みなみ「・・・・・・ど、どうぞ、粗茶ですが」
「ありがとう、岩崎さん」
先輩が、いる。私の目の前に。こんな時間に。
母「いらっしゃい。お家遠いんでしょうに、よく来たわねぇ」
「すみません、こんな時間に。すぐ帰りますから」
母「いえいえ、ごゆっくりどうぞ。なんなら泊まって行きます?」
「・・・え、ええっ!//////」
みなみ「・・・っ!!お、おかっ・・・」
母「ふふふっ、冗談っ。帰りはタクシー呼んであげるから、気にせずどうぞ。じゃあね~」
「は、はぁ・・・///」
みなみ「/////////」
母は、ずっと目をキラキラさせたまま、部屋から出て行った。
新しいおもちゃをもらった子供のような目・・・なんとなく、みゆきさんのお母さんを思い出した。
あとでどうなるか、考えるだけでも気が重い。
・・・でも、今はもっと重要なことがある。それに集中しよう。
・・・そう、先輩のこと。
・・・住所は教えてあったけれど、先輩が家に来るのはこれが初めてだ。
実際、何度か迷いかけたらしい。
・・・なんて、行動力。なんて、人。わかってはいた、けれども。
みなみ「・・・・・・ハァ・・・」
「・・・ご、ごめんね岩崎さん。びっくりしたでしょ」
みなみ「・・・当然です。説明して下さい」
「説明っていわれてもなぁ・・・」
みなみ「・・・ですから、何故来たんですか?」
当然の質問。何故。どうして。
「何故って言われても・・・どうしても岩崎さんに会いたくなったから、としか」
みなみ「あっ///いえっ・・・そっ、そうではなく、何故こんな時間にわざわざ?話なら電話で・・・」
「そう、それ」
みなみ「・・・えっ?」
「さっき、電話で話したとき。様子がおかしかったから」
みなみ「・・・・・!」
先輩・・・気づいて・・・
みなみ「・・・い・・・いえ・・・そんな・・・私は、別に・・・」
「メールじゃなくて、わざわざ電話ってことは、直接話して聞きたいことがあったってこと」
みなみ「・・・っ・・・」
「でも、やっぱり話しにくくて、やめた」
みなみ「・・・ぅ・・・」
「たぶん、明日になれば、岩崎さんが独りで結論づけて、話してくれなくなっちゃうから」
みなみ「・・・ぁぅ・・・///」
「だから、今日、聞きに来た。岩崎さんが、まだ悩んでる内に」
みなみ「・・・・・・・・・せん・・・ぱい・・・」
やっぱり、なんて人。
私のことなんて、全てお見通し。とてもかなわない。
「・・・話してくれる?何を悩んでたのか」
みなみ「・・・はい。」
・・・私は、観念することにした。ここまで来てくれた先輩に負けて。
・・・それに、思い出したから。
あの時、ゆたかと、二人で決めたこと。
思いに、フタをしないこと。
もちろん、誰かを想うからこそ、秘密にしたい思いもあるだろうけど。
それが、人を少し傷つけることもあるかもしれないけれど。
思いは水と同じ。溜まれば、澱んでしまうから。
みなみ「・・・先輩」
「・・・うん」
私は、聞きたい。
先輩の、あの時の、思いを。
みなみ「・・・先輩、私、今日・・・告白されたんです」
「えっ・・・はっ?えぇっ!?」