【愛の行く末】第五話
+++水銀燈(6/19PM4:35自宅リビング)+++母「え、銀ちゃん今なんて……」銀「ええお母様、明日からちゃんと学校に行くわ」母「無理しなくってもいいのよ……」銀「無理なんてしてないわぁ。もう心の整理もついたし、準備もちゃんと出来てるからぁ」母「その調子だと本当に大丈夫みたいね。よかったぁママ安心したわぁ」銀「うふふ……あれ?お母様、もうそろそろ行かなくていいのぉ」母「え?あらやだ!急がないとタイムセールが始まっちゃう!それじゃあお留守番おねがいね」銀「はぁい、いってらっしゃぁい♪」母を送り出した私はそのまま二階の自分の部屋へと向かった。部屋の中はカーテンを開けてないので薄暗い。まるでいまの私の心の中のようだ。そのまま椅子を引っ張り出した私は、そこに腰掛けてこれからの事について考え出した。(準備は出来た……あとは実行するだけ)ジュンにフられたあの日、アレからどうやって家に帰ったかまったく覚えてない。気がついたら自分のベッドで横になっていた。母の話では、帰ってきたときの私はまるで死人のような顔をしていたらしい。それから今日あったことを思い出した私は一晩中泣き続けた。泣いて泣いて泣いて、いくら泣いても涙が止まらなかった。まるで体中の水分が涙となって流れ出て行くような感じがした。次の日、私は冗談じゃなく本当にご飯も喉を通らないような状態だった。学校にも行く気がしなかった。もうジュンの隣にはいられない私が、いったいどんな顔をして彼に会えばいいのかわからなかったから。でもその深い悲しみも、時間がたつにつれてしだいにジュンを奪った相手への深い憎しみへと姿を変えた。(ジュンは私の他に好きな人がいるって言った。それは誰?誰なの?だれが私からジュンを奪ったの?)そのとき、一瞬薔薇水晶の顔が頭に浮かんだ。(………ありえないわぁ)私はすぐにその考えを否定した。だって彼女が私を裏切るはずないもの。薔薇水晶は私が中学二年のときにジュンに紹介されて知り合った。初めは薔薇水晶のことを、臆病で意気地なしで何を考えてるのかわからない変な子だと思っていた。でも、ジュンを通して薔薇水晶と深く関わって行くうちにこう思うようになった。『この子は私とよく似ている』と。薔薇水晶も外見が人と違うことでよく他人にイジメられていた。その苦しみはよく分かる、だって私もそうだったから……でも私には守ってくれる人が……ジュンがいた。ジュンがいたからこそイジメと戦うことが出来たし強くなることも出来た。でも薔薇水晶には守ってくれる人なんてだれもいなかった。薔薇水晶はずっと一人で戦ってきたんだ。私にもしジュンがいなかったらこの子のようになっていたのかも……そう思うとまるで他人のような気がしなかった。私は薔薇水晶への態度を改めるようになった。そんな私に彼女もしだいに心を開いてくれるようになり、気がつくと私たちは親友とも呼べる関係になっていた。そんなある日、私は薔薇水晶の思いを知ってしまった。あれは、中学二年の秋、二人で昼食をとっていたときのことだった。薔『ねえ、銀ちゃん』銀『ん?なあに薔薇水晶』薔『銀ちゃんは、ジュンのことが好きなの?』銀『ジュンのこと?ええ、もちろん大好きよぉ♪』薔『それは幼馴染として?それとも男の子として?』銀『もちろん男の子としてに決まってるじゃなぁい♪私は小さい頃からずっとジュンが大好きなのよぉ♪』薔『そっかぁ……好き……なんだ……』銀『ええ好きよぉ♪でもどうしたのぉ。いきなりそんなこと聞いてくるなんて』薔『え、ううん、なんでもないよ』銀『………あなたまさか、ジュンのことが好きなの?』薔『え、それは……』銀『どうなのぉ?』薔『……うん』銀『そう………』薔『………』銀『………』銀『……ねぇ』薔『応援……するよ』銀『えっ?』薔『応援するよ。だって私じゃ銀ちゃんに敵わないもん』銀『薔薇水晶……あなた本当にそれでいいの?』薔『うん。私はジュンも銀ちゃんも大好きだから、二人には幸せになってほしいの』銀『薔薇水晶……』薔『だから約束して、絶対に幸せになるって』銀『うん、わかった。約束するわ』薔『えへへ……早くジュンの恋人になれたらいいね』薔薇水晶は私のために自分から身を引いてくれた。そんな彼女が今になってジュンを私から奪おうとするはずがない。(一番の親友を疑っちゃうなんてね)私は一瞬でも親友を疑った自分を少しだけ嫌悪した。(薔薇水晶じゃない。だったら誰?誰がジュンを奪ったの?誰が誰が誰が誰が誰が誰が………)(………………………)(……………………)(…あの子達ねぇ)(証拠はない、けどこんなことをするのはあの子達以外にはいない)(真紅 雛苺 金糸雀 翠星石 蒼星石 柏葉巴 雪華綺晶)(あの子たちの誰かが私たちの絆を引き裂いた!!)(絶対に!!絶対に許さない!!)私は確信した。彼女たちは以前から私のジュンにちょっかいをかけていた。私からジュンを奪った可能性があるのは彼女達以外に考えられない。ジュンは優しい。でも彼女たちの誰かはその優しさにつけこんで私のジュンをたぶらかした。私が、ジュンを助けないといけない。私はこの四日間、犯人を始末するための準備をしていた。その準備も今日全て終わった。あとは学校に行って犯人が誰なのかを特定するだけ……でも私はこうも考えていた。彼女たち全員がジュンに好意を抱いていて、ジュンを奪った可能性が全員にある。だったら……銀「だったらみんな始末するってのもありねぇ」そう呟くと、私は机の引き出しに隠してあったある物を取り出した。闇の中で銀色に輝くそれを見つめながら、これからの事に思いを馳せた。ねえジュン、あなたは騙されているのよぉでも大丈夫、この私が助けてあげるあの子たちって本当におばかさぁんジュンに相応しいのはこの水銀燈だけなのにぃまとめて叩き潰さなきゃ……どいつもこいつも邪魔なんだものジュンに近寄る泥棒猫は、みぃんなジャンクにしてあげるピンポーン誰か来たみたい。私は手に持っていたそれを引き出しに直して玄関へ向かったガチャ銀「どちらさまですかぁ」J「や、やあ水銀燈」そこには、最愛の彼の姿があった続く
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