四日目-2
私たち薔薇学園御一行は、修学旅行最後の目的地、『新草』に到着した。早速だけど、これから私達が回る『新草』の紹介をしておくわ。ここは江戸時代あたりの日本を再現した場所で、とても活気に溢れている。観光地としても文化的な名所としても有名で、とある漫画の舞台にもなっているのだわ。地名の由来は、火事にも地震にも負けずに何度でも生えてくる雑草の様な町になろう。という事らしい。特産品は人型の皮に餡を包んだ『人形最中』など、和菓子が有名だ。ちなみに、イントネーションは『天草』ではなく『アラスカ』で宜しくね。さて、紹介はこのあたりにしておくのだわ。
翠「どうやら、到着したみたいですね」紅「さっさと降りてしまいましょ」バスが停まったので、私達はぞろぞろとバスを降りていく。空は快晴で心地よい風が吹いている。なるほど、いい天気ね。私は凝り固まった体を大きく伸びをしてほぐす。隣では同じ様に水銀燈もう~んと体を伸ばしている。周りはガイドブックで見たとおりの、『和』の風景が広がっていて、私達と同じ様な修学旅行生の姿も見える。まずは私達もクラスで整列して、先生の指示を受ける。午前中ずっと自由行動とあって連絡も長ったらしいのかと思いきや、梅岡先生も楽しみたいのか、連絡を簡単に済ませた後は、カメラを持ってどの生徒よりも先に大通りへと駆け出していってしまった。 全く、あんなのでいいのかしら……。……とにかく、私達も遊ばないと損よ。入り口に聳え立つ紅く巨大な門をくぐり、私達も大通りへと出る。翠「なんというか、年季の入った建物ばかりですぅ」翠星石が驚きの声をあげている。まあ、無理も無いわ。活気の溢れているその大通りは、何処を向いても店!店!店!よ。ちょっとはぐれてしまえば、もう完全に迷子になってしまいそうだ。とりあえず時間もたっぷりあるので、ぶらぶらと歩いてみる事にした。ベジータ「おっ!あの店で何か買っていこうぜ!」苺「ヒナは最中が買いたいのー!」二人が立ち並ぶお店の一つを指差す。なるほど……なかなか美味しそうな匂いが漂ってきている。私達はしばらくの間、ずらりと並んでいるお店を見ていくことにした。
雪「ほほう……他の店と比べても安いですね」雪華綺晶が微笑を浮かべながら、並べられているお菓子を見ている。紅「どうしてそれが分かるの?」雪「単純に値札を見比べていただけです。私の視力は2・5以上ですから、これくらい造作も無い事ですわ」へぇ……。視力が良いと、見える世界も違うのか。ちなみに私の視力は1・5。いたって普通だ。そのまましばらく私達は商品を物色していく。蒼星石と翠星石がおじいさん達へといって、大きな人形最中を買っていたわ。ウルージ君は甘い匂いが駄目だと言って、店の外にあるベンチにどっかりと腰を下ろしている。タバコを吸っていれば、もはや完全なオジサンね。苺「このふんわりした感じがいいの。ヒナはこっちの方がいいと思うの」金「いやいや、カナの選んだこれの方が……」二人は試食を食べ比べて、まるで料理レポーターみたいな事を言っている。なんでもいいけど、そんなに食べたんだから、何か買って行きなさいよ。みんなに釣られて、私もお茶菓子をいくつか買っておく。和菓子と紅茶も案外合うのよ。知らなかった?しばらくすると、みんなが用事を済ませたので、またぞろぞろと移動を開始する。銀「次は何処に行こうかしらぁ」水銀燈が言った。さっきの和菓子屋で買ったのだろう、モナカをぱくついている。
紅「そんなに甘いものを食べて……太らないの?」薔「ああ、銀ちゃんは大丈夫。『胸』につくから」銀「ちょっとぉ、私のセリフ取らないでよ」…………。それは羨ましい限りね。私は太るとお腹につくから、毎日の腹筋が欠かせないというのに。翠「そうですよね。この前の体育のリレーでも、水銀燈、胸の差で一位だったですぅ」翠星石も話に入ってくる。銀「翠星石、競馬じゃないんだから。あれは私の実力よぉ」紅「競馬は『鼻の差』よ。馬に巨乳も貧乳も無いでしょ」翠「あら?そーだったですか?」恥ずかしげに鼻の頭を人差し指で掻く翠星石。薔「私は太るとふくらはぎとか太股についちゃうから……困る」銀「そう? けど、胸についても無駄無駄よ。このごろ、Eカップが少しキツイわぁ」翠「胸でものを考えられるなら、おめーはぶっちぎりで学年一位ですぅ」銀「それがそうもいかないのよねぇ」薔「……それでも、胸につくほうが良いな」そう言って薔薇水晶は、チラリと仗助君のほうを見た。ほほう、そういう事ね。……ジュンの部屋(ベッド下、本棚の裏、二重底の引き出し)には貧乳モノの本しかなかったから、私には無縁の話なのだわ。水銀燈もそれを察したのか、薔薇水晶の顔を見る。
銀「ま、彼ならきっと胸の大きさなんて気にしないわよ。あんまりダイエットとか気にしちゃうと、お肌が荒れちゃうわよぉ」薔「……分かった」銀「特に真紅なんて、いくら食べても胸は一向に大きくならないんだから。これは生命の神秘よ」紅「なっ……!!」また余計な事を……!!紅「貴女が少しでも分けてくれたらこんな事にならないのにね」銀「やぁよ。分けるなんて。それにジュンは貧乳派でしょう」紅「そうだけど……」銀「じゃ、今のままがいいわぁ」紅「……そうね」怒りも失せてしまった。……それにしても、何でジュンの性癖を知っているのかしら。これは調べてみる価値があるわ。ベジータ「おいおい、何の話だ?」今度はベジータが乱入してきた。全く、本当に空気の読めないオスね。
ベジータ「もしかして、女の子の話か? 聞きたいなぁ~聞きたいよぉ~。ちょっとエッチなはn」銀「黙って」ベジータ「うわらばッ!」笹塚「ベジータァァァ!!!」水銀燈が一閃。毎度のごとくベジータはその場にぐったりと倒れる。まあ、どうせすぐゴキブリみたいに復活するんだろうけど……そんなベジータを見かねて笹塚君が毎回のごとく介抱に回る。ウルージ君と仗助君はそんなベジータを見てため息をつく。雪華綺晶はお菓子に夢中だ。蒼星石は雛苺と金糸雀と笑っている。ジュンはいつの間にか私の隣に立っていた。ジュン「なんというか……どこでも、僕達は変わらないな」紅「それって、とても素敵な事なのだわ」ジュン「はは、そうだな」口から自然と、笑みが零れ落ちた。
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