水銀燈の野望 烈風伝 ~美作攻略編~
<あらすじ>時は戦国の世。備前国に「薔薇乙女」と呼ばれる8人の姉妹がいた。天下統一の野望を抱く長女・水銀燈は、謀反によって一躍戦国大名にのし上がる。謀将・宇喜多直家を攻め滅ぼし、一国の主となった水銀燈は隣国・播磨に侵攻。名門赤松家から奪った姫路城をを新たな拠点とし、播磨・美作の平定を目指すのだった。<本編に登場する主な史実武将>○明智光秀(あけち みつひで/1528~1582)美濃土岐氏の流れを汲むと言われる。斎藤家滅亡後、越前に足利義昭を迎えその将軍就任に貢献する。その優れた才覚を織田信長に見出され重用されたが、突如謀反を起こし本能寺に信長を討つ。しかし事後調略には失敗し、山崎の合戦で羽柴秀吉に敗れその生涯を閉じた。――永禄四年八月。水銀燈は翠星石、蒼星石、雪華綺晶、薔薇水晶を従えて姫路城を出陣。別所就治が治める播磨東部へ向けて進軍し、その根拠地である三木城を取り囲んだ。薔薇乙女軍の兵力は三千八百、対する別所家は二千――雪「小さな城ですわね。造りもさほど堅固ではないですし」銀「けど、くれぐれも油断はしないことよ。分かってるとは思うけど」翠「言われるまでもねぇです。この翠星石が居ればこんな小城、一刻もあれば落ちるですぅ♪」蒼「……そういうのを油断って言うんだよね」薔「では、私たちは搦手から……」銀「私もそっちに行くわ。翠星石、蒼星石、大手門は頼んだわよぉ」薔薇乙女軍は例によって二手に分かれて城攻めを開始した。守兵の放つ矢をかわしつつ、搦手門を破壊しようとする雪華綺晶隊。雪「意外に頑丈ですわね……これは突破に手間取りそうですわ」寄せ手が攻めあぐねている間に城壁の上からは雨のように矢が降り注ぎ、水銀燈の直属兵がばたばたと倒れていく。銀「ちっ……思ったよりやるじゃなぁい」ようやく雪華綺晶が突破口を切り開くと、水銀燈は先陣を切って城内へ突入した。銀「さあ、死にたいお馬鹿さんはかかってきなさぁい!!」別所兵A「ひぎいぃぃ!!」雪華綺晶と薔薇水晶を従えた水銀燈隊の戦闘力は凄まじいものがあった。敵中を突破し、守備兵を分断しては包囲して各個撃破していく。翠「こっちも行くですぅ!」蒼「よぉし!」搦手の動きを見て、守りの薄くなった大手門を難なく突破する蒼星石。続く翠星石が城内の櫓を陥として城方の士気を挫くと、入れ替わるようにして蒼星石が次の城門へと殺到していく。双子の姉妹ならではの息の合った連携攻撃であった。雪「今私達の軍に降れば、いいコトがたっくさん♪」薔「あんなコトやこんなコトや……期間限定大サービス……♪」別所兵B「(;゚∀゚)=3ムッハー」別所兵C「ちょw 釣られんなwww」雪華・薔薇両隊の撹乱工作も功を奏し、城方は続々と混乱に陥っていった。裸同然となった本丸に、翠星石と蒼星石が猛攻を仕掛けていく。翠「老いぼれ、追い詰めたですよ!」蒼「その首貰った!」別所就治「ぐっ……もはやこれまでか」守兵の必死の抵抗も空しく別所軍は壊滅し、城主・別所就治は逃亡。三木城は完全に薔薇乙女軍の手に落ち、水銀燈による播磨統一は果たされたのであった。翠「やはり、楽勝だったですね。この翠星石のおかげですぅ」蒼「まぁ流石に一刻で落城とはいかなかったけどね……」銀「今回は確かに、翠星石と蒼星石の働きは大きかったわぁ。双子の絆の力かしら」雪「ですわね」薔「これで、銀ちゃんは二ヶ国の主……」銀「そぉねぇ。これからはこう楽な戦いばかりじゃないハズよぉ。気を引き締めていかないとねぇ」――永禄四年十月。将軍・足利義輝の使者として明智光秀が姫路城を訪れた。光秀「まずはこれを受け取っていただきたい」銀「これは……」白傘袋と毛氈鞍覆――将軍家より正式に国主として認められた者にのみ使用が許された品である。