Another RozenMaiden 第11話 愛情
Another RozenMaiden 第11話 愛情 真紅の一撃で急降下する水銀燈。地面に叩き付けられようかというその刹那、水銀燈は両翼を広げ、地面すれすれで踏みとどまる。銀「やったわね!真紅ぅ!!」水銀燈は踏みとどまった体勢のまま、両翼から無数の黒い羽根を飛ばし攻撃を仕掛ける。紅「その手は喰わないわ!」対する真紅も、ステッキから生成した無数の花弁で羽根を迎撃してゆく。両者による羽根と花弁の打ち合いに、戦いはまたしても拮抗してしまう。銀「くっ・・・・。」膠着する戦いに水銀燈が声を漏らす。銀「これで終わりにしてあげるわ!」打ち合いに痺れを切らせた水銀燈は、両翼を更に大きく広げる。
縦に長く伸びた両翼が二頭の巨大な龍に変化する。本気を出した水銀燈が勝負に出たのだ。咆哮を上げた二匹の龍が口を開け、敵を飲み込まんと真紅に迫る。紅「来たわね!」真紅は羽根を迎撃していた花弁を片方の龍に集める。龍を中心に花弁が渦巻き、ついには龍の全身を花弁で包むと動きを封じてしまう。だが、龍は一頭ではない。花弁による攻撃を受けていない方の龍は真紅目掛けて猛然と突進する。紅「はっ!」体を捻り迫り来る龍を間一髪でかわすと、真紅は空中で身を翻しその背に降り立つ。そのまま無防備な龍の背を駆け抜け、一気に水銀燈との間合いを詰める。銀「!?」予想外の出来事に、一瞬怯む水銀燈。僅かな隙の間に一気に距離を詰めた真紅は、水銀燈に体当たりを仕掛ける。銀「うっ!!」怯んでいた水銀燈は真紅の体当たりをかわし切れず、二人はそのまま地面に叩きつけられてしまう。紅「まだよ!!」そんな中、真紅はすぐさま立ち上がると水銀燈に馬乗りになり、その胸倉を掴む。銀「私の負けよぉ。好きになさい・・・・・・・。」負けを悟ったのか、水銀燈が抵抗をやめる。そんな水銀燈に真紅の表情が暗くなる。やがて、ゆっくりと真紅が口を開く。
紅「水銀燈・・・・・・貴女は本当にJUMを愛してないの?」銀「愛しているわよ!この世の誰よりも・・・・この世の誰よりも強くJUMを愛している!!」真紅の言葉を掻き消すかのように、大声を張り上げる水銀燈。紅「だったら・・・・・・・何故、JUMを傷つけるの?」胸倉を掴んでいた手を離し、戦いに勝ったはずの真紅が涙を流し始める。紅「幼い頃、私たち姉妹はこの容姿を理由に、幾度となく心を傷つけられてきたのよね。 だから・・・・・・・貴女も、心が傷つく痛みを知っているはずよ。」紅「そして、そんな私たちを支えてくれたのはJUMなのよ。・・・・それなのに、どうして?」銀「JUMを愛しているからよ!真紅は知らないの?JUMはもうすぐ居なくなるのよ!」水銀燈もまた、涙を流し始める。紅「知っているわ。彼が外国に行ってしまうって・・・・。」銀「だから嫌われる必要があるのよ!嫌われれば、すっきり忘れて貰えるのよ! 私はJUMの足枷にはなりたくないのよ!」涙声のまま、溜め込んだ思いを吐き出すように水銀燈が叫ぶ。紅「貴女の考えは間違っているわ。貴女はただ悲劇のヒロインになって、 それで満足しようとしているだけ。」紅「貴女は自分のことだけを考えて、JUMのことを何も考えていない。 自分勝手な、ただの卑怯者よ。」核心をつく真紅の言葉に、堪りかねた水銀燈が大声を上げる。銀「真紅に何が分かるのよ!愛しい者を失おうとしている、私の気持ちが分かるの!?」真紅も気圧されまいと声を張り上げる。紅「分かるわよ!私はもう愛しい人を失っているのだから!」
大粒の涙を流す真紅の告白に、驚きを隠せない水銀燈。銀「・・・・・・どういう・・・・こと?」水銀燈の声が震える。紅「私はJUMに想いを告白したの。貴女に拒絶され、傷ついたJUMを見て 私が支えてあげなくてはいけないと思ったわ。」紅「でもダメだった。他に好きな人がいると言われたわ。 今は嫌われているけど、また元の関係になれるよう努力しているって。」真紅は自嘲の笑みを浮かべると空を見上げる。紅「私はずるい女ね。結局は私、傷ついたJUMに付け入ろうとしたのよ。 JUMが貴女のことを好きだって・・・・知っていたのに。」紅「水銀燈・・・・・・。私はもうJUMのアリスになる資格を持っていないの。 貴女だけがJUMのアリスになれるのよ。」紅「だから・・・・・・・傷ついた彼を貴女が救ってあげて。」真紅の目から一際大きな涙が零れ落ちた。それを皮切りに泣き崩れる真紅。そんな中、突如足音が聞こえる。
JUM「水銀燈!真紅!」校庭の真ん中で、組み合っている真紅と水銀燈が見える。息が切れる。だが、立ち止まることはできない。JUM「真紅!お前、水銀燈に何をしているんだ!!」状況が掴めない。とにかく水銀燈を助けないと。僕は全速力で水銀燈に駆け寄る。僕が水銀燈の傍に寄ると、真紅はふわりと浮き上がり水銀燈から離れる。真紅に構わず、泥だらけで地面に横たわる水銀燈を抱き起こしてやる。水銀燈に目立った外傷がないことを確認する。一先ず安心した僕は、水銀燈をこんな目に遭わせた元凶、真紅を睨みつけ、問いかける。JUM「僕は確かに真紅を振ったよ。」JUM「だからといって、お前は水銀燈にこんなことをするのか?」JUM「答えによっては、僕はお前を許さないぞ!真紅!」真紅は僕から視線を逸らし、ゆっくりと口を開く。紅「アリスゲームよ。」JUM「アリスゲーム?」紅「JUMのアリスになる為に、私は水銀燈を倒そうとした。」紅「水銀燈より優れていると認めて貰い、貴方のアリスとなる為に。」JUM「そんなことの為に・・・・・・。」僕は真紅の言っていることが理解できなかった。紅「『そんなこと』ではないわ。私達にとっては重要なことだもの。」涙を振り払い、真紅は強い意思を持った目で僕を見つめる。真紅の想いは本気のようだ。でも、こんな方法を取るのなら僕にとっては『そんなこと』でしかない。紅「だから私は水銀燈を倒そうとした。他に方法が無いのだから。」JUM「真紅、それは間違っているよ。」JUM「力で誰かの心を手に入れるなんて不可能だ。」JUM「そんな方法じゃ僕の・・・・・いや、誰のアリスにもなるなんてできない!」夜空にJUMの叫びが木霊した。Another RozenMaiden 第11話 愛情 終Another RozenMaiden 第12話 絆 に続く。
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