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佐藤ひろし…つまり俺は最近よく疑問に思う事がある。
と言っても、考える事はいつも同じだし、これもいつもの事ながら答えは出ない。
それは俺が無学だからかもしれないし、答えその物が無いのかもしれない。
ともかく、その問題というのは、時間についてだ。
更に細かく言うのなら『何故一日は二十四時間しかないのか』という事。

そんな独り言を授業中に桜庭先生に聞かれて、特別授業を受けたりもした。
貴重な放課後を潰してまで受けただけの事があって、タメにはなった。
難しい言葉の意味を調べたり、生物学的考察を聞かされたり。
実に解放されるまでの時間は三時間。
結果、かがみさんと帰れないという不幸に見舞われたが、
まあ、特別授業の内容は興味を引かれるモノだったし、別にいいんだけど。

ただ、後から気付いた大きな問題がある。
俺は学術的な意味で、“時間”に疑問を持った訳ではないのだ。
私生活や、仕事、どんな事でもいいのだが、
充実していると時間を足りないと感じたりしないだろうか。

くどくどと話したんだけど、言いたい事は簡単。
要するに、

「一日がもっと長ければいいのに」

こういう事なのだ。
……なんか近頃こんな事ばっか考えてるないか? 俺。

休みの日こそ、定番の場所へデートに行ったり、一日中電話したり。
とてもいい方向に充実していると言える。

だけど、平日は休み時間の短い時間しか会えないし、皆が居る中でイチャイチャする訳にも行かない。
誤解が無いように言っておくけど、皆が居る事に不満は無い。
一緒に居るのは楽しいし、そうしているのも好きだ。
皆が気を使ってくれて、昼休みを二人で過ごす日もある。

冬真っ只中なだけあって人の居ない屋上で、まったりとイチャイチャしたり。
初めて提案された日は、イチャつく二人の姿を覗かれていて、恥ずかしい思いをしたけれど。
それも良い思い出という事で、片付ける事も出来る。


そして、今日もまた楽しい思い出が増える。
なんと! かがみさんが我が家に泊まりに来るのだ。
理由は簡単。うちの両親から頼まれたからだ。
うちの両親が親戚の集まりで留守にするからと、かがみさんに頼み込んだのだ。

ちなみに佐藤家と柊家は家族ぐるみの付き合いになりつつある。
という事で、かがみさんの家族からの了承も得ているのだ。

あ、補足すると、家族ぐるみの付き合いになったのは、
つかささんから向こうの家の人に伝わって、急遽ご挨拶に行ったのだ。
お父さんからは娘を宜しく頼むよ、と優しくも熱くお願いされてしまった。
ご夫婦揃って孫の話をされたり、ね。
その時はかがみさん共々、真っ赤になって、固まってしまったが。

それにしても、もうこんな時間か。
なんだか心配になってきた。
迎えに行こうか、どうせやる事もないし。
ごめん。 ホントは俺が早く会いたいだけなんです。
とりあえず電話してみようかな。

携帯を手に取り、か行を開いて、かがみさんに電話をかける。
ちなみに『ひ』には、柊家が登録してある。
だから、『か』で登録してあるのだ。
数コール間があって、かがみさんが電話に出る。

「もしもし。ひろし君? どうしたの?」
「聞いてた時間より遅くて心配でさ」
「あ、ごめんね。 買い物してたら遅くなっちゃって」

確かに、それを示すようにガサガサとビニール袋の音がしている。
音から察するに結構な量がありそうだけど。

「大丈夫? なんなら今から迎えに行くよ」
「別にそこまでしなくてもいいわよ。もうひろしくんの家に着くし」
「…わかった。 待ってるよ」
「うん、じゃあ切るわね」

プツリと電話が切れる。
…ううん、やっぱり迎えに行けばよかったかなぁ。
心配だ。

十分もしない内に、インターホンが鳴った。
お客が映る画面を見ると、そこには買い物袋を提げたかがみさんの姿。
鍵は開いてるからと言葉をかけて、玄関に向かう。

「いらっしゃい」
「おっす」
「荷物、持つよ」
「ありがと」

手渡された荷物は、割とズシリと来た。
女の子がこれを持って歩くのって、結構辛いんじゃないだろうか。

「これ結構重いね。 手、大丈夫?」
「駅前のスーパーで買ってきたから大丈夫よ」

等と言いながら、自然に手を繋ぐ。
今日のメニューや、こなたさんに会った事とか。
そんな他愛のない会話しながらリビングへ。
こなたさんに会った時は相当焦ってしまって、
悟られないようになんともない風を装うも、すぐにバレて大変だったらしい。

ちなみに、今日のメニューはご飯と味噌汁に、肉じゃがとぶりの照り焼きだと言っていた。
毎日つかささんや、みきさんに習っている成果を見せると張り切ってる姿に感動。
自分の為に頑張ってくれてると思うと、言葉で表しきれないモノがある。