光秀「水銀燈殿。貴殿を播磨守護職に任じるとの上様の仰せです。是非ともお受けくださるよう」銀「この私には身に余る光栄……慎んでお受け致します」こうして水銀燈は播磨守護に任命され、名実ともに播磨国主の座に就いた。これによって薔薇乙女家の名声は一段と上昇することになる。光秀「本日はまこと祝着にござった。では、拙者はこれにて」銀「あらぁ。折角来てくださったのだからもう少しゆるりとされては? ささやかながら酒肴も用意させていますわ」光秀「いや、上様の御意向を伝えることのみが拙者の役目。どうぞお気遣いなきよう」そう言うと光秀は足早に姫路城を辞していった。銀「きらきー。あの光秀っていう男、アナタはどう見るぅ?」雪「一見固そうに見えますけど、頭は切れるようですわね。味方にすれば頼もしい人物ですわ」銀「それは同時に、敵にまわすと厄介ってコトよねぇ」雪「そういうことですわね。でも義理には篤そうですわ」銀「けど、野望を内に秘めたあの目は尋常じゃなかったわ……将軍家にあんな男がいるとはねぇ」その後、水銀燈は守護として最初の軍令を領内に発した。美作国津山城に逼塞する赤松義祐を討つための召集である。翌月、水銀燈はおよそ四千の兵を率いて姫路城を出陣。上月城を経て美作国を目指した。――永禄四年十二月。上月城から真紅と巴が合流し、五千二百となった薔薇乙女軍は津山城を囲んだ。紅「赤松軍はわずか三千足らず……どうやら名門もここまでのようね」雪「この城は攻め口がひとつだけ……全軍でまとまって突入するしかなさそうですわ」銀「そぉねぇ。じゃあみんな、行くわよぉ!」水銀燈は自ら陣頭指揮をとり、津山城の大手門を激しく攻め立てた。しかし、この城が落ちれば拠って立つ場所を失う赤松兵も激しく抵抗する。巴「さすがに赤松勢も必死ね」紅「慌てることはないのだわ。こちらの兵糧は十分、敵が弱るのを待てば……って、ちょっと、翠星石?」翠「えぇい! そんなまどろっこしぃことやってられるかですぅ!!」数百の兵を率い、城壁をよじ登って強行突破を図る翠星石。蒼「無茶だよ! 戻って、翠星石!」翠「この城壁さえ乗り越えれば、こんな城なんてイチコロですぅ……って、ひぇっ!?」ヒュンヒュン案の定、城方に弓矢で激しく射られ次々と滑落していく翠星石隊。翠「あ~~れぇ~~~!!」ゴロゴロゴロゴロ蒼「だから言ったのに……」紅「ああいうのはやはり金糸雀の専売特許なのだわ」激しい攻防戦の末、薔薇乙女軍はようやく大手門をこじ開けた。蒼「たあぁっ!!」薔「逃がさない……一人たりとも」蒼星石と薔薇水晶の猛攻により、たちまち城方の一隊が壊滅。それをきっかけにして各隊が一気に城内へと雪崩れ込んでいく。雪「抜け道を見つけましたわ。皆、私に続くのです!」城兵の使う抜け道を発見した雪華綺晶隊が一気に二の丸へ突入すると、赤松勢は大混乱に陥った。城内の櫓を次々に占拠していく真紅と翠星石。銀「さぁて、『迷鳴』に血を吸われたいのはどいつかしらぁ?」ニタァ巴「みんな刀の錆にしてくれるわ」クククそれぞれの愛刀を振りかざし、赤松兵を片っ端から斬りまくっていく水銀燈と巴。返り血を浴びて笑う二人の凄まじい形相に、生き残った守兵たちも恐れをなして逃げ散っていく。翠(やっぱりあの二人の組合せは恐ろしすぎるですぅ……)津山城内は本丸を残してほぼ薔薇乙女軍に制圧され、各所に薔薇乙女の旗がたなびいていた。本丸に立て籠もる赤松義祐に対し、水銀燈は降伏を促す使者として薔薇水晶を送ることにした。薔「降参するなら今のうちよぉ? 命だけは助けてあげるわぁ、との銀ちゃ……じゃなくて、我が殿の仰せです」義祐「ご忠告痛み入るが、どこの馬の骨とも知れぬ小娘に名門たる当家が屈するわけにはいかぬ。