放課後、教室にて。
ゆたか「・・・・・・」
みなみ「・・・・・・」
ゆたか「・・・・・・」
みなみ「・・・・・・」
ゆたか「・・・・・・」
みなみ「・・・・・・(汗)」
ゆたか「・・・みなみちゃん・・・それって・・・ちょっとまずくない?」
みなみ「・・・ぅ・・・やっぱり・・・?」
昼休みの後、私の様子がおかしいことを察知して訊ねてきたゆたかに、先ほどのことを相談することにした。
簡潔に言えば、告白、されたのだ。私が。
相手は他のクラスの一年生で・・・、一目惚れ・・・らしい。
ゆたか「・・・なんで、すぐ断らなかったの?」
みなみ「・・・ぅ・・・だから、その、なにがなんだか分からなくて混乱してる内に、行っちゃって・・・」
ゆたか「・・・みなみちゃん・・・」
みなみ「・・・ぅぅ・・・」
他に誰もいない教室で二人、頭を抱える。
ちなみに、先輩は今日用事があるらしく、先に帰るとメールが来た。
・・・今日はその方が助かる、なんて考えた自分が、情けない。
みなみ「・・・ど、どうしよう・・・」
ゆたか「どうって・・・断らないの?」
みなみ「そ、それはもちろん。でも、どう言えば・・・」
ゆたか「・・・うーん・・・」
ゆたかが、視線を宙に漂わせる。
私は、逆に視線を地に伏せる。
少し考えた後、ゆたかが、一言。
ゆたか「やっぱり、正直に『恋人がいるからゴメンナサイ』って言うのが一番じゃないかな」
一番無難で、一番簡潔な答えをくれる。
私も、それが一番だとは思う。
でも。
みなみ「・・・やっぱり・・・そうかな・・・」
ゆたか「でも・・・『じゃあなんであの時言わなかったのさ?』って・・・怒られるかな?」
みなみ「・・・う」
そう。それが問題。あの時、あの場で言ったのならともかく。
一度時間を置いてしまうと、言いにくい答えでもある。
ゆたか「相手の人、凄く期待してるだろうし、凄く勇気のいることだったろうし」
みなみ「・・・ぁ・・・ぅ・・・」
ゆたか「それでしばらく待たされて、答えが『実は彼氏がいるからダメ』ってのも・・・」
みなみ「・・・うぅぅ・・・」
自己嫌悪。
やっぱり、情けない。少しは成長したつもりだったのに。
ゆたか「大丈夫だよみなみちゃん」
みなみ「・・・ゆたか・・・」
ゆたかの、笑顔。
それは、最近良く見せてくれるようになった、
・・・優しい、微笑み。
ゆたか「・・・先輩が、みなみちゃんを嫌いになることなんてないから」
ゆたか「だから、大丈夫」
ゆたか「今は、どうやって断るか」
ゆたか「それだけ、考えよう?」
ゆたかの、優しい声。私の中に染み込むような、ゆたかの優しさ。
最近、こんな場面が増えた気がする。
私が慌てて、ゆたかが笑いながら私を落ち着かせてくれる。
あいかわらず、体調を崩しやすいのは変わらないけれど。
・・・きっと、もう、私なんかよりずっと大人。
みなみ「ううん、大丈夫。言えるよ」
ゆたか「みなみちゃん・・・」
みなみ「それに、側にいなくても、ゆたかは一緒だから。だから、大丈夫」
ゆたか「・・・うんっ」
今度は、二人共、笑顔。
大丈夫。
ゆたかが、いてくれるから。
勝負は、明日。