「思ったんだけど、俺、今世界で一番幸せ者かも」
「お、大袈裟よ。 でも…そのありがとね」

お礼、と頬にキスされる。
ほっぺにチューだけで真っ赤になってるかがみ萌え~と、こなたさん風に言ってみたり。
ヤバイ、最近毒されてきてるなぁ。

「そういえば、ご両親はもう行っちゃったの?」

肩をすくめた俺を見て、苦笑するかがみさん。

「まあ、それだけ信頼されてるって事じゃないの?」
「どっちかっていうと、かがみさんの方が信頼されてるかも」
「え?」
「かがみさんが居れば安心、とか言われたし」
「なんで?」

それは家のお嫁さん候補だからじゃない?というと、
かがみさんは顔を真っ赤にして、からかわないでよと言いながら身を寄せてくる。
どちらともなくキスをして、抱き合う。

くぅ~

…お、おお? 腹の虫が猛っているようだ。
だが、困った事に俺のモノではなく、かがみさんの、なんだけど。
視線を落として、かがみさんの顔を覗き込むと、赤くなった顔を胸に埋めてくる。
ていうか、かがみさん、全身真っ赤っ赤だ。

「あ…う……そのぉ…折角いいムードだったのに…ごめんね」
「いいよ。 かがみさんはお腹の音も可愛いってわかったし」
「か、からかわないでよ」
「だって、事実だしさ」

そう言って頭を撫でると、ポカポカと胸の辺りを叩いてくる。
といっても、全然力なんか入ってなくて、すぐに照れ隠しだって事がわかるけど。

「なんかあんた、こなたに似てきた気がするわ…」
「う、自重する」

それからある程度イチャついて、かがみさんは料理を始めた。
手伝おうか?と声をかけたのだけど、いいからいいからと、リビングに戻された。
テレビでも見ててという言葉に従って、テレビを見ているが内容なんて頭に入ってない。
キッチンから美味しそうな匂いがしていて、それ所ではないから。
先程から、ぐぎゅるるぅと腹の虫が絶賛大暴れ中だ。
美味しそうな匂いは随分前からしているし、もうすぐ準備出来る頃かな?

「ねえ、食器ってどこにあるの?」
「あ、今出すよ。 待ってて」

食器を出して、並べていく。
そこに、肉じゃがと、ぶり大根が盛られていく。
ご飯と味噌汁を用意して、コップにお茶を注いで準備完了だ。
俺とかがみさんは向かい合って座る。

「お待たせ。 じゃ、食べましょう」
「うん。 頂きます」

初めの頃に比べて、本当に上手になったと思う。
見た目も然る事ながら、味の方も上達の具合は素晴らしい。
愛情込め込め補正もあるかもしれないが、それを抜きにしても美味い。
ていうか、かがみさん、俺の方をじーっと見ないで。
照れてしまうし、とても食べ辛いです。
感想が聞きたいのはわかるんだけどね。

「うん、美味しい!」
「そう? なら、良かったわ」

そう言うと、安心した様子で漸く食べ始める。
かがみさん的にも上出来だったようで、ご機嫌だ。
かがみさんが笑っていると、どうも自分の頬まで緩んでくるから困る。

「ねえ」
「ん? どうしたのかがみさん?」
「隣…行っていい?」
「勿論。 どうぞ」

控え目にお願いしてきた態度に、つい意地悪したくなる。
そうだ、こなたさんに借りたゲームにあった羨ましいシチュエーションをやってみよう。
おいでと声をかけて、ぽんぽんと膝を叩く。
うん…と顔を赤くしながら、お茶碗を持って俺の隣に腰を下ろす。
ぴったりと体がくっ付いているのは、最早いつもの事。
けど、今日ばかりはそれだけじゃ済まないのです。

「かがみさん、そこじゃないよ」
「え?」

ココと、膝の上を叩く。
その意図を理解したのか、一瞬でゆでだこが出来上がる。

「ちょっ、何言って!」
「本気も本気。 ほら、早く」
「だ、大体なんでいきなり膝の上なのよ!?」

今まで通り隣り合わせでいいじゃないと、至極当然の事を言う。
だが、それではあまりにも面白くないと思うんです。
けれど、そんな事は言わないし、言えない。 怒られるからね。
反対される事を予想していた俺は孔明先生も舌を巻くに違いない手段に出た!