左様申し伝えられよ」本陣に戻った薔薇水晶は、水銀燈にその旨を復命した。銀「相変わらず家柄を鼻にかけた嫌な奴ねぇ……(#^ω^)ビキビキ」紅「なにやら惨劇の予感がするのだわ」翌未明、水銀燈は全軍に総攻撃を命じた。銀「皆殺しよぉ! 一兵たりとも生かしてはおかないわぁ!」曲輪に火矢を放ち、慌てて飛び出してくる赤松兵を次々に討ち取っていく水銀燈隊。赤松兵「こ、降参するだ! 命だけは助け……ぐえっ」ザシュッ巴「……ククク」本丸全体が煙に包まれた頃には、赤松勢はほぼ戦意を失っていた。戦況はもはや戦というよりも虐殺に変わり、逃げ惑う兵士の悲鳴が轟く阿鼻叫喚の惨状がそこにはあった。赤松家臣「殿、もはや落城は免れませぬ。今のうちにお逃げくださいませ!」義祐「止むを得まい……生き延びれば、家名を再興する日も来よう」本丸を密かに脱け出し、義祐は家臣数人とともに城の裏手へ回った。義祐「はぁ、はぁ……よし。ここを抜ければ城外へ出られ……」紅「ところがそうはいかないのだわ!」義祐「げえっ、真紅!」義祐は城の裏側に布陣していた真紅隊によって捕らえられ、程なく津山城は落城した。薔薇乙女軍の勝鬨が響き渡り、攻城戦はこうして幕を閉じたのだった。後日。当主の義祐をはじめ赤松家の一門、主な家臣はことごとく斬られ、城下に首を晒された。四職家のひとつである赤松家はここに滅び、美作国一円は水銀燈の手に帰したのである。紅「これで美作も平定ね。ようやく一段落といったところかしら」蒼「でも今回の城攻めはちょっとえげつなかったな……さすがに心が痛んだよ」銀「あらぁ。あれくらいで怯んでるようじゃ、これからの戦はやってけないわよぉ?」クスクス笑いながら去っていく水銀燈の後姿を、複雑な表情で見つめる蒼星石。翠「まったく、我が姉ながら鬼のような奴ですぅ。あれには人の心ってものがねえんですかねぇ」雪「それはちょっと酷いかと……姉上には考えがあってのことですわ」蒼「考え?」雪「ええ。敵兵に降伏を認めず敵軍を徹底的に叩いておけば、他の勢力も私達に怖れをなして今後の戦がやり易くなる……」史実においては織田信長や伊達政宗も実行した心理作戦であった。蒼「じゃあ、津山城はそのための犠牲に……」雪「姉上も心を鬼にしての命令だったと思いますわ。今後はあんなことは繰り返さないハズ……」翠「そんな深謀だったんですかねぇ……単なる逆ギレだったんじゃねーんですか?」紅「否定しきれないところが恐ろしいのだわ」津山城に代官を残し、水銀燈は妹達とともに姫路城へ凱旋した。雛「ジューン、今日は水銀燈たちが帰ってくるのよ? ちゃんとお出迎えの準備しなきゃめーっ、なのー!」ジ「わかってるよ。でもまだ城下町の区画整理が残って……あー、だからそこは違うってのに」銀「ふうん。随分と大変そうねぇ」ジ「うん、まぁね。でも、これだけは年内に終わらせないと……って、うえぇっ!?」雛「水銀燈、おかえりなのー!」銀「ただいまぁ♪」ジ「いきなり現れるなよ……着くのは夜じゃなかったのか?」銀「その予定だったんだけど、出番の無い家臣が居たのを思い出してわざわざ一騎駆けして来てあげたのよぉ」ジ「……そりゃどうもわざわざ」銀「にしても主君の出迎えもそっちのけで仕事に夢中とは、いい家臣を持ったもんだわぁ」ジ「嫌味かよ。そういえば、出迎えも作業もほったらかしで何処かに消えたのが約一名いた気がするが」銀「金糸雀には別命を言いつけておいたのよ。心配することはないわぁ」ジ「伏線張りにも余念が無いようで」雛「?」激動の永禄四年は、こうして過ぎていった。だが翌年はさらなる波乱に満ちた年になることを、今は知る由も無い水銀燈であった。
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