ。先生と一緒に教室に入り、みんなの前で自己紹介をする。
「神奈川から越してきました、野上あきらです。よろしく」

みんなは温かく歓迎してくれた。
「えぇと野上の席・・・岩崎の隣だな」
指差された席の方を見ると、朝のあの女の子がいた。

「あ!君は朝の・・・」
「・・・あ・・・」
「このクラスだったんだ!俺野上あきら、よろしく!」
「岩崎・・みなみ・・・です・・・」

転校初日から友達ができるなんて嬉しいなぁ。前の学校じゃ友達なんて居なかったもんな。
帰り道。そんな事を考えていると、また道に迷ってしまった。
途方に暮れていると、なにやら白い犬がこちらに近づいている・・・そして押し倒され、顔中を舐められた。
「わっ!お、おい・・・ハハッ!」

「・・・チェリー・・・」
どこかで聞いたことのある声。声のする方を見ると、岩崎さんがいた。
「ごめんなさい・・・怪我してない・・・ですか・・・?」
「大丈夫だよ、かわいいねこの子。チェリーっていうんだ」
「・・ハイ・・・でも、なんでここに・・・?」

理由を説明すると、その場所までの行き方を教えてくれた。
「・・・けっこう、忘れっぽいんですね・・」
そう言って彼女は笑った。その笑顔が、とても綺麗だった。

転校して1週間が過ぎた。岩崎さんとも仲良くなった。小早川さんという、岩崎さんの親友とも仲良くなった。
とても充実した学園生活をすごしていた。

そんなある日、お昼を屋上で三人で食事をしていた。
最初はたわいもない話をしながら食事をしていた。そんな時に、小早川さんが質問をしてきた。
「野上君って、好きな人いるの?」
「いや・・・いないかなぁ・・・」
ちらっと岩崎さんを見れば、少し安心したような顔をしていた。

その日の放課後、俺は買い物をする為スーパーへ向かっていた。
スーパーの中へ入ると、調味料のところに見慣れた子が居る・・・。岩崎さんだ。
なんか・・・似合うなぁ。ってこれじゃ俺変態だぞ・・・。

「岩崎さん♪」
「あ・・・野上くん。・・・なんで・・いるの?」
「いや、おれ一応一人暮らしだし・・・」
「一人暮らし・・・なんですか?」
そう言うと、しばらく岩崎さんは考え込んでしまった。そして、口を開いた。

「じゃあ・・・夕飯、作ろう・・か?」
「え、いいの?」
「うん。家に連絡入れるから、ちょっと・・・待ってて・・・」

それから俺と岩崎さんは、俺のアパートへと向かう・・・。

 

「じゃあ・・・作るね・・・」
1時間後、俺のアパートのキッチンに岩崎さんが立っている。
女の子の手料理なんて生まれて初めて食べるなぁ・・・。

「今日のメニューはなんですか?」
「カレー・・・です」
「ふ~ん・・・俺も手伝うよ」
「え・・・いいですよ・・・座ってて・・」
「じっとしてるのは苦手でね♪で、なにをすればいいの?」
「じゃあ・・・にんじんを切ってください・・」

こうして二人いっしょに夕飯を作りはじめた。まるで夫婦みたいだな。
夫婦・・・この言葉にはあまりいい思い出はない。父と母・・・か・・・。
「・・・ん、上君・・・野上君!!」
「え・・・痛っ!!」
岩崎さんに呼ばれるまで、気が付かなかった。ボーっとしてた俺は、包丁で自分の指を切ってしまった。

「・・・大丈夫ですか?」
「うん、これくらいはね。かっこ悪いとこ見せちゃったなぁ」
「いえ・・・そんな・・」

すると、岩崎さんが質問をしてきた。
「なんで・・・一人暮らしなんですか?」
「・・・捨てられたんだ、俺。親に・・・。」
「・・・え・・・」
あまり人に話したくなかった事。でも、岩崎さんには聞いて欲しかった。俺は話を続けた。

「俺の親、かなり借金があったらしくてさ・・・。そんな時に俺が生まれて・・・。
育てる自信がなかったんだろうな。夜逃げするときに、俺を捨てていったんだ・・・。
警察に保護された俺は、行くあてもなくて施設に預けられたんだ・・・。」

その時の岩崎さんは、俺を瞬きせずに見ていた。かまわず、俺は話を続けた・・・。
「施設も転々としてた俺は、中学生の時には一人暮らししてたんだ」
「学費は・・?」
「いろんなバイトを掛け持ちして稼いでたんだ。今日はたまたま全部休みで暇だったんだ」
「・・・すごい・・・」
「もう慣れたけどね」

しばらく沈黙が続いたが、岩崎さんが沈黙を破った。

「・・・寂しくなかったの・・・?」
「寂しかったよ。小学生の参観日はすごく寂しかった・・・。でも、それでも笑ってた。苦しかった・・。」

知らず知らずのうちに、俺の声は震えていた。俯いて、拳を震わせて・・・。
その時、俺の体が引っ張られた。そして、抱きしめられた。岩崎さんに。

「我慢・・・しなくていいですよ・・・。これから私が・・・私が傍にいますから」
「それって・・告白みたいだぞ・・・」
「告白・・・です。あなたが・・・好きです。あなたはの返事を、聞かせてください」
返事はもちろん・・・

「好きです。岩崎さん、いや・・・みなみが大好きです!」

初めて、人が温かいと知った。みなみに抱きしめられて、初めて知った。
十数年、ずっと耐えてきたものが一気に溢れた。涙が止まらなかった。まるで子供のように泣いた。
その間みなみは、背中と頭を撫でていてくれた。まるでみなみが、俺の知らない母親のように感じた。