「俺がかがみさんとそうしたいから」

俺は真顔で、そんな事を言ってのけた。
そのセリフを聞いたかがみさんは、顔を赤くしながら考えるような仕草をしている。
二言三言呟いて俺の膝の上に腰を下ろしてから、
『仕方ないわねぇ、ひろし君は』と、お決まりのセリフ。……って待て待て。

「かがみ様、ご存知で?」
「様って言うな! ていうか、何の事よ?」
「いやいやなんでも」

まだ少し顔は赤いが、ツッコミが返ってきたのは軽く開き直ったからなのだろうか。
そして、反応から見るに元ネタは知らないらしい。
ここまで来れば後はもう進むだけ。
肉じゃがを軽く崩して箸で持ち上げ、かがみさんの口元へ。

「はい、あーん」
「ええっ!? ま、待ってよ!」

箸を置いて、どうしたの?と声をかける。

「そういう事するのは心の準備が……って、そうじゃなくて!
なんでいきなりあーんなのよ!?」
「俺がそうしたいから…じゃ、ダメ?」

がああっと吠えながら振り返り俺の顔を見つめる。
目が合った瞬間に顔の赤さが増して、すぐに視線を軽く逸らされたけど。

「ダメじゃない……けど、自分で食べられるし……それに…恥ずかしいわよ…」
「それならいいじゃない。 こうすればもっと美味しくなるかもしれないしさ」
「きっ、緊張して味なんてわかりゃしないって!」

「…その…でも、ね? ひろし君がそうしたいなら……いい…よ?」
「かがみさん…」

今のセリフ、キュンと来た。
いつもの強気なかがみさんもいいけど、やっぱり可愛い女の子なのだ。
日下部さんは乙女っぽいのは似合わないって言うけど、
本当はこっちがかがみさんの本質じゃないだろうか。
それを知ってるのは一部の人だけかもしれない。
でも、それでいい。

これはただの自惚れかもしれないけど、
かがみさんがそういう部分を知る事を心の中で許してくれてると思えるから。
……あー、なんか恥ずかしい事を言ったけど、本当は独り占めしたいだけかも。
と、長い事、かがみさんのセリフに浸っていた俺の服の袖が、くいくいと引かれる。

「ごめんごめん。 どうしたの?」
「に…肉じゃが」
「肉じゃが…?」
「た、食べたいのっ」
「うん。 じゃ、あーん」
「やっぱ言わなきゃだめなのね…うぅ…あ、あーん」

じゃがいもを崩してから、かがみさんの口元に運ぶと、真っ赤になりながらパクリと咥えた。
何も言う事なく、黙々とじゃがいもを咀嚼している。

「美味しい?」
「…うう…やっぱり恥ずかしいだけだわ…」

初めこそ、そんな事を言っていたが、空腹が後押ししたのだろう。
十五分もすると、割と食事を楽しんでいた。
後半は食べさせ合いっこになったから、時間がかかったけど。

俺とかがみさんは二人で皿洗いをして、一息ついた所だ。
風呂に湯を落とし始めてから十分程経った。 そろそろ湯が溜まる頃だ。

「かがみさん、先にお風呂入る?」
「あ……えと…どうしようか?」

俺が先に入って徹底的に掃除してから出るか?
逆は…拙いよな。 色んな意味で拙い。 ていうか、なんだこの気恥ずかしさは!
ココはひとつ、冗談でも言って空気緩和でも図ろう。

「ひとつ提案があるんだけど、一緒に入ってみる?」
「なっ!……あっ、あんた……」

言うまでもないが、瞬時に赤くなって、それを言ったっきり俯いて震えだす。
無謀な冗談だけど、それでいつもの空気に近付くなら安いモノだ。 多分。

「バ…バ…バ…」
「バンレタインデー! 次、デだよかがみさん!」
「デストロイ!」

右腕がブレるのが見えて、すぐに左頬に衝撃。 物凄く痛い!
ていうか、ちゃんとしりとりで返してくれたかがみさんに感動した!

「じょ、冗談なのに…」
「冗談でもそういう事は言わない!
だっ、大体ね! ソーユーのは卒業してからって決めたでしょ!」
「だから冗談…」
「言い訳しない!」

お湯が溜まった事を報せる音楽が聞こえる。
かがみさんは、覗かないように!と俺に釘を刺して、着替えを抱えて、そそくさと風呂場へと向かった。

それからそれから! という訳で、就寝時だ。
ちなみにお風呂上がったかがみさんは上機嫌だった。
安堵しながら風呂場へ向かおうとしたら、かがみさんに腕を掴まれた。
なんだろうと振り返ってみれば、変な事を考えないようにと、二度目の釘を刺された。
まあ、そんな事を言われたから逆に意識してしまって、ほぼカラスの行水状態だったけど。

で、俺が風呂から上がると完全にいつも通りのかがみさんが居た。
そこからはテレビを見たり、格闘ゲームをして、かがみさんの強さに驚いたり。
十二時を過ぎた頃、遊び疲れた俺とかがみさんは眠る事にした。
そんなこんなで、今、隣には髪をおろしたかがみさんが寝転んでいる。
同じ部屋で、別の布団の予定だったのだけど、かがみさんから提案でこうなった。
何かするのはダメだけど、出来るだけ近くがいいからと言われて、あっけなく陥落。
自分の弱さに嘆くと同時に、かがみさんへの愛しさが溢れた。
一緒にいるだけ。 それだけで幸せだから。
抱き合って囁き合って、時々触れるだけの、子供のようなキスをする。

そして、気が付けば、かがみさんは眠っていた。
今日も今日とて色々あったし、疲れているのだろう。
俺に出来る事といえば、優しく抱きしめてあげる事くらい。
苦しくないように抱きしめて、髪を撫でる。
おやすみ。 かがみさん。
いい夢でも見ているのだろう。
柔らかな笑みを浮かべているかがみさんの頬にキスをして、俺も眠りについた。


その日の夜、夢を見た。
こなたさんやつかささんにみゆきさん、皆が涙ぐんだり笑ったりしていて、
純白のウエディングドレスを着ているかがみさんが、俺に微笑んでいて、
丘の上の小さな教会で、みんなが祝福してくれる中、永遠の愛を口付けで誓う。

そんな、幸せな夢を見た。

次の日の朝、俺が目を覚ますと、かがみさんが俺の寝顔を覗き込んでいた。

「あ…おはよ」
「ん、おはよ」

そう言って微笑んだ顔が、夢の中に出てきたかがみさんに似ていて、胸が高鳴る。

「昨日の夜、夢を見たわ」
「偶然だね。 俺も見た」
「へぇ、どんな夢を見たの?」
「みんなが祝福してくれてる中で、俺とかがみさんが結婚する夢」
「え……それ…ホント?」
「ホントだよ」

答えを聞いて、声も無く驚いているかがみさん。
そんなに驚くような内容だろうか?
いや、こんなプロポーズみたいなセリフ、驚くかもしれないけどさ。

「わ、私も同じ夢を見たかも」
「ん? 結婚する夢ってこと?」
「それも、かなり似てるかも」
「じゃあ、一緒に場所を言ってみる?」
「う、うん」
「「丘の上の小さな教会で…」」

静かに瞳を閉じたかがみさんに俺は、そっと口付けた。

次の日、夢の話をしていたかがみさんと俺の会話を聞かれて、こなたさんから質問攻めにされた。
なんとも乙女ちっくな奇跡に感動しているつかささんとみゆきさんを余所に、
こなたさんには『愛だね、愛』と、からかわれてしまった。
だが、この日だけはいつもと違った。

「う、うっさい!……まあ…でも、その通りだけど…ね」

かがみさんが顔を赤くしながら腕に抱き付いて、肩に頭を預けてくる。
俺もまあね、なんて言いながらかがみさんの髪を撫でる。
そんな俺達を見ながら、他の三人が三様に感想を漏らす。

「ご馳走さま、というやつですね」
「でも、お姉ちゃん幸せそうで良かったぁ」
「バカップルにならなければいいけどねぇ」

気を付けないと際限無くイチャついてしまいそうだ。
なんて思っている俺の頬を突付いてくるかがみさん。
ん?と顔を向けると、目を瞑ってキスをねだっているであろうかがみさんの顔が近くに。
思わず応えてしまった俺に、こなたさん達が驚きの声を上げる。

「ちょ!? ひろし君!?」
「ええええ!?」
「あ、あの! えっとぉ…きゅう…」

大声に反応して、クラス中の視線がこちらに向いている。
慌てて離れようとすると、頭を掴まれて、いつも以上に熱烈なキスをされてしまった。
そして、満足したのか、ゆっくり顔を離して、呆然としている俺に、こう言った。

「大好きよ」

数分後、黒井先生のおかげで、正気を取り戻したクラスメイト達の絶叫が、学校中に響き渡った。

それから数年後、俺とかがみさんは夢で見た教会に居た。
長年連れ添った親友の門出に、涙ぐんだり、笑っていたり。
かがみさんがウエディングドレスを着て、俺に微笑みかけていて。

あの時に見た光景と、何もかも同じ。
ふたりで待ち望み、待ち続けた光景。

きっと、俺はこれからの時間を、かがみさんと歩み続けるのだろう。
嬉しい時も、悲しい時も、どんな時でも隣を見れば、かがみさんが居て、
一緒に喜んで、一緒に泣いて、色々な事を二人で分かち合って生きていく。

それは幸せなだけでは、ないかもしれない。
時にはケンカして、沢山の傷付け合って、それでも最後は笑い合って。
そうやって、二人で生きていきたいと、真剣に思う。

この気持ちは、とても言葉では表し切れない。
けれど、それでも伝えたいと思った。
だから、この言葉を送ろう。

「かがみ、愛してるよ」
「ばか…私だって愛してるわよ」